p.157 本居宣長・近世研究書・随筆
本居宣長
江戸時代後期(1730–1801)— 国学の大成者
本居宣長は伊勢国松坂(現在の三重県松阪市)の生まれ。医を業とする一方、賀茂真淵に師事して国学を学び、生涯をかけて『古事記』の註釈に取り組んだ。日本古来の精神(「物のあはれ」)の解明と、漢意(からごころ)を排して「やまとごころ」を取り戻すことを学問の目的とした。
『古事記伝』
1764–1798年成立・全44巻
宣長の最大の業績。35年をかけて完成した『古事記』の註釈書。古典の本文を厳密に校訂し、漢字仮名交じり文として表記を整え、難解な古語を一字一句考証する。これにより記紀神話と古代日本語の研究が学問として確立された。
『玉勝間』
1795–1812年成立・全15巻
宣長の随筆。歌・古典・古語・古習俗・人物評など、多岐にわたる随想を集めた覚え書きの集成。宣長の学問観・人生観が断片的に語られ、彼の思想の理解に欠かせない書。
『万葉代匠記』
1683–1690年頃成立・作者:契沖(けいちゅう)
国学の先駆である僧契沖の代表的著作。徳川光圀の依頼で『万葉集』全二十巻に註釈を施したもの。古典文献を実証的に研究する方法を確立し、後の本居宣長らの国学の道を開いた。
『万葉考』
宝暦10年(1760)成立・作者:賀茂真淵
賀茂真淵の万葉集研究書。万葉集の各巻に詠まれた歌を時代別・歌人別に分類し、考証を加える。真淵は「ますらをぶり」(雄々しく素朴な男性的精神)を理想として、万葉集をその精神の典型と位置づけた。
『花月草紙』
享和3年(1803)刊・作者:松平定信
寛政の改革を行った松平定信の随筆。政治・人生・自然・読書など、多岐にわたる随想を漢文書下し風の文体で記す。儒学的教養と政治家としての見識が滲む随想集。
『折たく柴の記』
享保元年(1716)頃成立・作者:新井白石
新井白石の自伝的随筆。儒学者・幕政の枢要を担った白石が、幼少から壮年に至る半生と政治の経験を述懐する。漢文書き下しの精緻な文体で、近世日本の知識人の自己認識を示す貴重な文献。