日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法
(4) 補助動詞・終助詞pp. 71–80
①「候」 → そうろう
活用語の連用形に接続する補助動詞。古文の「さぶらふ」「さふらふ」「そうろう」に相当する。活用も同じ(四段型)。意味は丁寧で、「~です」「~ます」と訳す。一般に訓読文では仮名書きにせず、そのままのかたちで残す。
例1 書上候、→ 書き上げ候、 = 書き上げます。
例2 可有御座候、→ 御座あるべく候、 = そうである(そこにいらっしゃる)べきです。
例3 書改候了、→ 書き改め候い了んぬ、 = 書き改めました。
②「了」「畢」「訖」 → おわんぬ
活用語の連用形に接続する補助動詞。動詞「おわる」と完了の助動詞「ぬ」の結合「おわりぬ」の撥音便。活用はないが、「ぬ」をともなわない「おわり」という連用形をとることで、あとの文につながる場合がある。意味は過去・完了で、「~した」と訳す。
例1 校合了、→ 校合し了んぬ、 = 校正した。
例2 進発候畢、→ 進発し候い畢んぬ、 = 出発しました。
例3 被参内畢、→ 参内せられ畢んぬ、 = 参内された。
例4 食訖、被御覧亭内、→ 食し訖り、亭内を御覧ぜらる、 = 食べおわってから、家の中をご覧になる。
例5 見了返給、→ 見了りて返し給う、 = 見おわってから、お返しになった。
※動詞の直後に「既了(畢・訖)」「已了」という語が来る場合がある。これは「〜し、既(すで)に了んぬ」と訓読する。意味は「〜することが既に完了した」となる。
例1 勒状、既了、→ 状を勒し、既に了んぬ、 = すでに書き上げた。
例2 上申、已畢、→ 上申し、已に畢んぬ、 = すでに上申した。
③「給」 → たまう
活用語の連用形に接続する補助動詞。活用も同じ(四段型)。意味は尊敬で、「〜なさる」「〜される」と訳す。
例1 詠給、→ 詠み給う、 = お詠みになる。
例2 令披露給、→ 披露せしめ給う、 = ご主人に申し上げなさる。
④「奉」 → たてまつる
活用語の連用形に接続する補助動詞。活用も同じ(四段型)。意味は謙譲で、「~し上げる」「~してさしあげる」と訳す。
例1 奉拝朝廷了、→ 朝廷を拝し奉り了んぬ、 = 朝廷を拝み申し上げた。
例2 奉譲渡 領田事、→ 譲渡し奉る領田の事、 = 譲渡し申し上げる所有地の事。
⑤「所」 → ところ
直後に活用語の連体形をとる形式名詞だが、多くの場合、文末の「也」に続いて終助詞的な働きをする。「~するものである」「~する次第である」と訳す。
例1 所被下知也、→ 下知せらるる所なり、 = 下達なさるものである。
例2 所致信奉也、→ 信奉致す所なり、 = 信奉するものである。
例3 所仰、如件、→ 仰する所、件の如し、 = おっしゃることは以上の通りである。
⑥「歟」 → か
古文の終助詞「か」に相当する。体言について、軽い疑問の意味を示す。
例1 是神変歟、→ 是れ、神変か、 = これは神変だろうか。
例2 可定歟、→ 定むべきか、 = 定めるべきだろうか。
例3 不能記歟、→ 記すあたわざるか、 = 記すことはできないだろうか(できないかもしれない)。
⑦「乎」・「哉」 → や・か
古文の終助詞「や」「か」に相当する。前項⑥の「歟」が内向的な問いであるのに対して、外に向かって問いを発する場合や反語の意味で使用することが多い。適度に他の語(係助詞・助動詞など)を補って読むこともある。直前に活用語がくる場合は、連体形に接続する。
例1 是何之謂乎、→ 是れ、何の謂いぞや、 = これは、何のことを言っているのか。
例2 如何可沙汰哉、→ 如何、沙汰すべきや、 = どうすべきであろうか。
例3 誰人可為之哉、→ 誰人か、之を為すべけんや、 = 一体、誰がこれをなすことができるのか(いや、できない)。
⑧「而已」・「耳」 → のみ
古文の副助詞「のみ」に相当するが、文末に用いられることが多い。意味は限定で、「~だけ」と訳す。直前に活用語がくる場合は、連体形に接続する。
例1 可黙而已、→ 黙すべきのみ、 = 黙るだけである。
例2 只有一人耳、→ 只、一人有るのみ、 = ただ一人いるだけである。
例3 随有而已、→ 有るに随うのみ、 = 有るものにしたがって、行なうだけである。
⑨「者」 → てへり。てえり
「と言へり」が短縮された形。文末について、引用を示す。
例1 彼云、無料足、者、→ 彼云わく、料足なし、てへり、 = 彼が言うには、費用がないということだ。
例2 如彼状者、全不覚悟也、者、→ 彼の状の如くば、全く覚悟せざるなり、てへり、 = その状によると、全く記憶にないとのことだ。
例3 送使云、只今可参内、者、→ 使いを送りて云わく、只今参内すべし、てへり、 = 使者を送って言うには、すぐに参内せよ、とのことだ。
⑩「云々」 → うんぬん。しかじか
直前に「と」をともない、文末について引用を示す。また、引用文を省略して、他にも文があることを類推させる働きがある。その際には「取詮(詮を取る=要点だけを抜き書きした」という但し書きがつくことが多い。慣用的には、ひらがなに直さなくともよい。
例1 不見知云々、→ 見知せずと云々、 = 見知っていないそうだ。
例2 立券不分明云々〈取詮〉、→ 立券、不分明と云々〈詮を取る〉、 = 立券(土地の証拠書類)は明確でないという〈内容を抜粋した〉。
中文翻譯
本節列舉補助動詞與終助詞,皆接於活用語連用形之後:①「候」(=そうろう,丁寧)、②「了・畢・訖」(=おわんぬ,過去・完了)、③「給」(=たまう,尊敬)、④「奉」(=たてまつる,謙讓)、⑤「所」(=ところ,形式名詞,多在句末作終助詞「~するものである」)、⑥「歟」(=か,輕微內向的疑問)、⑦「乎・哉」(=や・か,外向的疑問・反語)、⑧「而已・耳」(=のみ,限定「~だけ」)、⑨「者」(=てへり/てえり,「と言へり」短縮形、引用標記)、⑩「云々」(=うんぬん/しかじか,引用、或表示省略「取詮=抜粹要點」)。「候」訓讀時通常保留漢字不寫假名。「既了・已畢」表「已經完成」。
【演習問題二】 述語・述部pp. 81–83
A 基礎演習 以下に挙げる変体漢文を訓読しなさい。
① 可被申
② 不可被申
③ 可令申
④ 不可令申
⑤ 可被令申
⑥ 不可被令申
⑦ 可令射
⑧ 可令管領
⑨ 可令駆
⑩ 可令宛
B 応用演習 以下に挙げる変体漢文を訓読しなさい。
① 往古、以八幡宮、為氏神之条、不可有所見云々、此事猶不審事也、
(『十輪院内府記』文明十三年三月廿八日条)
② 然者、任彼例、可被造歟之由 勅定候、
(『久我家文書』一七二八号、藤原忠通書状)
③ 前大相国長女、可被入上皇之由、上皇所示給也、
(『長秋記』長承二年六月二日条)
④ 御号事、甘露寺何事候哉、不令管領其地給、御斟酌尤其謂候、
(『園太暦』貞和四年四月十九日条)
⑤ 今日還御以前、常御所已下所々掃除事、所奉行也、
(『勘仲記』弘安十年六月十四日条)
⑥ 後聞、禅閤〈一条兼良〉此日薨逝、満八十、雖老年御事、日本無双之才人也、已失日月之明歟、
(『十輪院内府記』文明十三年四月二日条)
⑦ 以少将具氏被仰日、可参常御所南面方者、則参入、何事可有沙汰乎之由、被仰之、
(『岡屋関白記』建長元年二月二日条)
⑧ 京都飛礫猶以為狼藉之基、固可加禁遏之由、前武州禅室執権之時、其沙汰被仰六波羅畢、
(『吾妻鏡』文永三年四月廿一日条)
※解答は karigome_p09.html を参照。
中文翻譯
演習問題二「述語・述部」分為 A 基礎演習(10 題,主要為助動詞「可・不可・被・令」的複合形訓讀)與 B 應用演習(8 段實際史料引用:『十輪院內府記』『久我家文書』『長秋記』『園太暦』『勘仲記』『岡屋關白記』『吾妻鏡』等),請考生訓讀。解答見 karigome_p09.html。