p.252 川端康成 — 新感覚派・伝統美・ノーベル文学賞
川端康成
一八九九(明治32)〜一九七二(昭和47)
新感覚派から日本伝統美の継承へ。日本人初のノーベル文学賞受賞作家。大阪府生まれ。
孤児の悲しみ
川端は二歳で父を、三歳で母を亡くし、七歳のとき祖母、十五歳のとき祖父をも亡くした。父方の家にも母方の家にも引き取られ、孤児として育った悲しみは、生涯の作品基調となった。第一高等学校・東京帝大英文科を経て、新進作家として活躍を始めた。
新感覚派として
一九二四(大正13)年、横光利一らと雑誌『文芸時代』を創刊。「新感覚派」を称する。一九二六(大正15)年、伊豆の旅で出会った踊子との交流を描いた短編『伊豆の踊子』を発表。手のひらに乗るような掌の小説などを集成し、川端の代表作・出世作となる。
雪国
長編小説 一九三五年から連載、一九四七年完結
越後の温泉地(モデルは新潟県越後湯沢)を舞台に、東京から来た男・島村と、芸者駒子・葉子の三角関係を描いた、川端文学の頂点に立つ長編。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の有名な冒頭。雪と火・生と死の対比、日本の伝統美と無常観の表現として国際的に評価された。
ノーベル文学賞
一九六八(昭和43)年、日本人初のノーベル文学賞受賞。受賞講演「美しい日本の私」で、日本の自然と心の真髄を讃えた。伝統的価値観の中に、独特の人間心理の細部を描き、女性美・自然美・幼児美の繊細な表現で、独特の絶美の世界を作り上げた。一九七二(昭和47)年、逗子のマンションでガス管自殺。
古都
長編小説 一九六二年完結
戦後京都を舞台に、双子の姉妹(千重子と苗子)の運命を、四季と京の祭りに重ねながら描いた、伝統美への共感を込めた代表作。
山の音
長編小説 一九五四年完結
鎌倉に住む老主人公・尾形信吾を中心に、家族の心の機微を描いた中老期の傑作。秋の山の音は、信吾に「死」の予兆として響く。
眠れる美女
中編小説 一九六一年発表
老人クラブで眠れる若い女の傍らに過ごす老人たちの孤独と性の幻想を描いた、川端晩年の代表作の一つ。