p.246 志賀直哉 — 白樺派・短編の極致と強い個性
白樺派
志賀直哉
一八八三(明治16)〜一九七一(昭和46)
白樺派・短編の極致と強い個性の作家。宮城県石巻生まれ。「小説の神様」と呼ばれる。
倫理観の育成
宮城県石巻に生まれる。祖父をめぐる東北父祖の地。母は早死、祖父母と父の関係が複雑で、内村鑑三(→P.337)に学校外で「無教会」キリスト教の影響を受け、不正義を憎む倫理観を強く植え付けられた。学習院中等科で正親町公和・木下利玄らと知り合い、東京帝大文学部に進学した。
白樺派の誕生
一九一〇(明治43)年4月、武者小路実篤・里見弴・有島武郎らと同人雑誌『白樺』を創刊。直哉は学習院卒業後の武者小路ら、若い人道主義者の代表として、清新な文学運動を展開。父との衝突・対立が始まる。
父との不和
強い個性をもつ青年直哉は父との対立から、芦屋への家出、結婚問題などをめぐって、父子の関係は険悪な状態となった。直哉の作品の多くにこの父子の不和が反映する。
父との和解
結婚した直哉は、子の死などの苦難を経て、一九一七(大正6)年、生命の根源に直接触れる転回、父に反対される結婚から長男の死を経て、父との和解に至った。小説『和解』に告白される。同年、『城の崎にて』『赤西蠣太』『小僧の神様』等を発表、家庭的安定の中で創作の意欲を高める。
網走まで
短編小説 一九〇八年発表
直哉が東大在学中に書いた作品。汽車内で出会った母と子の話を、三等客車に漂う哀愁を背景に描いた清新な短編。志賀の文壇登場作の一つ。
清兵衛と瓢箪
短編小説 一九一三年発表
瓢箪の魅力に魅了された少年清兵衛が、瓢箪を愛玩する周囲の大人の無理解と圧迫を受けて挫折する話。少年の純粋な感性と社会の俗悪さの対比を描く、志賀短編の名作。
和解
中編小説 一九一七年発表
直哉の自伝的な作品。父との長年の対立と不和の解消を直接的に描いた告白小説。子の誕生と父との和解の喜びを率直に書き上げた。