本ページは百人一首の第1首から第9首までを、歌・作者・出典・現代語訳・注釈の形で示す。各歌に作者の肖像画と短い解説が添えられる。歌は通行の表記に依る。
1 天智天皇
秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
出典: 後撰集 巻六・秋中(後撰集 巻六・秋中)
粗末な苫葺きの仮小屋で田を見守る農民の労苦を、天皇が我が身に引き寄せて詠む。
2 持統天皇
春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山
出典: 新古今集 巻三・夏(新古今集 巻三・夏)
万葉集の原歌「春過ぎて夏来るらし白妙の衣ほしたり天の香具山」を改めた形。香具山の麓に白い衣が干されている初夏の景を詠む。
3 柿本人麻呂
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
出典: 拾遺集 巻十三・恋三(拾遺集 巻十三・恋三)
山鳥の長く垂れた尾の長さに長き秋の夜を重ねて、独り寝の寂しさを詠む恋歌。
4 山部赤人
田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
出典: 新古今集 巻六・冬(新古今集 巻六・冬)
万葉集の長歌の反歌「田児の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける」を改めた形。富士山の雄大な景観を詠む。
5 猿丸大夫
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき
出典: 古今集 巻四・秋上(古今集 巻四・秋上)
山奥で紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声を聞く時、秋の悲しさを感じる。猿丸大夫は『古今集』の歌仙の一人。
6 中納言家持
鵲の渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
出典: 新古今集 巻六・冬(新古今集 巻六・冬)
宮中の御階に降りた霜の白さに、夜が更けたことを知る。「鵲の渡せる橋」は中国の七夕伝説の天の川の橋。大伴家持の作。
7 阿倍仲麻呂
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
出典: 古今集 巻九・羈旅(古今集 巻九・羈旅)
唐に留学した仲麻呂が帰国を前に明州(中国浙江省)の海辺で月を見て詠んだ歌。故郷の春日の三笠山に出る月を懐かしむ。仲麻呂は結局帰国できず、唐で生涯を終えた。
8 喜撰法師
わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり
出典: 古今集 巻十八・雑下(古今集 巻十八・雑下)
「うぢ山」(宇治山)に「憂し」を掛けた言葉遊び。京都の東南(辰巳の方向)の宇治山に住む隠者の心境を詠む。
9 小野小町
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
出典: 古今集 巻二・春下(古今集 巻二・春下)
桜の花が長雨に色褪せていく。それと同じく、自分も物思いにふけっているうちに年を取って容色が衰えてしまった。「ふる」は「降る」と「経る」、「ながめ」は「長雨」と「眺め」の掛詞。