45 謙徳公
あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
出典: 拾遺集 巻十五・恋五
「あはれ」と言ってくれる人もないままに、私の身は無駄に滅びてしまいそうだ、と詠む。恋に拒まれた男性の嘆き。藤原伊尹の作。
46 曽禰好忠
由良のとを渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな
出典: 新古今集 巻十一・恋一
由良川の河口を渡る船人が、舵を失って行方も知らずに漂うように、私の恋の道も先がわからない、と詠む。
47 恵慶法師
八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり
出典: 拾遺集 巻三・秋
雑草の生い茂った荒れた家。人は誰も訪れないけれど、秋だけは来てくれた、と詠む。河原院(源融の旧居)の荒廃を詠む歌。
48 源重之
風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな
出典: 詞花集 巻七・恋上
風が激しく岩を打つ波が、自分だけ砕けるように、私だけが心砕けて物思いに沈むこの頃だ、と詠む片思いの歌。
49 大中臣能宣朝臣
みかきもり衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ
出典: 詞花集 巻七・恋上
宮中の御垣を守る衛士の焚き火が、夜は燃え昼は消えるように、私の恋もそのように夜は燃え昼は消えるように物思いをしている、と詠む。
50 藤原義孝
君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな
出典: 後拾遺集 巻十二・恋二
あなたのためなら惜しくはなかった命までも、(逢えた今は)長く生きたいと思うようになった、と詠む後朝の歌。
51 藤原実方朝臣
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを
出典: 後拾遺集 巻十一・恋一
「いぶき」に「言ふ」、「さしも草」(伊吹山のもぐさ)に「さしも知らじ」(こんなとも知らないだろう)を掛ける。これほどとも言えないのに、伊吹山のもぐさのように燃える思いを、あなたはまだ知るまい、と詠む。
52 藤原道信朝臣
明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな
出典: 後拾遺集 巻十二・恋二
夜が明ければまた日が暮れて夜が来ると分かっているのに、それでもこの朝の別れが恨めしい、と詠む後朝の歌。
53 右大将道綱母
嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る
出典: 拾遺集 巻十四・恋四
嘆きながら一人で寝る夜が明けるまでが、どんなに長いものかご存じですか、と夫・藤原兼家に詠みかける。『蜻蛉日記』にも見える歌。
54 儀同三司母
忘れじの行末まではかたければ今日を限りの命ともがな
出典: 新古今集 巻十三・恋三
「忘れない」というあなたの言葉が将来までも続くとは難しいから、いっそ今日を限りに命が絶えればよい、と詠む恋歌。「儀同三司」とは藤原伊周のこと。母は高階貴子。