p.129 『徒然草』
王朝への憧憬と教訓の融合
徒然草とは
元徳2年(1330)頃成立、吉田兼好(よしだ けんこう、卜部兼好、1283頃-1352頃)による。「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」で始まる序段から243段までの随筆集。日本三大随筆の最後の一つで、王朝への憧憬・人生観・教訓・自然観・批評など多岐にわたる主題を扱う。
作者
吉田兼好(卜部兼好)。1283年頃に京都の神官の家に生まれる。当初、後二条天皇に仕える官吏として活動するが、1313年頃に出家。各地を遍歴し、特に比叡山周辺に隠棲。和歌・古典学・有職故実に深く通じた知識人。「兼好法師」として知られる。1352年頃没。
成立
正中元年(1324)から元徳2年(1330)頃にかけて執筆。243段からなる。執筆は数年にわたり、特定の構成はなく、思いつくままに書き付けたとされる。「随筆」という言葉は元来兼好の徒然草の序文「そこはかとなく書きつくれば」に由来する。
内容
243段は内容により以下に分類される。①人生観・無常観:人間の生死、運命、命のはかなさを論じる段。②王朝古典への憧憬:源氏物語・伊勢物語などの引用・解説。③教訓的・批評的段:人の生き方、教養、礼儀、知恵などへの助言。④自然観:四季の風物、自然との交流。⑤批評的段:当時の社会・人物への鋭い批評。⑥仏教的段:仏教思想を踏まえた人生観。
代表的な段
- 序段 ── 「つれづれなるままに」執筆の動機を語る
- 第1段 ── 「いでや、この世にうまれては、願はしかるべきことこそ多かんめれ」
- 第2段 ── 「いにしへの聖代を恋ふべからず」
- 第12段 ── 「同じ心ならん人としめやかに物語して」(友情論)
- 第52段 ── 仁和寺にある法師(石清水詣で)
- 第109段 ── 「高名の木のぼり」
- 第137段 ── 「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」
- 第155段 ── 「世に従はん人は、まづ機嫌を知るべし」