これならわかる復文の要領 ―― 漢文学習の裏技 ――

古田島洋介著 / 新典社選書83 / 新典社
p.06 Ⅲ 修練篇・問題(pp. 137–171)

修練問題しゅうれんもんだい1 置き字おきじ「而」 Q11–Q18pp. 137–140

本篇ほんへんからは、個別こべつ語句ごく焦点しょうてん絞っしぼっ練習れんしゅう入りいりましょう。

「而」があると、たいてい直前ちょくぜん送り仮名おくりがな接続助詞せつぞくじょし「て」を付けつけ訓読くんどくすることになっています。一般いっぱんには「而」の上下じょうげそれぞれに動詞どうし入りいり次のつぎのようなかたちになります。

V₁シテ而V₂ス →V₁してV₂す

不レシテV₁セ而V₂ス →V₁せずしてV₂す

N〔A〕ニシテ而V₂ス →N〔A〕にしてV₂す

解説かいせつ解答かいとう → pp. 172–178

《Q11》仁を求めて仁を得たり。(全五字ぜんごじ第三だいさん字字置き字おきじ「而」)

《Q12》述べて作らず、信じて古を好む。(全八字ぜんはちじ第二だいに六字ろくじ置き字おきじ「而」)

《Q13》君子くんしは和して同ぜず、小人は同じて和せず。(全十二字ぜんじゅうにじ/第四・十字じゅうじ置き字おきじ「而」)

《Q14》千里を遠しとせずして来たる。(全六字ぜんろくじ第五字だいごじ置き字おきじ「而」)

《Q15》上を犯すことを好まずして乱を作すことを好む。(全八字ぜんはちじ第五字だいごじ置き字おきじ「而」)

《Q16》事に敏にして言に慎む。(全七字ぜんしちじ第二だいに六字ろくじ置き字おきじ「於」/第四字だいよじ置き字おきじ「而」)

《Q17》君子くんしは矜にして争はず、群して党せず。(全十字ぜんじゅうじ/第四・八字はちじ置き字おきじ「而」)

「而」の上下じょうげ意味いみ内容ないよう逆接ぎゃくせつになると、「而」の直前ちょくぜん接続助詞せつぞくじょし「ども」が現れあらわれ場合ばあいもあります。

《Q18》視れども見えず、聴けども聞こえず。(全八字ぜんはちじ第二だいに六字ろくじ置き字おきじ「而」)

中文翻譯

修練篇針對個別語句進行集中練習。「而」作為置き字(接続詞),在書き下し文中被省略,但其接續功能由送り仮名的接続助詞「て」來體現。復文時,見到「(ず)して」「にして」,其後直接跳過「而」即可。三種一般形:①V₁シテ而V₂(順接)②不V₁セ而V₂(否定+順接)③N〔A〕ニシテ而V₂(名詞・形容詞+而)。逆接時,接続助詞「て」→「ども」,要領相同。

〔付〕「以」 Q19–Q20pp. 141–142

「而」と同じおなじ接続詞せつぞくしとして用いもちいられるたんようの「以テ」についても練習れんしゅうしておきましょう。「而」が置き字おきじであるのに対したいし、「以」は必ずかならず「以(もつ)テ」と発音はつおんします。復文ふくぶん要領ようりょうは「而」とまったく同じおなじです。

《Q19》一を聞きて以て十を知る。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q20》己を修めて以て百姓を安んず。(全六字ぜんろくじ置き字おきじナシ)

中文翻譯

單用的「以て」有兩種用法:①前置詞「以て」(省略了N)→補讀「以て之を」;②接続詞「以て」(與「而」同用法)。本題的「以て」屬於②。復文要領與「而」相同:見到「聞きて」「修めて」的接続助詞「て」,其後直接接「以」(不是置き字,要寫出來)。

修練問題しゅうれんもんだい2 存在表現そんざいひょうげん「有」「無」 Q21–Q28pp. 143–145

「有」「無」は、英語えいごの〈there is (no)...〉と似たにたような語位ごい占めしめます。漢文かんぶんとしてはどちらも動詞どうしです。

 Lニ有レリN →LにN有り  (有:NN〈新情報じょうほう〉、位置いちL→上に)

 Nハ在レリLニ →N Lに在り (在:NN〈旧情報じょうほう〉、位置いちL→下に)

 有二リN一於レテLニ →LにN有り (後位副詞句こういふくしく「於L」を使う形)

解説かいせつ解答かいとう → pp. 178–184

《Q21》徳は孤ならず、必ず隣有り。(全六字ぜんろくじ置き字おきじナシ) ○隣隣隣人。

《Q22》可も無く不可ふかも無し。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q23》人にして遠き慮り無ければ、必ず近き憂へ有り。(全九字ぜんくじ第二だいに字字置き字おきじ「而」)

《Q24》天下てんかに道有れば、則ち政大夫に在らず。(全十字ぜんじゅうじ置き字おきじナシ)

《Q25》死生命有り、富貴ふうき天に在り。(全八字ぜんはちじ置き字おきじナシ)

《Q26》此に人有り。(全四字ぜんよじ第三だいさん字字置き字おきじ「於」)

《Q27》斯に美玉有り。(全五字ぜんごじ第四字だいよじ置き字おきじ「於」)

《Q28》功は天下てんかに二つ無し。(全六字ぜんろくじ第四字だいよじ置き字おきじ「於」)

中文翻譯

「有」對應英語〈there is〉,「無」對應〈there is no〉,漢文中均為動詞。「有」:存在範圍L在上,存在物N在下(LにN有り);N為新情報。「在」:存在物N為主語在上,存在範圍L在下(N Lに在り);N為已知舊情報。後位副詞句形:有二N一於L(=LにN有り),「於」為置き字前置詞。

修練問題しゅうれんもんだい3 助動詞じょどうしるい Q29–Q49pp. 147–160

漢文かんぶん助動詞じょどうし動詞どうし先行せんこうし、〈助動詞じょどうし動詞どうし〉の語順ごじゅん取りとります。否定ひてい「不」は副詞ふくしとして助動詞じょどうし掛かかかり、〈「不」+助動詞じょどうし〉となります(「不能ふのう」「不可ふか」など)。

解説かいせつ解答かいとう → pp. 184–200(修練問題しゅうれんもんだい3・4合わあわせて pp. 200–215 も含むふくむ

1 「能」(よく/あたふ)

能クVス →能(よ)くVす

不能ふのうハVスル(コト) →Vする(こと)能(あた)はず

《Q29》唯だ仁者じんしゃのみ能く人を好み能く人を悪む。(全九字ぜんくじ置き字おきじナシ)

《Q30》父母ふぼの命と雖も、制すること能はざるなり。(全九字ぜんくじ置き字おきじナシ)

2 「可」(べし)

可シVス →Vすべし   不可ふかカラVス →Vすべからず

《Q31》事に従ふを好みて亟しば時を失ふ、知と謂ふべきか。(全十一字ぜんじゅういちじ第四字だいよじ置き字おきじ「而」/第十一字だいじゅういちじ疑問ぎもん助詞じょし「乎」)

《Q32》志を奪ふべからざるなり。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q33》朽木は雕るべからざるなり。(全六字ぜんろくじ置き字おきじナシ) ○雕雕彫。

《Q34》後生畏るべし。(全四字ぜんよじ置き字おきじナシ)

《Q35》言は慎まざるべからざるなり。(全六字ぜんろくじ置き字おきじナシ)

3 「得」(う・え)

得レVスル(コト)ヲ →Vする(こと)を得(う)

不レ得レVスル(コト)ヲ →Vする(こと)を得(え)ず

《Q36》山中の木不材を以て其の天年を終ふるを得たり。(全十二字ぜんじゅうにじ置き字おきじナシ/第八字だいはちじ「得」)

《Q37》之を言ふことを得ず。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q38》刑人を委用して之に国命を寄せざるを得ず。(全十一字ぜんじゅういちじ置き字おきじナシ/第二だいに字字「得」)

4 「可以」「足以」「得而」

可二以テV一ス →以てVすべし

足二以テV一スルニ →以てVするに足る

得テ而Vス →得てVす

《Q39》不仁者じんしゃは以て久しく約に処るべからず、以て長く楽しきに処るべからず。(全十五字ぜんじゅうごじ置き字おきじナシ)

《Q40》以て其の身を養ひ其の天年を終ふるに足る。(全九字ぜんくじ置き字おきじナシ)

《Q41》聖人せいじんは吾得て之を見ず。(全九字ぜんくじ/第六・九字くじ置き字おきじ「而・矣」)

5 再読文字さいどくもじ

未ダレVセ →未だVせず(not...yet)

将〔且〕ニレVセント →将に(Vせん)とす(be going to)

当〔応〕ニレVス →当に(Vす)べし(should)

宜シクレVス →宜しく(Vす)べし(should)

須ラクレVス →須らく(Vす)べし(must)

猶ホレVスルガ〔Nノ〕 →猶(Vするが〔Nの〕)ごとし(just as)

盍ゾレVセ →盍ぞ(Vせ)ざる(why not)

《Q42》未だ室に入らざるなり。(全五字ぜんごじ第三だいさん字字置き字おきじ「於」)

《Q43》酒を引きて且に之を飲まんとす。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q44》惟だ仁者じんしゃのみ宜しく高位に在るべし。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ) ○惟惟唯。

《Q45》若し殿下と命を同じうせば、死すと雖も猶生くるがごとし。(全十字ぜんじゅうじ置き字おきじナシ)

《Q46》子盍ぞ斉に事へんことを求めて以て民に臨まざる。(全九字ぜんくじ第五字だいごじ置き字おきじ「於」) ○斉斉国名くにな

6 「欲」(じゅん助動詞じょどうし

欲レVセント →Vせんと欲す(want to; be going to)

《Q47》楚の荘王晋を伐たんと欲す。(全六字ぜんろくじ置き字おきじナシ) ○楚・晋晋国名くにな

《Q48》吾事を国に挙げんと欲す。(全六字ぜんろくじ第五字だいごじ置き字おきじ「於」)

《Q49》日暮れんと欲するに、年少の女子を見る。(全八字ぜんはちじ置き字おきじナシ)

中文翻譯

漢文助動詞均置於動詞前方。否定副詞「不」按《修飾原則》緊接助動詞(不能・不可・不得)。各助動詞要點:①「能」—無否定時作副詞「能く」,有否定時作動詞「能はず」;②「可」—「べし」,否定「不可」;③「得」—動詞「う/え」,日語品詞有差異;④「可以」「足以」—書き下し文中「以て」與「べし/足る」可能相距甚遠,需確實二字結合復元;⑤再読文字—文法上多為助動詞,覆蓋於動詞上方即可;⑥「欲」—準助動詞(動詞),語位與助動詞相同。

修練問題しゅうれんもんだい4 使役構文しえきこうぶん Q50–Q53pp. 160–162

語順ごじゅん英語えいご使役構文しえきこうぶんとまったく同じおなじです。使役動詞しえきどうし字種じしゅ出題しゅつだい指定していされます。

使〔令・遣・教・俾〕(人)ヲシテVセ →(人)をしてVせしむ (make someone do)

解説かいせつ解答かいとう → pp. 200–215

《Q50》斉の宣王人をして竽を吹かしむ。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ/使役動詞しえきどうし「使」) ○斉斉国名くにな。○竽楽器がっき

《Q51》子路しろ門人もんじんをして臣たらしむ。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ/使役動詞しえきどうし「使」) ○子路しろ人名じんめい

《Q52》灌嬰をして五千騎を以ゐて之を追はしむ。(全九字ぜんくじ置き字おきじナシ/使役動詞しえきどうし「令」) ○灌嬰嬰人名じんめい

《Q53》吾子をして孟子もうしに問はしめ然る後に事を行はんと欲す。(全十二字ぜんじゅうにじ第六字だいろくじ置き字おきじ「於」/使役動詞しえきどうし「使」) ○孟子もうし人名じんめい

中文翻譯

使役構文語序與英語〈make someone do〉完全相同:使役動詞(使/令等)+人ヲシテ+V。書き下し文中「しむ」對應多個漢字(使/令/遣/教/俾),字種由出題指定。

修練問題しゅうれんもんだい5 「所」「所以ゆえん」 Q54–Q68pp. 163–171

1 「所」(動詞どうし動作どうさ対象たいしょう名詞めいし化)

Nノ〔之〕所レVス(ル) →NのVする所(全体ぜんたい名詞めいし相当そうとう語句ごく

N1ノ〔之〕所レVス(ル)〔之〕N2 →N1のVする所のN2(N2を修飾しゅうしょく

為ニNノ所ト一Vスル →NのVする所と為る(受身形うけみけい

2 「所以ゆえん」(原因げんいん理由りゆう手段しゅだん目的もくてき

Nノ〔之〕所以ゆえんVス(ル) →NのVする所以ゆえん全体ぜんたい名詞めいし相当そうとう語句ごく

Nノ〔之〕所以ゆえんVス(ル)者 →NのVする所以ゆえんの者(名詞めいし「者」を伴う)

解説かいせつ解答かいとう → pp. 200–215

《Q54》君子くんしは争ふ所無し。(全五字ぜんごじ置き字おきじナシ)

《Q55》時の重んずる所、僕の軽んずる所なり。(全八字ぜんはちじ置き字おきじナシ/第二だいに六字ろくじ「之」)

《Q56》富と貴きとは是れ人の欲する所なり。(全九字ぜんくじ置き字おきじナシ)

《Q57》漢軍項王の在る所を知らず。 ○漢漢国名くにな。(全八字ぜんはちじ置き字おきじナシ)

《Q58》吾と子との共に食らふ所なり。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ/第四字だいよじ「之」)

《Q59》己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。(全八字ぜんはちじ第七字だいしちじ置き字おきじ「於」)

《Q60》范増佩ぶる所の玉玦を挙ぐ。 ○范増范増人名じんめい。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ)

《Q61》独り項王のみの殺す所の漢軍数百人なり。 ○漢漢国名くにな。(全十字ぜんじゅうじ置き字おきじナシ)

《Q62》大丈夫の守る所の者は道にして、待つ所の者は時なり。(全十一字ぜんじゅういちじ置き字おきじナシ)

《Q63》太祖流矢の中たる所と為る。(全七字ぜんしちじ置き字おきじナシ)

《Q64》張儀嘗て楚に遊び、楚の相の辱むる所と為る。 ○張儀張儀人名じんめい。○楚楚国名くにな。(全十字ぜんじゅうじ置き字おきじナシ)

《Q65》位無きことを患へず、立つ所以ゆえんを患ふ。(全八字ぜんはちじ置き字おきじナシ)

《Q66》彼は矉の美なるを知れども、矉美なる所以ゆえんを知らず。 ○矉眉をしかめた表情。(全十二字ぜんじゅうにじ第五字だいごじ置き字おきじ「而」)

《Q67》賢臣を親しみ小人を遠ざくるは、此れ先漢の興隆せし所以ゆえんなり。 ○先漢漢前漢。(全十四字ぜんじゅうよじ置き字おきじナシ/第十四字よじ「也」)

《Q68》此の女の嫁がざりし所以ゆえんの者は、将に君子くんしを求めて以て吾が身を託せんとすればなり。(全十五字ぜんじゅうごじ置き字おきじナシ)

以上いじょう修練篇しゅうれんへん練習れんしゅう終わりおわります。ここまでけい六十ろくじゅうはちだいをこなしてくれれば、漢文かんぶん語順ごじゅん対するたいする基礎的きそてき感覚かんかく十分じゅうぶんようわれていることでしょう。

中文翻譯

「所」覆蓋於動詞上方,使動詞的動作對象名詞化(類似英語關係代名詞〈what〉)。「N之所V」可作主語・目的語・修飾語。受身形:「為N所V」→「NにVされる」。「所以」:「所V」+前置詞「以」結合而成,表〈原因・理由・手段・目的〉,常與名詞「者」搭配。復文時,「所」「所以」均位於動詞上方。「所以」前置時→「N之所以V者は…」;後置時→「…N之所以Vなり」。

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