17 在原業平朝臣
ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは
出典: 古今集 巻五・秋下(古今集 巻五・秋下)
神代の昔にも聞いたことがない、竜田川が紅葉で水を真紅にくくり染め(しぼり染め)にしているとは、と詠む紅葉の名歌。
18 藤原敏行朝臣
住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ
出典: 古今集 巻十二・恋二(古今集 巻十二・恋二)
「よる」に「寄る」「夜」を掛けた歌。住の江の岸に寄る波の「よる」のように、夜さえも夢の通い路で人目を避けているのか、と詠む恋歌。
19 伊勢
難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや
出典: 新古今集 巻十一・恋一(新古今集 巻十一・恋一)
難波潟の短い芦の節の間ほどの短い時間さえも逢わずに、この世を過ごせとおっしゃるのですか、と詠む恋歌。
20 元良親王
わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ
出典: 後撰集 巻十三・恋五(後撰集 巻十三・恋五)
「みをつくし」に「澪標(水路の標)」「身を尽くし」を掛ける。恋に苦しむ今、命を尽くしてでも逢いたいと詠む。
21 素性法師
今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
出典: 古今集 巻十四・恋四(古今集 巻十四・恋四)
「今すぐ来る」と言われたばかりに、九月の有明の月が出るまで待ってしまった、と詠む。恋人を待つ女性の心情を男性の歌人が代詠。
22 文屋康秀
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
出典: 古今集 巻五・秋下(古今集 巻五・秋下)
「山風」を一字にすると「嵐」になる。秋の草木を萎れさせる山風を「嵐(荒し)」と呼ぶのはもっともだ、と詠む言葉遊びの歌。
23 大江千里
月見れば千々にものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど
出典: 古今集 巻四・秋上(古今集 巻四・秋上)
月を見ていると様々なことが悲しく感じられる。私一人だけの秋ではないのに、と秋の物思いを詠む。
24 菅家
このたびはぬさもとりあへず手向山紅葉のにしき神のまにまに
出典: 古今集 巻九・羈旅(古今集 巻九・羈旅)
「このたび」に「この度」「この旅」を掛ける。今度の旅は急ぎで幣(ぬさ・供え物)を持ってこられなかった。手向山の紅葉の錦を神のお心のままに受け取ってください、と詠む。菅原道真の作。
25 三条右大臣
名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな
出典: 後撰集 巻十一・恋三(後撰集 巻十一・恋三)
「逢坂」に「逢う」、「さねかづら」に「さ寝(共寝)」、「くる」に「来る」「繰る」を掛けた。名前のとおりなら、逢坂山のさねかづらを手繰り寄せるように、人に知られずあなたのところへ通う方法があってほしい、と詠む恋歌。藤原定方の作。