最新国語便覧

浜島書店 — pilot v2 OCR + ruby 版(PDF 5–183 ページ)

p.165 小倉おぐら百人一首ひゃくにんいっしゅ(17〜25ばん

百人一首 第17首〜第25首

17 在原業平朝臣ありわらの なりひら あそん

ちはやぶる神代かみよかず竜田川たつたがわからくれなゐにみずくくるとは

出典: 古今集 巻五・秋下(古今集 巻五・秋下こきんしゅう

神代の昔にも聞いたことがない、竜田川が紅葉で水を真紅にくくり染め(しぼり染め)にしているとは、と詠む紅葉の名歌。

18 藤原敏行朝臣ふじわらの としゆき あそん

すみきしによるなみよるさへやゆめかよひとめよくらむ

出典: 古今集 巻十二・恋二(古今集 巻十二・恋二こきんしゅう

「よる」に「寄る」「夜」を掛けた歌。住の江の岸に寄る波の「よる」のように、夜さえも夢の通い路で人目を避けているのか、と詠む恋歌。

19 伊勢いせ

難波潟なにわがたみじかきあしのふしのはでこのぐしてよとや

出典: 新古今集 巻十一・恋一(新古今集 巻十一・恋一しんこきんしゅう

難波潟の短い芦の節の間ほどの短い時間さえも逢わずに、この世を過ごせとおっしゃるのですか、と詠む恋歌。

20 元良親王もとよし しんのう

わびぬればいまはたおな難波なにわなるみをつくしてもはむとぞおも

出典: 後撰集 巻十三・恋五(後撰集 巻十三・恋五ごせんしゅう

「みをつくし」に「澪標(水路の標)」「身を尽くし」を掛ける。恋に苦しむ今、命を尽くしてでも逢いたいと詠む。

21 素性法師そせい ほうし

いまむといひしばかりに長月ながつき有明ありあけつきでつるかな

出典: 古今集 巻十四・恋四(古今集 巻十四・恋四こきんしゅう

「今すぐ来る」と言われたばかりに、九月の有明の月が出るまで待ってしまった、と詠む。恋人を待つ女性の心情を男性の歌人が代詠。

22 文屋康秀ふんやの やすひで

くからにあき草木くさきのしをるればむべ山風やまかぜをあらしといふらむ

出典: 古今集 巻五・秋下(古今集 巻五・秋下こきんしゅう

「山風」を一字にすると「嵐」になる。秋の草木を萎れさせる山風を「嵐(荒し)」と呼ぶのはもっともだ、と詠む言葉遊びの歌。

23 大江千里おおえの ちさと

つきれば千々ちぢにものこそかなしけれわが一つのあきにはあらねど

出典: 古今集 巻四・秋上(古今集 巻四・秋上こきんしゅう

月を見ていると様々なことが悲しく感じられる。私一人だけの秋ではないのに、と秋の物思いを詠む。

24 菅家かんけ

このたびはぬさもとりあへず手向山たむけやま紅葉もみじのにしきかみのまにまに

出典: 古今集 巻九・羈旅(古今集 巻九・羈旅こきんしゅう

「このたび」に「この度」「この旅」を掛ける。今度の旅は急ぎで幣(ぬさ・供え物)を持ってこられなかった。手向山の紅葉の錦を神のお心のままに受け取ってください、と詠む。菅原道真の作。

25 三条右大臣さんじょうの うだいじん

にしおはば逢坂山おうさかやまのさねかづらひとられでくるよしもがな

出典: 後撰集 巻十一・恋三(後撰集 巻十一・恋三ごせんしゅう

「逢坂」に「逢う」、「さねかづら」に「さ寝(共寝)」、「くる」に「来る」「繰る」を掛けた。名前のとおりなら、逢坂山のさねかづらを手繰り寄せるように、人に知られずあなたのところへ通う方法があってほしい、と詠む恋歌。藤原定方の作。