p.147 松尾芭蕉(続き)— 紀行作品・季題・連歌俳諧の流れ
『野ざらし紀行』
貞享元年(1684)出発・貞享2年(1685)成立
芭蕉が江戸を出発し、東海道・伊勢・大和・吉野・京・大津を経て郷里伊賀に帰る旅の記録。「野ざらしを心に風のしむ身かな」の発句が題名の由来。蕉風確立直前の旅で、漢詩文の影響が色濃い。
『笈の小文』
貞享4年(1687)出発・元禄3年(1690)頃成立
江戸を出て、伊勢・伊賀・吉野・高野山・和歌の浦・須磨・明石を巡る旅の記録。「造化に従ひて、四時を友とす」と芭蕉自身が冒頭で芸術論を述べる。「風雅の誠を立てる」という芭蕉の宣言が示される。
『更科紀行』
貞享5年(1688)成立
信濃の更科の月見を目的とする旅の記録。短編。木曽路を経て更科に至り、姨捨山の月を観る。簡潔な文章に旅情と月の風雅が結晶する。
『おくのほそ道』
元禄2年(1689)出発・元禄7年(1694)頃定稿
芭蕉の代表作。江戸深川を出発し、河合曾良を伴って奥州・北陸を巡り、岐阜大垣に至る約2,400キロの旅の記録。「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」の名高い冒頭。漢詩文の格調と和文の風情を融合させた紀行文学の最高峰とされる。
『嵯峨日記』
元禄4年(1691)成立
京都嵯峨野の去来の別荘「落柿舎」に滞在した約半月間の日記。門人との交流、自分の俳論、夢の記録などを綴る。芭蕉の晩年の俳境を伝える。
季題(季語)一覧
ページ下段に「春の日」「夏の日」「秋の日」「冬の日」「新年」の五季別に主要な季題を一覧する表が配される。「梅・桜・若葉・蛍・月・紅葉・雪・初日の出」など、俳諧の季題の基本が示される。
連歌・俳諧の流れ
ページ右下の系譜図は、中世の連歌(二条良基・宗祇)から、近世初期の貞門俳諧(松永貞徳)、談林俳諧(西山宗因)、そして芭蕉の蕉風俳諧に至る流れを示す。和歌・連歌・俳諧の系譜上に芭蕉を位置づける。