和歌の主要なテーマの一つが恋。万葉集以来、恋は歌人の最も豊かな表現の場であった。本ページでは古今集・拾遺集・後拾遺集・新古今集などから集めた恋歌の名作を、時代と歌人別に並べる。片思いの嘆き、逢えぬ苦しさ、別れの哀しみなど、千年以上も変わらぬ人間の情を伝える。
口絵には小野小町・伊勢・和泉式部などの女性歌人と、在原業平・藤原敏行・藤原実方などの男性歌人が並ぶ。「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを」(小野小町)、「君がため惜しからざりし命さへ長くもがな」(藤原義孝)など、古今の代表的恋歌が掲げられる。
六歌仙の一人小野小町は、絶世の美女として伝説化された歌人。古今集に18首採られ、その多くが激しい恋情と老いの哀しみを詠む。代表歌は「花の色はうつりにけりな」「思ひつつ寝ればや」など。
和泉式部は中古を代表する女性歌人で、特に恋歌の名手として知られる。「あらざらむこの世のほかの思ひ出に」「物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る」など、激しく直情的な恋歌で名高い。