p.249 芥川龍之介 — 主要作品(鼻・地獄変・河童・枯野抄・文芸的余りに文芸的)
我鬼窟(田端の書斎)
東京田端の自宅にあった芥川の書斎を「我鬼窟」と呼んだ。蔵書と趣味の机に向かって、芸術至上主義の作品を執筆した。芥川の遺愛品の机と蔵書を保存。
鼻
短編小説 一九一六年発表(新思潮創刊号)
夏目漱石に激賞された出世作。『宇治拾遺物語』『今昔物語』に材を取った王朝物。利己主義と周囲の目に振り回される弱い自我への、手厳しい批評が含まれている。
あらすじ:異様に長い鼻をもった禅智内供は、苦心して短くするが、人々はますますあざ笑う。内供は困惑したが、ある朝、元に戻った鼻を見て爽快な気分になる。
地獄変
短編小説 一九一八年発表
『宇治拾遺物語』『十訓抄』に材を取った王朝物。人間の道徳を放棄してまでも作品完成を求めた絵師の姿を通して、すさまじいまでの芸術至上主義を表した。
あらすじ:良秀という腕利きの絵師は、地獄変の屏風絵を堀川の大殿に命じられて描く。題材として愛娘が車で焼き殺される様を冷酷に観察し、屏風絵を完成、首を吊って自死する。芸術と人間性の極限の対立を描いた。
河童
短編小説 一九二七年発表
人間社会の戯画化を試みた社会風刺の小説。架空の河童国を通して、人間社会の偽善と冷酷さを浮かび上がらせる。芥川晩年の代表作品。「自分の心情を屈折した形で述べた、自殺直前の作品」と評される。
枯野抄
短編小説 一九一八年発表
松尾芭蕉の臨終の場面を題材にした作品。其角・去来・丈艸ら門人たちの心理を皮肉な批評を込めて描いた江戸時代物。人間の自己中心的な、生身の感情を冷淡に剥き出しにする。芥川の代表的な近世物作品。
文芸的、余りに文芸的
評論 一九二七年発表
晩年の評論。同時代の谷崎潤一郎との「物語の筋論争」(「話らしい話のない小説」を主張する芥川と、伝統的な「筋」の効用を擁護する谷崎との論争)の中で書かれた、自身の芸術観・小説観の総括。