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浜島書店 — pilot v2 OCR + ruby 版(PDF 5–188 ページ)

p.167 百人一首 35〜44番(紀貫之〜朝忠)

百人一首 第35首〜第44首

35 紀貫之きの つらゆき

ひとはいさこころらずふるさとははなむかしにおひける

出典: 古今集 巻一・春上

「ふるさと」は古巣・通い慣れた場所(初瀬の宿の意)。「人の心はさあ分からないが、古巣の梅の花は昔と同じ香りで匂っているよ」と詠む。貫之の代表的な梅の歌。

36 清原深養父きよはらの ふかやぶ

なつはまだよいながらけぬるをくものいづこにつき宿やどるらむ

出典: 古今集 巻三・夏

夏の短夜は宵かと思う間に明けてしまった。月はどこの雲に宿っているのだろう、と詠む。短い夏の夜の月を惜しむ歌。

37 文屋朝康ふんやの あさやす

白露しらつゆかぜきしくあきはつらぬきとめぬたまりける

出典: 後撰集 巻六・秋中

白露に風が吹きつける秋の野は、糸でつなぎ留めていない玉が散っているようだ、と詠む。露の美を「玉」に見立てる。

38 右近うこん

わすらるるをばおもはずちかひてしひといのちしくもあるかな

出典: 拾遺集 巻十四・恋四

忘れられる我が身は構わないが、神に誓った相手の命が惜しまれることだ、と詠む。神罰を受ける相手を案じる恋の歌。

39 参議等さんぎ ひとし

浅茅生あさじう小野おの篠原しのはらしのぶれどあまりてなどかひとこいしき

出典: 後撰集 巻九・恋一

「篠(しの)」と「忍ぶ」を掛ける。浅茅の生えた小野の篠原のように、忍んできたが、抑えきれずどうしてあの人が恋しいのだろう、と詠む。源等の作。

40 平兼盛たいらの かねもり

しのぶれどいろでにけりわがこいはものやおもふとひとふまで

出典: 拾遺集 巻十一・恋一

天徳の歌合で兼盛が詠み、忠見の歌(次の41番)と争った名歌。我慢して隠していたのに顔に出てしまった。物思いをしているのかと人に問われるほどに、と詠む。

41 壬生忠見みぶの ただみ

こいすてふわがはまだきちにけりひとれずこそおもひそめしか

出典: 拾遺集 巻十一・恋一

天徳歌合で兼盛と争った歌。恋をしているという噂が早くも立ってしまった。人知れず思い始めたばかりなのに、と詠む。忠見はこの歌合で敗れて鬱した末に病死したという逸話が伝わる。

42 清原元輔きよはらの もとすけ

ちぎりきなかたみにそでをしぼりつつすえ松山まつやまなみさじとは

出典: 後拾遺集 巻十四・恋四

「末の松山を波が越える」は陸奥の歌枕で「ありえないこと」の代名詞。互いに涙で袖を絞りながら、末の松山を波が越えないように、永遠に心変わりしないと誓ったのに、と詠む恨み歌。

43 権中納言敦忠ごんちゅうなごん あつただ

てののちこころにくらぶればむかしものおもはざりけり

出典: 拾遺集 巻十二・恋二

逢ってのちの恋しさに比べれば、逢う前の物思いなど物足りないものだった、と詠む。逢ったが故に深まる恋の苦しさ。藤原敦忠の作。

44 中納言朝忠ちゅうなごん あさただ

ふことのえてしなくはなかなかにひとをもをもうらみざらまし

出典: 拾遺集 巻十一・恋一

逢う機会がまったくないのなら、かえって相手も自分も恨むことはなかっただろう、と詠む。逢えるからこそ逢えない時の恨みが深まる、という逆説の恋歌。藤原朝忠の作。