これならわかる復文の要領 ――漢文学習の裏技――

古田島洋介 著 / 新典社選書83

総合問題そうごうもんだい 要点ようてん解答かいとうpp. 273–277

以下いかはちだいについては、解説かいせつ省きはぶき要点ようてん書きかき記すしるすにとどめます。問題もんだいそれぞれについて、なぜそのような語順ごじゅんになるのか、要点ようてん参考さんこうにしつつ自らみずから吟味ぎんみしてみてください。

《Q113》未だいまだひとし踏みふみ死すしすもの見ざみざるなり。(全八字ぜんはちじ第五字だいごじ置き字おきじ「而」)

再読文字さいどくもじ「未」 ・置き字おきじ「而」 ・形容詞けいようしてき修飾語句しゅうしょくごく+「者」

【A113】
ひつじ けん とう ひとし   もの 
確認かくにんよう訓読文くんどくぶんひつじダレけんとうミテひとしいちスルもの(『論語ろんご衛霊公えいれいこう

《Q114》たみするところ因りよりゆきす。(全八字ぜんはちじ第六字だいろくじ置き字おきじ「而」)

・NゆきところレVスル ・置き字おきじ「而」

【A114】
いん たみ ゆき ところ    ゆき
確認かくにんよう訓読文くんどくぶんいんツテたみゆきところニレスルいちスレゆきヲ(『論語ろんごぎょういわく

《Q115》こくするや、いち重ねおもねゆう有るあるもの似たにたり。(全十字ぜんじゅうじ置き字おきじナシ)

・NゆきVスルYa ・副詞ふくし「壱」+動詞どうし「似」 ・副詞ふくし「重」+動詞どうし「有」 ・形容詞けいようしてき修飾語句しゅうしょくごく+「者」

【A115】
 ゆき こく  、 いち  じゅう あり ゆう もの
確認かくにんよう訓読文くんどくぶんゆきこくスルいちニレタリ二重にじゅうネテありゆうヘレものいち(『礼記らいき檀弓だんきゅうした

《Q116》げんふべからずしてゆきげんへば、言をいをしつふ。(全十字ぜんじゅうじ第五字だいごじ置き字おきじ「而」)

副詞ふくし「与」+動詞どうし「言」 ・「不レ可カラレVス」 ・置き字おきじ「而」 ・前置詞ぜんちし「与」+だい名詞めいし「之」」前位副詞句ぜんいふくしく

【A116】
   げん   ゆき げん 、 しつ げん
確認かくにんよう訓読文くんどくぶんシテレカラげんいちレトゆきげんヘバ、しつツレげんヲ(『論語ろんご衛霊公えいれいこう

《Q117》孔明こうめい有るあるは、ゆうさかなみず有るあるがごときなり。(全十一字ぜんじゅういちじ置き字おきじナシ/第二だいに八字はちじ「之」)
君主くんしゅ自称じしょう。 ○孔明こうめい孔明こうめい人名じんめい

・NゆきVスルハP ・再読文字さいどくもじ「猶」」連結動詞れんけつどうし linking verb(〜のごとし)

【A117】
 ゆき あり あな めい 、 ゆう さかな ゆき あり みず 
確認かくにんよう訓読文くんどくぶんゆきありルハ孔明こうめいいちゆうさかなゆきありルガみず一也かずや(『しょくこころざし諸葛亮しょかつりょうでん

《Q118》君子くんし其のそのにん養ふやしなふ所以ゆえんもの以てもてにん害せがいせず。(全十二字ぜんじゅうにじ置き字おきじナシ/第五字だいごじ「其」)

ところVスルYaもの ・前置詞ぜんちし「以」+名詞めいし相当そうとう語句ごく「其〜者」」前位副詞句ぜんいふくしく ・否定ひてい副詞ふくし「不」の位置いち

【A118】
くん    その ところ  よう にん もの がい にん
確認かくにんよう訓読文くんどくぶん君子くんしその所以ゆえんようフレにんものなかがいセレにんヲ(『孟子もうし梁恵王下りょうけいおうか

《Q119》呉王ごおうゆき聞きききすすむ去りさり帰りかえりえつみずうみせんふ。(全十四字ぜんじゅうよじ第七だいなな十二字じゅうにじ置き字おきじ「而・於」)
くれすすむえつえつ国名くにな

置き字おきじ「而」 ・前置詞ぜんちし「与」+名詞めいし「越」」前位副詞句ぜんいふくしく共にともにせんふ) ・前置詞ぜんちし「於」+名詞めいし「五湖」」後位副詞句こういふくしく

【A119】
くれ おう ぶん ゆき 、 きょ すすむ   、  えつ せん   みずうみ
確認かくにんよう訓読文くんどくぶん呉王ごおうぶんキレゆきヲ、きょリテレすすむリ、レトえつせんみずうみいち(『史記しき仲尼ちゅうじ弟子でし列伝れつでん

《Q120》夫子ふうしせい天道てんどうとをげんふは、得てえて聞くきくべからざるなり。(全十四字ぜんじゅうよじ第三だいさん「之」/第十二字だいじゅうにじ置き字おきじ「而」)

・NゆきVスルハP ・接続詞せつぞくし「与」(ABBAとBと) ・「得テ而VスYa」(得てえて聞くきく) ・「不レ可カラレVス」

【A120】
おっと  ゆき げん せい  てん みち 、     ぶん 
確認かくにんよう訓読文くんどくぶん夫子ふうしゆきげんフハせいニト天道てんどうト、カラぶん一也かずや(『論語ろんご公冶長こうやちょう

中文翻譯

全書終章「総合問題」八題,不事先提示文法類型,綜合運用各篇所學。

Q113:再読文字「未」(尚未)+「而」+「者」修飾構造。Q114:「民之所利」(N之所V,民所利之處)+因…而…。Q115:N之V也副詞節+「壱に似る」+「重有憂者」。

Q116:「与に言ふべからず」中「与」為副詞(一起),後句「与之言」的「与」為前置詞(與他)——同一漢字兩種用法。Q117:孤之有孔明(N之V)+再読「猶」(就好像)+比況結構。Q118:「所以養人者」整體作「以」的受詞,再整體否定「不以…害人」。

Q119:三個動作連接,第二「而」為置き字(去晋而帰),第三以「与越」前位副詞句+「於五湖」後位副詞句。Q120:「夫子之言性与天道」(N之V複雑型)+「得而聞」慣用表現(得て聞く=能夠聽到)。

応用篇おうようへん 訓読くんどく誤りあやまり三種さんしゅ復文ふくぶん有効ゆうこう範囲はんいpp. 281–285

本書ほんしょ「はじめに」に記ししるしたように、そもそも復文ふくぶん漢文かんぶん書けかけるようになるための練習れんしゅうでした。漢文かんぶん綴るつづる必要ひつようがなくなり、もっぱら読むよむだけになった昨今さっこん復文ふくぶん価値かち疑いうたがい向けむけられるのは無理むりもありません。しかし、自らみずから漢文かんぶんにほどこした訓読くんどく確認かくにん、そして漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょう読解どっかい――この二つふたつについて復文ふくぶん有益ゆうえきであることはたしかです。

復文ふくぶんによる訓読くんどく確認かくにん先立ちさきだち、わきまえておくべきことがあります。残念ざんねんながら、復文ふくぶん作業さぎょうによって訓読くんどく誤りあやまりをすべて防げふせげるわけではない、ということです。訓読くんどく誤りあやまり大まかおおまか三種さんしゅ分かわかれます。

第一だいいち訓読くんどく慣習かんしゅう反すはんす誤りあやまりたとえば「走ること数十日」を「数十日を走る」とくんじても、復文ふくぶんすればどちらも「走数十日」となり、不一致ふいっち生じしょうじない。復文ふくぶん無効むこう

第二だいに解釈かいしゃく上のうえの誤りあやまり「殺之可乎」を疑問文ぎもんぶん反語はんごぶんのどちらと解しかいしても、復文ふくぶんすれば「殺之可乎」にもどる。語義ごぎ誤解ごかいれい:「故人」を「亡くなった人」と誤解ごかい)も復文ふくぶんでは検出けんしゅつ不可ふか復文ふくぶんはあくまで語順ごじゅん関わかかわ作業さぎょうであり、語義ごぎとは関係かんけい

第三だいさん文法ぶんぽう上のうえの誤りあやまりおそらくこれこそ復文ふくぶん有効ゆうこう唯一ゆいいつ場面ばめん原文げんぶん修飾しゅうしょく関係かんけい誤解ごかいして訓読くんどくしていないか――この点検てんけん作業さぎょうには復文ふくぶん大いおおい威力いりょく発揮はっきする。ふとした注意ちゅうい錯覚さっかく確実かくじつ防ぐふせぐことができる。

中文翻譯

應用篇論述復文(漢文→書き下し文→漢文還原)的實際應用場合。

訓讀的誤謬分三類:①慣例性錯誤(如「Vすること+時間」的訓讀慣例)、②解釋性錯誤(疑問文 vs 反語文、詞義誤解)——這兩類復文無法檢驗。③文法性錯誤(修飾關係、語序理解錯誤)——這是復文最能發揮效力的場合。

即使具備正確復文的能力,仍可能在難處集中精力而疏忽周邊簡單字句的修飾關係。復文作為語序驗證工具,能防止此類「百密一疏」的錯誤。

復文ふくぶんによる訓読くんどく検証法けんしょうほう——検証例けんしょうれい1〜4pp. 285–290

〔検証作業さぎょう手順てじゅん

1 自らみずからほどこした訓読くんどく従ってしたがって書き下し文かきくだしぶん作成さくせいする。
2 その書き下し文かきくだしぶん復文ふくぶんする。
  *原文げんぶん語順ごじゅん引きひきずられず、書き下し文かきくだしぶんのみを対象たいしょうとして文法ぶんぽう的にてきに分析ぶんせきしつつ語順ごじゅん組み立てるくみたてる
3 原文げんぶん照らてら合わあわせ、復文ふくぶん結果けっか原文げんぶん一致いっちすれば文法ぶんぽう的にてきに正しいただしい訓読くんどく一致いっちしなければ誤りあやまり考えかんがえられる。

検証例けんしょうれい1》 「雲白」を「雲レ白キ」(白きしろきくも)と訓読くんどくするのは正しいただしいか?

1 「白き雲」と書き下かきくだす。

2 形容詞けいようし「白き」が名詞めいし「雲」に掛かかかる → 《修飾原則しゅうしょくげんそく》により「白雲」と復文ふくぶん

3 復文ふくぶん「白雲」≠ 原文げんぶん「雲白」→ 誤りあやまり

正しくただしくは「雲白シ」(くも白しじろし)) くも白いしろい

検証例けんしょうれい2》 「愛甚」を「愛スレ甚ダ」(じん愛すあいす)と訓読くんどくするのは正しいただしいか?

1 「甚だ愛す」と書き下かきくだす。

2 副詞ふくし「甚だ」が動詞どうし「愛す」に掛かかかる → 「甚愛」と復文ふくぶん

3 復文ふくぶん「甚愛」≠ 原文げんぶん「愛甚」→ 誤りあやまり

正しくただしくは「愛スルコト甚シ」(愛すあいすることじんだし))あいじん

検証例けんしょうれい3》 「夜想曲やそうきょく」を「夜ヲレ想フ曲」(よる想ふおもふきょく)と訓読くんどくするのは正しいただしいか?

1 「夜を想ふ曲」と書き下かきくだす。

2 「夜を想ふ」→〔V/O〕変換へんかんで「想夜」、さらに名詞めいし「曲」に掛かかかるので「想夜曲」。

3 復文ふくぶん「想夜曲」≠ 原文げんぶん夜想曲やそうきょく」→ 誤りあやまり

正しくただしくは「夜ノ想ヒノ曲」(N N N)または「夜ニ想フ曲」(adv V N))夜想曲やそうきょく

補説ほせつ原田はらだたねせいわたし漢文かんぶん講義こうぎ』(大修館たいしゅうかん書店しょてん)に見えみえれい現代げんだい中国語ちゅうごくごでは nocturne を「夜曲」と呼びよび夜想曲やそうきょく」とは言わいわない。「夜想曲やそうきょく」が純然じゅんぜんたる和製わせい漢語かんごであれば「夜ヲレ想フ曲」とくんずる余地よちもあるが、漢文かんぶんとして捉えとらえ場合ばあいはなし

検証例けんしょうれい4》 「約我以礼」を「約スレ我ヲ以テレ礼ヲ」(れい以てもてわれ約すつます)と訓読くんどくするのは正しいただしいか?

1 「礼を以て我を約す」と書き下かきくだす。

2 「礼を以て」→〔prep/N〕変換へんかんで「以礼」(前位副詞句ぜんいふくしく)。「我を約す」→〔V/O〕変換へんかんで「約我」。全体ぜんたい「以礼約我」。

3 復文ふくぶん「以礼約我」≠ 原文げんぶん「約我以礼」→ 誤りあやまり後位副詞句こういふくしく「以礼」を前位副詞句ぜんいふくしくとして訓読くんどくしたことが原因げんいん

正しくただしくは「約スルニレ我ヲ以テスレ礼ヲ」(われ約すつまするにれい以てもてす))やくわれれい(『論語ろんご子罕しかん)。

中文翻譯

語序驗證法:將自己的訓讀寫成書き下し文,再對此書き下し文進行復文,若結果與原文一致則語序正確,不一致則表示語序(修飾關係)有誤。

例1「雲白」:「白き雲」→復文「白雲」≠「雲白」→錯。正確訓讀為「雲白し」(形容詞述語)。例2「愛甚」:「甚だ愛す」→「甚愛」≠「愛甚」→錯。正確為「愛すること甚し」(Vスルコト+程度形容詞)。例3「夜想曲」:此例說明「夜を想ふ曲」(V+O+N)復文後為「想夜曲」,與「夜想曲」語序不符。正確為「夜の想の曲」(N+N+N)或「夜に想ふ曲」(adv+V+N)。例4「約我以礼」:後位副詞句「以礼」被誤讀為前位副詞句——復文檢驗即可發現此類語序理解錯誤。

有朋自遠方来ゆうほうじえんぽうきたる」の訓読くんどく検証けんしょう検証例けんしょうれいpp. 289–292

この検証法けんしょうほうが『論語ろんご』の名高いなだかい一文いちぶんについても威力いりょく発揮はっきすることを示ししめしておきましょう。例のれいの有朋自遠方来ゆうほうじえんぽうきたるまたらく」(『論語ろんご学而がくじ)です。後半こうはん「不亦楽乎」の訓読くんどく大きおおき揺れゆれはありません。

問題もんだいは、前半ぜんはん有朋自遠方来ゆうほうじえんぽうきたる」の訓読くんどくです。この六字ろくじには二種にしゅ訓法くんほうがあり、a・bどちらでも差し支えさしつかえありません:

  a「有リ下朋ノ自リ二遠方ヨリ一来タル上」 → とも(の)遠方えんぽうより来たきた有りあり
  b「有リレ朋自リ二遠方ヨリ一来タル」 → とも有りあり遠方えんぽうより来たきたる。

aのほうが旧いふるい訓法くんほうで、「朋の」の助詞じょし「の」を補うおぎなうのは近時きんじ読み方よみかたです。現在げんざいでは、新しいあたらしいbの訓法くんほう採るとる傾向けいこう強いつよいかと思いおもいます。

しかし、「どうせ訓読くんどくは、日本語にほんごとして意味いみさえ通じつうじればよいのだ」と速断そくだんし、次のつぎのように返り点かえりてん付けつけ読んだよんだりすると、とたんに正しいただしい訓読くんどくとは言えいえなくなってしまうのです。

  c「有リ下朋ノ自リ二遠方ヨリ一来タル上」 → 遠方えんぽうより来たきたとも有りあり

返り点かえりてん用法ようほうそのものは正確せいかくです。送り仮名おくりがなにも間違まちがいはありません。日本語にほんごとしても、「遠方より来たる朋有り」は、すんなり意味いみ通じつうじ一文いちぶんでしょう。

けれども、cのごとく訓読くんどくすることは許さゆるされません。それは、「今までそんな読み方は聞いたことがない」というようなあたまごなしの決め付けきめつけによらずとも、復文ふくぶんによる検証けんしょう明確めいかく説明せつめいできるのです。

検証例けんしょうれい5》 「有朋自遠方来ゆうほうじえんぽうきたる」を c のごとく訓読くんどくするのは正しいただしいか?

1 「遠方より来たる朋有り」と書き下かきくだす。

2 「遠方より」は〔prep/N〕変換へんかんによって「自遠方」と、「朋有り」は〔V/O〕変換へんかんにより「有朋」と復元ふくげんできる。また、「遠方より」は動詞どうし「来たる」を修飾しゅうしょくする前位副詞句ぜんいふくしくなので「自遠方来」とする。さらに「遠方より来たる」が名詞めいし「朋」を修飾しゅうしょくしているため、《修飾原則しゅうしょくげんそく》により「自遠方来朋」と復元ふくげんする。すなわち一文いちぶん全体ぜんたいは「有自遠方来朋」と復文ふくぶんできる。

3 復文ふくぶん「有自遠方来朋」≠ 原文げんぶん有朋自遠方来ゆうほうじえんぽうきたる」→ 誤りあやまり下方しもほう位置いちする「自遠方来」が上方じょうほう位置いちする「朋」を修飾しゅうしょくするかのごとく訓読くんどくしたがゆえの過誤かご

正しくただしくは、前掲ぜんけいa・bのように訓読くんどくする。

問題もんだいのc(遠方えんぽうより来たきたとも有りあり)は、《修飾原則しゅうしょくげんそく》を踏みふみにじった読み方よみかたなのです。実質じっしつうえ、「雲白」を「雲白し」(くも白しじろし)とくんぜず、誤っあやまって「白き雲」と訓読くんどくした《検証例けんしょうれい1》と同様どうよう過誤かごにほかなりません。

前述ぜんじゅつのとおり、復文ふくぶんによる検証法けんしょうほうは、訓読くんどく慣習かんしゅう反すはんす誤りあやまり解釈かいしゃく上のうえの誤りあやまりについては効果こうか見込めみこめません。しかし、その限界げんかいをわきまえて用いもちいれば、この検証法けんしょうほうは、訓読くんどく誤謬ごびゅう明確めいかく指摘してきすべく、有力ゆうりょくこのうえない説明せつめい手段しゅだんになるでしょう。読者どくしゃ各位かくいにおいても、さらに創意そうい工夫くふう加えくわえつつ、さまざまな場面ばめん応用おうよう試みこころみてください。

中文翻譯

以《論語》「有朋自遠方來,不亦樂乎」為例,展示語序驗證法的應用。前半「有朋自遠方来」有 a・b 兩種合法訓讀:a「朋の遠方より来たる有り」(N之V型),b「朋有り遠方より来たる」。兩種皆文法合理,均可接受。

然而若如 c 訓為「遠方より来たる朋有り」,則違反《修飾原則》。検証例5:依 c 書き下し文「遠方より来たる朋有り」復文→「有自遠方来朋」,與原文「有朋自遠方来」不符→錯誤。其性質與検証例1(「雲白」誤讀為「白き雲」)相同——「自遠方来」不能向上修飾「朋」。

小結:復文驗證法對「文法性訓讀錯誤」(語序與修飾關係錯誤)最為有效,但對慣例性和解釋性錯誤無效。在理解其局限的前提下善加運用,即可成為訓讀糾錯的有力說明工具。

漢文訓読体かんぶんくんどくたい読解法どっかいほう——〔V/O〕変換へんかん活用かつようpp. 292–296

もう一つひとつ復文ふくぶん実用性じつようせい発揮はっきされるのは、漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょう閲読えつどくするときです。今日きょう、「〜せざるべからず」「況んや〜に於てをや」のごとき漢文かんぶん訓読くんどく調ちょう言い回しいいまわしをちりばめた日本語にほんご綴るつづるにんはほとんどいないでしょう。けれども、幼少期ようしょうきから漢文かんぶん学習がくしゅう励みはげみ自らみずから漢文かんぶん書けかけるだけの実力じつりょく身にみにつけていた幕末ばくまつ明治めいじ知識ちしきにんたちは、あたかも漢文かんぶん訓読くんどくしたような文章ぶんしょう書くかくのが一般いっぱんでした。その漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょう読むよむさいにも、復文ふくぶん技術ぎじゅつ有効性ゆうこうせい発揮はっきするのです。

漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょうは、あくまで日本語にほんごとして綴らつづられたものですから、原文げんぶんとしての漢文かんぶん存在そんざいしません。したがって、原文げんぶん突き合わつきあわせて正しいただしい否かいなか確認かくにんするじゅつがないので、やみくもに復文ふくぶん試みこころみても徒労とろう終わりおわります。けれども、わかりづらい表現ひょうげん出くでくわしたり、今一ついまひとつ解釈かいしゃく自信じしん持てもてない言い回しいいまわし出逢っであったりしたとき、復文ふくぶんによって漢文かんぶん変換へんかんしさえすれば、ただちに問題もんだい解決かいけつすることが少なくすくなくありません。

典型てんけいは、「〜を…す」しき表現ひょうげん理解りかい行きいき届かとどかないときです。なにやら意味いみがはっきりしない「〜を…す」しき表現ひょうげん出逢っであったときには、〔V/O〕変換へんかんをほどこして一つひとつ漢語かんご仕立てしたて、それを漢和辞典かんわじてん調べしらべればよいのです。

たとえば、福沢ふくざわ諭吉ゆきち学問がくもんのすゝめ』(三編さんへん)に見えみえ次のつぎの一節いっせつはどうでしょうか。

 国内こくないことなればうさぎかくもなれども、一旦いったん外国がいこく戦争せんそうなどのことあらばその不都合ふつごうなること思ひおもひ見るみる可しべし無智むち無力むりょくしょうたみなどとうにすることも無かなか可けべけれども、我々われわれ客分きゃくぶんのことなるゆゑ一命いちめいるは過分かぶんなりとて逃げにげ走るはしるもの多かおおか可しべし

                  (《福沢諭吉全集》第三だいさんかんぺーじ

問題もんだいは「戈を倒にす」です。〔V/O〕変換へんかん加えくわえて「倒戈」とし、漢和辞典かんわじてん引けひけば「味方にそむく、裏切る、寝返る」だとわかります。出典しゅってんは「まえとうこうのちいちきた血流けつりゅうひょうきね」(まえとうにし、のち攻めせめ以てもてきたげ、血流けつりゅうれてきね漂はただよはす/『書経しょきょうたけしせい)。これを当てあてはめれば、「戈を倒にすることも無かる可けれども」」「さすがに自国の軍を裏切るようなことはないだろうが」となり、下文かぶん「逃げ走る者多かる可し」へとつながります。

「戈を倒にす」は大型おおがた国語こくご辞典じてんにも載っのっていますが、たとえば久米くめ邦武くにたけ米欧べいおう回覧かいらん実記じっき』(明治めいじ十一じゅういちねん〔1878〕)に現れあらわれる「朽を拉す」「級を拾ふ」などは、〔V/O〕変換へんかん得らえられた「拉朽」や「拾級」を漢和辞典かんわじてん調べしらべなければ、とてもらち明きあきません。

みぎのごとく、復文ふくぶん技術ぎじゅつは、漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょう読解どっかいにとって非常にひじょうに有効ゆうこう手段しゅだんとなります。日本語にほんごとして書かかかれている字句じくをわざわざ復文ふくぶんによって漢文かんぶん変換へんかんするのですから、何だなんだ無駄骨むだぼね折っおっているようですが、それが漢文訓読体かんぶんくんどくたいという文体ぶんたい読みよみ解くとく一つひとつ手堅いてがたい方法ほうほうである以上いじょう読み手よみてとしては致し方いたしかたありません。

そのほか、打消うちけし助動詞じょどうし「ず」が否定ひていする内容ないよう正確せいかく捉えとらえるべく復文ふくぶんをほどこして否定ひてい副詞ふくし「不」がどこに位置いちするかを考えかんがえることが有益ゆうえき場合ばあいもありますし、いくつかの解釈かいしゃく可能性かのうせい存在そんざいすることを見抜くみぬくために、復文ふくぶんによって数種すうしゅ漢文かんぶん想定そうていする作業さぎょう効果こうか発揮はっきする場面ばめんもあります。さらなる興味きょうみ抱くだく向きむきは、拙著せっちょ日本にっぽん近代史きんだいし学ぶまなぶための文語ぶんごぶん入門――にゅうもん――漢文訓読体かんぶんくんどくたい地平ちへい』(吉川よしかわ弘文ひろふみかん平成へいせい二十にじゅう五年ごねん〔2013〕)を参照さんしょうしていただければ幸いさいわいです。

中文翻譯

復文技術的另一實用場合:閱讀漢文訓讀體文章。幕末〜明治知識人慣以漢文訓讀調書寫,今日讀者已難直覺理解。對語意模糊的「〜を…す」式表現,可透過〔V/O〕變換還原漢語詞彙,再查漢和辭典即可解決。

典型例子:福澤諭吉《學問のすゝめ》中「戈を倒にす」——施以〔V/O〕變換得「倒戈」,查漢和辭典知其意為「背叛、倒戈」。出典:《書經·武成》「前徒倒戈,攻于後以北,血流漂杵」。代入語境:「さすがに自国の軍を裏切るようなことはないだろうが」,與下文「逃げ走る者多かる可し」自然銜接。

又例如久米邦武《米歐回覧實記》中的「朽を拉す」→「拉朽」、「級を拾ふ」→「拾級」,同樣需藉助〔V/O〕變換後查漢和辭典方能理解。

此外,「ず」所否定的範圍、同一文面可能對應複數漢文的情況等,亦可透過復文加以分析。詳見著者另著《日本近代史を學ぶための文語文入門》(吉川弘文館,2013)。

付録ふろく往時おうじ復文問題ふくぶんもんだい——第一期だいいっき 江戸えど漢学塾かんがくじゅく時代じだいpp. 297–304

本書ほんしょ「はじめに」で紹介しょうかいした復文ふくぶん略史りゃくし実例じつれいでたどるべく、若干じゃっかん説明せつめいとともに、いくつか復文ふくぶん問題もんだいをお目にめにかけましょう。往時おうじ復文練習ふくぶんれんしゅう水準すいじゅん雰囲気ふんいき感じかんじ取っとってもらえれば幸いさいわいです。

1 伊藤仁斎いとうじんさい東涯とうがい父子ふし

東涯とうがいは「訳文法式やくぶんほうしき」で、復文ふくぶん用いもちい書き下し文かきくだしぶんを「訳文やくぶん」と呼びよび復文練習ふくぶんれんしゅう生じしょうじやすい誤りあやまりを「錯置〔顛倒〕」「妄填〔謬字〕」「剰添〔衍字〕」「漏逸〔脱字〕」のたね分けわけました。「錯置〔顛倒〕」は語順ごじゅん逆ささかさまにしてしまう誤りあやまり。「妄填〔謬字〕」は主としゅとして同訓異字どうくんいじ関わかかわ誤りあやまり指しさします。「剰添〔衍字〕」は必要ひつようのない書き加えかきくわえ誤りあやまり言いいい、「漏逸〔脱字〕」はその逆にぎゃくに必要ひつよう書きかき落とおと誤りあやまり意味いみします。

残念ざんねんながら、仁斎じんさい東涯とうがい自らみずから記ししるし復文問題ふくぶんもんだい伝わつたわっていません。ただし、仁斎じんさい門人もんじんであった林義端はやしぎたん編纂へんさんによる『文林良材ぶんりんりょうざい』(元禄げんろく十四じゅうよんねん〔1701〕刊行かんこう首巻しゅかんの「訳文式例やくぶんしきれい」に、仁斎じんさい東涯とうがい課しかし復文問題ふくぶんもんだい実態じったい窺ううかがう足るたる実例じつれい二つふたつ載っのっています。

いまだいのうちの一つひとつ掲げかかげてみます。原文げんぶんぜんひゃくきゅう十一字じゅういちじ及ぶおよぶ長文ちょうぶん問題もんだいですので、ここでは初めはじめしち十一字じゅういちじふん当たあた書き下し文かきくだしぶんだけを抜き出すぬきだすことにしましょう。句読点くとうてん加えくわえ仮名遣かなづかいは歴史的仮名遣れきしてきかなづかいいに統一とういつし、適宜てきぎ濁点だくてん付けつけておきます。文中ぶんちゅうの「〇」は注意ちゅういすべき助字じょじ入るいることを示すしめす記号きごうです。

問題もんだい書き下し文かきくだしぶんぜんしち十一字じゅういちじ

 なにかんニオイテ同姓どうせいきんシトス。けん進士しんじテアゲラル、ワレニオイテドウゲフタリ。ソノタイガクニアルヤ〇、ワレハクシタリ、けんセイイタリ、セイハクシドウダウタリ。ソノけんヲシルヤ〇十年じゅうねん、コジンタリ。ドウセイニシテきんキナリ、ドウゲフナリ、ドウダウナリ、コジンナリ。ソノがんヲエズシテカヘルニオイテ、ソレテコトナカルベケンヤ〇。

一見いっけんしてわかるように、漢字かんじがきわめて少なくすくなく片仮名かたかな記さしるされた数多かずおおくの語句ごく自力じりき漢字かんじ改めあらためねばなりません。江戸時代えどじだい復文ふくぶんは、尋常じんじょうならぬ根気こんき集中力しゅうちゅうりょく要求ようきゅうされるたか難度なんど作業さぎょうだったのです。

確認かくにんよう訓読文くんどくぶん〕(〔唐〕韓愈かんゆ「送何堅序」)

 なにかん同姓どうせいためシトきんシ。けん進士しんじきょゲラル、われため同業どうぎょうそのざいがくヤ、われため博士はかせけんためなまなま博士はかせため同道どうどうそのしきけん十年じゅうねんため故人こじん同姓どうせいニシテきんナリ、同業どうぎょうナリ、同道どうどうナリ、故人こじんナリ。そのズシテがんルニ、そのケンカルげんコトじゃヤ。

2 山本北山やまもとほくざん作文志彀さくぶんしこう

北山ほくざんは、復文ふくぶんを「覆文」と記ししるしながらも、書き下し文かきくだしぶん伊藤いとう父子ふし同じおなじく「訳文やくぶん」と呼んよんでいました。北山ほくざん復文練習ふくぶんれんしゅう特にとくに注意ちゅういをうながしたのは、助辞じょじ助字じょじとも)と疑字ぎじです。助辞じょじは「也・矣・焉・哉・乎」など置き字おきじとして扱わあつかわれることが多いおおい文末助詞ぶんまつじょしるい指しさします。疑字ぎじとは「見る・視る・観る・矚る」「是れ・此れ・之れ・斯れ」など、同訓異字どうくんいじのことです。

北山ほくざん作文志彀さくぶんしこう』(安永あんえい八年はちねん〔1779〕刊行かんこう)に見えみえ復文ふくぶんのための書き下し文かきくだしぶん以下いか掲げかかげてみます。本来ほんらい原文げんぶんにしてぜん三百さんびゃく二字にじ及ぶおよぶ長文ちょうぶん問題もんだい北山ほくざんが「通計つうけい二百にひゃくあり二字にじ」とするのは誤記ごき)ですが、前半ぜんはん九十きゅうじゅう六字ろくじふんだけを切り出しきりだしておきましょう。北山ほくざんの「訳文やくぶんほう」」復文ふくぶん出題形式しゅつだいけいしき知るしるには十分じゅうぶんだろうと考えかんがえます。

問題もんだい書き下し文かきくだしぶんぜん九十きゅうじゅう六字ろくじ

 せいにん一妻いっさいいちめかけニシテしつところをるものありリ。その良人おっとしゅつルトキハひつ酒肉しゅにくシテのちニ□〔①〕。そのつま□トモニ飲食いんしょくスル*ところものとんとへバ、のりチ*じん富貴ふうきナリ。そのつまそのめかけこくつげテいわくク「良人おっとしゅつルトキハひつ酒肉しゅにくシテのちニ□。その□トモニ飲食いんしょくスルものとんとへバ、じん富貴ふうきナリ、□シカモひつじしょうかつてけんあらハタルものありらいズ。□ワレしょうまさニ良人おっとノ□ユクところヲ□カガハントス〇〔②〕」。のみつとニテ、ななめニ良人おっとノ□ユクところニ□シタガフ。国中くにじゅうヲ□アマネクシテ、□トモニりつだんスルもの□ナシ。

*「*所ノ」「*尽ク」は脱字だつじ補充ほじゅう。□は疑字ぎじ同訓異字どうくんいじ自力じりき判断はんだん)、〇は助字じょじ(①②の割注わりちゅう参照さんしょう)。
①「帰・反・還」など何れいずれ選ぶえらぶか——疑字ぎじ工夫くふう。②助字じょじ「也・矣・焉」など何れいずれ選ぶえらぶか——助字じょじ工夫くふう

確認かくにんよう訓読文くんどくぶん〕(『孟子もうし離婁りろうした/〔宋〕朱熹しゅきかき集注しゅうちゅう所載しょさい本文ほんぶん

 せいにんあり一妻いっさいいちめかけニシテところしつものその良人おっとしゅつヅルトキハのりひつ酒肉しゅにくシテのちはんル。その妻問つまどいその飲食いんしょくスルところものヲ、のりじん富貴ふうきナリ。そのつまこくゲテそのめかけいわくハク、「良人おっとしゅつヅルトキハのりひつ酒肉しゅにくシテのちはんル。とんヘバその飲食いんしょくスルものヲ、じん富貴ふうきナリ、シカモひつじしょうありけんタルものらいタル。われワレしょうハント良人おっとゆきところゆきユクト」。のみキテ、ナメじゅうヒテ良人おっとゆきところゆきユク。国中くにじゅうヲ、りつだんスルもの

3 皆川淇園みながわきえん習文録しゅうぶんろく初編しょへん

淇園きえんは、復文ふくぶんを「射覆文しゃふくぶん」と称ししょうし書き下し文かきくだしぶん集めあつめたものを「読譜」と名づなづけていました。「射覆文しゃふくぶん」とは、仮名かな隠さかくされた漢字かんじ射ていて原文げんぶん復元ふくげんする意味合いみあいではなかったかと推測すいそくされます。「読譜」と呼ぶよぶのは、漢文かんぶん訓読文くんどくぶん誰かだれか読み上げよみあげてもらい、それを写しうつし取っとっ書き下し文かきくだしぶん一定いってい順序じゅんじょ並べならべたものだからです。

習文録しゅうぶんろく初編しょへん安永あんえい三年さんねん寛政かんせい三年さんねん〔1774-91〕刊行かんこう?)には、誤答ごとうれい挙げあげ誤りあやまり軽重けいちょう判定はんていしたり、成績せいせき基準きじゅん表をあらを掲げかかげ優秀者ゆうしゅうしゃ等級とうきゅう分けわけしたりする内容ないよう見えみえるのですが、ここではすべて省略しょうりゃく従いしたがいぜん五十ごじゅうだい平均へいきんひゃく十一字じゅういちじ)のなかからいちだい示すしめすことにしましょう。

淇園きえん五音ごいん「宮・商・角・徴・羽」に十干じっかん組み合わせくみあわせ番号ばんごうぜん五十ごじゅうだい整理せいりしています。原文げんぶんぜんひゃく五字ごじ問題もんだい「羽丁」から冒頭ぼうとう七十しちじゅう五字ごじふんだけを示ししめします。

問題もんだい書き下し文かきくだしぶんぜん七十しちじゅう五字ごじ

 蘇軾そしょくみつヨリじょニウツルトキニ、かわそうむらかいけつス。城下じょうかニオイテ富民ふみんアラソヒイデテみずヲサク。しょくイハク「ワレここニアリ。水ハ決シテ城ヲヤブルコトヲイタサジ」ト。カリテマタイラシメテミヅカラつえさくシテ武営たけなかニイリ、そつちょうヲヨンデコレニツゲテイハク「事急ナリ。禁卒トイヘドモ、カツワガタメニ力ヲツクセ」。そつちょうイハク「太守塗潦ヲサケズ。ワガナミアヘテ命ヲイタサザランヤ」。

確認かくにんよう訓読文くんどくぶん〕(〔明〕はんゆうりゅう康済こうさいかん「勤慎」)

 蘇軾そしょくみつウツルじょときニ、かわけつそうむらかいニ。オイテ城下じょうか富民ふみんそうしゅつデテみずヲ。しょくいわくク、「吾在リ於此ニ。水ハ決シテ不レ致サ毀壊ヤブルコトヲ城ヲ」。リテ使メテふくにゅうつえさくシテにゅう武営たけなかニ、ンデそつちょうこくゲテゆきいわくク、「事急ナリ矣。雖モ禁卒ト、且ツ為タメニ我ガ尽クセ力ヲ」。そつちょういわくク、「太守不レ避ケ塗潦ヲ、吾儕敢ヘテ不ザランヤ効イタサ命ヲ」。

中文翻譯

〈附錄〉介紹歷史上的復文問題實例,以感受不同時代復文練習的水準與氛圍。

第一期:江戶=漢學塾時代(pp.297–304)

①伊藤東涯「訳文法式」四種誤謬:錯置〔顛倒〕・妄填〔謬字〕・剰添〔衍字〕・漏逸〔脱字〕。林義端《文林良材》(1701)保存韓愈「送何堅序」前71字之片假名書き下し文,幾無漢字,展示江戶復文之高難度。

②山本北山《作文志彀》(1779):稱復文為「覆文」,以□標疑字(同訓異字)、〇標助字,由學生自行判斷。問題為《孟子》「齊人一妻一妾」章前96字,同樣以片假名書き下し文出題。出典:朱熹《四書集注》本《孟子》離婁下。

③皆川淇園《習文録》初編(1774–91):稱復文為「射覆文」,書き下し文為「読譜」。全50題(平均111字),此取「羽丁」題前75字——蘇軾守徐州治水故事。□・〇雖不標,疑字・助字仍須學生自行判斷。出典:潘游龍《康済譜》巻五「勤慎」。

付録ふろく往時おうじ復文問題ふくぶんもんだい——第二期だいにき 明治めいじ戦前せんぜん文検ぶんけん時代じだいpp. 305–310

1 文検ぶんけん

文検ぶんけん復文問題ふくぶんもんだい一つひとつ紹介しょうかいしてみましょう。大正たいしょう五年ごねん〔1916〕第三だいさんじゅうかい予備よび試験しけん〉の問題もんだいです。江戸時代えどじだい問題もんだい比べくらべると、漢字かんじ数多かずおお記さしるされ、復元ふくげんすべき原文げんぶん字数じすう短くみじかく、はるかに柔やにこやわな印象いんしょう免れまぬかれません。

問題もんだい書き下し文かきくだしぶん全二ぜんじじゅう七字しちじ大正たいしょう五年ごねん第三だいさんじゅうかい予備よび試験しけん

 さい難きがたきにあらず自らみずからようふるところのものの実にじつに難しむずかし惜いおしいかな賈生かせい王者おうじゃにして自らみずからそのさいようふるのうはざるや

解答かいとう確認かくにんよう訓読文くんどくぶん〕(〔宋〕蘇軾そしょく「賈誼論」)

非才ひさいゆきなん所以ゆえん自用じようものなんせき賈生かせい王者おうじゃゆき不能ふのう自用じようそのさい

確認かくにんよう訓読文くんどくぶんさいゆきなんキニ。ところユヱンようフルものモノ、なんシ。せきシキカナ、賈生かせい王者おうじゃゆきニシテ、のうようフルそのさい

参考さんこうまでに、同じおなじ大正たいしょう五年ごねん第三だいさんじゅうかいほん試験しけん〉の漢作文かんさくぶん問題もんだい掲げかかげてみます。「本年十一月三日立太子式を行はせらるるに付き……」(全文ぜんぶん裕仁ひろひと親王しんのうりつ太子たいしれい関わかかわ内容ないよう)。これは漢文訓読体かんぶんくんどくたい文章ぶんしょうであり、「参集せしめて」「行はしめ」などの使役形しえきけい正しくただしく組み立てらくみたてられるか否かいなか要点ようてんでした。

大正たいしょう六年ろくねん〔1917〕には「光陰可惜」のだいひゃく以内いない漢作文かんさくぶん大正たいしょう七年ななねん〔1918〕には二百にひゃく以内いない拡大かくだいし、「国文こくぶんきゅう漢文かんぶんから「漢文かんぶん独立どくりつした大正たいしょう十年じゅうねん〔1921〕からは三百さんびゃく以内いないにまで増加ぞうかしました。文検ぶんけん合格ごうかくして漢文かんぶん教えおしえるには、きわめて高いたかい水準すいじゅん学力がくりょく必要ひつようとされたのです。

2 漢文かんぶん教科書きょうかしょ

漢文かんぶん教科書きょうかしょにもときおり復文ふくぶん問題もんだい載っのっていました。まず、明治めいじ三十さんじゅう五年ごねん(1902)刊行かんこう国語こくご漢文かんぶん研究会けんきゅうかい〔編〕『中等ちゅうとう漢文かんぶん教科書きょうかしょ』(明治めいじ書院しょいん)に見えみえ問題もんだいです。

問題もんだい1〕書き下し文かきくだしぶんぜん三十さんじゅう七字しちじ

 明治めいじ二十にじゅう七年ななねん征清せいしんぐんきょうリ、清国しんこくだいはいル。明年みょうねん清国しんこく使けんつかはシテ、せいヒ、せんメ、台湾たいわんわれセシム。これこれヨリぜんしまわれ版図はんとはんとトためリヌ。

解答かいとう確認かくにんよう訓読文くんどくぶん

明治めいじ二十にじゅう七年ななねん征清せいしんぐんきょう清国しんこく大敗たいはい明年みょうねん清国しんこく遣使けんしせいせん台湾たいわんわれこれぜんしまためわれ版図はんと

確認かくにんよう訓読文くんどくぶん明治めいじ二十にじゅう七年ななねん征清せいしんぐんきょうリ、清国しんこくだいはいル。明年みょうねん清国しんこくけんシテ使ヲ、せいヲ、せんヲ、台湾たいわんセシムわれニ。これぜんしまためリヌわれ版図はんとト。
※「為リヌ」の「ヌ」は完了かんりょう助動詞じょどうし「ぬ」(現行げんこう訓読くんどくでは「為ル」または「為レリ」)。

続いつづいて、昭和しょうわ二年にねん(1927)刊行かんこう深井ふかいかん一郎いちろう〔編〕『選定せんてい中等ちゅうとう漢文かんぶん』(たからぶんかん)に見えみえ穏当おんとう問題もんだい

問題もんだい2〕書き下し文かきくだしぶんぜん三十さんじゅう五字ごじ

 てんノ(ゆきにんくにぼうス、そのはいひつズヤさとるノ(ゆききゅうバザルところニ(しゅつヅ。聖人せいじん天下てんかためムル、さとるンデらんぼうガズ。そのらんキノ(ゆきみちムノミ(みみ)。

( )ない復元ふくげんすべき漢字かんじ予めあらかじめ示ししめし親切しんせつ仕掛けしかけ

解答かいとう確認かくにんよう訓読文くんどくぶん〕(〔宋〕蘇軾そしょく「秦始皇扶蘇論」/しゃほう〔編〕『文章ぶんしょう軌範きはん所載しょさい本文ほんぶん

てんゆきぼう人国じんこくそのはいひつしゅつ智之ともゆきところ不及ふきゅう聖人せいじんため天下てんかさとるぼうらんそのらんゆきみちみみ

確認かくにんよう訓読文くんどくぶんてんゆきぼうボスにんくにヲ、そのはいひつズヤしゅつ智之ともゆきところきゅうバ。聖人せいじんためムル天下てんかヲ、不二ふじンデさとるぼうらんいちそのらんゆきみちみみノミ。

以上いじょう、わずかな実例じつれいですが、長短ちょうたん難易なんいこそあれ、それぞれ出題形式しゅつだいけいしき工夫くふうをこらしていたありさまがわかると思いおもいます。こうした先人せんじん遺業いぎょう受け継ぎうけつぎ漢文かんぶん学習法がくしゅうほうとして復文ふくぶん現代げんだい再生さいせいさせんとすることこそ、本書ほんしょ意図いとにほかなりません。

中文翻譯

第二期:明治〜戰前=文検時代(pp.305–310)

①文検(中等教員資格考試):大正5年(1916)第30回預備試驗,蘇軾「賈誼論」前27字的書き下し文——論賈誼才能無法自用之嘆,採漢字・平假名交じり格式。解答:「非才之難所以自用者実難…」。同年本試驗又出漢文訓讀體「立太子式」漢作文(裕仁親王立太子禮相關)。大正6–10年,文検漢作文字數從100字增至300字,水準極高。

②漢文教科書:a.《中等漢文教科書》(明治35年,1902)「征清軍」37字——日清戰爭的日方立場簡述,包含使役形「帰セシム」;末尾「為リヌ」的「ヌ」為完了助動詞(現代訓讀作「為リ」或「為レリ」)。b.《選定中等漢文》(昭和2年,1927)蘇軾「秦始皇扶蘇論」35字——括弧內預先標示應填之字(之・於・耳等),格式親切,旨在訓練置き字與「之」的判斷。

結語:各時代各有巧思,共同目的均為訓練學生從書き下し文還原漢文的能力——傳承這一學習遺產,正是本書的主旨所在。

あとがきpp. 311–313

今日きょう復文ふくぶんは、ほとんど忘れわすれかけられている学習法がくしゅうほうだろうと思いおもいます。漢文かんぶん関係かんけいもののあいだこそ往時おうじ学習法がくしゅうほうとして知らしられてはいるものの、学生がくせいはもちろんのこと、いわゆる学者がくしゃでも、特にとくに漢文かんぶん関心かんしんのないにんたちとはなし交わまじわしながら「復文ふくぶん」をくちにすると、同音どうおんの「複文ふくぶん」と取り違えとりちがえられて、はなし混乱こんらんすることも少なくすくなくありません。もはや漢文学習かんぶんがくしゅうにまつわる「復文ふくぶん」よりも、英語えいご学習がくしゅう関わかかわる「複文ふくぶん」のほうが優先ゆうせんして脳裡のうり浮かうか時代じだいなのです。

高校こうこう漢文かんぶんでまったく復文ふくぶん教えおしえず、そもそも教えおしえ時間じかん余裕よゆうもなく、したがって大学入試だいがくにゅうしでも出題しゅつだいされず、となれば、やはり高校こうこう漢文かんぶん教えおしえ必要ひつようもなく……。そのような悪循環あくじゅんかん陥っおちったまま、復文ふくぶんという学習法がくしゅうほう見殺しみごろしにされつつあるのではないでしょうか。せめて高校こうこう復文ふくぶん基礎きそさえ教えおしえてくれれば、漢文かんぶん問題もんだいぶんいち部分ぶぶんだけを書き下し文かきくだしぶんにして示ししめし、それを復文ふくぶんさせる入試にゅうし問題もんだい可能かのうだと思いおもいます。

本書ほんしょは、いわゆる句形くけい練習れんしゅうをほとんど扱っあつかっていません。句形くけいそのものよりも、通常つうじょう語順ごじゅん組み立てくみたててゆく作業さぎょうこそ、最ももっとも肝腎かんじん基礎きそだと考えかんがえるからです。句形くけいのうち取り上げとりあげたのは使役形しえきけい受身形うけみけいくらいなものです。しかし、本書ほんしょ掲げかかげ総計そうけいひゃく二十にじゅうだいをこなせば、基礎力きそりょく十分じゅうぶんようわれるはず。練習問題れんしゅうもんだい半数はんすう以上いじょう最ももっとも馴染み深いなじみぶかい漢籍かんせき論語ろんご』から採っとってありますので、何かなにか必要ひつよう場合ばあいは、すぐに原文げんぶん解釈かいしゃく確認かくにんできるでしょう。

本書ほんしょ例外れいがい的なてきな構文こうぶん扱っあつかっていません。標準的ひょうじゅんてき語順ごじゅん副っそっ例文れいぶんばかりです。まずは基礎きそ固めかため——丸暗記まるあんきするしかなく、応用おうよう利かきか構造こうぞうぶん一つひとつ出題しゅつだいしませんでした。逆にぎゃくに言えいえば、各種かくしゅ句形くけいにせよ、難度なんど高いたかい構造こうぞう文章ぶんしょうにせよ、復文ふくぶんにはまだいくらでも学習がくしゅう進展しんてんさせる余地よちがあるわけです。

復文ふくぶん学習がくしゅう効果こうか魅力みりょく感じかんじ、さらに実力じつりょく向上こうじょうさせたい方々かたがたには、白川しらかわせい字通じつう』(平凡社へいぼんしゃ平成へいせい八年はちねん〔1996〕)を最良さいりょう復文練習ふくぶんれんしゅうかきとして薦めすすめます。この漢和辞典かんわじてん例文れいぶんすべてを書き下し文かきくだしぶんのみで掲げかかげています。復文練習ふくぶんれんしゅうにまさに打っうってつけの体裁たいさいだと言っていってよいでしょう。復文ふくぶん作業さぎょう通じつうじ例文れいぶん書き下し文かきくだしぶんから原文げんぶん復元ふくげん試みこころみ出典しゅってん調べしらべ確認かくにんする――かずだい練習れんしゅうしてみれば、復文ふくぶん技術ぎじゅつばかりか、出典しゅってん調査ちょうさ要領ようりょうまで体得たいとくできるのですから。文字もじどおり一挙両得いっきょりょうどくです。

漢文かんぶん学習法がくしゅうほうとして、なかんづく語順ごじゅん対するたいする感覚かんかく磨きみがき文法ぶんぽう知識ちしき定着ていちゃく図るはかる手段しゅだんとして、復文ふくぶん広くひろく活用かつようされることを願っねがっ已みやみません。

  平成へいせい二十にじゅう九年きゅうねん三月さんがつ二十にじゅう六日むいか  ちょ もの 

中文翻譯

後記:復文如今幾乎被遺忘——在漢文圈外,「復文(ふくぶん)」常被誤解為語言學術語「複文(ふくぶん)」。高中漢文教學中已無暇教授復文,大學入試亦不考,由此形成惡性循環。著者認為,即便是選擇題形式,若出題者能在漢文文章中截取一段以書き下し文呈現要求復文,在現行入試制度下亦完全可行。

本書不涉及句型(句形)的專門練習,著眼於正常語序的組建能力——這才是最根本的基礎。百二十題中逾半數取材《論語》,方便查閱核對。書中不收例外構文,全書聚焦可反復類推的標準語序。

進階推薦:白川静《字通》(平凡社,1996)——此漢和辭典所有例句僅以書き下し文呈現,完全不附白文,是復文練習的絕佳素材。透過復文→查出典→核對,可同時培養復文技術與文獻檢索能力,一舉兩得。

著者期望復文作為訓練語序感覺、鞏固文法知識的學習手段,能在現代重獲廣泛應用。(平成29年3月26日 著者記)

22px