これならわかる復文の要領 ―― 漢文学習の裏技 ――
凡例pp. 13–15
- 一本書の対象は、狭義の漢文に関する復文に限定し、漢詩の復文は扱わない。
- 二復文という一種の技術の習得に内容を限定し、特に必要がないかぎり、各文の解釈には踏み込まない。また、歴史・思想・宗教など、漢文の文化背景にも言及しない。
- 三文法用語は、できるかぎり英文法および文語文法の用語に限定し、漢文法に独特の用語はなるべく使わないようにした。たとえば、「補語」は、標準的な英文法にいう「補語」complement であり、一般の漢文法にいう「補語」(実はフランス語文法にいう「補語」complément の借用)とは異なる。また、現代中国語の文法用語(たとえば「程度補語」「兼語式」など)を援用することも避けた。そのため、文法については、あくまで英文法に基づく便宜上の説明・分析にとどまる場合もある。
- 四句形の復文については、使役形・受身形など、最小限の代表的な句形を扱うにとどめた。その他の句形の復文に関しては、いずれ読者各位が然るべき他書を用いて学習せんことを期待する。
- 五漢文訓読に不慣れな読者をも想定し、訓読文の置き字には「而」のごとく「∅」(数学で空集合を表す記号)を右傍に付け、訓読にさいして発音しないことを示す。
- 六漢字の字体は、常用字体を原則とする。
- 七「訓読」と「訓読み」については、送り仮名「み」の有無を以て表記を区別する。
文法用語 略号
| 略号 | 品詞 | 英語 |
|---|---|---|
| N | 名詞 | noun |
| V | 動詞 | verb |
| A | 形容詞 | adjective |
| adv | 副詞 | adverb |
| aux | 助動詞 | auxiliary verb |
| conj | 接続詞 | conjunction |
| part | 文末助詞 | particle |
| *便宜上の呼称で、文末のみならず、広く句末に位置する助詞をも含む。「也・耳・矣・焉」など。 | ||
| prep | 前置詞 | preposition |
構文要素
| 略号 | 構文要素 | 英語 |
|---|---|---|
| S | 主語・主部 | subject |
| *主語は広義に用い、中核となる名詞の修飾語句をも含めて主語と呼ぶ。主部は、主題提示語句と主語との組み合わせについてのみ用いる。 | ||
| P | 述語・述部 | predicate |
| *述語の集合を述部と呼ぶ。述部が一つの述語だけから成る場合もある。 | ||
| V | 動詞 | verb |
| O | 目的語 | object |
| DO | 直接目的語 | direct object |
| IO | 間接目的語 | indirect object |
| C | 補語 | complement |
| AJG | 形容詞句 | adjective group |
| M | 前位副詞句 | modifier |
| Q | 後位副詞句 | qualifier |
| AC | 副詞節 | adverbial clause |
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〔凡例〕
一 本書討論的對象限於狹義漢文的復文,不涉及漢詩的復文。
二 內容限於復文這一技術的習得,原則上不深入探討各句的解釋,也不涉及漢文的文化背景(歷史、思想、宗教等)。
三 文法術語盡量限於英文法及文語文法的術語,漢文法特有術語盡量不使用。例如,「補語」指標準英文法的「complement」,與一般漢文法所謂「補語」(實為法語文法「complément」的借用)含義不同。也避免援引現代中文文法術語(如「程度補語」「兼語式」等)。因此,文法說明上,有時僅止於以英文法為依據的便宜性說明與分析。
四 句形的復文,只涉及使役形、受身形等最具代表性的句形。其他句形的復文,期待讀者各自借助其他適當書籍加以學習。
五 為顧及對漢文訓讀不熟悉的讀者,置字的訓讀文附有「而∅」等形式,即在右側標注「∅」(數學中表示空集合的符號),表示訓讀時不發音。
六 漢字字體原則上採用常用字體。
七 「訓読」(訓讀)與「訓読み」(訓讀音),以送假名「み」的有無加以區別。
文法用語略號(品詞):N名詞、V動詞、A形容詞、adv副詞、aux助動詞、conj接続詞、part文末助詞(廣義含句末助詞,如「也・耳・矣・焉」等)、prep前置詞。
構文要素:S主語・主部、P述語・述部、V動詞、O目的語、DO直接目的語、IO間接目的語、C補語、AJG形容詞句、M前位副詞句、Q後位副詞句、AC副詞節。
復文とは何か?pp. 19–20
復文とは、与えられた書き下し文から、原文の漢文を復元する作業のことです。返り点のように語順の変換を指示する符号でもなければ、送り仮名のごとく漢字の読み方や語句どうしのつながり方を明示する文字でもありません。あくまで作業の名称であり、漢文を学習するための一つの方法なのです。
「復文」二字の訓読は、「書き下し文から原文を復元する」と考えれば「復レ文ヲ」(文を復す)、「書き下し文を原文に復元する」と解すれば「復ニ文ニ」(文に復す)となるでしょう。どちらでも差し支えありませんが、後者「書き下し文を原文に復元する」の「を」にも義理立てするなら、前者「復レ文ヲ」のほうが無難かもしれません。
つまらぬことながら、この「復文」という語は、うっかり「複文」と誤記しやすいので注意してください。「復」と「複」は、発音が同じ、字形も似ているため、つい混同しがちです。漢文学習にいう「復文」は「復元」の「復」で、「もどす」意。それに対して、英文法などで単文・重文と対比して用いる「複文」は「複雑」の「複」で、「入り組んだ」意です。
作業としての位置付けは、次のような流れ図を脳裡に描いておけばよいでしょう。わかりやすく「我読書」を具体例とします。
原文 =我読書 ↑
↓ |
訓読文 =我読レム書ヲ |
↓ |
書き下し文 =我書を読む ―――――――┘
復文
せっかく原文「我読書」に返り点と送り仮名を付けて訓読文「我読レム書ヲ」を作り、さらに日本語の語順に改めて書き下し文「我書を読む」を記しておきながら、それをわざわざ原文「我読書」に復元するのですから、何やら無駄骨を折っているようにも見えるでしょう。たしかに、復文は、これ見よがしに他人の面前で実践するような作業ではありません。しかし、それだけに、陰ながら漢文の実力を養うための重要な練習なのです。復文の技術を習得しているか否かによって、訓読の正確さが大きく左右される。復文の要領を理解していないと、自らの訓読の正誤が判別できず、誤りに気づかぬまま珍妙な訓読を連発してしまうおそれがあるのです。
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所謂「復文」,就是從給定的書き下し文(訓讀文)還原出原文漢文的一種作業。它既非像返り點那樣指示語序轉換的符號,也非像送假名那樣明示漢字讀音及詞句關係的文字,純粹是一種作業的名稱,也是學習漢文的方法之一。
「復文」二字的訓讀,若理解為「從書き下し文還原原文」,則為「復レ文ヲ」(復其文);若解為「將書き下し文還原為原文」,則為「復ニ文ニ」(復於文)。兩者均可,但若對後者也要有所交代,前者「復レ文ヲ」或許更為穩妥。
閒話少提,「復文」這個詞很容易誤寫為「複文」,請務必注意。「復」與「複」發音相同、字形相似,容易混淆。漢文學習所謂「復文」的「復」,取「復元」之義,意為「還原」;相對地,英文法等與單文、重文相對應的「複文」,「複」取「複雑」之義,意為「錯綜複雜」。
作為一種作業,可在腦海中描繪出如下的流程圖(以「我読書」為具體例):
〔流程圖〕原文「我読書」→(加返り點・送假名)→訓讀文→(改為日語語序)→書き下し文「我書を読む」→(復文作業)→還原原文
縱然費心將原文「我読書」加上返り點和送假名成為訓讀文,再依日語語序改為書き下し文「我書を読む」,又將其費力還原為原文「我読書」,看似費了一番無謂的功夫。誠然,復文不是那種刻意在他人面前展示的作業。但正因如此,它是默默磨練漢文實力的重要練習。是否掌握了復文技術,對訓讀的準確性影響甚大。若不理解復文要領,便無法判斷自身訓讀的正誤,可能在渾然不覺中連連錯讀。
無意識の復文作業pp. 21–22
漢文と聞くだけでも気が重いのに、さらに復文なぞという耳遠い語を持ち出されると、いっそう気が滅入るという向きがあるかもしれません。しかし、それは、ことさら意識するからそう感じるだけのことで、私たち日本人は、実のところ日常生活のなかで無意識のうちに復文作業を実践しているのです。本書の説く復文は、その作業を明確に自覚し、漢文学習法の一環として理論的かつ系統的に行おうとしているにすぎません。
たとえば、履歴書に「趣味」の欄があったとします。もし「山登り」と記してはみたものの、何となく「ハイキング程度か」と侮られるような気がしたら、「登山」と書き直すのではないでしょうか。日本語では「山登り」、漢語では「登山」。我々はこうした語順変換に慣れているのです。「酒を飲む」のだから「飲酒」、「曲を作る」のだから「作曲」、「罪を犯す」から「犯罪」、「毒に中たる」から「中毒」という具合。地図を書いたとき、鉄道路線をそのまま進むと「東京に至る」となれば、路線の切れめに「至東京」と記しますし、何かの料金を大人と子どもとに分けて定めてみたものの、大学生だけは大人に含めて扱おうと思い直せば、「大学生を含む」という意味で「大人(含大学生)」と書いたりする。我々は、日本語の〈目的語+動詞〉の語順が、漢語では〈動詞+目的語〉の語順になることを十分に理解しているのです。
また、「効きめが有る」となれば「有効」ですし、「風が無い」ときは「無風」でしょう。「足りない」から「不足」、「完全でない」から「不完全」と記すのも、似たような話ではありませんか。東京は上野公園にある池は、口では「忍ばずの池」と呼びながら、いざ書くとなれば「不忍池」。歯の「親知らず」は「親不知」とも記します。愛らしい紫色の花をつける「ワスレナグサ」(忘れな草)も、平気で「勿忘草」と書くでしょう。漢語では、存在に関わる「有」や「無」を上方に置き、否定を表す「不」や「勿」は否定すべき語に冠するのだと、私たちが無意識のうちに承知しているからなのです。
書き下し文「我書を読む」から原文「我読書」を復元する復文も、本質的にはまったく同じ作業にすぎません。もし「我書を読まず」ならば、たぶん「我不読書」(我不レ読二書一)になるだろうと見当がつくくらいの復文力は、誰もが識らず知らず身につけているわけです。
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一聽到「漢文」便覺沉重,何況還要引出「復文」這等陌生的詞彙,或許令人更加沮喪。然而,那不過是特別意識到才有此感受。實際上,我們日本人在日常生活中,早已在無意識中實踐著復文作業。本書所闡述的復文,不過是明確地自覺此一作業,並試圖作為漢文學習法的一環,以理論化、系統化的方式加以實施而已。
例如,履歷書上有「興趣」一欄,若填了「山登り」(登山),總覺得會被人輕視為「不過是爬山遊玩而已」,這時或許會改寫為「登山」吧。日語是「山登り」,漢語是「登山」。我們對這樣的語序轉換早已習以為常。「酒を飲む」→「飲酒」,「曲を作る」→「作曲」,「罪を犯す」→「犯罪」,「毒に中たる」→「中毒」,如此類推。地圖上若一條鐵路路線直走到底是「東京に至る」,就會在路線末端寫「至東京」;若某項費用分成大人和兒童,後來想把大學生也算進大人,就會寫「大人(含大学生)」。我們對日語〈目的語+動詞〉語序在漢語中變為〈動詞+目的語〉的規律,其實早已心領神會。
再如,「效きめが有る」(有效)→「有効」,「風が無い」(無風)→「無風」;「足りない」→「不足」,「完全でない」→「不完全」,也是同理。東京上野公園的池,口頭上叫「忍ばずの池」,下筆卻寫「不忍池」;「親知らず」(智齒)也寫作「親不知」;那可愛的紫色小花「ワスレナグサ」(勿忘草),也毫不猶豫地寫成「勿忘草」。這是因為我們在無意識中都知道:在漢語裡,與存在相關的「有」「無」置於前方,否定用的「不」「勿」冠於被否定的詞語之前。
從書き下し文「我書を読む」還原出原文「我読書」的復文,本質上也是完全相同的作業。若「我書を読まず」,大概會推算出「我不読書」——這種程度的復文能力,每個人其實都在不知不覺間已然具備。
何のために復文を学ぶのか?pp. 22–25
復文の最大の効果は、漢文の語順に対して敏感になることです。日本語の語順に改められた書き下し文「我書を読む」を、再び漢文すなわち古典中国語の原文「我読書」にもどすのですから、当然、日本語の語順「書を読む」を漢文の語順「読書」に組み換える語順変換作業が必要になります。それは、返り点と逆方向の作業だと言ってよいでしょう。「読書」の返り点「レ」は、漢文の語順「読書」を日本語の語順「書を読む」に組み換えるための符号なのですから。
もっとも、ここで「なぁんだい、返り点と逆の作業をやるだけか。語順変換の練習にすぎないわけだ」という声が挙がるかもしれません。たしかに、語順変換の作業それ自体には、あまり新鮮味が感じられないことでしょう。けれども、すでに誰か他の訓読者が付けてくれた返り点に従って漢文を読むのと、その返り点に従って日本語の語順に改められた書き下し文の語順を自ら変換しつつ原文に復元するのとでは、まさに雲泥の差と称しても過言ではありません。なぜなら、その語順変換作業すなわち復文は、漢文が持つ文法の核心に迫る行為だからです。
どぎつく言えば、漢文の語順は文法そのものであり、漢文の文法は語順しかありません。「一に語順、二に語順、三四がなくて、五も語順」こそ漢文に臨むさいの心得なのです。もちろん、「そんなこと、日本語でも英語でも同じではないか」との声も挙がるでしょう。けれども、何かと助詞や助動詞がまとわりついてくる「膠着語」の日本語や、動詞が時制や人称で変化する「屈折語」の英語とは異なり、単語が一切の語形変化を起こさず、常に一定の形を保って配置される「孤立語」の漢文すなわち古典中国語は、それだけ語順の占める比重が大きいのです。一つだけ例を挙げてみましょう。
〔日〕私は彼女を愛する。
〔英〕I love her.
〔漢〕我愛彼女(我愛二彼女一=我 彼の女を愛す)
それぞれ主語と目的語を入れ換えるには、どうすればよいでしょうか。日本語で言えば、主体である愛する人=「私」と、客体である愛される人=「彼女」とを交換する、つまり「彼女」が「私」を「愛する」意味に変えるわけです。
日本語は助詞によって各語の文法上の役割が明示されますので、単に助詞の「は」と「を」を入れ換えて「私を彼女は愛する」とすればよい。何となく不自然に聞こえるようでしたら、「彼女は私を愛する」と語順を変更しても、意味に変わりは生じません。
英語では〈I〉は主格、〈her〉は目的格ですから、単に両者を交換して〈Her love I.〉とすると、まともな英文として成り立たなくなってしまいます。両者を入れ換えるには、〈her〉を主格〈she〉、〈I〉を目的格〈me〉とし、さらには動詞〈love〉に三人称・単数・現在を表す〈s〉まで添えて、〈She loves me.〉としなければならない。
では、漢文はどうでしょうか。実のところ、作業は単純そのもので、ただ「我」と「彼女」を交換し、「彼女愛我」(彼女愛レ我=彼の女 我を愛す)とすればよいのです。「我」や「彼女」に何か添えたり変形を加えたりする必要はなく、主語が「我」から「彼女」に変わったからといって「愛」が姿を変えるわけでもありません。一切の変化を生じることなく、ただ語順だけが入れ替わるのです。
一見、漢文は最も与しやすいように見えますが、よくよく考えてみれば、これは恐ろしいことです。「我」と「彼女」が主格か目的格かを判断する手がかりは、つまり文意を正しく理解するための指標は、まさしく語順しかない。日本語と違って何の助詞もなく、英語とは異なり何らの語形変化も起こさないのですから。「我愛彼女」が「私は彼女を愛する」意になるのは、ひとえに「我愛彼女」という語順ゆえであり、「彼女愛我」が「彼女は私を愛する」意になるのも、もっぱら「彼女愛我」という語順であるからにほかなりません。
漢文にとって語順が重要だと言うのは、このような意味合いにおいてです。漢文の語順が日本語や英語に比べて極度に複雑だという話ではありません。意味を正しく理解するための手がかりが語順しかないということなのです。逆に言えば、語順に対する注意を怠ったが最後、漢文は総崩れ。どうせ見慣れた漢字なのだからと、あれこれ適当に扱き混ぜて文意を捏ね上げたりすると、訓読はでたらめをきわめ、とにかく漢字を並べさえすればよいのだろうという態度で臨んだりすれば、復文もめちゃくちゃになってしまいます。
漢文の語順に対する感覚を研ぎ澄ませること――これが復文という学習作業の出発点であり、同時に到達目標なのです。
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復文最大的效果,是對漢文的語序變得敏感。既然要將已轉為日語語序的書き下し文「我書を読む」再度還原為漢文即古典中文的原文「我読書」,自然需要將日語語序「書を読む」轉換為漢文語序「読書」的語序轉換作業。可以說,這與返り點是逆方向的作業。「読書」的返り點「レ」,正是將漢文語序「読書」轉換為日語語序「書を読む」的符號。
不過,也許有人會說:「不就是做和返り點相反的作業嗎,不過是語序轉換練習而已嘛。」誠然,語序轉換作業本身並無太多新鮮感。然而,跟著別人加好的返り點讀漢文,與自行將那已依返り點轉換為日語語序的書き下し文一邊轉換語序一邊還原原文——兩者之間,說是有雲泥之別也毫不誇張。因為這一語序轉換作業即「復文」,是逼近漢文文法核心的行為。
直白地說,漢文的語序就是文法本身,漢文的文法只有語序。「語序第一,語序第二,三四皆無,五亦語序」——這才是面對漢文的心得。當然也會有人說:「這不是日語和英語也一樣嗎?」然而,附綴著各種助詞助動詞的「黏著語」日語,或動詞因時態和人稱而變化的「屈折語」英語,與之不同,漢文即古典中文作為「孤立語」,單詞一切不發生語形變化、始終保持固定形態排列,因此語序所佔的比重更大。
〔日〕我愛她。
〔英〕I love her.
〔漢〕我愛彼女(我愛她)
若要分別將主語和目的語互換,日語只需交換助詞「は」和「を」,語序再行調整即可;英語則需將〈her〉改為主格〈she〉,〈I〉改為目的格〈me〉,並為動詞加上第三人稱單數現在式詞尾〈s〉,成為〈She loves me.〉;而漢文只需將「我」與「彼女」互換位置,成為「彼女愛我」即可,無需任何語形變化。
表面上漢文似乎最容易,但細想起來,這正是可怕之處。「我」與「彼女」是主格還是賓格,正確理解文意的標尺,正是語序,別無其他。一旦對語序疏忽大意,漢文就會全盤崩潰。
磨礪對漢文語序的感覺——這是復文學習作業的出發點,同時也是到達目標。
復文の効用pp. 26–28
では、復文には、どのような効用があるのか。復文という作業を通じて漢文の語順に対して鋭敏になると、いかなる効果がもたらされるのでしょうか。差し当たり、次の三つの点で有益かと考えます。
第一に、復文の作業それ自体がなかなか面白く、漢文の学習が楽しめるようになるでしょう。「Ⅱ 基礎篇」以下で問題に取り組んでみれば実感できると思いますが、復文はほとんどパズル感覚で楽しめる作業です。どの字をどこに置けば辻褄が合うのか――そうした試行錯誤を試みながら、しだいに原文を組み上げてゆく楽しさこそが、復文の醍醐味にほかなりません。漢文の学習は、とかく消極的な態度に陥りやすい。返り点に従って語句を上下に追い、送り仮名に合わせて漢字を読みつつ文意を考えるだけでは、自ら手を動かす場面がほとんどありませんし、漢和辞典なぞ面倒臭くて調べる気も起こらないでしょう。けれども、復文の練習は、取り敢えず自分の手を動かして書いてみなければ始まりませんので、どうしてもそれなりの積極性が要求され、能動的に取り組まざるを得ないのです。誤解を恐れずに言えば、いったん復文の技術を身につけておくと、単なる知的遊戯としても、なかなか楽しめるものと思います。
第二は、返り点の意味が十全に理解できるようになることです。なぜ語順を引っ繰り返さなければいけないのか、返り点を見ているだけでは容易に納得できないことも多いでしょう。なかには、返り点を、原文に湧いた目障りな虫ケラとしか感じられない向きすらあるようです。しかし、復文を実践してみれば、前述のとおり返り点とは逆方向の語順変換を行うのですから、なぜここに返り点が付き、どうしてそこに返り点を打たないのか、裏から十分に理解が行き届くようになり、返り点そのものがくっきり目に映ってくるに違いありません。こうなればしめたもの、漢文の実力が倍増したことは請け合いです。いわば返り点という存在の裏打ち作業として、復文練習は大いに役立つことでしょう。
第三は、自らの訓読について、文法上の正誤が判定できるようになることです。返り点付きの漢文を読んでいると、「そこではなく、ここに返り点を打って訓読してもよいのではないか」と感じることがあるでしょう。もちろん、たまたま白文を読むとなれば、どこに返り点を加えればよいのか、すべて自分の頭で考えねばなりません。そのようなとき、最も不安なのは「この読み方で正しいのだろうか?」という疑問のはずです。こうした事態に対処すべく、絶大な威力を発揮するのが復文にほかなりません。復文の技術を習得しておけば、文法違反の訓読は確実に防ぐことができるのです。これについては、一定量の知識が必要ですから、復文作業に慣れ親しんだ段階で説明することにしましょう。本書「Ⅴ 応用篇」の「訓読の検証法として」がそれに当たります。
右の三つは、復文が持つ当面の効用、すなわち短期的な有用性にすぎません。中期的には、訓読という方法そのものに習熟してゆく効用がある。長期的には、往時と同じく、漢文を自ら綴ることに資するだけの有効性も備えている。ただし、もはや漢文を書く必要がなくなった現在、取り敢えずは右の三項が果たされれば十分だと言えるでしょう。この三つだけでも、良いことづくめではないでしょうか。
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那麼,復文究竟有何效用?通過復文作業,對漢文語序變得敏感,能帶來什麼效果?大體而言,以下三點值得重視。
第一,復文作業本身頗為有趣,使漢文學習變得令人樂在其中。在「Ⅱ基礎篇」以下嘗試解題,便能切身體會:復文幾乎如同解謎,是一種令人愉快的作業。哪個字放在哪裡才合乎文理——邊反覆試錯,邊逐漸組建出原文,這份樂趣正是復文的醍醐味。漢文學習往往容易陷入消極態度。而復文練習,若不先自行動筆,根本無從開始,因此自然要求相當的積極性,不得不主動投入。冒著被誤解的風險說一句:一旦掌握了復文技術,即便作為單純的智識遊戲,也是相當值得享受的。
第二,能充分理解返り點的意義。為何非得顛倒語序不可,光看返り點有時難以信服,有些人甚至覺得返り點是原文上惹眼的害蟲。然而,實踐復文後,正如前述,復文是與返り點逆方向的語序轉換,因此何處加返り點、何處不打返り點,就能從反面充分理解,返り點本身也會清晰地映入眼簾。可以說,作為返り點這一存在的「底層驗證作業」,復文練習大有裨益。
第三,能對自身的訓讀作出文法上的正誤判定。閱讀帶有返り點的漢文,有時會感覺「不如在這裡而非那裡打返り點讀會不會更好」。若碰上白文,所有返り點都得自己動腦考慮。此時最大的不安,必是「這樣讀法對嗎?」應對此類情況,能發揮絕大威力的正是復文。掌握復文技術,便能確實防止違反文法的訓讀。本書「Ⅴ応用篇」的「訓読の検証法として」便是針對此點而設。
以上三點是近期效用。中期而言,有助於對訓讀方法本身日益熟練;長期而言,具備如往時一般自行撰寫漢文的充分有效性。在已無需書寫漢文的今日,只需達成上述三項即已足夠。光是這三點,難道不是好處多多嗎?
漢文の語順 — A 基本文型pp. 28–30
ここで、復文作業の前提として、我々が書き下し文から復元すべき漢文の原文がどのような語順になるのか、その基本構造を調べておきましょう。いざ復文に臨んでも、復元する漢文の語順を知らなければ、そもそも作業の進めようがないからです。ただし、漢文の基本構造を並べ立てるだけでは、単なる漢文法の学習に陥りかねません。我々の目的が復文にある以上、漢文の語順と書き下し文の語順との相違に着目しつつ、あくまで復文作業の視点から実践的な説明・注意を加えてゆきましょう。訓読文に付いている返り点を横目でながめつつ、原文を復元するのに必要な書き下し文の語順変換が返り点による語順変換と逆方向の作業であることを確認してください。
以下、基本文型と語間連結構造とに分けて説明します。
A 基本文型
漢文の基本文型は、おおむね英語の五文型に同じと考えて差し支えありません。細かく観れば、英語には見当たらない漢文特有の構文もあり、例外と呼べる構文もさまざまに存在します。けれども、差し当たり定型外の構文を気に病む必要はない。原則を知らなければ、例外だということすらわからないのですから。
以下、英語の五文型に則して説明を加えてゆきましょう。略号は、英語の場合とほぼ同じです。不安を感じるときは「文法用語 略号」(→p.14)を参照してください。漢文の文型を説明するとき、往々にして補語Cを英語の補語Cとは異なる意味合いで使うことがありますが、要らざる混乱を招きかねませんので、本書では英語の補語Cとまったく同じ意味で補語Cを用います。
五文型それぞれの主語Sを括弧に入れて「(S)」と記してあるのは、しばしば主語が省略されることを示します。「英語と大違いではないか!」と言うなかれ。「文脈から自明の主語を省く点は、日本語と同じである」と考えれば、かえって気楽なものでしょう。主語Sに下接する語句は、全体として述部Pを形成しますが、これは常識の範囲内でしょうから、取り立てて述部Pは示しません。
便宜上、例文に通し番号を付けてゆきます。例文の後方にある記号は、「*」が語法その他についての解説、「◎」が復文に関する説明・注意などを示します。
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在此,作為復文作業的前提,讓我們先來考察一下,從書き下し文所要還原的漢文原文具有怎樣的語序,以及其基本結構。若對要還原的漢文語序一無所知,復文作業根本無從著手。不過,若僅是列舉漢文的基本結構,恐怕會淪為單純的漢文法學習。既然我們的目的在於復文,就必須著眼於漢文語序與書き下し文語序的差異,始終從復文作業的視角進行實踐性說明與注意。請一邊橫眼瞄著訓讀文上的返り點,一邊確認:還原原文所需的書き下し文語序轉換,與返り點所作的語序轉換是逆方向的作業。
以下分為「基本文型」與「語間連結構造」兩部分加以說明。
A 基本文型
漢文的基本文型,大致與英語的五種文型相同,可以如此認識。細究起來,也有漢文特有的構文在英語中找不到,以及各種可稱為例外的構文,但暫時無需為定型外的構文煩惱。不知原則,便不知何為例外。
以下依英語五種文型逐一說明。略號與英語幾乎相同。若感不安,請參閱「文法用語略号」(→p.14)。說明漢文文型時,有時「補語C」的用法與英語的補語C意義有異,為避免造成不必要的混亂,本書中補語C與英語的補語C完全同義。
五種文型中,主語S加括號標注「(S)」,表示主語常被省略。請勿感嘆「這和英語差好多!」——若想成「與日語相同,文脈上自明的主語可省略」,反而輕鬆。主語S之後接的語句整體構成述部P,在常識範圍內即可理解,無需特別標出述部P。
為便於識別,對例文附上流水號。例文後的符號,「*」表示語法等方面的解說,「◎」表示與復文相關的說明・注意。
1 第一文型=(S)Vpp. 30–31
S V
01 孔子病 (孔子病ム)〇孔子=人名。
=孔子 病む。
◎書き下し文の語順を変換する必要はありません。
S adv V part
02 舟已行矣 (舟已ニ行ケリ矣∅)
=舟 已に行けり。
*「已~矣」は、動作の完了を表します。
◎副詞「已」をも含め、書き下し文の語順を変換する必要はありません。置き字「矣」については、「Ⅱ 基礎篇」で不安を解消しますので、御心配なく。以下、置き字に関しては、すべて同様です。
第一文型=(S)Vにおいて、復文のさいに主語と動詞を入れ換える必要はありません。
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| 01 | 孔子病む。→ 孔子病(孔子生病) |
| ◎書き下し文の語序無需轉換。 | |
| 02 | 舟 已に行けり。→ 舟已行矣(船已然離去) |
| *「已~矣」表示動作完成。 | |
| ◎包含副詞「已」在內,書き下し文語序無需轉換。置字「矣」詳見「Ⅱ基礎篇」。 |
第一文型=(S)V中,復文時主語與動詞無需互換。
2 第二文型=(S)V Cpp. 31–34
S V C
03 子游為武城宰 (子游為レ武城ノ宰ト)〇子游=人名。 〇武城=地名。
=子游 武城の宰と為る。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と補語、すなわち「武城の宰と為る」→「為レ武城宰」の部分です。
adv V C
04 常為名大夫 (常ニ為レ名大夫ト)
=常に名大夫たり。
*この「為」は繋辞 copula ですが、本書では連結動詞 linking verb つまり動詞の一種として扱います。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と補語、すなわち「名大夫たり」→「為レ名大夫」の部分です。仮名書きの「たり」を漢字「為」に改める作業については、「Ⅱ 基礎篇」で説明します。以下、仮名書きの語を漢字に復元する作業に関しては、すべて同じです。
S V C part
05 余是所嫁婦人之父也 (余ハ是レ所レ嫁ガレシ[要確認]婦人之父也)
=余は是れ嫁がしめし所の婦人の父なり。
*「是」も繋辞 copula ですが、04に同じく、本書では連結動詞 linking verb として扱います。
◎構文要素と文末助詞について、書き下し文の語順を変換する必要はありません。補語「所嫁婦人之父」の内部構造に関しては、「Ⅲ 修練篇」で練習します。
※訓読文「嫁ガレシ」(受身)と書き下し文「嫁がしめし」(使役)の不一致。原書 p.31 要目視確認。
右でわかるように、連結動詞「是」を用いる場合を除けば、一般に第二文型=(S)V Cでは、復文にさいして動詞と補語の語順を入れ換える必要が生じます。これを〔V/C〕変換と名づけておきましょう。
第二文型について注意すべきは、漢文では第二文型=(S)V CのVを省略した(S)Cも多用されるということです。英語ではVの省略が許されず、少なくとも〈be〉動詞を用いてSとCをつなぐ必要がありますが、漢文ではVを省くことが可能で、実際、(S)V Cよりも、むしろ(S)Cのほうが出現頻度は高いと考えてよいでしょう。
2′ 第二文型〔変形〕=(S)C
S C
06 此人力士 (此ノ人力士ナリ)
=此の人 力士なり。
*補語「力士」は名詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要はありません。
S C part
07 此君之妻也 (此ハ君之妻也)
=此れ君の妻なり。
*補語「君之妻」は名詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要はありません。右の06も本例も書き下し文に「なり」が見えながら、原文では「也」字の有無に相違がありますが、これに関する不安は「Ⅱ 基礎篇」で解消しますので、心配無用です。
S C
08 月明星稀 (月明ラカニ星稀ナリ)
=月 明らかに 星 稀なり。
*補語「明・稀」は、漢文としては形容詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要はありません。
C part C part
09 奇也、命也 (奇也、命也)
=奇なり、命なり。
*補語「奇」は漢文としては形容詞、「命」は名詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要はありません。
第二文型〔変形〕=(S)Cにおいて、復文のさいに主語と補語を入れ換える必要はありません。
中文翻譯
| 03 | 子游 武城の宰と為る。→ 子游為武城宰(子游擔任武城宰邑長官) ◎動詞與補語的語序須轉換:「武城の宰と為る」→「為武城宰」。此為〔V/C〕變換。 |
| 04 | 常に名大夫たり。→ 常為名大夫(常為名望大夫) *「為」在此為繋辞(連結動詞)。◎「名大夫たり」→「為名大夫」。 |
| 05 | 余は是れ嫁がしめし所の婦人の父なり。→ 余是所嫁婦人之父也 (我正是那位(被)嫁出的婦人之父) ◎構文要素與文末助詞語序無需轉換。 |
一般而言,第二文型中,復文時須將動詞與補語的語序互換,稱為〔V/C〕變換。漢文中,(S)C(省略V)比(S)V C更常見。
| 06 | 此の人 力士なり。→ 此人力士(此人是力士) ◎語序無需轉換。 |
| 07 | 此れ君の妻なり。→ 此君之妻也(此為君侯之妻) ◎語序無需轉換。 |
| 08 | 月 明らかに 星 稀なり。→ 月明星稀(月明星稀) ◎語序無需轉換。 |
| 09 | 奇なり、命なり。→ 奇也、命也(真奇,真是命數) ◎語序無需轉換。 |
第二文型〔変形〕=(S)C中,復文時主語與補語無需互換。
3 第三文型=(S)V Opp. 34–36
S V O
10 斉攻魯 (斉攻ムレ魯ヲ)〇斉・魯=国名。
=斉 魯を攻む。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と目的語、すなわち「魯を攻む」→「攻魯」の部分です。
S V O S V O
11 知者楽水、仁者楽山 (知者ハ楽シミレ水ヲ、仁者ハ楽シムレ山ヲ)
=知者は水を楽しむ、仁者は山を楽しむ。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、それぞれの動詞と目的語、すなわち「水を楽しみ」→「楽水」、「山を楽しむ」→「楽山」の部分です。
V O conj V O
12 温故而知新 (温メテレ故ヲ而∅知ルレ新シキヲ)
=故きを温めて新しきを知る。
*置き字「而」は、英語〈and〉に相当する接続詞です。置き字として読まずにすませる代わりに、直前に接続助詞「て」を補って訓読し、その「て」に「而」の接続機能を反映させる習慣ですので、「温めて」の「て」は省けません。この「而」については「Ⅲ 修練篇」で練習します。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、それぞれの動詞と目的語、すなわち「故きを温め」→「温故」、「新しきを知る」→「知新」の部分です。
13 (二通りの文型)
V Q
┌ 学於文 (学ブニ於∅文) =文を学ぶ。 →第一文型=(S)V
*置き字「於」は、動作の直接的な対象を表す前置詞です。間接的な対象を表す前置詞と解して「学ブニ於文」(文に学ぶ)と訓読することもあります。
V O
└ 学文 (学ブレ文ヲ) =文を学ぶ。 →第三文型=(S)V O
右から明らかなように、第三文型=(S)V Oでは、復文にさいして動詞と目的語の語順を入れ換える必要があります。これを〔V/O〕変換と呼んでおきましょう。
なお、漢文では一般に自動詞と他動詞の区別が明確でないため、同一の動詞がまったく同じ意味でありながら、異なる文型を構成する場合もあります(例13参照)。
中文翻譯
| 10 | 斉 魯を攻む。→ 斉攻魯(齊國攻打魯國) ◎「魯を攻む」→「攻魯」,動詞與目的語語序須轉換。此為〔V/O〕變換。 |
| 11 | 知者は水を楽しむ、仁者は山を楽しむ。→ 知者楽水、仁者楽山 (智者喜水,仁者樂山) ◎「水を楽しみ」→「楽水」,「山を楽しむ」→「楽山」,分別轉換。 |
| 12 | 故きを温めて新しきを知る。→ 温故而知新(溫故知新) *置字「而」相當於英語and,訓讀時以「て」體現其連接功能,不可省略。 ◎「故きを温め」→「温故」,「新しきを知る」→「知新」。 |
| 13 | 文を学ぶ。→(兩種文型) 「学於文」(置字「於」作前置詞)→第一文型;「学文」→第三文型。 |
第三文型=(S)V O中,復文時須將動詞與目的語語序互換,稱為〔V/O〕變換。
4 第四文型=(S)V IO DOpp. 36–38
S V IO DO
14 漢遺単于書 (漢遺ルニ単于書ヲ)*〈IO DO〉は二重目的語。 〇漢=国名。 〇単于=騎馬民族匈奴の王。
=漢 単于に書を遺る。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と二重目的語、すなわち「単于に書を遺る」→「遺単于書」の部分です。注意すべきは、二重目的語つまり〈間接目的語+直接目的語〉の順序は入れ換える必要がないという点です。二重目的語は、書き下し文の語順のままに並べておけばよいのです。
S adv adv adv V IO DO
15 趙亦終不予秦璧 (趙モ亦タ終ニ不レ予ヘ秦ニ璧ヲ)〇趙・秦=国名。
=趙も亦た終に秦に璧を予へず。
*「不」は、否定を表す副詞です。日本語としては打消の助動詞「ず」を当てて訓読しますが、漢文としてはあくまで副詞であり、助動詞ではありません。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と二重目的語「秦に璧を予へ」→「予秦璧」の部分ですが、動詞の否定についても「予へず」→「不予」の語順変換が必要になります。注意すべきは、二重目的語つまり〈間接目的語+直接目的語〉の順序は入れ換える必要がないという点です。その他の副詞は、書き下し文「亦た終に」の語順どおり「亦終」と記すだけです。
V IO DO
16 賜汝万銭 (賜フニ汝万銭ヲ)
=汝に万銭を賜はん。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と二重目的語、すなわち一文の全体「汝に万銭を賜はん」→「賜汝万銭」です。やはり注意したいのは、二重目的語つまり〈間接目的語+直接目的語〉の順序は入れ換える必要がないという点です。二重目的語は、あくまで書き下し文の語順どおりに並べておけばよいのです。
右でわかるように、第四文型=(S)V IO DOでは、復文にさいして動詞と二重目的語の語順を入れ換える必要があります。これを簡略に〔V/(OO)〕変換と名づけておきましょう。二重目的語に付けた括弧「( )」は、二つの目的語を一括りとして扱い、間接目的語と直接目的語の語順を入れ換える必要がないことを示します。
なお、二重目的語の順序を入れ換えると、第三文型=(S)V Oに変化し、もとIOであった名詞に多くは前置詞「於」が付いて後位副詞句(後述)を成す点でも、英語の授与動詞〈give〉などを用いた第四文型→第三文型の変化と同様の現象が起こります。
- ・遺ル単于ニ書ヲ →遺ルレ書ヲ於単于ニ(書を単于に遺る)
- ・不レ予ヘ秦ニ璧ヲ →不レ予ヘレ璧ヲ於秦ニ(璧を秦に予へず)
- ・賜ハンニ汝万銭ヲ →賜ハンレ万銭ヲ於汝ニ(万銭を汝に賜はん)
- cf. John gave her the bag. → John gave the bag to her. 〇 to ≒於
中文翻譯
| 14 | 漢 単于に書を遺る。→ 漢遺単于書(漢朝遣書予單于) ◎「単于に書を遺る」→「遺単于書」。〈間接目的語+直接目的語〉的順序無需互換,整體視為一括。此為〔V/(OO)〕變換。 |
| 15 | 趙も亦た終に秦に璧を予へず。→ 趙亦終不予秦璧 (趙始終未將璧給予秦國) *「不」為表否定的副詞。◎「予へず」→「不予」亦需轉換;其他副詞照書き下し文順序排列。 |
| 16 | 汝に万銭を賜はん。→ 賜汝万銭(賜汝萬錢) ◎整句「汝に万銭を賜はん」→「賜汝万銭」。二重目的語順序不變。 |
第四文型中,復文時須將動詞與二重目的語的語序互換,稱為〔V/(OO)〕變換。括號表示兩個目的語作為整體,間接目的語與直接目的語的順序無需互換。
若將二重目的語的順序互換,則變為第三文型,原間接目的語多附前置詞「於」構成後位副詞句,與英語授與動詞的第四→第三文型轉換同理(to ≒ 於)。
5 第五文型=(S)V O Cpp. 38–40
S V O C V O C
17 楚人謂乳穀、謂虎於菟 (楚人謂ヒレ乳ヲ穀ト、謂フ虎ヲ於菟ト)〇楚=国名。 〇穀=彀。
=楚人 乳を穀と謂ひ、虎を於菟と謂ふ。
*この「謂」は、英語〈call〉が第五文型〈We call him Bill.〉を作るのと同じ用法です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、それぞれの動詞と〈目的語+補語〉、すなわち「乳を穀と謂ひ」→「謂乳穀」、「虎を於菟と謂ふ」→「謂虎於菟」の部分です。注意すべきは、第四文型における二重目的語と同じように、〈目的語+補語〉の順序それ自体は入れ換える必要がないという点です。〈目的語+補語〉は、書き下し文の語順どおりに並べておけばよいのです。
S V O C
18 宋使人往之 (宋使シム人ヲシテ往カ之ニ)〇宋=国名。
=宋 人をして之に往かしむ。
*使役動詞「使」を用いた使役構文ですが、英語の使役構文〈I made him go there.〉と同一の構造ですから、特に難しい点はありません。補語の内部は「往之」という構造で、動詞「往」の主語は一文全体の目的語「人」、つまり〈目的語+補語〉の部分は「人往之」と分析できます。これも、右の英文で動詞〈go〉の動作主が〈him〉であるのと同様です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と〈目的語+補語〉、すなわち「人をして之に往かしむ」→「使人往之」の部分です。やはり〈目的語+補語〉そのものの語順を変更する必要はありません。ただし、補語の内部についても、動詞と目的語、つまり「之に往(く)」→「往之」の語順変換が必要になります。
V O
19 見二蛟浮於水上 (見ル二蛟ノ浮カブヲ於∅水上ニ)〇蛟=龍の一種。
=二蛟の水上に浮かぶを見る。
右でわかるように、第五文型=(S)V O Cでは、復文にさいして動詞と〈目的語+補語〉の語順を入れ換える必要があります。これを〔V/(O C)〕変換と呼んでおきましょう。〈目的語+補語〉に付けた括弧「( )」は、二つの要素を一括りに扱い、目的語と補語の語順を入れ換える必要がないことを示します。
漢文の第五文型は、右の二種すなわち17「謂」を用いた構文および18使役構文に限られるものと考えて間違いありません。使役構文については、改めて「Ⅲ 修練篇」で練習します。
ちなみに、知覚動詞を用いた構文は、第三文型とも第五文型とも解せる場合があるのが実情です。英語であれば、〈I saw that two logs were floating on the river.〉が第三文型、〈I saw two logs floating on the river.〉が第五文型であることに疑問の余地はありません。けれども、漢文は、漢字という文字の性質上、単語の品詞が明確でないため、どちらにも分類できてしまうのです。いずれにせよ、訓読文に異同はなく、したがって書き下し文もまったく同じになります。
(例19の二通りの解釈:第三文型 vs 第五文型)
V O C →第三文型
┌ 見二蛟ノ浮カブヲ於水上ニ (見二蛟浮於水上)
*目的語の内部は、二蛟浮於水上(S V Q)となります。
V O C →第五文型
└ 見二蛟ヲ浮カブト於水上ニ (見二蛟浮於水上)
*補語の内部は、浮於水上(V Q)となります。動詞「浮」の動作主は、目的語「二蛟」です。
以上で、漢文にも英語の五文型がそのまま当てはまることを理解してもらえたことでしょう。肝腎なのは、英語において第三文型=SVOが中心になるのと同じく、漢文についても第三文型=(S)V Oが中核を成すということです。第一文型=(S)Vも第二文型=(S)V Cも、さして難しくありません。第二文型〔変形〕=(S)Cは、日本人にとって、かえって容易と言ってもよいくらいでしょう。第四文型=(S)V IO DOは第三文型のOが二つ重なっただけですし、第五文型=(S)V O Cも第三文型にCが付け加わったにすぎません。何を措いても、第三文型=(S)V Oを念頭に置いておくことです。この構文の大原則を《構文原則》と呼んでおきましょう。そして、第三文型=(S)V Oが中心となる以上、復文における語順の入れ換えで最も重要なのも、当然〔V/O〕変換ということになります。
中文翻譯
| 17 | 楚人 乳を穀と謂ひ、虎を於菟と謂ふ。→ 楚人謂乳穀、謂虎於菟 (楚人稱牛乳為「穀」,稱老虎為「於菟」) *「謂」的用法與英語〈call〉構成第五文型相同。 ◎「乳を穀と謂ひ」→「謂乳穀」,〈目的語+補語〉順序不變,此為〔V/(O C)〕變換。 |
| 18 | 宋 人をして之に往かしむ。→ 宋使人往之(宋命人前往彼處) *使役動詞「使」構成的使役構文,與英語〈I made him go there.〉結構相同。 ◎「人をして之に往かしむ」→「使人往之」;補語內部「之に往く」→「往之」亦需轉換。 |
| 19 | 二蛟の水上に浮かぶを見る。→ 見二蛟浮於水上 (看見兩條蛟龍浮於水面) |
第五文型=(S)V O C中,復文時須將動詞與〈目的語+補語〉語序互換,稱為〔V/(O C)〕變換。漢文第五文型限於「謂」構文(17)與使役構文(18)兩種。知覺動詞構文有時可歸入第三文型或第五文型,書き下し文相同,訓讀無異。
(例19的兩種解釋)同一漢文「見二蛟浮於水上」,依訓讀方式可解為:
・第三文型:見(V)二蛟浮於水上(O,內部為 S-V-Q)→「二蛟の浮かぶを見る」
・第五文型:見(V)二蛟(O)浮於水上(C,內部V-Q)→「二蛟の浮かぶを見る」
《構文原則》:第三文型=(S)V O是漢文語序的核心。其他文型均以此為基礎延伸,因此〔V/O〕變換是復文中最重要的語序轉換。