これならわかる復文の要領 ―― 漢文学習の裏技 ――
修練問題1 置き字「而」 Q11–Q18pp. 137–140
本篇からは、個別の語句に焦点を絞った練習に入りましょう。
「而」があると、たいてい直前の送り仮名に接続助詞「て」を付けて訓読することになっています。一般には「而」の上下それぞれに動詞が入り、次のような形になります。
V₁シテ而V₂ス →V₁してV₂す
不レシテV₁セ而V₂ス →V₁せずしてV₂す
N〔A〕ニシテ而V₂ス →N〔A〕にしてV₂す
*解説&解答 → pp. 172–178
《Q11》仁を求めて仁を得たり。(全五字/第三字字置き字「而」)
《Q12》述べて作らず、信じて古を好む。(全八字/第二・六字=置き字「而」)
《Q13》君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。(全十二字/第四・十字=置き字「而」)
《Q14》千里を遠しとせずして来たる。(全六字/第五字=置き字「而」)
《Q15》上を犯すことを好まずして乱を作すことを好む。(全八字/第五字=置き字「而」)
《Q16》事に敏にして言に慎む。(全七字/第二・六字=置き字「於」/第四字=置き字「而」)
《Q17》君子は矜にして争はず、群して党せず。(全十字/第四・八字=置き字「而」)
「而」の上下の意味内容が逆接になると、「而」の直前に接続助詞「ども」が現れる場合もあります。
《Q18》視れども見えず、聴けども聞こえず。(全八字/第二・六字=置き字「而」)
中文翻譯
修練篇針對個別語句進行集中練習。「而」作為置き字(接続詞),在書き下し文中被省略,但其接續功能由送り仮名的接続助詞「て」來體現。復文時,見到「(ず)して」「にして」,其後直接跳過「而」即可。三種一般形:①V₁シテ而V₂(順接)②不V₁セ而V₂(否定+順接)③N〔A〕ニシテ而V₂(名詞・形容詞+而)。逆接時,接続助詞「て」→「ども」,要領相同。
〔付〕「以」 Q19–Q20pp. 141–142
「而」と同じく接続詞として用いられる単用の「以テ」についても練習しておきましょう。「而」が置き字であるのに対し、「以」は必ず「以(もつ)テ」と発音します。復文の要領は「而」とまったく同じです。
《Q19》一を聞きて以て十を知る。(全五字/置き字ナシ)
《Q20》己を修めて以て百姓を安んず。(全六字/置き字ナシ)
中文翻譯
單用的「以て」有兩種用法:①前置詞「以て」(省略了N)→補讀「以て之を」;②接続詞「以て」(與「而」同用法)。本題的「以て」屬於②。復文要領與「而」相同:見到「聞きて」「修めて」的接続助詞「て」,其後直接接「以」(不是置き字,要寫出來)。
修練問題2 存在表現「有」「無」 Q21–Q28pp. 143–145
「有」「無」は、英語の〈there is (no)...〉と似たような語位を占めます。漢文としてはどちらも動詞です。
Lニ有レリN →LにN有り (有:NN〈新情報〉、位置L→上に)
Nハ在レリLニ →N Lに在り (在:NN〈旧情報〉、位置L→下に)
有二リN一於レテLニ →LにN有り (後位副詞句「於L」を使う形)
*解説&解答 → pp. 178–184
《Q21》徳は孤ならず、必ず隣有り。(全六字/置き字ナシ) ○隣隣隣人。
《Q22》可も無く不可も無し。(全五字/置き字ナシ)
《Q23》人にして遠き慮り無ければ、必ず近き憂へ有り。(全九字/第二字字置き字「而」)
《Q24》天下に道有れば、則ち政大夫に在らず。(全十字/置き字ナシ)
《Q25》死生命有り、富貴天に在り。(全八字/置き字ナシ)
《Q26》此に人有り。(全四字/第三字字置き字「於」)
《Q27》斯に美玉有り。(全五字/第四字=置き字「於」)
《Q28》功は天下に二つ無し。(全六字/第四字=置き字「於」)
中文翻譯
「有」對應英語〈there is〉,「無」對應〈there is no〉,漢文中均為動詞。「有」:存在範圍L在上,存在物N在下(LにN有り);N為新情報。「在」:存在物N為主語在上,存在範圍L在下(N Lに在り);N為已知舊情報。後位副詞句形:有二N一於L(=LにN有り),「於」為置き字前置詞。
修練問題3 助動詞類 Q29–Q49pp. 147–160
漢文の助動詞は動詞に先行し、〈助動詞+動詞〉の語順を取ります。否定辞「不」は副詞として助動詞に掛かり、〈「不」+助動詞〉となります(「不能」「不可」など)。
*解説&解答 → pp. 184–200(修練問題3・4合わせて pp. 200–215 も含む)
1 「能」(よく/あたふ)
能クVス →能(よ)くVす
不能ハVスル(コト) →Vする(こと)能(あた)はず
《Q29》唯だ仁者のみ能く人を好み能く人を悪む。(全九字/置き字ナシ)
《Q30》父母の命と雖も、制すること能はざるなり。(全九字/置き字ナシ)
2 「可」(べし)
可シVス →Vすべし 不可カラVス →Vすべからず
《Q31》事に従ふを好みて亟しば時を失ふ、知と謂ふべきか。(全十一字/第四字=置き字「而」/第十一字=疑問助詞「乎」)
《Q32》志を奪ふべからざるなり。(全五字/置き字ナシ)
《Q33》朽木は雕るべからざるなり。(全六字/置き字ナシ) ○雕雕彫。
《Q34》後生畏るべし。(全四字/置き字ナシ)
《Q35》言は慎まざるべからざるなり。(全六字/置き字ナシ)
3 「得」(う・え)
得レVスル(コト)ヲ →Vする(こと)を得(う)
不レ得レVスル(コト)ヲ →Vする(こと)を得(え)ず
《Q36》山中の木不材を以て其の天年を終ふるを得たり。(全十二字/置き字ナシ/第八字「得」)
《Q37》之を言ふことを得ず。(全五字/置き字ナシ)
《Q38》刑人を委用して之に国命を寄せざるを得ず。(全十一字/置き字ナシ/第二字字「得」)
4 「可以」「足以」「得而」
可二以テV一ス →以てVすべし
足二以テV一スルニ →以てVするに足る
得テ而Vス →得てVす
《Q39》不仁者は以て久しく約に処るべからず、以て長く楽しきに処るべからず。(全十五字/置き字ナシ)
《Q40》以て其の身を養ひ其の天年を終ふるに足る。(全九字/置き字ナシ)
《Q41》聖人は吾得て之を見ず。(全九字/第六・九字=置き字「而・矣」)
5 再読文字
未ダレVセ →未だVせず(not...yet)
将〔且〕ニレVセント →将に(Vせん)とす(be going to)
当〔応〕ニレVス →当に(Vす)べし(should)
宜シクレVス →宜しく(Vす)べし(should)
須ラクレVス →須らく(Vす)べし(must)
猶ホレVスルガ〔Nノ〕 →猶(Vするが〔Nの〕)ごとし(just as)
盍ゾレVセ →盍ぞ(Vせ)ざる(why not)
《Q42》未だ室に入らざるなり。(全五字/第三字字置き字「於」)
《Q43》酒を引きて且に之を飲まんとす。(全五字/置き字ナシ)
《Q44》惟だ仁者のみ宜しく高位に在るべし。(全七字/置き字ナシ) ○惟惟唯。
《Q45》若し殿下と命を同じうせば、死すと雖も猶生くるがごとし。(全十字/置き字ナシ)
《Q46》子盍ぞ斉に事へんことを求めて以て民に臨まざる。(全九字/第五字=置き字「於」) ○斉斉国名。
6 「欲」(準助動詞)
欲レVセント →Vせんと欲す(want to; be going to)
《Q47》楚の荘王晋を伐たんと欲す。(全六字/置き字ナシ) ○楚・晋晋国名。
《Q48》吾事を国に挙げんと欲す。(全六字/第五字=置き字「於」)
《Q49》日暮れんと欲するに、年少の女子を見る。(全八字/置き字ナシ)
中文翻譯
漢文助動詞均置於動詞前方。否定副詞「不」按《修飾原則》緊接助動詞(不能・不可・不得)。各助動詞要點:①「能」—無否定時作副詞「能く」,有否定時作動詞「能はず」;②「可」—「べし」,否定「不可」;③「得」—動詞「う/え」,日語品詞有差異;④「可以」「足以」—書き下し文中「以て」與「べし/足る」可能相距甚遠,需確實二字結合復元;⑤再読文字—文法上多為助動詞,覆蓋於動詞上方即可;⑥「欲」—準助動詞(動詞),語位與助動詞相同。
修練問題4 使役構文 Q50–Q53pp. 160–162
語順は英語の使役構文とまったく同じです。使役動詞の字種は出題で指定されます。
使〔令・遣・教・俾〕(人)ヲシテVセ →(人)をしてVせしむ (make someone do)
*解説&解答 → pp. 200–215
《Q50》斉の宣王人をして竽を吹かしむ。(全七字/置き字ナシ/使役動詞「使」) ○斉斉国名。○竽楽器。
《Q51》子路門人をして臣たらしむ。(全七字/置き字ナシ/使役動詞「使」) ○子路=人名。
《Q52》灌嬰をして五千騎を以ゐて之を追はしむ。(全九字/置き字ナシ/使役動詞「令」) ○灌嬰嬰人名。
《Q53》吾子をして孟子に問はしめ然る後に事を行はんと欲す。(全十二字/第六字=置き字「於」/使役動詞「使」) ○孟子=人名。
中文翻譯
使役構文語序與英語〈make someone do〉完全相同:使役動詞(使/令等)+人ヲシテ+V。書き下し文中「しむ」對應多個漢字(使/令/遣/教/俾),字種由出題指定。
修練問題5 「所」「所以」 Q54–Q68pp. 163–171
1 「所」(動詞の動作対象を名詞化)
Nノ〔之〕所レVス(ル) →NのVする所(全体で名詞相当語句)
N1ノ〔之〕所レVス(ル)〔之〕N2 →N1のVする所のN2(N2を修飾)
為ニNノ所ト一Vスル →NのVする所と為る(受身形)
2 「所以」(原因・理由・手段・目的)
Nノ〔之〕所以Vス(ル) →NのVする所以(全体で名詞相当語句)
Nノ〔之〕所以Vス(ル)者 →NのVする所以の者(名詞「者」を伴う)
*解説&解答 → pp. 200–215
《Q54》君子は争ふ所無し。(全五字/置き字ナシ)
《Q55》時の重んずる所、僕の軽んずる所なり。(全八字/置き字ナシ/第二・六字「之」)
《Q56》富と貴きとは是れ人の欲する所なり。(全九字/置き字ナシ)
《Q57》漢軍項王の在る所を知らず。 ○漢漢国名。(全八字/置き字ナシ)
《Q58》吾と子との共に食らふ所なり。(全七字/置き字ナシ/第四字「之」)
《Q59》己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。(全八字/第七字=置き字「於」)
《Q60》范増佩ぶる所の玉玦を挙ぐ。 ○范増范増人名。(全七字/置き字ナシ)
《Q61》独り項王のみの殺す所の漢軍数百人なり。 ○漢漢国名。(全十字/置き字ナシ)
《Q62》大丈夫の守る所の者は道にして、待つ所の者は時なり。(全十一字/置き字ナシ)
《Q63》太祖流矢の中たる所と為る。(全七字/置き字ナシ)
《Q64》張儀嘗て楚に遊び、楚の相の辱むる所と為る。 ○張儀張儀人名。○楚楚国名。(全十字/置き字ナシ)
《Q65》位無きことを患へず、立つ所以を患ふ。(全八字/置き字ナシ)
《Q66》彼は矉の美なるを知れども、矉美なる所以を知らず。 ○矉眉をしかめた表情。(全十二字/第五字=置き字「而」)
《Q67》賢臣を親しみ小人を遠ざくるは、此れ先漢の興隆せし所以なり。 ○先漢漢前漢。(全十四字/置き字ナシ/第十四字「也」)
《Q68》此の女の嫁がざりし所以の者は、将に君子を求めて以て吾が身を託せんとすればなり。(全十五字/置き字ナシ)
以上で修練篇の練習を終わります。ここまで計六十八題をこなしてくれれば、漢文の語順に対する基礎的な感覚が十分に養われていることでしょう。
中文翻譯
「所」覆蓋於動詞上方,使動詞的動作對象名詞化(類似英語關係代名詞〈what〉)。「N之所V」可作主語・目的語・修飾語。受身形:「為N所V」→「NにVされる」。「所以」:「所V」+前置詞「以」結合而成,表〈原因・理由・手段・目的〉,常與名詞「者」搭配。復文時,「所」「所以」均位於動詞上方。「所以」前置時→「N之所以V者は…」;後置時→「…N之所以Vなり」。