p.145 主要な説話集(日本霊異記・十訓抄・沙石集等)
概観
今昔物語集・宇治拾遺物語に続いて、平安〜鎌倉〜室町時代に編まれた主要な説話集を一覧として並べる。仏教説話集・世俗説話集・歌物語的説話集など、種類・性格は多様である。
日本霊異記
正式名は『日本国現報善悪霊異記』。平安時代初期(822年頃)の成立。薬師寺の僧景戒の編。日本最古の仏教説話集で、上中下三巻に約116話を収める。漢文体で書かれ、善因善果・悪因悪果という因果応報の仏教思想を中心に説く。
宝物集
平安時代末期成立。平康頼編とされる。仏教説話を中心に、極楽往生を願う人々の物語を集める。和文で書かれ、源平合戦の頃の時代背景を映す。
江談抄
平安時代後期成立。大江匡房の談話を、その弟子(藤原実兼か)が筆記したもの。漢詩・漢文の故事、宮廷の故実、人物逸話を多く含み、博識の漢学者の言を伝える。
打聞集
平安時代末期成立とされる仏教説話集。編者未詳。今昔物語集と共通する話を多く含む短編集。
十訓抄
鎌倉時代中期(1252年)成立。編者は六波羅二臈左衛門入道(湯浅宗業説など)とされるが未詳。十の徳目(教訓)に分類して説話を配する。和漢の故事を交え、青少年への教訓書として広く読まれた。
発心集
鎌倉時代前期成立。鴨長明の編。仏教発心の説話を集め、執着を捨て世を遁れる人々の話が中心。『方丈記』と通底する無常観を示す。
古今著聞集
鎌倉時代中期(1254年)成立。橘成季編。約700話を30篇(部)に分類して収める世俗説話集。神祇・釈教・政道・歌舞・絵・武勇・闘諍などの分類で、宮廷・武家・庶民の話を網羅する。
沙石集
鎌倉時代後期(1283年)成立。無住道暁編。仏教説話集だが、教説に俗な笑話を多く交える独自のスタイル。「砂や石にも仏法は宿る」という意で名づけられ、庶民への教化を意図する。狂言・落語の素材ともなった。
吉野拾遺
室町時代成立。南北朝期の吉野の南朝に関わる説話を集めるとされる。詳細は未詳の点も多い。下部に「吉野拾遺巻末(南朝武士の図)」と思しき口絵が添えられる。