73 前権中納言匡房
高砂の尾上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ
出典: 後拾遺集 巻一・春上
高砂(の山)の頂の桜が咲いた。手前の山の霞よ、立たないでほしい、と詠む。遠景の桜を眺める春の歌。大江匡房の作。
74 源俊頼朝臣
憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを
出典: 千載集 巻十二・恋二
「はげしかれ」は山おろしの激しさと、つれない態度の激しさの両義。冷たいあの人が、初瀬の山おろしのように一層つれなくなれとは祈らなかったのに、と恨み歌。
75 藤原基俊
契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり
出典: 千載集 巻十六・雑上
あなたが約束してくれた「させもが露」(言葉どおりの約束)を命の頼みとしていたのに、今年の秋も実現せずに過ぎてしまうようだ、と詠む。
76 法性寺入道前関白太政大臣
わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波
出典: 詞花集 巻十・雑下
海原に漕ぎ出して見れば、遠い空の雲と見分けがつかない沖の白波が見える、と詠む。雄大な海の景。藤原忠通の作。
77 崇徳院
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
出典: 詞花集 巻七・恋上
瀬の流れが速く岩に堰き止められる滝川が、いったん分かれてもまた一つに合流するように、私たちも今は別れても末には必ず逢おう、と詠む恋歌。崇徳院(崇徳上皇)の作。
78 源兼昌
淡路島かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守
出典: 金葉集 巻四・冬
淡路島から通ってくる千鳥の鳴く声に、何夜眠れぬ思いをしただろう、須磨の関守は、と詠む。源氏物語須磨巻の情景を踏まえる。