最新国語便覧

浜島書店 — pilot v2 OCR + ruby 版(PDF 5–253 ページ)

p.234 国木田独歩『武蔵野』・田山花袋『蒲団』『田舎教師』

国木田独歩(1871–1908)くにきだ どっぽ

詩人的散文の創始者・浪漫主義から自然主義へ

本名ほんみょう哲夫てつお下総国しもうさのくにげん千葉県ちばけん)にまれ、のち山口県やまぐちけんうつる。明治学院めいじがくいん東京とうきょう専門学校せんもん がっこう早稲田大学わせだ だいがく前身ぜんしん)でまなんだ。最初さいしょ浪漫主義ろうまんしゅぎ詩人しじんとして『はるとり』『酒中日記しゅちゅう にっき』を発表はっぴょう自然しぜん人間にんげん繊細せんさい描写びょうしゃげた。短編集たんぺんしゅう武蔵野むさしの』(1901)は、関東かんとう自然しぜん都市とし生活者せいかつしゃ心象しんしょう風景ふうけい清新せいしんえがき、近代きんだい散文詩さんぶんし最高峰さいこうほうとなった。一方いっぽうで、晩年ばんねんは『たけ木戸きど』など貧困ひんこん社会しゃかい暗部あんぶあつか作品さくひんき、浪漫主義ろうまんしゅぎから自然主義しぜんしゅぎへの過渡的かとてき位置いちめた。

『武蔵野』むさしの

明治34年(1901)刊

東京とうきょう西郊せいこう関東かんとう平野へいや武蔵野むさしの)の四季しき自然しぜんを、独歩どっぽ自身じしん散歩さんぽする観察者かんさつしゃえがいた抒情的じょじょうてき散文集さんぶんしゅう。クニタチ・国分寺こくぶんじ小金井こがねいなどのはやしはたけかわ景色けしき農村のうそん風物ふうぶつ季節きせつうつろいを、ツルゲーネフつるげーねふ『あひゞき』の影響えいきょうけた緻密ちみつ詩的してき文体ぶんたいえがく。「武蔵野むさしのはかくのごとし」とじる感覚かんかくは、日本人にほんじん自然しぜんかんおおきな影響えいきょうあたえた。

田山花袋(1872–1930)たやま かたい

日本自然主義文学の第一人者・私小説の創始者

上野国こうずけのくに現在げんざい群馬県ぐんまけん館林市たてばやしし)のせいまれ。早稲田大学わせだ だいがく中退後ちゅうたいご博文館はくぶんかん勤務きんむ日清戦争にっしん せんそう従軍じゅうぐん記者きしゃとして参加さんか、その経験けいけんいた『重右衛門じゅうえもん最後さいご』で文壇ぶんだんデビューでびゅー最初さいしょ浪漫派的ろうまんはてき詩人しじんだったが、1907ねん明治めいじ40ねん)に『蒲団ふとん』を発表はっぴょう自分じぶんつま弟子でし女性じょせいへの愛情あいじょう直裁ちょくさい告白こくはくする手法しゅほう衝撃しょうげきあたえ、近代きんだい私小説ししょうせつ出発点しゅっぱつてんとなった。つづいて『田舎いなか教師きょうし』(1909)『せい』『つま』『えん』などを発表はっぴょう自然主義しぜんしゅぎ文学ぶんがく代表的だいひょうてき作家さっかとして活躍かつやくした。

『蒲団』『田舎教師』ふとん・いなか きょうし

蒲団ふとん』(1907)は、35さい妻子持さいしもちの作家さっか竹中時雄たけなか ときおが、わか女弟子おんなでし横山芳子よこやま よしこいだめた恋情れんじょうを、彼女かのじょ田舎いなかかえったのち彼女かのじょ使つかった蒲団ふとんしてなみだにくれる場面ばめんめくくる短編たんぺん自分じぶん身辺しんぺん題材だいざいとする「私小説ししょうせつ」(自然主義しぜんしゅぎ代表的だいひょうてき手法しゅほう)の創始的そうしてき作品さくひんとなった。『田舎いなか教師きょうし』(1909)は、栃木県とちぎけん田舎いなか中学校ちゅうがっこう教師きょうし貧困ひんこん憂鬱ゆううつゆめ物語ものがたりを、客観的きゃっかんてき写実的しゃじつてきえがいた長編ちょうへんりょう作とも自然主義しぜんしゅぎ文学の代表作だいひょうさく