日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法

苅米一志 著 / 日本史史料研究会 監修 / 吉川弘文館 2015
p07 Ⅲ 修飾語・修飾部(pp. 100–152)

Ⅲ 修飾語・修飾部章扉

(1) 目的語・目的節pp. 100–105

A 代名詞としての「之(これ)」

「之」が代名詞として用いられ、「これ」と訓読されることは漢文の初歩であるが、古文書の場合はひたすら「之」を多用する傾向がある。特に、次項で述べる「目的語を導く語」とともに用いられる場合がきわめて多い。

例1 被尋之、 之を尋ねらる、 = これをお尋ねになる。

例2 不可任之、 之に任ずべからず、 = これに任せてはならない。

例3 酒、呑之、 酒、之を呑む。 = 酒を呑む。(題目化)

例4 式目、可被定之、 式目、之を定めらるべし、(題目化) = 式目をお定めになるべきである。

B 目的語を導く語

① 「於」 → を

動詞+目的語A+於+目的語Bという順序で、「AをBに〜する」という意味になる。

例1 寄事於左右、 事を左右に寄す、 = さまざまな言い訳をする。

例2 遣状於弥九郎、 状を弥九郎に遣わす、 = 書状を弥九郎に遣わす。

例3 任法於公方くぼう 法を公方くぼうに任す、 = 法的な裁きを公方くぼうに任せる。

② 「以」 → ~を以て

体言の直前について、「~で以て」、「~を通して」(手段)、「~を使って」(使役)などの意味になる。

例1 以使者ししゃ、令申事由了、 使者ししゃを以て、事の由を申さしめ了んぬ、 = 使者ししゃを遣わして、事情を説明させた。

例2 以小刀、令切給、 小刀を以て、切らしめ給う、 = 小刀で以てお切りになる。

例3 以彼所、宛行了、 彼の所を以て、宛て行い了んぬ、 = その場所(土地)を与えた。

例4 以使者ししゃ、申殿下了、 使者ししゃを以て、殿下に申し了んぬ、 = 使者ししゃを遣わして、殿下に申し上げた。

③ 「由」 → よし

直前に文節と「之」をともない、「~であること」という意味になる。概してこの直後に動詞が来て、その目的語となる。

例1 不例之由、申之、 不例の由、之を申す、 = 病気であるとのことを申す。

例2 可有出帯之由、令仰了、 出帯あるべきの由、仰せしめ了んぬ、 = 文書を持って参上さんじょうすべきである、とのことをおっしゃった。

例3 追而可有沙汰さた之由、所被仰也、 追って沙汰さたあるべきの由、仰せらるる所なり、 = 追って処分があるだろう、とのことをおっしゃるものである。

例4 可被遂御糾明之由、所被仰下也、 御糾明を遂げらるべきの由、仰せ下さるる所なり、 = 御糾明を遂げるべきだ、とのことをおっしゃるものである。

④ 「旨」 → むね

直前に文節と「之」をともない、「~であること」という意味になる。概してこの直後に動詞が来て、その目的語となる。

例1 不分明ふぶんみょう之旨、伝之、 不分明ふぶんみょう(分明ならざる)の旨、之を伝う、 = はっきりしない、ということを伝える。

例2 不可有別事之旨、治定了、 別事あるべからざるの旨、治定し了んぬ、 = それ以外のことをしてはいけない、と定めた。

例3 奉了之旨、申之畢、 うけたまわり了んぬるの旨、之を申し畢んぬ、 = 承知いたしました、とのことを申した。

⑤ 「状」 → じょう

直前に文節と「之」をともない、「~であること」という意味になる。概して、文書の書き止め文言「如件」と併用される場合が多い。Ⅰ(2)③(19頁)の「状」と区別をつけにくいが、あとにくる動詞の目的語になっていると見られるため、ここに分類する。

例1 可沙汰さた付雑掌之状、依仰執達しったつ如件、 雑掌に沙汰さたし付くべきの状、仰せに依り執達しったつ件の如し、 = 雑掌に土地を渡すべきであるとのことを、仰せにより以上の通り下達する。

例2 不可有違犯之状、下知げち如件、 違犯あるべからざるの状、下知げち件の如し、 = 違反をしてはいけないとのことを、以上の通り下達する。

中文翻譯

本節討論目的語與目的節:A「之」(代名詞「これ」,古文書中極為高頻使用)。B 引導目的語的詞:「於」(〜に,引導對象)、「以」(〜を以て,手段或使役)、「由」(よし,意「⋯⋯這件事」)、「旨」(むね,同上)、「状」(じょう,多與「如件」連用)。「由・旨・状」之前需有「之」與體言;後接動詞作其目的語。目的語引導詞「於」的概述(p. 101)及例文(例1「酒、呑之」、例2「可被定之」)均已收錄。

(2) 副詞と連用修飾 A 多用される副詞pp. 106–134

ここでは、古文書・古記録に多用される副詞または副詞的な語を挙げる。

(a) 追加・並列を表す副詞

又・亦(また)= また。さらに
例 奉為 天長地久并摂政家・将軍家しょうぐんけ・又一条大政入道殿御一門繁昌・御息災安穏、永代所寄進也、(『鎌遺』五〇九五号、幸秀寄進状案)
 天長地久ならびに摂政家・将軍家しょうぐんけ、また一条大政入道殿の御一門の繁昌、御息災安穏の奉為に、永代寄進する所なり、
= この世が長く安泰であること、および摂政家・将軍家しょうぐんけ、さらに一条大政入道殿の御一家の繁盛と安穏のために寄進するものである。

猶(なお)= なお。その上
例 早任酒麹売役傍例、厳密相触之、若猶不叙用者、就令註申交名きょうみょう、可有殊沙汰さた之由、所被仰下也、(『京都御所東山文庫所蔵地下文書』細川持之奉書案)
 早く酒麹売役の傍例に任せ、厳密に相触れ、もしなお叙用せずば、交名きょうみょうを註申せしむるに就き、殊なる沙汰さたあるべきの由、仰せ下さるる所なり、
= 早く酒麹売買への課税の先例せんれいに則り、厳密に通達し、それでもなお従わないのならば、名簿を報告させるので厳重な処罰がある、とのことを仰せ下された。

并(ならびに)= ならびに。~と
例 扈従公卿并御共殿上人已下、(『勘仲記』建治二年正月十一日条)
 扈従こしょうの公卿ならびに御共の殿上人已下、 = 付き従う公卿ならびにお供の殿上人以下、

重而(かさねて)= かさねて。再び
例 巨細尚条々じょうじょう、重而以一紙、披露ひろう可申候、(『鎌遺』一四二〇四号、大中臣祐賢書状案)
 巨細こさいなお条々じょうじょう、重ねて一紙を以て、披露ひろう申すべき候、 = 詳細については、再び一通の書状でもって、ご案内あんないいたします。

追而(おって)= おって。後に
例 委尋明、随注申、追而可有御計者、(『吾妻鏡』宝治元年六月五日条)
 委しく尋ねあきらかし、注進ちゅうしんに随い、追って御計らい有るべし、てへり、 = 詳しく追及し、報告に従い、おって処断があるだろう、とのことだ。

且(かつ)= 一方では。一応
例 其外不慮事、且可相支、且可言上、(『鎌遺』三二号、源頼朝下文)
 其の外不慮の事、且つは相支え、且つは言上すべし、 = その他の思いがけないことについては、一方ではそれを防ぎ、一方では報告せよ。

兼而(かねて)= あらかじめ。以前から
例 依不能用意、未進等出来之条、兼而可弁之、(『室町幕府引付史料集成』上、引付四一、長井貞家施行状案)
 用意する能わざるに依り、未進等出来の条、兼ねて之を弁ずべし、 = 準備ができないため、未納分などが発生することについては、あらかじめ弁済しておくこと。

(b) 限定を表す副詞

唯(ただ)= ただ。もっぱら。ひたすら。すぐに
例1 不可及他行、唯相固家門可有其沙汰さた、(『鎌遺』九三一九号、関東かんとう御教書案)
 他行に及ぶべからず、唯家門を相固め其の沙汰さた有るべし、 = 他出してはならない、もっぱら一族の守りを固めその命令(または処置)に従うこと。
例2 早々可申上、唯一事候、(『東寺百合文書』イ‐二三二、室町幕府奉行ぶぎょう人連署奉書)
 早々申し上ぐべし、唯一事候、 = 早々に申し上げるべきである、すぐにも(または、もっぱら)その一事である。
例3 可被尋下候、唯此旨被申入候、(『東寺百合文書』ハ‐一八七、高師泰書状案)
 尋ね下さるべく候、唯此の旨申し入れられ候、 = お尋ね下さるよう、ひたすらこのことだけを申し入れる。

故(ことさらに)= 特に
例 右人、為彼職、有限所当公事等、任請文之旨、無懈怠けたい、可令弁勤之状如件、沙汰さた人百姓等宜承知、勿違失、故下、(『鎌遺』八二五八号、若狭太良荘領所下文案)
 右の人、彼の職として、有限所当公事等、請文の旨に任せて、懈怠けたいなく弁勤せしむべきの条、件の如し、沙汰さた人百姓ら、宜しく承知し、違失するなかれ、ことさらに下す、 = 右の人をその職務につけ、決められた所当公事など、契約書の内容に則って、怠りなく納めさせることは以上の通り。沙汰さた人百姓らは、これをよく承知し、違反をしてはいけない。特に下文を出す。

更(さらに)= さらに
例 右権中将道隆、叙正四位下、極奇怪きかい事、四位正下一姓源氏外、更無此例、(『小右記』天元五年正月六日条)
 右権中将道隆、正四位下に叙す、極めて奇怪きかいのこと、四位正下、一姓(せい)の源氏のほか、さらにこの例なし、 = 右近衛権中将道隆が、(いきなり)正四位下に任ぜられた。極めて珍しいことで、その位に任ぜられることは、(臣籍に下った)源氏以外にはない。

弥(いよいよ)= いよいよ。ますます
例 今晩有夢想事、仍御仏事ごぶつじ、弥可励志之由相存、(『看聞日記』応永二十六年二月七日条)
 今晩夢想の事あり、よって御仏事ごぶつじ、いよいよ志を励ますべきの由、相存ず、 = 今朝、夢のお告げがあった。そこで、仏事にますます励むべきだと思った。

甚(はなはだ)= はなはだ。非常に
例 甚以奇怪きかい、(『民経記』寛喜三年四月二日条)
 甚だ以て奇怪きかい、 = まったく以て奇妙だ。

尤(もっとも)= 最も。特に
例 尤可謂遺恨歟、(『平戸記』仁治三年三月二十八日条)
 尤も遺恨と謂うべきか、 = 最も残念と言うべきだろうか。

偏(ひとえに)= ひとえに。まったく
例 此次、数剋、申承政道事、宮御存知ぞんじ之間、偏是中興之徳化也、(『葉黄記』宝治二年十一月廿一日条)
 このついで、数剋、政道の事を申し承る、宮御存知ぞんじの間、ひとえにこれ中興の徳化なり、 = このついでに、数刻の間、政道のことをお聞きした。宮もご存じであるので、これはひとえに近年きんねんにおける天皇の徳の高まりを示すものである。

悉(ことごとく)= ことごとく。すべて
例 当流文書、悉今度乱中、於宇治平等院宝蔵紛失、(『長興宿禰記』文明十一年十一月廿四日条)
 当流の文書、悉く今度の乱中、宇治平等院の宝蔵において紛失す、 = この家系に伝わった文書は、今回の兵乱により、宇治平等院で紛失した。

能々(よくよく)= よくよく
例 能々可祈念之由、社并御寺に仰下了、(『殿暦』永久四年七月六日条)
 よくよく祈念すべきの由、社ならびに御寺に仰せ下し了んぬ、 = よくよく祈祷するようにと、神社および寺院に命じた。

堅(かたく)= かたく。厳しく
例 任先例せんれい、堅可令禁断也、(『鎌遺』三二五七六号、左衛門少尉某奉書案)
 先例せんれいに任せ、かたく禁断せしむべきなり、 = 先例せんれいに則り、厳しく禁制するべきである。

急度(きっと)= きっと。絶対に
例 都鄙馳走、可為神妙しんみょう由、急度意見簡要候、(『吉川家文書』六七号、足利義輝御内書)
 都鄙馳走、神妙しんみょうたるべきの由、急度意見、簡要に候、 = 都鄙の人々が奔走し、手はずを整えるよう申し入れるのが肝要である。

一向いっこう(いっこう)= すべて。専ら
例 仍諒闇事、可有其沙汰さた条、尤御本意ごほんい一向いっこう憑思食云々うんぬん、(『満済准后日記』永享五年十月廿三日条)
 よって諒闇のこと、その沙汰さたあるべきの条、もっとも御本意ごほんい一向いっこうたのみおぼしめすと云々うんぬん、 = よって天皇の服喪のことにつき、手続きを進めるべきことは(主人の)本意であり、すべてそちらを頼りと思っていらっしゃるとのことだ。

淵底(えんてい)= すっかり。すべて
例 仰、沙汰さた之次、可被究淵底歟、若猶可被召決歟之由、可申関東かんとう、(『経俊卿記』正嘉元年四月十七日条)
 仰す、沙汰さたついで、淵底を究めらるべきか、もしなお召し決せらるべきかの由、関東かんとうに申すべし、 = 仰せがあった。手続きのことについて、徹底的に内容を詰めるべきか、この時点で決定すべきかを幕府に申せ、とのことである。

別面(べっして)= とりわけ。特別に。格別に
例 故北山殿廿五年忌也、別而有御仏事ごぶつじ、(『看聞日記』永享四年五月二日条)
 故北山殿廿五年忌なり、別して御仏事ごぶつじあり、 = 故北山殿の二十五周忌である。特別に仏事があった。

良(やや)= 「良久(ややひさしく)」の形で、「少し」「ちょっと」の意味
例 参内さんだい、次参院、良久候御前、黄昏罷出、(『小右記』永祚元年十二月十七日条)
 参内さんだいす、次いで参院す、やや久しく御前に候じ、黄昏に罷り出づ、 = 内裏に参り、次に院に参った。しばらく院の御前にあり、夕刻に退出した。

聊(いささか)= 多少、若干
例 世上、聊静謐候者可参啓也、(『園太暦』文和四年二月十三日条)
 世上、聊か静謐に候わば、参啓すべき也、 = 世の中が少し静かになったら、参って挨拶しましょう。

白地(あからさまに)= かりそめに。ちょっと
例 将軍家しょうぐんけ、去夜白地入御にゅうご相州そうしゅう御亭ごてい、(『吾妻鏡』元久元年九月十五日条)
 将軍家しょうぐんけ、去んぬる夜、白地に相州そうしゅう御亭ごてい入御にゅうごす、 = 将軍が昨夜、かりに相模守の邸宅にお入りになった。

粗々(あらあら)= おおよそ。大略
例 仍粗々勒状、言上如件、(『鎌遺』七一七八号、筑後高良別宮旧記写)
 よって粗々状に勒し、言上件の如し、 = そこで大略、文書に記して申し上げることは以上の通りである。

(c) 時間経過・頻度を表す副詞

鼂(やがて)= すぐに
例 又京中焼上、乍去鼂而打消云々うんぬん近日きんじつ、毎日如此、(『後慈眼院殿御記』明応三年七月廿二日条)
 また京中焼き上がる、さりながら、やがて打ち消すと云々うんぬん近日きんじつ、毎日かくの如し、 = また洛中が焼失した。しかし、すぐに火は消されたという。最近は、毎日このようなことばかりである。

速(すみやかに)= 速やかに。すぐに
例 背此制約者、守遺誡之輩、速可触申本寺也、(『鎌遺』四三二九号、覚真置文おきぶみ
 この制約に背かば、遺誠を守るの輩、すみやかに本寺に触れ申すべきなり、 = この規制に背いた場合は、遺言を忠実に守る人々が、すみやかに本寺に報告すべきである。

忽(たちまち)= すぐに。突然
例 朝間晴、申刻以後、黒雲早掩、雨忽降、当今初度賀茂行幸也、(『一音院殿御記』弘長二年四月廿日条)
 朝の間晴る、申の刻以後、黒雲早くおおう、雨たちまち降る、当今初度の賀茂行幸なり、 = 朝のうちは晴れていた。申の刻以後、黒雲が早くも覆い、雨が突然降った。当代天皇の初の賀茂行幸である。

漸(ようやく) = 少しずつ。段々に。やっと
例 後冷泉院御時、治暦二年、初叙法眼之後、漸至大僧正、補天台座主、十年于今伝真言道、殊有身験、(『中右記』康和四年三月廿八日条)
 後冷泉院の御時、治暦二年、初めて法眼に叙するの後、漸く大僧正に至り、天台座主に補す、十年今に真言の道を伝え、殊に身に験あり、 = 後冷泉院の御時、治暦二年、初めて法眼に叙せられて後、ようやく大僧正に至り、天台座主にも任ぜられた。十年の間、今に真言の道を修行しており、特に、その身には霊験力があった。

暫(しばらく) = しばらく
例 次大殿召朝隆、令問人々参集否給、朝隆未参集之由申、大殿被仰云、暫可相待、(『台記』保延二年十二月九日条)
 次いで大殿、朝隆を召す、人々参集するや否やを問はしめたまふ、朝隆、未だ参集せざるの由を申す、大殿仰せられて云く、暫く相待つべし、 = 次に大殿が朝隆をよび、人々が参集しているか否かを尋ねた。朝隆は、まだ参集していないと申した。大殿がおっしゃるには、しばらく待とうとのことであった。

既・已(すでに) = すでに
例 酉剋許、神木已入洛之由風聞、諸門番衆等群集、(『花園天皇宸記』正和三年三月十七日条)
 酉の剋ばかり、神木すでに入洛の由風聞す、諸門番衆ら群集す、 = 酉の刻ぐらいに、神木がすでに京都に入ったとの噂があった。そこで、諸門番衆らが群集した。

※「既・已 + 了・畢・訖」の形で「すでに了おわんぬ」と訓読する。「すでに終了した」の意味。Ⅱ(4)②(72頁)を参照。

ややもすれば = うっかりすると。場合によっては
例 近代きんだい、仁和寺辺悪僧往反、動成悪事也、(『中右記』永久二年七月四日条)
 近代きんだい、仁和寺の辺に悪僧往反す、ややもすれば悪事をなすなり、 = 最近、仁和寺のあたりに悪僧がうろついており、場合によっては悪事を働くということである。

たまたま = たまたま
例 此間、大膳権大夫在継朝臣〈陰陽権助〉適入来之間、行幸日次所尋問也、(『民経記』寛喜三年八月七日条)
 この間、大膳権大夫在継朝臣〈陰陽権助〉、たまたま入り来たるの間、行幸の日次ひなみを尋ね問うところなり、 = この時、大膳権大夫在継朝臣〈陰陽権助〉がたまたまやって来たので、行幸の日取りをいつにしたらよいか尋ねた。

(d) 動作の状態を表す副詞

ともに = ともに
例 其後、同九年正月十四日、名越尾張入道・遠江守兄弟、倶非分被誅候了、(『鎌遺』一五七六六号、金沢顕時書状案)
 その後、同九年正月十四日、名越尾張入道・遠江守兄弟、ともに非分に誅せられ候い了んぬ、 = その後、同九年正月十四日、名越尾張入道・遠江守兄弟の二人は、ともに謂われなく誅殺された。

つぶさに = 詳しく
例 具申上子細しさい関東かんとう之処、(『鎌遺』二〇九七号、某御教書)
 つぶさに子細しさい関東かんとうに申し上げたるの処、 = 詳しく事情を鎌倉幕府に申し上げたところ、

まことに = 本当に
例 今度、無為むい果宿願、寔非神恩乎、為悦不少者也、(『民経記』寛喜三年八月十四日条)
 今度このたび無為むいに宿願を果たす、まことに神恩にあらざるや、悦び少なからざるものなり、 = このたび、無事に宿願を果たせた。これは神恩ではないだろうか。喜びは少なくないものである。

たしかに = たしかに
例 慥賜之由、以詞返答之、(『師守記』貞治三年七月九日条)
 たしかに賜るの由、詞を以てこれを返答す、 = たしかに頂戴した旨を、ことばで以て返答した。

ほしいままに = 勝手に
例 平相国禅閣、恣管領天下てんか、(『吾妻鏡』治承四年四月二十七日条)
 平相国禅閣、ほしいままに天下てんかを管領し、 = 平相国禅閣が、ほしいままに天下てんかを支配し、

あながちに = 強いて
例 強不及訴候へとも、(漢字仮名交じり。『鎌遺』一巻三八一号、源頼朝書状)
 あながちに訴えに及ばず候へども、 = 強いて訴えには及びませんが、

みだりに = みだりに、みだりがましく
例 諸社神人・諸寺大衆、猥以競発、旁成濫悪、(『中右記』長治元年十月三十日条)
 諸社の神人・諸寺の大衆、みだりに以て競発し、かたがた濫悪を成す、 = 諸社の神人と諸寺院の大衆らが、みだりに強引な要求をし、その一方で乱暴・違反を働く。

たやすく = 簡単に
例 可被裁許さいきょ之由、輒難定申、(『小右記』寛仁元年十月九日条)
 裁許さいきょせらるべきの由、たやすく定め申し難し、 = 裁許さいきょされるべきだということについては、簡単に定め難い。

なまじいに = 中途半端に、なまじっか。不承不承
例 代始、禁中儀違例、不便ふびん之由有御返事、仍憖参内さんだい、(『兵範記』仁安三年四月十五日条)
 代始、禁中の儀違例、不便ふびんの由御返事有り、仍ってなまじいに参内さんだいす、 = 天皇の代始で、禁裏の行事が先例せんれいにそぐわず、困っているとの返事があった。そこで、私は不承不承、参内さんだいした。

不図ふと = ふと。思わず
例 御内書、謹而頂戴、誠以忝存候、不図中風致出来、
 御内書、謹みて頂戴す、誠に以てかたじけなく存じ奉り候、不図ふと中風出来しゅったいいたす、 = 御内書を謹んで戴きました。誠にかたじけなく思っております。私は、思いがけず中風を発病しました。

かたじけなく = かたじけなく。勿体なく、恐れ多く
例 右条々じょうじょう、若私曲偽於在之者、忝も此霊社上巻起請文きしょうもん之御罰、各深厚に可罷蒙者也、仍前書如件、(『毛利家文書』九六三、豊臣氏大老奉行ぶぎょう連署起請文きしょうもん前書写)
 右の条々じょうじょう、もし私曲偽りこれあるにおいては、かたじけなくもこの霊社上巻起請文きしょうもんの御罰、おのおの深厚に罷り蒙るべきものなり、よって前書件の如し、 = 右の条項について、もし嘘いつわりを申したならば、恐れ多くもこの神社に奉納した起請文きしょうもんの通りの罰を、それぞれの身に深く蒙るべきである。

つつしみて = 謹んで
例 右、謹検案内あんない、件南俣地頭じとう職者、大隅国在庁頼清先祖相伝所帯也、(『鎌遺』二八六号、大隅正八幡宮神官等解)
 右、つつしみて案内あんないを検ずるに、件の南俣の地頭じとう職は、大隅国在庁頼清、先祖相伝の所帯なり、 = 右の件について、謹んで事情を調べてみると、その南俣の地頭じとう職は、大隅国在庁である頼清の先祖相伝の財産である。

如此かくのごとく = このように ※形容詞的な語句「如此(かくのごとし)」の連用形である。
例 百八十文、為酒直引留云々うんぬん近年きんねん如此、(『康富記』文安四年六月二十四日条)
 百八十文、酒のあたいとして引き留むと云々うんぬん近年きんねん如此かくのごとく、 = 百八十文を、酒の代金として留め置くという。近年きんねんはこのようである。

(e) 論理的判断や主観・客観を表す副詞

ここに = ここにおいて
例 龍崎尾張入道家人依田太郎、十五ヶ年買得云々うんぬん、爰任社領しゃりょう沽却之地半済之法、被仰付之処、一円押領おうりょう之、(『神奈川県史』五三一八号、関東かんとう管領〈上杉朝宗〉奉書)
 龍崎尾張入道の家人依田太郎、十五ヶ年買得すと云々うんぬんここに社領しゃりょうの沽却の地半済の法に任せ、仰せ付けらるるのところ、一円押領おうりょうす、 = 龍崎尾張入道の家人である依田太郎がその土地を、十五ヶ年前に買得したという。ここにおいて、神社領しゃりょうの「売却された土地は年貢を半分差し押さえるという法律」にもとづき、それを命じたところ、彼は全域を占領した。

しかしながら = すべて。それにしても
例 彼庄民等之陳状、併不可説也、(『鎌遺』一〇七三号、大和長瀬荘百姓等重申状もうしじょう案)
 彼の庄民等の陳状、しかしながら不可説なり、 = その荘園の人々の陳状は、それにしても言語道断である。

以て = 「先以」「又以」「旁以」などのかたちで、主観にもとづく強調を示す
例 諸社神民・諸寺衆徒、旁以蜂起、(『中右記』長治元年九月二十五日条)
 諸社神民・諸寺衆徒、旁以かたがたて蜂起す、 = 諸社の神民と諸寺の衆徒が、あわせて以て蜂起した。

所詮しょせん・せんずるところ = つまるところ、結局
例 只今一ヶ条、御相続御仁体事申入処ニ、為上八不可被定也、管領以下面々寄合可相計云々うんぬん、所詮此御返事之上、重雖難申入、天下てんか重事不可過之也、(『満済准后日記』応永三十五年正月十七日条)
 只今一ヶ条、御相続の御仁体の事申し入るる処ニ、上としては定めらるべからざるなり、管領以下の面々寄り合いて相はからうべしと云々うんぬん所詮しょせんこの御返事の上、重ねて申し入れ難しと雖も、天下てんかの重事、これに過ぐべからざるなり、 = いま一ヶ条、将軍を継ぐべき人を決めてくださるよう申し入れたが、将軍本人は「決められない。管領以下の人々が寄り合って決めればよかろう」とのことであった。結局、このご返事の上に重ねて申し入れることは難しいが、天下てんかの重大事は、これにまさるものはない。

結句けっく = 結局は、つまりは
例 結句、神慮難計、可行御卜之由、議定了、(『民経記』寛喜元年五月三日条)
 結句けっく、神慮計り難し、御卜を行うべきの由、議了んぬ、 = 結局、神のお考えは計りがたい。そこで卜占を行うべきだと議決した。

(f) 呼応・叙述の副詞

縦・仮令、雖〜たとい〜といえども = 仮に〜であっても(Ⅳ(2)②(168頁)を参照)
例1 縦雖被責寄、 たとい責め寄せらると雖も、 = たとえ、敵が攻め寄せてきたとしても、
例2 縦雖為先祖之本領、 たとい、先祖の本領たりと雖も、 = たとえ、先祖伝来の土地であると言っても、

若〜者もし〜ば = もし〜ならば
例1 若申偽者、 し偽りを申さば、 = もし偽りを申したならば、
例2 若致懈怠けたい候者、殊加誠、 もし懈怠けたいを致し候わば、殊に誠めを加う、 = もし怠ったならば、特に戒めを加える。

応・将・当まさに〜べし = まさに〜せよ
例1 応停止ちょうじ事、 まさ停止ちょうじすべき事、 = まさに停止ちょうじすべきこと。
例2 応早令停止ちょうじ国衙こくが庄園地頭じとう非法濫妨事、 応に早く国衙こくが・庄園の地頭じとうの非法濫妨を停止ちょうじせしむべき事、 = まさに早く国衙こくが・庄園における地頭じとうの非道・乱暴を停止ちょうじさせるべきこと。

よろしく〜べし = よろしく〜せよ
例1 宜勘状、 よろしく状を勘ずべし、 = よろしく書類の内容を勘案せよ。
例2 為勅願寺、宜令致御祈祷者、 勅願寺として、宜しく御祈祷を致さしむべし、てへり、 = (天皇の)勅願寺として、よろしく祈祷をせよ、とのことだ。

すべからく〜べし = 必ず〜せよ
例1 須執行しっこう之、 すべからく之を執行しっこうすべし、 = 必ずこれを執行しっこうせよ。
例2 雖須令下地頭じとう候、 須らく地頭じとうに下さしむべく候と雖も、 = 必ず地頭じとうに下すべきだとは言っても、

争〜乎・哉いかでか〜や・か = どうして〜だろうか(反語)
例1 争及沙汰さた哉、 いか沙汰さたに及ばんや、 = どうしてそんなことをするだろうか。
例2 院宣いんぜん、争違背いはい候哉、 院宣いんぜん、争か違背いはいし候や、 = 院宣いんぜんにどうして違反することがあろうか。

匪啻ただに〜のみにあらず・のみならず = ただ〜であるだけでなく
例1 匪啻国之疲弊ひへい ただに国の疲弊ひへいのみにあらず(啻に国の疲弊ひへいなるのみにあらず)、 = ただ国家の損益であるだけでなく、
例2 件堤、匪啻国衙こくが之大切、 件の堤、啻に国衙こくがの大切のみに匪ず、 = その堤防は、ただ国衙こくがにとって大切であるだけでなく、
例3 匪啻令押領おうりょう 啻に押領おうりょうせしむるのみならず、 = ただ横領・強奪するだけでなく、
例4 匪啻令対捍饗料、 啻に饗料を対捍せしむるのみならず、 = ただ饗料(としての税)を納めないだけでなく、

※副助詞「のみ」の前には、体言および活用語の連体形のどちらが来てもよい。「匪啻」の直後に活用語がくる場合も多い。

中文翻譯

本長節依語義將古文書高頻副詞分為六類:(a) 追加・並列(又・亦・猶・并・重而・追而・且・兼而),(b) 限定(唯・故・更・弥・甚・尤・偏・悉・能々・堅・急度・一向いっこう・淵底・別面・良・聊・白地・粗々),(c) 時間經過・頻度(鼂・速・忽・動・適),(d) 動作狀態(倶・具・寔・慥・恣・強・猥・輒・憖・不図・忝・謹・如此),(e) 邏輯判斷・主客觀(爰・併・以・所詮・結句),(f) 呼應・敘述(縦・仮令〜雖(即使)、若〜者(如果)、応・将・当(必須)、宜(應該)、須(一定)、争〜乎/哉(豈〜哉,反語)、匪啻(不僅⋯⋯)。每副詞均附原例與訓讀、現代語譯。

B 連用修飾節を導く語pp. 135–147

①「於」 → おいて

体言の直前にくる。訓読する場合は、直前に「に」を補う。意味は「〜において」。

例 於相州そうしゅう御亭ごてい、有深秘御沙汰さた 相州そうしゅう御亭ごていにおいて、深秘の御沙汰さたあり、 = 相模守の邸宅で、秘密の沙汰さた(会合)があった。

②「于」 → に

体言の直前について、「〜に」という格助詞を導く。「〜まで」という意味も持つ。

例1 于今、 今に、 = 今まで、

例2 異于他、 他に異なる、 = 他とは違う(特別の)、

例3 着于他国了、 他国に着し了んぬ、 = 他の国に着いた。

例4 于時、 時に、 = 時に(その時ちょうど)、

③「就」 → つき

体言の直前にくる。訓読する場合は、直前に「に」を補う。意味は「〜について」。

例1 就是事、 是の事に就き、 = このことについて、

例2 就言上状、下裁許さいきょ了、 言上状に就き、裁許さいきょを下し了んぬ、 = 言上状について、(手続き通り)裁許さいきょを下した。

例3 今夕、可被行小除目云々うんぬん、就其弁官、可被任職事、 今夕、小除目を行わるべしと云々うんぬん、其れに就き弁官、職事を任ぜらるべし、 = 今夕、小除目が行われるという。その弁官によって、職事を任命すべきである。

④「依」「因」 → より

体言の直前にくる。訓読する場合は、直前に「に」を補う。意味は「〜により」「〜のため」。

例1 依不足、 不足により、 = 不足のため、

例2 依無免除めんじょ之儀、 免除めんじょの儀、無きにより、 = 免除めんじょの措置がないので、

例3 依重日引上、今日きょう被修之、 重日により引上げ、今日きょう之を修せらる、 = 暦の上で重日なので、日程を引き上げて、今日きょうこれを行なった。

例4 因茲、 ここにより、 = これによって(このため)、

例5 勝定院無御成、蓋因祭礼也、 勝定院、御成無し、けだし祭礼によるなり、 = 勝定院の御出は無かった。思うに、祭礼によるのであろう。

⑤「任」 → まかせ

体言の直前にくる。訓読する場合は、直前に「に」を補う。意味は「〜にしたがって」。

例1 任先例せんれい 先例せんれいに任せ、 = 先例せんれいにのっとって、

例2 任理尽、 理尽に任せ、 = 道理にしたがって、

例3 任彼成敗せいばい、可処罪科ざいか 彼の成敗せいばいに任せ、罪科ざいかに処すべし、 = その決定にしたがって、処罰せよ、

例4 於此後者、任御本意ごほんい、可有御沙汰さた候、 此の後においては、御本意ごほんいに任せ、御沙汰さた有るべく候、 = こののちは、お考えの通りに処置されるがよろしいでしょう。

⑥「共」 → ともに

体言の直後にくる。

例1 男女共、 男女ともに、

例2 上下共、 上下ともに、

(2) 返り点の規則

A 原則

漢字は上から下へと読む。従って下にある字を先に読んではならないが、下から上の字へと返って読むことを示すのが返り点である。これにはレ点、一・二・三点、上・中・下点、甲・乙・丙点がある。

1 レ点
すぐ下の字を読んでから、すぐ上の字に返って読む場合に用いる。レ点は「雁木」ともいい、カナの「レ」と同じ形をしている。
〇〈有|事〉→ 事有り
〇〈無|事〉→ 事無し
〇〈被|行〉→ 行わる

⑨「許」 → もと

直前に体言および「之」をともない、「~之許」という形で用いられることが多い。「~のもとに」「~のところに」という意味になる。「元」に同じ。

例1 遣弥四郎やしろう之許了、 弥四郎やしろうの許に遣わし了んぬ、 = 弥四郎やしろうのところに遣わした。

例2 罷向為義之許、 為義の許に罷り向かう、 = 為義のところに向かった。

※時間的な終点を示す場合もある。「始~至~」とある場合は「~より始めて~に至るまで」と訓読する。「~から~まで」という意味になる。

例 始養老四年至神亀五年、 養老四年より始めて神亀五年に至るまで、 = 養老四年から神亀五年まで、

例3 至密談之儀者、兎も角も可為時宜、 密談の儀に至りては、兎も角も時宜たるべし、 = 密談の事については、ともかく最高権力者のお考えによるべきだ。

⑩「許」「計」 → ばかり

古文の副助詞「ばかり」に同じ。直前に体言がきて、「~だけ」という意味になる。

例 是則非顧私之方計、 これ則ち、私の方ばかりを顧みるにあらず、 = これは、私の方に都合の良いことだけを言っているのではない。

⑪「為」 → として

直後に体言がきて、「~として」という意味になる。

例1 為私沙汰さた 私の沙汰さたとして、 = 私的な処置として、

例2 為彼為此、 彼として此として、 = あれもこれも、

例3 頭経高朝臣、為院御使参上さんじょう とうの経高朝臣、院の御使として参上さんじょうす、 = 蔵人頭の経高朝臣が院の使者ししゃとして参上さんじょうした。

⑫「為」 → ~ため(に)・~がため

直後に体言がくる場合は、「~のために」「~によって」という意味になる。直後に活用語がくる場合は、「~んがため」と訓読する。「ん」は意志の助動詞である。この場合は「~するため」「~しようとして」という意味になる。

例1 為彼、被生害了、 彼のために生害せられ了んぬ、 = 彼によって殺された。

例2 為京上、払暁起床了、 京上せんがため、払暁に起床し了んぬ、 = 京都に行くため、早朝に起床した。

例3 為賜恩賞、捧申状もうしじょう者也、 恩賞を賜らんがため、申状もうしじょうを捧ぐるものなり、 = 恩賞を頂こうと思い、申状もうしじょうを提出する次第しだいである。

例4 仍為後日、譲状じょうじょう如件、 仍って後日のため、譲状じょうじょう件の如し、 = よって後日の証拠のため、譲状じょうじょうは以上の通り。

⑬「於~者」 → 〜においては

体言をはさんで、「~については」という意味になる。

例1 於有違犯之輩者、 違犯の輩、有るにおいては、

例2 若於申懸無謂之儀者、 若し、謂われ無きの儀を申し懸くるにおいては、 = もしいわれの無いことを強制するような場合については、

例3 訴訟そしょう事、於公家者、可有裁許さいきょ之叡慮也、 訴訟そしょうの事、公家においては、裁許さいきょあるべきの叡慮なり、 = 訴訟の事について、公家の側では裁許さいきょすべきとの天皇のお考えである。

例4 但於彼敷地并料所者、為根本一円神社領しゃりょう之処、 但し彼の敷地ならびに料所においては、根本一円神社領しゃりょうたるのところ、 = ただし、その敷地および料所については、昔から全面的に神社領しゃりょうなのに、

⑭「至~者」 → 〜にいたりては

体言をはさんで、「~については」という意味になる。「於~者」が一つの事項だけを想定しているのに対し、すでに別な事項が存在した上で、もう一つを述べるような場合に使用される。

例1 至彼例者、 彼の例に至りては、 = その例については、

例2 至其子孫者、 其の子孫に至りては、 = その子孫については、

例3 若不拘制法、至及喧嘩之輩者、可注進ちゅうしん交名きょうみょう もし制法にかかわらず、喧嘩に及ぶの輩に至りては、交名きょうみょう注進ちゅうしんすべし、 = もし法にかまわず、喧嘩におよぶ人々については、名簿を提出せよ。

⑮「~之刻」「~之剋」 → 〜のとき

直前に文節をともない、「~の時」「~した時」という意味になる。

例 失面目之刻、 面目を失うの刻(とき・きざみ)、 = 面目を失った時、

「至」の直前に前掲②の「于」が入る場合もあるが、訓読は変わらない。

⑯「~之際」 → 〜のきわ

前項⑮と同様に「~の時」「~した時」という意味になるが、時間をより限定したニュアンスをもつ。

⑰「~之砌」 → 〜のみぎり

前項⑯とほぼ同じく、動作が行われた時間を限定して「~した時」という意味になる。

例 被仰下候之際、面目無極候、 仰せ下され候の際、面目極まり無く候、 = 仰せ下された時には、光栄なことでございました。

中文翻譯

本節說明引導連用修飾節的詞:①「於」(在⋯⋯)、②「于」(〜に,亦表「直到」)、③「就」(關於)、④「依・因」(由於)、⑤「任」(依照)、⑥「共」(一起)、⑨「許」(〜のもと,某人處;「始〜至〜」表時間始末)、⑩「許/計」(〜ばかり,只)、⑪「為」(〜として,作為)、⑫「為」(〜ため,為了;後接活用語則為「〜んがため」)、⑬「於〜者」(關於、就⋯⋯而言)、⑭「至〜者」(至於⋯⋯,已有別事再加一例時用)、⑮「〜之刻/剋」(在⋯⋯時)、⑯「〜之際」(更限定的時刻)、⑰「〜之砌」(同⑯)。本節中段亦插入返り点規則簡介(レ點、一二三點等)。

【演習問題四】 修飾語・修飾節pp. 148–152

A 基礎演習 副詞として使用する、以下の漢字の読みを選択肢から選びなさい。

問一「適」 1. てきして 2. かないて 3. たまたま 4. あいて

問二「并」 1. ならびに 2. あわせて 3. へいして 4. さりながら

問三「弥」 1. やや 2. いよいよ 3. たまたま 4. みて

問四「偏」 1. かたよりて 2. へんして 3. ひとえに 4. あまねく

問五「廳」 1. かわして 2. しつけて 3. おうじて 4. やがて

問六「動」 1. ややもすれば 2. うごきて 3. ゆるぎて 4. どうじて

問七「忽」 1. こつとして 2. またたくまに 3. たちまち 4. たえだえに

問八「尤」 1. もっとも 2. ゆうに 3. さらに 4. とがむ

問九「不日」 1. ひならず 2. ふじつに 3. ときならず 4. とみに

問十「争」 1. いさかって 2. いかでか 3. すなわって 4. いかにも

問十一「強」 1. つよく 2. たのもしく 3. あながちに 4. しいて

問十二「故」 1. ふるく 2. ことさらに 3. もとより 4. ゆえに

B 応用演習① 次の古文書の傍線部の読みを書き下しなさい。なお、返り点がついていない文字があることにも注意すること。

史料1(伊達政宗条目 仙台市博物館蔵)

一、家中者共、依指引前々覚悟かくご事、不可等閑事、
※読み:①定め ②の ③指引によりて ④前々より ⑤覚悟かくごせしむる ⑥の ⑦等閑ある ⑧べからざる

史料2(結城氏新法度 県立歴史館蔵)
一、一所懸命走廻於者、急度御恩賞粉骨者也、
※読み:①一所懸命のために ②走廻るの ③輩においては ④急度御恩賞を ⑤加えらる ⑥べきなり ⑦尤も粉骨 ⑧ある ⑨べき ⑩ものなり

史料3(吉川元春等連署起請文きしょうもん 吉川家文書)
一、政務非拠曲事者、理非、互相改事、
※読み:①政務について ②非拠ある ③べく ④其の故は ⑤若し曲事 ⑥有るにおいては ⑦理非に任せ ⑧互いに相改む ⑨べき ⑩こと

B 応用演習② 以下の用例について、読みと意味を答えなさい。

問五「争」 1. いかでか/どうして〜だろうか 2. なんぞ/なぜ 3. あらそいて 4. いずくんぞ/どこに

問六「恣」 1. ほしいままに/勝手に 2. ことごとく 3. なまじいに 4. かたじけなく

問七「尤」 1. なく 2. ゆうに 3. しかし 4. もっとも/最も

問八「弥」 1. はなはだ 2. やや/多少 3. やや/さらに 4. いよいよ/ますます

問九「故」 1. ことさらに/特に 2. もとに 3. ことに 4. まさに

問十「併」 1. もし 2. しかしながら/それにしても 3. あわせて 4. あわせて/一緒に

※解答は karigome_p09.html を参照。

中文翻譯

演習問題四:A 基礎演習為 12 題副詞讀音多選題(適・并・弥・偏・廳・動・忽・尤・不日・争・強・故);B 應用演習則含三段實際史料(伊達政宗條目、結城氏新法度、吉川元春等連署起請文きしょうもん)的傍線部讀音填空,以及第二組多選題(争・恣・尤・弥・故・併)。解答見 karigome_p09.html。

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