これならわかる復文の要領 ―― 漢文学習の裏技 ――
基本文型以外1 英語との類似pp. 42–43
基本的な文型以外でも、何かと英語の構文との類似が目立つことを言い添えておきましょう。二つの例を挙げてみます。英語の試訳を添えますので、漢文と英文の語順を見比べてください。一つめは、禁止命令文です。
adv V O
20 勿憚改 (勿カレ憚ルコト改ムルニ)
=改むるに憚ること勿かれ。
= Do not fear to mend your ways.
英語が文頭に禁止命令〈Do not〉を置くのと同じく、漢文も文頭に禁止命令を表す「勿」を冠するのです。英語では、動詞〈mend〉に目的語〈your ways〉を付け、意味を明確にしています。
二つめは、感嘆文です。
A S part
21 善哉問也 (善哉問也)
=善きかな問や。
= How good your question is!
さすがにすべての語順が同じとはゆきません。英語では感嘆詞〈How〉が形容詞〈good〉に先行するのに対し、漢文では感嘆詞「哉」が形容詞「善」の後方に位置しています。便宜上〈is〉に「也」を当ててはみたものの、両者の機能が同じかどうか、多分に疑問が残ります。しかし、形容詞をできるだけ文頭に提示し、それに感嘆詞を添えるという点では、漢文と英語が類似した構造を持っていると言って差し支えないでしょう。左のごとく、平叙文における強調の副詞を感嘆詞に置き換え(「甚」→「哉」/〈very〉→〈How〉)、前後の語順を転倒させれば感嘆文ができあがる過程も似ています。
- ・問也 甚ダ 善シ。(問也甚善) =問や甚だ善し。 → 善哉問也 =善きかな問や。
- ・Your question is very good. → How good your question is!
漢文と英文の構造を安易に同一視するのは危険です。けれども、復文にさいして、どう語順を組み上げるのかわからないときに、「英語で書いたら、どうなるのか?」と考えるのは、なかなか有効な方法だと言ってよいでしょう。これを《英語相似律》と名づけておきます。漢文と英文との類似については、「Ⅱ 基礎篇」以下でも、時おり指摘してゆくこととなります。
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除基本文型外,漢文的構文在諸多方面與英語十分相似。以下舉兩例,附上英語試譯,請對照漢文與英文的語序。
第一是禁止命令句:
| 20 | 改むるに憚ること勿かれ。→ 勿憚改(勿要畏懼改過) = Do not fear to mend your ways. 漢文在句首冠「勿」(禁止命令),與英語句首的 "Do not" 位置相同。 |
第二是感嘆句:
| 21 | 善きかな問や。→ 善哉問也(你的問題真好!) = How good your question is! 英語感嘆詞 "How" 置於形容詞 "good" 之前;漢文感嘆詞「哉」置於形容詞「善」之後,位置雖異,但都盡量將形容詞提前的思路相同。 |
不宜輕易將漢文與英文的結構等同視之,但復文時若不知如何組建語序,「用英語寫會如何?」的思路頗為有效。作者將此稱為《英語相似律》。
基本文型以外2 日本語との類似pp. 44–47
ただし、漢文の構造には、日本語との類似点も存在することを忘れてはなりません。五文型について指摘した主語の省略が可能な点もその一つですが、ここでは、漢文の文末助詞が日本語と似ていることを確認しておきましょう。すでに例文05・07・09に見られた「也」をも含めて例を掲げてみます。
part
22 是礼也 (是レ礼也)
=是れ礼なり。
part
23 君子亦有窮乎 (君子モ亦タ有ル窮スルコト乎)
=君子も亦た窮すること有るか。
右は平叙文と疑問文ですが、「也」と「なり」、「乎」と「か」が、それぞれ互いに文末に位置している点は同じです。このような文末助詞が占める語位に関するかぎり、漢文の語順は日本語によく似ているのです。たしかに漢文は「孤立語」なのですが、文末助詞には日本語と同じような「膠着語」の性質が見られると考えてよいでしょう。
さらに言い添えれば、漢文には次のような文章構造も現れます。
S S C
24 孔子長九尺有六寸 (孔子長サ九尺有六寸)〇孔子=人名。
=孔子 長さ九尺有六寸なり。
*「有」は、+の意。孔子が在世していた周代の度量衡制度では、一尺=十寸=22.5㎝ですから、「九尺有六寸」=216㎝となり、多分に誇張があるにせよ、孔子が非常に背の高い人物であったことがわかります。
文意は、たやすく理解できます。文型も、第二文型〔変形〕=SCとしか思えません。けれども、文頭の主部に並ぶ二つの名詞「孔子 長」は、文中でどのような機能を果たしているのでしょうか。「孔子」を主語と考えると、「長」は名詞を転用した副詞として扱うしかなくなり、何やらしっくりしません。「長」が主語だとすると、今度は「孔子」が文型から食み出し、落ち着きどころがなくなってしまいそうです。
ここで想い起こしてほしいのは、日本語の〈ハ-ガ〉文、つまり例の「象は鼻が長い」で有名な文章構造です。この助詞「は」と「が」、特に「は」の機能をどう捉えるかは、日本語文法の一大問題としてさまざまな議論が交わされてきました。ただし、今は日本語文法の問題には深入りしません。「象は」を一文全体の話題を表す主題提示語句、「鼻が」を主語と考えるだけですませておきます。
肝腎なのは、右の「孔子 長」に日本語の〈ハ-ガ〉文を当てはめて、「孔子は長が九尺有六寸(にも及ぶほどの長身)であった」と理解すると、何ら抵抗なく文意が汲み取れるという事実です。二つの名詞「孔子 長」が「孔子は長が」と完全に一致する語感なのかどうかは議論の余地がありますが、便宜上、日本語の〈ハ-ガ〉文に同じと見なしておけば、解釈しやすいことはたしかでしょう。
むろん、のっけから助詞「の」を補読して「孔子 長」を一つの名詞に仕立て、「孔子ノ長九尺有六寸ナリ」(孔子の長 九尺有六寸なり)と訓読することも可能です。しかし、名詞と名詞のあいだに何らかの語句が挿入されると、助詞「の」によって二つの名詞を一つにまとめてしまう手は利きません。
conj C C adv C part
25 江東雖小、地方千里、衆数十万人、亦足王也
(江東雖レ小ナリト、地方千里、衆数十万人、亦タ足ル王タルニ也)
〇江東=長江下流の東側の土地。
=江東 小なりと雖も、地 方千里、衆 数十万人、亦た王たるに足るなり。
「江東」の直下に譲歩節「雖レ小」が挿入されているため、「江東」と「地」や「衆」を助詞「の」でつなぐことは不可能です。けれども、「長江下流の東方は、たしかに狭いとはいえ、面積が千里四方に及び、人口が数十万に達しており、やはり王となるにふさわしい土地でございます」と〈ハ-ガ〉文を当てはめてみれば、これまた文意が容易に理解できるでしょう。大まかには〈「江東」は…「地」が…「衆」が…〉という語気文勢に近いものと見なして差し支えありません。漢文には、日本語の〈ハ-ガ〉文に近似する発想も認められるのです。
漢文の語順は、その多くが英語と類似する。ただし、時に文末助詞の語位が日本語と一致したり、主部に位置する二つの名詞が日本語の〈ハ-ガ〉文に似た発想を示したりすることもある――これを《日本語相似律》と呼んでおきます。
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漢文的結構也有與日語相似之處,不可忘記。除五文型中主語可省略外,漢文的文末助詞與日語相似也值得確認。
| 22 | 是れ礼なり。→ 是礼也(這是禮儀) 文末「也」=「なり」,同位於句末。 |
| 23 | 君子も亦た窮すること有るか。→ 君子亦有窮乎(君子也會窮途末路嗎?) 文末「乎」=「か」(疑問),同位於句末。 |
文末助詞的語位這一點,漢文語序與日語十分相似。漢文雖屬「孤立語」,但文末助詞具有「黏著語」的特性。
| 24 | 孔子 長さ九尺有六寸なり。→ 孔子長九尺有六寸 (孔子身高九尺又六寸,即約216cm) *「有」=「+」(加法);周代一尺=22.5cm,九尺六寸=216cm,雖有誇張,可見孔子身材高大。 句首「孔子 長」兩個名詞並列,可套用日語〈ハ-ガ〉文理解:「孔子は身長が九尺六寸であった」。 |
| 25 | 江東 小なりと雖も、地 方千里、衆 数十万人、亦た王たるに足るなり。→ 江東雖小、地方千里、衆数十万人、亦足王也 (江東雖小,土地方圓千里,人口數十萬,仍足以稱王) 〔江東〕は〔地〕が千里…〔衆〕が数十万…と解読する。套用〈ハ-ガ〉文結構即可理解。 |
《日本語相似律》:漢文語序多與英語相似,但文末助詞的語位與日語一致,主部的兩個名詞有時也呈現出類似日語〈ハ-ガ〉文的思路。
B 語間連結構造pp. 47–48
次に、文型の知識だけでは把握しきれない語と語の連結構造を説明しましょう。細かい問題はいろいろありますが、最も重要なのは修飾構造と並列構造です。この二つさえ心得ておけば、復文で悩む場面が大幅に減少するに違いありません。まずは処理の容易な並列構造を、次いで何かと注意点の多い修飾構造を取り上げることにします。
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接下來說明僅憑文型知識無法把握的詞與詞之間的連結構造。其中最重要的是修飾構造與並列構造。掌握這兩點,復文時困惑的情況將大幅減少。先介紹處理較容易的並列構造,再介紹注意點較多的修飾構造。
1 並列構造p. 48
並列構造は、さして難しくありません。「直接並列」すなわち接続詞を用いずに複数の語句をそのまま並べる場合と、「間接並列」すなわち接続詞を用いて複数の語句を並べる場合とに分けられます。
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並列構造分兩種:「直接並列」(不用接続詞,直接並排多個詞句)和「間接並列」(用接続詞連接)。
ア 直接並列p. 48
日本語でも直接並列構造の漢語を常用しているので、何も抵抗はないでしょう。
直接並列構造の語句は、そのまま修飾構造になるときもあります。どちらの構造なのかは、文脈によって判断するしかありません。
└ 青緑〔修飾構造〕 =青みがかった緑色
いずれにせよ、直接並列構造について、復文で語順を入れ換える必要は生じません。
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日本語中常用漢語直接並列構造,如:左右、善悪、大中小、雪月花、東西南北、春夏秋冬。
直接並列構造有時也可解釋為修飾構造(如「青緑」:青色+緑色 vs 帶青的緑色),需依文脈判斷。無論如何,直接並列構造在復文時無需轉換語序。
イ 間接並列pp. 49–50
接続詞(与・而・且・及・或・若など)を用いて、複数の語句を並べます。「与・而・且・及」は英語の〈(both)…and…〉に、「或・若」は英語の〈(either)…or…〉に相当します。
- 26陰与陽 (陰ト与レ陽ト) =陰と陽と
- 27柔而弱 (柔ニシテ而∅弱ナリ) =柔にして弱なり
- 28貧且賤 (貧シク且ツ賤シ) =貧しく且つ賤し
- 29賓客及子弟 (賓客及ビ子弟) =賓客及び子弟
- 30或遅或疾 (或イハ遅ク、或イハ疾シ) =或いは遅く或いは疾し
- 31木若泥 (木若シクハ泥) =木若しくは泥
右のうち、復文にさいして一瞬まごつく可能性があるのは、返り点が現れる26「与」の並列構造だけでしょう。助詞「と」を二つ用いて訓読しますが、接続詞「与」は一つしかありません。二つの「と」に惑わされないよう、一般形を用いて注意点をまとめておきます。
〔訓読〕
ⅰ 二つの並列要素X・Yそれぞれに助詞「と」を付ける。
ⅱ 一つめの「と」はXの送り仮名とし、二つめの「と」はYから返って接続詞「与」そのものの読みとする。
〔復文〕
ⅰ 他の接続詞と同じく、二つの並列要素X・Yのあいだに「与」を記す。
ⅱ その「与」は、二つめの「と」つまり「Yと」の「と」を漢字に改めたものであり、一つめの「と」つまり「Xと」の「と」ではない。
右の「与」に関する注意点さえ心得ておけば、間接並列構造の復文にも難点は存在しません。「与」をも含めて、二つの並列要素のあいだに接続詞を置くのが原則です。30のみ接続詞「或」が二つ繰り返されてはいるものの、やはり書き下し文の語順のままに漢字を並べるだけで、語順を変換する必要はありません。
「与」については、もう一つ補足すべきことがありますが、それは後述することにしましょう。
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用接続詞(与・而・且・及・或・若等)連接多個詞句。「与・而・且・及」相當於英語 (both)…and…;「或・若」相當於 (either)…or…。
| 26 | 陰と陽と → 陰与陽(陰與陽) ※「与」有返り點 |
| 27 | 柔にして弱なり → 柔而弱(柔弱) ※「而」為置字 |
| 28 | 貧しく且つ賤し → 貧且賤(貧賤) |
| 29 | 賓客及び子弟 → 賓客及子弟(賓客及子弟) |
| 30 | 或いは遅く或いは疾し → 或遅或疾(或慢或快) |
| 31 | 木若しくは泥 → 木若泥(木或泥) |
最需注意的是26「与」的並列構造:訓讀用兩個「と」,但接続詞「与」只有一個。復文要領:兩並列要素X・Y之間置「与」即可;「与」對應的是第二個「と」(即「Yと」的「と」),非第一個。掌握此要點,間接並列構造的復文無難處——其他接続詞均無需轉換語序,直接按書き下し文順序排列即可。
2 修飾構造pp. 50–51
修飾構造は〈修飾語+被修飾語〉、すなわち修飾語が上から下へと被修飾語に掛かるのが原則です。これは漢文の著しい特徴たる《修飾原則》ですので、しっかり肝に銘じてください。
そして、被修飾語が、名詞なのか、それ以外の要素なのかによって、修飾構造は二種に分かれることができます。前者を「形容詞的修飾構造」、後者を「副詞的修飾構造」と名づけておきましょう。
大ざっぱには、日本語の修飾構造を援用して、形容詞的修飾構造を「連体修飾」、副詞的修飾構造を「連用修飾」と考えてもよいのですが、漢文の語句は一切の語形変化を起こさない、つまり活用を持たないので、用言すなわち活用する自立語という概念を持ち出して「連用修飾」と呼ぶと、誤解を招くおそれがあります。簡明で馴染み深い「連体修飾」「連用修飾」という分類を捨てるのは惜しい気もするのですが、ここでは慎重を期しておきましょう。
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修飾構造的原則是〈修飾語+被修飾語〉,修飾語從上方(前方)修飾被修飾語。這是漢文的顯著特徵,稱為《修飾原則》。
按被修飾語的詞性分為兩類:被修飾語為名詞者稱「形容詞的修飾構造」,被修飾語為名詞以外要素者稱「副詞的修飾構造」。大致可借用日語的「連體修飾」・「連用修飾」概念,但因漢文語句無活用變化,故此處慎用這組術語。
ア 形容詞的修飾構造pp. 51–54
修飾語が形容詞・名詞・動詞、被修飾語が名詞となる修飾構造です。
a 形容詞+名詞
32 善人 (善キ人) =善き人
33 白馬 (白キ馬) =白き馬
b 名詞+名詞
34 山頂 (山ノ頂) =山の頂
c 動詞+名詞
35 獣心 (獣ノゴトキ心) =獣のごとき心
36 流水 (流ルル水) =流るる水
37 往時 (往キシ時) =往きし時
復文は、容易そのもの。語順の変換は必要ありません。
左のように、形容詞句も、形容詞と同じく名詞を修飾する機能を持ちます。ただし、形容詞句の復元は最も難しい復文作業に属しますので、詳しい説明は「Ⅳ 発展篇」に譲ります。
d 形容詞句+名詞
AJG N
38 苗而不秀者 (苗ニシテ而∅不ル秀デ者)
=苗にして秀でざる者
39 好徳如好色者 (好ムコト徳ヲ如クスル好ムガ色ヲ者)
=徳を好むこと色を好むが如くする者
ここで一つ付け加えておきたいのは、主として右のb〈名詞+名詞〉・d〈形容詞句+名詞〉において、修飾語(名詞・形容詞句)と被修飾語(名詞)とのあいだに「之」が割り込む場合があるということです。
《「之」介入現象》
・名詞+「之」+名詞
40 当世之民 (当世之ノ民) =当世の民
・形容詞句+「之」+名詞
41 不レ忍人之心 (不ル忍ビ人ニ之ノ心) =人に忍びざるの心
40「当世之民」は、すんなり耳に入ってくるでしょう。それに対して、41「不忍人之心」は、日本語の語感に抵抗をもたらす響きです。この「不ル」(ざる)は連体形であり、そもそも連体形は「体言(=名詞)に連なる形」なのですから、直接に名詞「心」と結びついて「人に忍びざる心」となるはず。不要な「の」の割り込みは、いかにも耳障りでしょう。日本語ならば、誰もが「人を愛する心」と言い、「人を愛するの心」とは言わないので。けれども、漢文では、現に「之」字が存在する以上、置き字扱いすることなく、機械的に「之」と訓読するのが通例のため、勢い「人に忍びざるの心」と読まざるを得ません。日本語としては不自然でも、訓読としては常用される言い回しなのです。
ともあれ、今は、右のように「之」が修飾語と被修飾語のあいだに介入する場合があるという事実を認識しておいてください。これを《「之」介入現象》と名づけておきましょう。復文では、たとえば書き下し文「人の心」に見える助詞「の」が、送り仮名の「の」として「人ノ心」になるのか、それとも漢字「之」の読みとして「人之心」になるのか、自ら判断せねばならぬ場面に見舞われることになります。
ただし、右を逆に言えば、形容詞的修飾構造においては、「之」が介入する場合を除き、修飾語(形容詞など)と被修飾語(名詞)は直接に結びつくということにほかなりません。修飾語と被修飾語の距離をmと置けば、あくまでm=0が原則。例外的にm≠0ならば、必ずm=1すなわち「之」となるわけです。
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修飾語為形容詞・名詞・動詞,被修飾語為名詞的修飾構造:
| a 形容詞+名詞 | 32 善人(善き人) 33 白馬(白き馬) |
| b 名詞+名詞 | 34 山頂(山の頂) |
| c 動詞+名詞 | 35 獣心(獸之心) 36 流水(流動之水) 37 往時(往昔之時) |
| d 形容詞句+名詞 | 38 苗而不秀者(苗而未秀之物) 39 好徳如好色者(好德如好色之人) |
a〜c復文時語序無需轉換;d(形容詞句)最難,詳見「Ⅳ発展篇」。
《「之」介入現象》:在b・d結構中,修飾語與被修飾語之間有時插入「之」:
| 40 | 当世之民 ── 自然,「の」為送り仮名 |
| 41 | 不忍人之心 ── 「之」不作置字,訓讀為「の」,日語感覺別扭但訓讀常用 |
原則:m=0(修飾語與被修飾語直接結合);唯一例外:m=1(插入「之」)。
イ 副詞的修飾構造pp. 54–58
修飾語が副詞、被修飾語が名詞以外の要素、すなわち動詞・形容詞・副詞・文となる修飾構造です。
a 副詞+動詞
42 大喜 (大イニ喜ブ) =大いに喜ぶ。
43 悠然去 (悠然トシテ去ル) =悠然として去る。
b 副詞+形容詞
44 甚衆 (甚ダ衆シ) =甚だ衆し。
45 極狭 (極メテ狭シ) =極めて狭し。
c 副詞+副詞
46 不必有徳 (不ズ必ズシモ有ラ徳) =必ずしも徳有らず。
*否定の副詞「不」が副詞「必」を修飾しています。
d 副詞+文
47 不幸、短命死矣 (不幸、短命ニシテ死セリ矣)
=不幸、短命にして死せり。
*副詞「不幸」が下文「短命死矣」全体を修飾しています。英語の文修飾副詞〈regrettably, unfortunately, unhappily〉などに相当すると考えてください。置き字「矣」は、完了を表します。
次のように、前位副詞句(後述)も、副詞と同じく動詞などを修飾する機能を持ちます。前に言及した形容詞句ほど複雑ではありませんが、〈前置詞+名詞〉という構造になります。
M V
48 朋自遠方来 (朋自リ遠方来タル) =朋 遠方より来たる。
*「自」は、英語の〈from〉に相当する前置詞で、「自リ」と読みます。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、前位副詞句の内部の前置詞と名詞、すなわち「遠方より」→「自遠方」の部分です。
49 女為悦己者容 (女ハ為ニ悦ブ己ヲ者ノ容ヅクル)
=女は己を悦ぶ者の為に容づくる。
*「為」は、英語の〈for, for the sake of〉に相当する前置詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と目的語、すなわち「己を悦ぶ」→「悦己」の部分です。前位副詞句の内部でも、前置詞と名詞、すなわち「己を悦ぶ者の為に」→「為悦己者」の語順変換が必要となります。
名詞がそのまま副詞に転用されて動詞を修飾する場合もありますので、ちょっと注意しておきましょう。名詞に付いている特徴的な送り仮名から、名詞が副詞に転用された表現だとわかります。一瞥してわかるように、50「目礼す」・52「師事す」・53「客死す」・54「蛇行す」・55「雲散霧消す」のごとく、ほとんどが音読みサ変動詞として訓読することの多い語句ですので、過度に懸念するには及びません。
p 名詞→副詞〔手段・素材〕 *名詞に送り仮名「もて」が付く。
50 目礼 (目モテ礼ス) =目もて礼す。
51 土造 (土モテ造ル) =土もて造る。
q 名詞→副詞〔身分・資格〕 *名詞に送り仮名「として」が付く。
52 師事 (師トシテ事フ) =師として事ふ。
53 客死 (客トシテ死ス) =客として死す。
r 名詞→副詞〔比喩・類似〕 *名詞に送り仮名「のごとく」が付く。
54 蛇行 (蛇ノゴトク行ク) =蛇のごとく行く。
55 雲散霧消 (雲ノゴトク散リ霧ノゴトク消ユ) =雲のごとく散り霧のごとく消ゆ。
ただし、時間を表す名詞や場所を表す名詞句がそのまま副詞・副詞句に転用されると、特徴的な送り仮名は付きません。時間の副詞は、訓読すれば日本語と同じ語感で容易に把握できます。場所の副詞句は、本来は冠せられるべき前置詞「於」が省かれたものと考えればわかりやすいでしょう。
s 名詞→副詞〔時間〕
56 吾日三省吾身 (吾日ニ三タビ省ミル吾ガ身ヲ)
=吾 日に三たび吾が身を省みる。
*名詞「日」が副詞(「日ごと」の意)に転用された例です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と目的語、すなわち「吾が身を省みる」→「省吾身」の部分です。
t 名詞→副詞句〔場所〕
57 和氏得玉璞楚山中 (和氏得タリ玉璞ヲ楚ノ山中ニ)
=和氏 玉璞を楚の山中に得たり。 〇和氏=人名。 〇楚=国名。
*名詞「楚山中」が副詞句(「楚の山中で」の意)に転用された例です。後位副詞句「於楚山中」の前置詞「於」が省略されたものと見なせば、容易に理解できます。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と〈目的語+後位副詞句〉、すなわち「玉璞を楚の山中に得たり」→「得玉璞楚山中」の部分です。〈目的語+後位副詞句〉について、語順を変換する必要はありません。
右のp~sに関し、復文のさいに別して注意すべき点はありません。書き下し文の語順どおりに記すだけです。tに見える後位副詞句については、次節で詳しく説明します。
確認しておくべきは、ここまで挙げた例文からわかるように、形容詞的修飾構造と同じく、副詞的修飾構造においても、修飾語(副詞・前位副詞句)と被修飾語(動詞など)は直接に結びつき、修飾語と被修飾語の距離をmと置けばm=0が原則だということです。この形容詞的修飾構造と副詞的修飾構造に共通する原則を《修被直結原則》と呼んでおきましょう。例外は、既述のごとく、形容詞的修飾構造における《「之」介入現象》のみと考えて差し支えありません。
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修飾語為副詞,被修飾語為名詞以外要素(動詞・形容詞・副詞・文)的修飾構造:
| a 副詞+動詞 | 42 大喜(大為高興) 43 悠然去(悠然而去) |
| b 副詞+形容詞 | 44 甚衆(甚多) 45 極狭(極為狹窄) |
| c 副詞+副詞 | 46 不必有徳(不一定有德) ※「不」修飾「必」 |
| d 副詞+文 | 47 不幸、短命にして死せり(不幸短命而死) ※「矣」=完了置字 |
前位副詞句(M)也具有修飾動詞的功能,一般形為〈前置詞+名詞〉:
| 48 | 朋 遠方より来たる → 朋自遠方来 「自」= from;復文需轉換:「遠方より」→「自遠方」 |
| 49 | 女は己を悦ぶ者の為に容づくる → 女為悦己者容 「為」= for;需轉換:「己を悦ぶ」→「悦己」・「己を悦ぶ者の為に」→「為悦己者」 |
名詞轉用為副詞(識別方式:特殊送り仮名):
| p〔手段:もて〕 | 50 目もて礼す 51 土もて造る |
| q〔身分:として〕 | 52 師として事ふ 53 客として死す |
| r〔比喩:のごとく〕 | 54 蛇のごとく行く 55 雲のごとく散り霧のごとく消ゆ |
| s〔時間:無特殊送仮名〕 | 56 吾日三省吾身 → 需轉換「吾が身を省みる」→「省吾身」 |
| t〔場所:「於」省略〕 | 57 和氏得玉璞楚山中 → 需轉換「玉璞を楚の山中に得たり」→「得玉璞楚山中」 |
《修被直結原則》:形容詞的・副詞的修飾構造共通──修飾語與被修飾語的距離m=0為原則。唯一例外:《「之」介入現象》(m=1)。
ウ 前位副詞句と後位副詞句pp. 59–68
今までの例文に関する説明のなかで、時として前位副詞句(48・49)および後位副詞句(14~16の文型変化・57)という呼称を使ってきましたが、ここで改めて二種の副詞句について説明しましょう。この両者の捌き方さえ心得ておけば、復文作業の負担がはるかに軽くなるに違いありません。逆に言えば、前位副詞句と後位副詞句の扱い方があやふやなまま打ち過ごしていると、いつまで経っても原文の語順を取り違え、復文のたびに苦しむことになってしまうのです。
名称から見て、両者がそれぞれ文中で占める位置はわかりやすいでしょう。述部の中核語(多くは動詞、時に形容詞)の前方に位置するのが前位副詞句M、後方に位置するのが後位副詞句Qです。いずれも一般形は〈前置詞+名詞〉。前掲の例文で確認しておけば、略号Mで示したごとく、48の〈前置詞「自」+名詞「遠方」〉=「自遠方」が中核動詞「来」の上方に位置する前位副詞句、49の〈前置詞「為」+名詞「悦己者」〉=「為悦己者」も中核動詞「容」の上方に位置する前位副詞句です。また、14~16の文型変化に見える〈前置詞「於」+名詞「単于/秦/汝」〉=「於単于/於秦/於汝」は、それぞれ中核動詞「遺/予/賜」の下方に位置する後位副詞句、57の〈前置詞(〔於〕省略)+名詞「楚山中」〉=「〔於〕楚山中」も中核動詞「得」の下方に位置する後位副詞句となります。なお、後位副詞句という言葉こそ使いませんでしたが、19に見えた「於水上」も、略号Qが示すように、動詞「浮」の後位副詞句です。一文全体の中核となる動詞は「見」ですが。
副詞句である以上、前位副詞句も後位副詞句も文型を構成する要素にはなりません。しかし、場合によっては、前位副詞句なのか後位副詞句なのかによって訓読の語順・形式が異なり、結果として、いざ復文に臨んだとき、語順の組み立て方に大きな相違をもたらしますので、ぜひ両者の区別を明確に意識しておいてください。
以下、二つの視点から二種の副詞句について詳述しましょう。一つめは文型を用いた解説、二つめは五つの代表的な前置詞ごとの説明です。
① 文型と副詞句
副詞句が活躍するのは、五文型のうち、第一文型・第二文型〔変形〕・第三文型です。第二文型・第四文型・第五文型が副詞句を伴うこともありますが、どちらかと言えば例外に属し、もし副詞句が現れたとしても、第三文型その他から容易に理解できますので、心配は無用です。
1 第一文型=(S)V と後位副詞句
S V Q
58 王立於沼上 (王立ツ於沼上ニ)
=王 沼上に立つ。
*置き字「於」は、英語〈on〉に相当する前置詞です。「於」は、ほとんど万能前置詞とも呼べる語で、以下、種々の意味の後位副詞句を形成します。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と後位副詞句、すなわち「沼上に立つ」→「立於沼上」の部分です。
V Q V Q V Q
59 興於詩、立於礼、成於楽 (興リ於詩ニ、立チ於礼ニ、成ル於楽ニ)
=詩に興り、礼に立ち、楽に成る。
*三つの置き字「於」は、いずれも英語〈at, in〉などに相当する前置詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、それぞれの動詞と後位副詞句、すなわち「詩に興り」→「興於詩」、「礼に立ち」→「立於礼」、「楽に成る」→「成於楽」の部分です。
右から明らかなように、復文にさいして、動詞と後位副詞句の語順を変換する必要があります。これを〔V/Q〕変換と名づけておきましょう。
2′ 第二文型〔変形〕=(S)C と後位副詞句
S C Q
60 季氏富於周公 (季氏富メ於周公ヨリモ) 〇季氏・周公=人名。
=季氏 周公よりも富む。
*置き字「於」は、英語〈than〉に相当する前置詞です。比較を表すとき、英語の形容詞では原形〈rich〉が比較級〈richer〉に変化しますが、漢文は語形変化を起こさないので、「富」には何も変化が生じません。なお、形容詞「富」を動詞「富む」として訓ずるのは、日本語に「富」を形容詞として訓読みする習慣がないためで、あくまで訓読の便宜によって生じた品詞転換です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、形容詞と後位副詞句、すなわち「周公よりも富む」→「富於周公」の部分です。
S adv C Q
61 吾一日長乎爾 (吾一日長ジ乎爾ヨリモ)
=吾 一日爾よりも長ぜり。
*置き字「乎」は、60に見える「於」と同じく、英語〈than〉に相当する前置詞です。「長」は英語の比較級〈older, senior〉などに相当しますが、やはり語形変化を起こしません。「一日」は、名詞がそのまま転用された時間の副詞で、ここでは形容詞「長」の程度(「ほんの少しだけ」の意)を表しています。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、形容詞と後位副詞句、すなわち「爾よりも長ぜり」→「長乎爾」の部分です。
右でわかるとおり、復文では形容詞と後位副詞句の語順を変換する必要があります。これを〔A/Q〕変換と呼んでおきましょう。
3 第三文型=(S)V O と前位副詞句・後位副詞句
M V O
62 以五十歩笑百歩 (以テ五十歩ヲ笑フ百歩ヲ)
=五十歩を以て百歩を笑ふ。
*「以」は、英語〈by, by means of〉〈because of〉などに相当する前置詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と目的語、すなわち「百歩を笑ふ」→「笑百歩」の部分です。前位副詞句の内部でも、前置詞と名詞、すなわち「五十歩を以て」→「以五十歩」の語順変換が必要となります。前位副詞句「以五十歩」と動詞「笑」は書き下し文の順序どおりに並べるだけで、語順を変換する必要はありません。
M V O
63 与俗同好悪 (与ニ俗同ジウス好悪ヲ)
=俗と好悪を同じうす。
*「与」は、英語〈with〉に相当する前置詞で、「与に」と読みます。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と目的語、すなわち「好悪を同じうす」→「同好悪」の部分です。前位副詞句の内部でも、前置詞と名詞、すなわち「俗と」→「与俗」の語順変換が必要となります。前位副詞句「与俗」と動詞「同」は、書き下し文の順序どおり記せば宜しく、語順を入れ換える必要はありません。
S V O Q
64 斉景公問政於孔子 (斉ノ景公問フ政ヲ於孔子ニ) 〇斉=国名。 〇景公・孔子=人名。
=斉の景公 政を孔子に問ふ。
*置き字「於」は、動作の間接的な対象を表す前置詞で、英語〈ask…of…〉の〈of〉に相当します。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と〈目的語+後位副詞句〉、すなわち「政を孔子に問ふ」→「問政於孔子」の部分です。〈目的語+後位副詞句〉の順序は入れ換える必要がありません。
S V O Q
65 子路逢虎於水 (子路逢フ虎ニ於水ニ) 〇子路=人名。
=子路 虎に水に逢ふ。
*置き字「於」は、英語〈in〉に相当する前置詞です。「虎に水に」がぎこちなく聞こえるかもしれませんが、訓読にしばしば現れる助詞「に」の連用で、訓読としては不自然な響きではありません。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と〈目的語+後位副詞句〉、すなわち「虎に水に逢ふ」→「逢虎於水」の部分です。やはり〈目的語+後位副詞句〉の順序は入れ換える必要がありません。
V O Q
66 救民於水火之中 (救フ民ヲ於水火之中ヨリ)
=民を水火の中より救ふ。
*置き字「於」は、英語〈from〉に相当する前置詞です。
◎書き下し文の語順を変換する必要があるのは、動詞と〈目的語+後位副詞句〉、すなわち「民を水火の中より救ふ」→「救民於水火之中」の全体です。〈目的語+後位副詞句〉の順序は入れ換える必要がありません。
右の五例で理解できるように、復文においては、すでに述べた〔V/O〕変換に加え、前位副詞句の内部で前置詞と名詞を入れ換える〔prep/N〕変換、および動詞と〈目的語+後位副詞句〉の語順を変換する〔V/(OQ)〕変換が必要となります。「(OQ)」の部分、つまり目的語と後位副詞句の順序は変換する必要がありません。
最後に、後位副詞句が二つ並ぶ珍しい例を掲げておきましょう。67は第一文型、68は第三文型で、どちらも主語が省略されています。
V Q Q
67 号泣于旻天于父母 (号泣ス于旻天ニ于父母ニ)
=旻天に父母に号泣す。
*二つの後位副詞句に見える置き字「于」は、「於」と同義の前置詞で、ここでは動詞「号泣」の方向・対象を表し、英語〈toward〉〈for〉に相当します。
◎58・59で用いた〔V/Q〕変換のQが一つ増えただけですから、復文作業は、動詞と二つの後位副詞句、すなわち「号泣」と「于旻天于父母」とを入れ換えて完了です。二つの後位副詞句は書き下し文の語順どおりに並べるのみ。
V O Q Q
68 用牲于社于門 (用ヰル牲ヲ于社ニ于門ニ)
=牲を社に門に用ゐる。
*二つの後位副詞句に見える置き字「于」は、やはり「於」と同義の前置詞で、場所を表し、英語〈on, at〉に相当します。
◎64~66で用いた〔V/(OQ)〕変換にQが一つ加わっただけですから、復文においては、動詞と〈目的語+後位副詞句×2〉、すなわち「用」と「牲于社于門」の順序をそのまま入れ換えることになります。目的語「牲」と二つの後位副詞句「于社于門」は書き下し文の語順そのままに並べておけば宜しい。
敢えて言えば、67には〔V/(QQ)〕変換が、68には〔V/(OQQ)〕変換が必要となりますが、いずれも稀な例ですので、それぞれ前掲の〔V/Q〕変換・〔V/(OQ)〕変換の応用範囲に含めて扱うこととし、個別の変換規則は立てません。
中文翻譯
前位副詞句M:位於述部中核語(動詞・形容詞)的前方(上方)。
後位副詞句Q:位於述部中核語的後方(下方)。
兩者一般形均為〈前置詞+名詞〉。兩者的區別決定訓讀語序與復文組建方式的重大差異。
| 前位M(例) | 48「自遠方」(在「来」之前) 49「為悦己者」(在「容」之前) |
| 後位Q(例) | 14–16「於単于」等 57「〔於〕楚山中」 19「於水上」 |
副詞句主要用於第一文型・第二文型〔変形〕・第三文型。各文型的變換規則:
| 〔V/Q〕変換 | 第一文型+後位Q:動詞與後位副詞句需互換語序 58 立→沼上(王立於沼上) 59 興→詩、立→礼、成→楽 |
| 〔A/Q〕変換 | 第二文型〔変形〕+後位Q:形容詞與後位副詞句需互換 60 富→周公(季氏富於周公) 61 長→爾(吾一日長乎爾) |
| 〔prep/N〕変換 〔V/(OQ)〕変換 | 第三文型+前位M・後位Q: 62 以五十歩笑百歩 63 与俗同好悪 64 斉景公問政於孔子 65 子路逢虎於水 66 救民於水火之中 ※〈目的語+後位副詞句〉的相對語序不變 |
| 後位Q×2 | 67 号泣于旻天于父母(〔V/QQ〕) 68 用牲于社于門(〔V/OQQ〕) ※均視為〔V/Q〕・〔V/OQ〕之應用,不另立規則 |
② 代表的な前置詞pp. 68–80
前位副詞句と後位副詞句に用いられる代表的な前置詞は、次の五つです。61に現れた「乎」や67・68で見た「于」は、ともに「於」と同義の前置詞ですから、「於」に含めて考えることにしましょう。
〔後位副詞句〕於(乎・于)
現行の書き下し文の体裁では、一般に表記が三種に分かれます。前位副詞句のうち、「以」は「以て」、「為」は「為に」と漢字で記されますが、「自」は「より」、「与」は「と」のごとく仮名書きになり、後位副詞句の「於」に至っては、置き字であるがゆえに、影も形もなくなってしまうのが実際です。
問題は、前位副詞句と後位副詞句の判別です。もし「以・為・自・与」を用いた後位副詞句や「於」に導かれた前位副詞句が現れたりしたら、どのように前位か後位かを見抜けばよいのでしょうか。
前位副詞句・後位副詞句という名称は、原文または訓読文において、述部の中核語(多くは動詞、時に形容詞)に対する位置が前方か後方かによって付けられたものにすぎず、書き下し文における位置を表すわけではありません。復文の結果として復元された原文において始めて前位副詞句か後位副詞句かが明瞭になるにすぎず、書き下し文のなかで二種の副詞句をどう判別するのかがわからなければ、復文のしようがなくなってしまいます。
けれども、実のところ、右の五つの前置詞が用いられた副詞句について過度に心配する必要はありません。前位か後位かによって訓読の方法が変わる前置詞もありますし、そもそも前位か後位かがほとんど決まっている前置詞もあるからです。以下、それぞれの前置詞について検討してゆきましょう。
ⅰ 「以」
「以」が導く副詞句の前位と後位を判別するのは、きわめて容易です。なぜなら、「以」は、前位副詞句では「以テNヲVス」(Nを以てVす)と読みますが、後位副詞句では「Vスルニ以テスNヲ」(VするにNを以てす)とサ変動詞化して訓読するからです。前位と後位とで訓読が異なるうえ、書き下し文においても、前位の場合は動詞の上方に記され、後位の場合は動詞の下方に記される。たやすく見分けがつくことでしょう。
M V O
69 君以礼使臣 (君以テ礼ヲ使フ臣ヲ)
=君 礼を以て臣を使ふ。 〔前位副詞句〕
S V O Q
70 君使臣以礼 (君使フニ臣ヲ以テス礼ヲ)
=君 臣を使ふに礼を以てす。 〔後位副詞句〕
*後位の訓法「Vスルニ以テスNヲ」(VするにNを以てす)を肝に銘じてください。
ⅱ 「為」
「為」が形成する副詞句も前位と後位とで訓読が異なります。書き下し文においても、前位の場合は動詞の上方に、後位の場合は動詞の下方に記されますから、不安を抱く必要はありません。
adv M V
71 皆為利来 (皆為ニ利ノ来タル)
=皆 利の為に来たる。 〔前位副詞句〕
adv V Q
72 皆来為利 (皆来タルハ為ナリ利ノ)
=皆 来たるは利の為なり。 〔後位副詞句〕
*一般形:前位=「為ニNノVス」(Nの為にVす)、後位=「Vスルハ為ナリNノ」(VするはNの為なり)。後位はしばしば「Vスルハ為レNノ也」とも書かれます。
ⅲ 「自」
「自」は、なかなか厄介です。前位副詞句「自NV」(自リNヨリVス)でも後位副詞句「V自N」(Vス自リNヨリ)でも、訓読すれば、結果として書き下し文がまったく同じになってしまうからです。
S M V
73 余自揚州還 (余自リ揚州ヨリ還ル) 〇揚州=地名。
=余 揚州より還る。 〔前位副詞句〕
S V Q
74 余還自揚州 (余還ル自リ揚州ヨリ)
=余 揚州より還る。 〔後位副詞句〕
S V Q
74′ 余還自揚州 (余還ルコト自リ揚州ヨリ)
=余 還ること揚州よりす。 〔後位副詞句〕
*74′のように後位副詞句の「自」を「自リス」(よりす)とサ変動詞化する訓法もありますが、優勢とは言いがたく、書き下し文から前位か後位かを確定するのは一般に不可能です。私見では、「自」を用いる副詞句を復文で無条件のまま出題するのは不適切と考えます。もし出題されたならば、前位副詞句として扱っておくのが穏当でしょう。
ⅳ 「与」
「与」を冠した副詞句が後位副詞句として用いられることはほとんどないでしょう。たとえ稀に現れたとしても、「以」と同じく、異なる訓法を採らざるを得ず、書き下し文における位置も、前位副詞句は動詞の上方に、後位副詞句は動詞の下方に記されるはずですから、懸念するには及びません。
M V
75 与朋友交 (与ニ朋友交ハル)
=朋友と交はる。 〔前位副詞句〕
V Q
76 交与朋友 (交ハルニ与ニス朋友ト) 〔?〕
=交はるに朋友と与にす。 〔後位副詞句〕
ただし、接続詞「与」も存在します。動詞の上方に「X与Y」が現れると、文法上、次のような二つの可能性が生じます。
→「XとYの両者がVする」意。 ◇主語=X+Y
〔SM構造〕X与YV(X与ニYVス) =X YとVす *「与」=前置詞〈with〉
→「XがYと一緒にVする」意。 ◇主語=X
S V
77 固与奴奔走 (固ト与レ奴ト奔走ス) 〇固=人名。 〇奴=下男。
=固と奴と奔走す。 〔並列構造〕 →固と下男の二人は急いで走り去った。 ◇主語=固+奴
S M V
78 固与奴奔走 (固与ニ奴奔走ス)
=固 奴と奔走す。 〔SM構造〕 →固は下男と一緒に急いで走り去った。 ◇主語=固
復文のさい、接続詞「与」と前置詞「与」を判別するのは容易です。助詞「と」が、連続する名詞それぞれに付いていれば接続詞「与」、単独の名詞に一つだけ添えられていれば前置詞「与」と考えて差し支えないでしょう。
さらに、有名な成語「習ひ性と成る」の復文を例に挙げましょう。正解は〇のみ、他の二つは誤答です。
S M V
79 〇習与性成 (習ヒ与ニ性成ル) =習ひ性と成る
S V C
×習成性 (習ヒ成ルレ性ト) =習ひ性と成る
V O
×成習性 (成ス習性ヲ) =習ひ性と成る
*正解の原文だけが四字から成り、他の二つの原文は三字から成る——これが要点です。正解の前位副詞句「与性」に注目してください。
ⅴ 「於」
「於」は、「以」や「為」と同じく、前位か後位かによって訓読の方法が変わります。後位副詞句では置き字として読まずにすませますが、前位副詞句に用いられたときは「於て」と訓読することになっています。つまり、「於」を読んでいるか否かで、前位か後位かが判別できる。一般形で示せば、前位副詞句が「於テNニVス」(Nに於てVす)、後位副詞句が「VスNニ」(NにVす)となります。
M V O
80 於城外飲酒 (於テ城外ニ飲ム酒ヲ)
=城外に於て酒を飲む。 〔前位副詞句〕
V O Q
81 飲酒於城外 (飲ム酒ヲ於城外ニ)
=酒を城外に飲む。 〔後位副詞句〕
*書き下し文における目的語「酒を」と副詞句「城外に(於て)」の順序からも、副詞句「於城外」が前位なのか後位なのかを容易に見分けられます。
この目的語と副詞句との順序によって副詞句が前位か後位かを確定する方法は、意外に広く応用が利きます。「於」がない場合、つまり名詞がそのまま副詞句に転用されている場合は、書き下し文における目的語と副詞句の順序こそが前位か後位かを判別する基準になるからです。
S adv M V O
82 管寧華歆共園中鋤菜 (管寧華歆共ニ園中ニ鋤ク菜ヲ) 〇管寧・華歆=人名。
=管寧・華歆 共に園中に菜を鋤く。
*書き下し文が「園中に菜を鋤く」ならば「園中」は前位副詞句(原文:園中鋤菜)。「菜を園中に鋤く」ならば後位(原文:鋤菜於園中)。目的語と副詞句の順序が前位・後位の判断基準となります。
ここで、前置詞「於」が省かれた後位副詞句の例を三つ補いましょう。各訓読文に見える「〔於〕」が前置詞「於」の省略を表します。
S adv V Q
83 孔子独立郭東門 (孔子独リ立ツ〔於〕郭ノ東門ニ)
=孔子 独り郭の東門に立つ。
*第一文型の一文で、場所を表す名詞「郭東門」が後位副詞句に転用されています。
◎復文では〔V/Q〕変換を適用します。
S V O Q
84 景公問政孔子 (景公問フ政ヲ〔於〕孔子ニ) 〇景公=人名。
=景公 政を孔子に問ふ。
*第三文型の一文で、動詞「問」の間接的対象たる「孔子」が後位副詞句に転用されています。ほぼ同一の字句から成る64では、「孔子」に前置詞「於」が冠せられています。
◎復文では〔V/(OQ)〕変換を適用します。
S V O Q
85 孔子学鼓琴師襄子 (孔子学ブ鼓スルヲ琴ヲ〔於〕師襄子ニ) 〇師襄子=人名。楽師の襄子。
=孔子 琴を鼓するを師襄子に学ぶ。
*第三文型の一文で、動詞「学」の間接的対象たる名詞「師襄子」が後位副詞句に転用されています。目的語「鼓琴」の内部は「鼓琴」の構造、つまり〈動詞+目的語〉=目的語という文法関係になり、英語〈how to play the zither〉に相当します。
◎復文では〔V/(OQ)〕変換を適用します。
14~16の文型変化に説明を加えたとき、「もとIOであった名詞に多くは前置詞「於」が付いて後位副詞句を成す」(→p. 38)と記しましたが、あくまで「多くは」にすぎません。84でわかるように、前置詞「於」が省略されて、一見〈SVOO〉としか思えない文章も現れるわけです。
以上が前位副詞句と後位副詞句に関する説明です。あれこれ複雑に映ったかもしれませんが、少し復文に慣れさえすれば、前位・後位の扱いは、さほど難度の高い作業にはなりません。何か迷いが生じたときは、右の58~85を見返してください。
中文翻譯
前位・後位副詞句所用的代表性前置詞共五個:〔前位〕以・為・自・与;〔後位〕於(乎・于同義)。書き下し文中,「以」・「為」用漢字寫出,「自」→「より」・「与」→「と」以假名書寫,「於」因是置字而完全消失。
| 前置詞 | 前位訓法 | 後位訓法 | 判別方法 |
|---|---|---|---|
| 以 | 以テNヲVス (Nを以てVす) | Vスルニ以テスNヲ (VするにNを以てす) | 訓法不同+書き下し文位置不同 →容易判別 |
| 為 | 為ニNノVス (Nの為にVす) | Vスルハ為ナリNノ (VするはNの為なり) | 訓法不同+書き下し文位置不同 →容易判別 |
| 自 | 自リNヨリVス | Vス自リNヨリ(同形) | 書き下し文無法判別;遇到時建議視為前位 |
| 与 | 与ニNVス | (幾乎不存在) | 注意與接続詞「与」的區別:連續名詞各附「と」→接続詞;單一名詞附「と」→前置詞 |
| 於 | 於テNニVス (Nに於てVす) 讀「於て」 | VスNニ (NにVす) 置字,不讀 | 讀「於て」→前位;不讀→後位。目的語與副詞句的順序也是判別基準 |
例文一覧(pp.68–80):
| 69 | 君以礼使臣(礼を以て臣を使ふ)→ 前位M |
| 70 | 君使臣以礼(臣を使ふに礼を以てす)→ 後位Q |
| 71 | 皆為利来(利の為に来たる)→ 前位M |
| 72 | 皆来為利(来たるは利の為なり)→ 後位Q |
| 73 | 余自揚州還(揚州より還る)→ 前位M |
| 74/74′ | 余還自揚州(揚州より還る)→ 後位Q(書き下し文同形) |
| 75 | 与朋友交(朋友と交はる)→ 前位M |
| 76 | 交与朋友(交はるに朋友と与にす)→ 後位Q〔?〕 |
| 77/78 | 固与奴奔走 → 並列構造(二人ともに走る)or SM構造(固が奴と走る) |
| 79 | 習与性成(習ひ性と成る)→ 〇正解;習成性・成習性 → ×誤答 |
| 80 | 於城外飲酒(城外に於て酒を飲む)→ 前位M |
| 81 | 飲酒於城外(酒を城外に飲む)→ 後位Q |
| 82 | 管寧華歆共園中鋤菜 → 「園中に菜を鋤く」=前位;「菜を園中に鋤く」=後位 |
| 83 | 孔子独立郭東門(郭の東門に立つ)→ 後位Q省略〔V/Q〕変換 |
| 84 | 景公問政孔子(政を孔子に問ふ)→ 後位Q省略〔V/(OQ)〕変換 |
| 85 | 孔子学鼓琴師襄子(琴を鼓するを師襄子に学ぶ)→ 後位Q省略〔V/(OQ)〕変換;目的語「鼓琴」内部は〈V+O〉=O構造 |
說明補充:14–16文型變化時提到「原為IO的名詞多半附前置詞『於』而成後位副詞句」(→p.38),但這只是「多くは(大多如此)」的概括。如例84所示,「於」省略後外觀可能類似〈SVOO〉。以上是前位・後位副詞句說明的全部——稍加練習後辨別前位・後位並不困難,有疑問時可回頭查閱例58~85。
語順変換規則pp. 82–83
最後に、本篇に現れた復文の語順変換規則をまとめておきましょう。太字で記しておいた語順変換の規則八種に些少の整理を加えて再掲すれば、次のとおりです。
・〔V/O〕変換 ・〔V/C〕変換 ・〔V/Q〕変換 ・〔A/Q〕変換
・〔V/(OO)〕変換 ・〔V/(OC)〕変換 ・〔V/(OQ)〕変換 ・〔prep/N〕変換
一瞥してわかるように、前七種には共通した特徴が見られます。述部の中核語(六種は動詞V、一種のみ形容詞A)と、その下接する要素とを、そっくりそのまま入れ換えるということです。「そっくりそのまま」と言うのは、たとえ下接する要素が複数個(OO・OC・OQ)であっても、その内部では語順を変換する必要がなく、書き下し文に現れる順序のまま動詞Vと入れ換えればよいとの意味です。七種では記憶の負担が重すぎると感じる向きは、一つだけ形容詞Aに関わる〔A/Q〕変換を敢えて切り捨て、その他を一括りにして、左のごとき大まかなイメージを脳裡に収めておけばよいでしょう。厳密には不正確なものの、実際の復文作業には大いに役立ちます。
〔V/(O and/or C and/or Q)〕変換
末尾に挙げた〔prep/N〕変換だけは、前七種と毛色が異なり、副詞句の内部における変換規則です。もちろん、前置詞が日本語の助詞を当てて訓読され、書き下し文で仮名書きされている場合(前位〔後位〕副詞句「自」=より、前位副詞句「与」=と)は、それを漢字に書き改めたうえで名詞に冠することになります。また、後位副詞句の前置詞「於(乎・于)」が訓読されずに置き字として扱われ、書き下し文に現れない場合については、次篇を参照してください。すでに記したように、本書に関するかぎり、置き字となる前置詞について思い悩む事態は生じません。
長々と説明を連ねてきましたが、これでようやく下準備が終わりました。
それでは、いよいよ復文作業の現場に足を踏み入れることにしましょう。
中文翻譯
最後,彙整本篇出現的語序變換規則。太字所示八種規則稍加整理後重新列出如下:
・〔V/O〕變換 ・〔V/C〕變換 ・〔V/Q〕變換 ・〔A/Q〕變換
・〔V/(OO)〕變換 ・〔V/(OC)〕變換 ・〔V/(OQ)〕變換 ・〔prep/N〕變換
一眼可知,前七種具有共同特徵:將述部核心詞(六種為動詞V,一種為形容詞A)與其下接要素整體對調。「整體對調」的意思是:即使下接要素有複數個(OO・OC・OQ),其內部語序無需變換,直接按書き下し文中出現的順序與動詞V對調即可。若覺得七種太多負擔,可捨棄唯一涉及形容詞A的〔A/Q〕變換,將其餘六種合併為一個大致印象:
〔V/(O and/or C and/or Q)〕變換
最後一種〔prep/N〕變換與前七種性質不同,是副詞句內部的變換規則。前置詞「自」・「与」在書き下し文中以假名書寫(より・と)時,需改回漢字再冠名詞。後位副詞句的前置詞「於(乎・于)」作置き字不讀,故書き下し文中完全消失,詳見下篇(本書範圍內無需為此煩惱)。
至此,準備工作終於大功告成。讓我們正式踏入復文作業的現場吧。