これならわかる復文の要領 ―― 漢文学習の裏技 ――
書き下し文とは何か?pp. 87–93
復文は書き下し文を漢文の原文に復元する作業ですから、まずは書き下し文について明確に理解しておく必要があります。すでに前篇で遠慮なく書き下し文を掲げていましたが、改めてその性質を確認しておきましょう。
書き下し文は、原文に返り点・送り仮名を加えた訓読文を、さらに漢字・平仮名交じりで日本語の語順に書き直したものです。つまり、訓読の結果を、発音する順序そのままに書き記した字句ということになります。かつては漢字・片仮名交じりで書き下すのが通例でした。往時の人々は、漢字と平仮名は相性が悪いと感じていたらしく、片仮名で記された送り仮名を、そのまま片仮名で書き下し文にも持ち込んでいたのです。
しかし、その後、文字に対する感性が変化した結果、今日の書き下し文の表記は、漢字・平仮名交じりが常態となりました。漢字の字体も、たとえ原文が旧字体であっても、常用字体に改めてしまうことが少なくありません。仮名遣いも、歴史的仮名遣いの送り仮名を、現代仮名遣いに書き換えることが多くなっているように見受けます。ただし、前篇でお気づきのごとく、本書は一貫して歴史的仮名遣いで書き下す方針ですので、承知しておいてください。
けれども、復文に影響をもたらすのは、表記や字体あるいは仮名遣いの問題ではなく、訓読文を書き下し文に改めるときに講じられる左記の四つの措置です。いずれも書き下し文を作成するさいの常識的な要領ですが、復文の立場から見れば、その影響は決して小さくありません。
①原文にない漢字は書かない。
②発音しない漢字すなわち置き字は省略する。
③日本語の助詞・助動詞を当てて読む漢字は仮名書きに改める。
④再読文字は、初読(右の読み)に漢字を当て、再読(左の読み)を仮名書きとする。
①は、たとえば「或るひと曰く」「飛ぶこと急なり」などと訓読した場合、必ず「或るひと曰く」「飛ぶこと急なり」と書き下すことを意味しています。送り仮名の「ヒト」や「コト」を恣意に漢字に書き換え、「或る人曰く」「飛ぶ事急なり」と記したりしてはいけません。書き下し文の漢字数が原文の漢字数を上回る事態だけは絶対に起こらないのです。
②は、たとえば「死して悔い無し」のように書き下せとの指示にほかなりません。置き字として扱う接続詞「而」の類は、発音しないという理由で、あっさり省いてしまうのです。結果として、書き下し文の漢字数が原文の漢字数よりも少なくなる事態が生じ得ることになります。
③は、格助詞「と」を、「也」には断定の助動詞「なり」を当てて訓じているので、それぞれ仮名書きに改めるわけです。②の措置と同じく、書き下し文の漢字数が原文の漢字数を下回る事態が起こり得ることになります。③に忠実に従えば、それぞれ「べし」あるいは「有り」「無し」と記すことになるはずなのですが、個人の流儀によって揺れが生ずるのが実情です。
④は、たとえば再読文字「当にVすべし」「猶ほNのごとし」と書き下すことを意味します。①に照らしても、「べし」を「可し」、「ごとし」を「如し」に改めるような身勝手は許されません。
復文の立場から見ると、最も影響が大きいのは、②と③の措置によって必然的にもたらされる事態、すなわち、書き下し文の漢字数のほうが原文の漢字数よりも少なくなる可能性です。書き下し文の漢字数を Ck、原文の漢字数を Ct と置くと、①より、Ck > Ct は成立しません。
Ck ≦ Ct
この不等式は、原文の漢字数が書き下し文で減少する可能性を示しています。逆に言うと、復文に当たっては、仮名書きの語を漢字に改める場面が生じるわけです。けれども、心配する必要はありません。③にいう「日本語の助詞・助動詞を当てて読む漢字」は少数にとどまり、復文にさいして漢字に復元する可能性のある仮名書き語は、それほど数が多くないのです。
《復文作業用資料》 漢字に復元する可能性のある仮名書き語(pp. 92–93)
*太字は、特に本書の練習問題で復元に留意すべき語。
◆助詞
・格助詞 「の」=之 「と」=与 「より」=自・従(起点・経由点) 「より」=与(比較選択形)
・接続助詞 「ば」=者
・係助詞 「は」=者 「や」「か」=也・乎・耶・歟
・副助詞 「のみ」=耳・爾・而已・而已矣 「ばかり」=許・可(概数)
・終助詞 「かな」=哉・夫・矣
・間投助詞 「や」=也(呼びかけ) 「よ」=乎(呼びかけ)
◆助動詞
・打消 「ず」=不
・受身 「る」「らる」=見・被・所
・使役 「しむ」=使・令・遣・教・俾
・推量 「べし」=可
・断定 「なり」=也 「たり」=為
・比況 「ごとし」=如・若
また、書き下し文で完全に姿が消えてしまう置き字については、次節で懸念を払拭することにします。
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因為復文是把書き下し文(日式訓讀文)還原為漢文原文的作業,首先需要明確理解書き下し文的性質。
書き下し文是在原文上加返り点・送り仮名的訓読文,進一步按日文語序以漢字・平假名交混書寫的文本——即把訓讀結果按照發音順序逐字記下的文字。古時慣以漢字・片假名混寫,因為當時的人認為漢字與平假名不相配,就把片假名的送り仮名原封不動帶入書き下し文中。其後文字感性改變,現今主流是漢字・平假名混寫,且常把舊字體改為常用字體,歷史的假名遣い的送り仮名也常改為現代假名遣い(本書一貫使用歷史的假名遣い)。
影響復文的不是表記或字體問題,而是訓読文改為書き下し文時的四項措置:
| 措置 | 內容 | 對復文的影響 |
|---|---|---|
| ① | 不寫原文沒有的漢字(送り仮名不能改寫為漢字) | Ck ≦ Ct(書き下し文漢字數≤原文漢字數) |
| ② | 省略置き字(不讀出的漢字,如接続詞「而」) | Ck 可能小於 Ct |
| ③ | 用日語助詞・助動詞訓讀的漢字改以假名書寫(如「与」→と、「也」→なり) | Ck 可能小於 Ct;存在個人流儀的差異 |
| ④ | 再読文字:初讀(右訓)用漢字,再讀(左訓)用假名(如「当にVすべし」「猶ほNのごとし」) | 不可任意改字 |
因②③使書き下し文漢字數可能少於原文漢字數(Ck ≦ Ct),復文時需把假名書き的語還原為漢字。但可能需要復元的語並不多(見《復文作業用資料》),其中特別重要的是:「の」=之、「と」=与、「ず」=不、「しむ」=使・令、「べし」=可、「なり」=也。置き字在書き下し文中完全消失,如何復元見下節。
出題形式pp. 94–99
復文の出題には、いくつかの気遣いが必須だと考えます。ぶっきらぼうに書き下し文だけを示して「復文せよ」では、あまりに乱暴すぎるでしょう。出題者は、原文を手にしている以上、そもそも正解を承知のうえで出題に及ぶわけです。復文には復文なりの学習目標があるのですから、「出題者自身が復元作業を合理的に説明できないような問題を課してはならない」との基本方針が肝要です。
具体的には、少なくとも四つの配慮が必要でしょう。
第一:総字数の指定
たとえば「夫子の道は、忠恕のみ」を書き下し文として示しても、「の」が送り仮名(「夫子道」)か漢字「之」に直すのか、末尾の「のみ」が「耳」か「爾」か「而已」か「而已矣」か、確定する手段がありません。「全九字」と総字数を添えれば、解答は「夫子之道、忠恕而已矣」(『論語』里仁)に絞られます。
第二:置き字の位置の指定
たとえば「予、苗を助けて長ぜしめたり」(全五字)を、置き字の位置を指定せずに復文させると、正解「予助苗長矣」(『孟子』公孫丑上)の「矣」(第五字=置き字)を当てることができません。「置き字ナシ」か「第〇字=置き字」と明示する必要があります。
第三:置き字の字種の指定
「第五字=置き字」との指示だけでは、「矣」か「焉」かの区別が甚だ微妙で確定できません。同一出典(『論語』)でも「矣」と「焉」が混在し、交換できない場合も少なくありません。「第五字=置き字「矣」」のように位置と字種の両方を指示せねばなりません。
第四:仮名書きの同訓異字に関わる字種の指定
たとえば使役の「しむ」は「使」「令」など複数の漢字に対応します。また概数の「ばかり」の場合、「許」は数詞の下方に、「可」は数詞の上方に置くため、字種によって語位まで変わってしまいます。字種を指定しなければ正解が確定しません。
以上の四項からわかるとおり、復文の出題にさいしては、総字数を指定し、置き字の有無をはっきりさせ、置き字があるならば位置と字種を明示し、仮名書きの同訓異字については字種を指示することが必要です。
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出題復文時,光是給出書き下し文說「請復文」是不夠的——出題者知道正解,不能隨意出題。原則是「不出自己也無法合理說明復元過程的問題」。具體而言需注意四項:
| 第幾項 | 內容 | 理由 |
|---|---|---|
| 第一 | 指定總字數 | 「の」是否復元為「之」、「のみ」是「耳」還是「而已矣」等,若無總字數限制,答案可能有十種以上。指定總字數後答案唯一(例:「全九字」→「夫子之道、忠恕而已矣」) |
| 第二 | 指定置き字的位置 | 置き字在書き下し文中完全消失,若不指定「第○字=置き字」,無從確定正解 |
| 第三 | 指定置き字的字種 | 「矣」與「焉」的區別極為微妙,即使是同一出典(『論語』)也會混用,必須指定字種 |
| 第四 | 指定同訓異字的字種 | 「しむ」對應使・令等,「ばかり」(概數)中「許」置於數詞下方、「可」置於上方,字種不同則語位也不同,必須指定 |
復文の手続きpp. 99–107
【A】作業の手順
1 書き下し文の漢字数と、指定された総字数および置き字その他の条件を確認し、仮名書きの語を漢字に復元する必要があれば、候補を考えておく。(《復文作業用資料》→ pp. 92-93 参照)
2 助詞「ね」を付けつつ、書き下し文を文節に分かつ。
3 文節に分けた語句どうしの文法関係を検討して、文法関係ごとに原文を復元し、箇条書きにする。(【B】語順の組み立て方 参照)
4 箇条書きにした文法関係がすべて満たされるように原文全体を復元する。(【B】語順の組み立て方 参照)
5 指定された総字数との一致を確認し、字数が不足する場合は1で候補として考えておいた仮名書き語を再吟味し、字数を調整する。
6 復元した原文に、書き下し文に従って返り点・送り仮名を付け、その訓読文と書き下し文との一致を確認する。
最も肝腎なのは、3・4の作業です。これを正確にこなすためには、語順の組み立て方を心得ておかねばなりません。
【B】語順の組み立て方
1a《構文原則》構文の大原則は〈(S)V O〉である。
b《語順変換規則》語順の変換規則を大まかに示せば、〔V/(O and/or C and/or Q)〕変換および〔prep/N〕変換となる。(細目はⅠ 入門篇 参照)
2a《修飾原則》修飾構造は、修飾語が上、被修飾語が下に位置し、〈修飾語+被修飾語〉となる。
b《修被直結原則》修飾語と被修飾語は直接に結びつき、原則として両者のあいだの距離は0(ゼロ)。
c《「之」介入現象》形容詞的修飾構造において、修飾語と被修飾語のあいだに「之(の)」が介入する場合がある。
d副詞的修飾構造においては、前位副詞句のみならず、後位副詞句も生じ得る。
3a《英語相似律》原文の語順が不明のときは、英語で表現した場合の語順を参考にする。
b《日本語相似律》文末助詞の語位は日本語と一致し、主部に位置する二つの名詞が日本語の〈ハ-ガ〉文に似た発想を示すこともある。
【C】《格言》「鬼と逢ったら返せ」
漢文訓読の格言「鬼(おに)と逢(あ)ったら返れ」——〈格助詞「を・に・と」に出逢ったら返り点に従って上方の動詞に返り読みせよ〉——を、復文用に一字変えた要領です。
「鬼(おに)と逢(あ)ったら返せ」〈格助詞「を・に・と」に出逢ったら、その下の動詞を上に置き、「を・に・と」の付いた語から返り読みするように語順を入れ換えよ〉との趣旨。典型的な適用:
・徳を懐ふ → 懐徳(懐レ徳)〔V/O〕変換
・貴しと為す → 為貴(為レ貴)〔V/Q〕変換
・「を・に」(IOにDOをVす)→ V+IO+DO〔V/(OO)〕変換
・「を・と」(OをCとVす)→ V+O+C〔V/(OC)〕変換
・「を・に」(OをQにVす)→ V+O+Q〔V/(OQ)〕変換
さらに「より」を加えて「鬼と逢ふより返せ」とすれば、〔A/Q〕変換・〔V/(OQ)〕変換(「より」= from)も覆えます。〔prep/N〕変換については「Nを以て(す)」→「以テ(ス)レNヲ」にのみ通用します。あくまで大ざっぱな目安ですので、念のため。
【D】重要な心構え
1《仮名保存則》不用意に仮名を消すことなかれ。
書き下し文の仮名書き部分には、原文を復元するための有益な情報が数多く盛り込まれています(格助詞「を・に・と」など)。確認作業(作業手順6)まで含めると、最後まで書き下し文の仮名文字と付き合うことになります。
2《順行配置則》なるべく書き下し文の語順どおりに語句を並べよ。
必要な語順変換は〔V/(O and/or C and/or Q)〕変換と〔prep/N〕変換だけ。それ以外については「書き下し文の語順のままに漢字を並べておけばよい」。みだりに語順を転倒させてはいけません。
*pp.108以降(復文の作業例)は次の OCR バッチ追加後に補充します。
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【A】作業手順(1-6步):①確認字數差距,考慮需假名→漢字的候補;②以助詞「ね」分割文節;③逐一檢討文節間的文法關係,分條復元;④使所有文法關係都被滿足地組合原文;⑤確認與指定總字數吻合,不足則重審字數調整;⑥在復元原文上加返り点・送り仮名,確認與書き下し文一致。最後的確認步驟(第6步)也是練習返り点的機會,切勿省略。
【B】語序組立法:
| 原則名 | 內容 |
|---|---|
| 構文原則 | 基本語序為〈(S)V O〉 |
| 語順変換規則 | 〔V/(O and/or C and/or Q)〕変換 + 〔prep/N〕変換 |
| 修飾原則 | 修飾語在上、被修飾語在下〈修飾語+被修飾語〉 |
| 修被直結原則 | 修飾語與被修飾語直接相鄰,距離原則上為0 |
| 「之」介入現象 | 形容詞的修飾構造中,「之」(の)可能介入修飾語與被修飾語之間 |
| 英語相似律 | 語序不明時,參考英語的語序 |
| 日本語相似律 | 文末助詞的語位與日語一致;主部的兩個名詞有時呈現類似日語〈は-が〉文的結構 |
【C】格言「鬼と逢ったら返せ」:遇到格助詞「を・に・と」就把其下方的動詞移至上方,相應地把附有助詞的語句按返讀順序排列。這一格言幾乎涵蓋所有〔V/(O and/or C and/or Q)〕変換。再加入「より」則可擴展至〔A/Q〕変換與〔V/(OQ)〕変換(より=than, from)。〔prep/N〕変換(以て)不在格言適用範圍內。
【D】兩大心構え:①仮名保存則——不要貿然消除書き下し文的假名,因為格助詞等假名正是復元的關鍵線索;②順行配置則——盡量按書き下し文的語序排列,除〔V/(O/C/Q)〕变換和〔prep/N〕变換外不需要亂換語序。