大正3年(1914)刊・後期三部作の中核
夏目漱石の後期三部作(『彼岸過迄』『行人』『こころ』)の最後の作品にして到達点。「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の三部からなる。学生(私)と先生の出会い、先生の死後に届く長文の遺書を通じて、明治の知識人「先生」の友人Kとの恋愛のもつれと裏切り、罪悪感と自死を物語る。「明治の精神に殉死」する先生の選択は、近代的個人と古典的倫理との葛藤を象徴する。
本ページ中央に、『こころ』の舞台となった東京の主要場所を示す地図が掲載される。本郷(東京帝大)、谷中、上野、湯島、青山墓地、根津神社、雑司ヶ谷霊園など、主人公たちの行動範囲が地図上に示される。先生の家・Kとの下宿先・大学・墓所などの位置関係から、漱石が東京の地理を厳密に意識して書いたことが分かる。
ページ下部には、東京を舞台とする近代文学作品の名場面の地が一覧される。漱石『こころ』、芥川龍之介『羅生門』(京都だが)『鼻』、永井荷風『すみだ川』『濹東綺譚』、樋口一葉『たけくらべ』(吉原・下谷)、谷崎潤一郎『刺青』、田山花袋『東京の三十年』など。東京の知的・庶民的・伝統的な多層性が、文学を通して見える。