10 蝉丸
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
出典: 後撰集 巻十五・雑一(後撰集 巻十五・雑一)
京と東国の境にある逢坂の関での感慨。「行く人も帰る人も、知り合いも見知らぬ人も、ここで出会い別れる」と詠む。蝉丸は盲目の琵琶の名手と伝わる伝説的歌人。
11 参議篁
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟
出典: 古今集 巻九・羈旅(古今集 巻九・羈旅)
小野篁が隠岐へ流される際、海の漁師に都の人への伝言を託した歌。広い海を多くの島々を越えて漕ぎ出した、と都の人に告げてくれ、漁師の釣舟よ、と詠む。
12 僧正遍昭
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
出典: 古今集 巻十七・雑上(古今集 巻十七・雑上)
舞姫(五節の舞)が天上に帰る雲の通り道を風よ吹き閉じてくれ、もう少し乙女の姿を地上にとどめておきたい、と詠む。遍昭は六歌仙の一人。
13 陽成院
筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる
出典: 後撰集 巻十一・恋三(後撰集 巻十一・恋三)
筑波山から流れ落ちる男女川が積もって淵となるように、わが恋も積もって深く強くなった、と詠む。「みなの川」は「男女川」と書く。
14 河原左大臣
陸奥のしのぶもぢずり誰故に乱れそめにし我ならなくに
出典: 古今集 巻十四・恋四(古今集 巻十四・恋四)
陸奥の信夫摺りの乱れ模様のように、私の心も乱れているのは誰のせいか。あなたのせいですよ、と詠む恋歌。源融の作。
15 光孝天皇
君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ
出典: 古今集 巻一・春上(古今集 巻一・春上)
あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいると、私の袖に雪が降りかかってくる。新春の慶事の歌。
16 中納言行平
立ち別れいなばの山の峰におふるまつとし聞かばいま帰り来む
出典: 古今集 巻八・離別(古今集 巻八・離別)
因幡国へ赴任する際の歌。「いなば」に「往なば」「因幡」、「まつ」に「松」「待つ」を掛けた言葉遊び。あなたが待っていると聞いたらすぐ帰ってくる、と詠む。在原行平の作。