和歌の重要なテーマとして、旅の哀愁・死の哀傷・現し世の無常がある。本ページでは、これらのテーマを詠む万葉から新古今までの名歌を集約する。富士山・鶴・雁・蜻蛉野などの自然と、人生の根源的な感情とを結びつけた歌の世界を見る。
和歌における「旅」は、単なる移動ではなく、都を離れる悲しみと、未知の地での孤独を伴う詩的体験。万葉集の防人の歌、阿倍仲麻呂の唐土からの望郷歌、能因法師・西行・芭蕉などの行脚の歌がこの系譜を作る。「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」(阿倍仲麻呂)は代表作。
親しい人や愛する人を失った悲しみを詠む歌を哀傷歌という。古今集以来、勅撰集に「哀傷」の部立がある。柿本人麻呂「妻死之後泣血哀慟作歌」、紀貫之の亡妻挽歌、藤原俊成「世の中よ道こそなけれ」など、和歌史を貫く重要なテーマ。
「現し世」は現実の世。和歌では夢・現・幻のテーマと結びつき、人生の儚さを詠む。良寛「霞立つ永き春日を子供らと手まりつきつつこの日暮らしつ」のような暮らしの肯定もあれば、後鳥羽院「人もをし人もうらめし」のような無常嘆息もある。本ページではこの「現し世」を巡る歌を一覧する。