p.202 昭和前期の時代背景
概観
昭和初期から戦争終結(1926–1945)の昭和前期は、世界恐慌・満州事変・日中戦争・太平洋戦争と、軍国主義と戦争の時代だった。一方、エロ・グロ・ナンセンス(モダニズム)の都市文化も大正末期から昭和初期に隆盛し、文学・芸術にも大きな影響を与えた。
世界恐慌と昭和恐慌
1929年のニューヨーク株式市場暴落に始まる世界恐慌の影響を受け、日本も昭和初期に深刻な不況に陥った。農村は特に窮乏し、東北の凍餓・娘の身売り等が社会問題となった。プロレタリア文学(小林多喜二『蟹工船』『党生活者』、葉山嘉樹)はこの時代を背景に隆盛した。
モダンガール・モダンボーイ
1920年代後半、東京・大阪などの都市で、洋装に断髪のモダンガール(モガ)、洋装の若者モダンボーイ(モボ)が出現した。映画・ジャズ・ダンス・カフェ・百貨店などの都市文化と相俟って、都会的・退廃的な美意識が広まった。川端康成『浅草紅団』、横光利一『機械』、堀辰雄『風立ちぬ』などの新感覚派・新興芸術派の文学はこの背景から生まれた。
軍部の台頭と国家主義
1931年の満州事変、1932年の五一五事件(犬養毅首相暗殺)、1936年の二二六事件など、軍部のクーデター的事件が相次ぎ、日本は次第に軍国主義国家へと向かう。1937年からは日中戦争が長期化し、文学・思想への統制が強化された。プロレタリア文学者が転向を迫られ、執筆活動を制限された時期となる。
報道に対する検閲の強化
戦時下では新聞・雑誌・出版物に対する検閲が厳しくなり、戦争批判はもちろん、不適切とされる内容は伏字(〇〇)にされたり、発禁になったりした。プロレタリア作家の谷崎潤一郎・永井荷風らも執筆を控え、戦争協力的な文学(火野葦平『麦と兵隊』、林房雄、火野葦平らの戦争小説)が主流となった。