p.135 『大鏡』の描く人物像(続き):きもだめし・三船の才
きもだめし(道長伝)
大鏡における藤原道長の名場面の一つ。父藤原兼家が三人の息子(道隆・道兼・道長)の度胸を試そうとして、不気味な夜に大極殿を歩かせる。道隆と道兼は途中で逃げ帰るが、道長は一人で行き、大極殿の柱の一部を削り取って証拠とした。道長の勇気と決断力を示す逸話として有名。
三船の才(道長伝)
藤原公任の有名な逸話。道長が船遊びを催し、漢詩・管絃・和歌の三つの船を浮かべた。一人で複数の才能を持つ人物が問われたとき、公任は和歌の船を選ぶ。和歌の船で詠んだ「小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき」が名歌として伝わる。しかし公任は後に「漢詩の船に乗ればよかった」と悔やんだとされ、和歌よりも漢詩の方が当時の評価が高かったことを示す。
藤原道長「望月の歌」
この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば
寛仁2年(1018)、藤原道長が娘の威子を後一条天皇の中宮に立てた祝宴で詠んだ歌。三人の娘(彰子・妍子・威子)が三代の天皇の后となる絶頂期の自信を示す。「望月」(満月)になぞらえて自身の栄華の完璧さを謳う。
和歌朗詠集
藤原公任が編集した1012年成立の歌謡集。漢詩588、和歌216の朗詠(伝統的な節回しで朗読する詩歌)を収める。和漢の境を超えた美意識を示す。後の能楽・歌舞伎の素材としても活用された。
三船の図(京都嵐山大堰川)
毎年5月、京都嵐山の大堰川で復元再現される三船祭。藤原公任の故事に基づき、漢詩・和歌・管絃の三船を浮かべる。