無常の自然観を捉える
建暦2年(1212)成立、鴨長明(かもの ちょうめい、1155頃-1216)による。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」で始まる、日本三大随筆の一つ。鴨長明が日野の山中に建てた一丈四方の庵(方丈の庵)に住みつつ、人生の無常と自然観を描いた中世随筆文学の傑作。
鴨長明(1155頃-1216)。京都・賀茂神社の祠官の家に生まれる。和歌・管絃に秀でた才人だが、家を継げず、政治的にも挫折を経験。1204年頃に出家、各地を転々とした後、日野に方丈の庵を結ぶ。後鳥羽院の歌道編纂事業(和歌所)に関わった一時期もあった。
前半は、世の無常と災難の記録:安元の大火(1177)、治承の辻風(竜巻 1180)、養和の飢饉(1181-82)、元暦の地震(1185)など、京都を襲った天変地異の体験記。後半は、長明の出家・隠棲生活の描写:日野山中の方丈の庵での簡素な生活、自然との交流、人生観・無常観の表明。
和漢混淆文の名文。漢文の引用と仮名の混じった独特の文体。簡潔・力強く、深い哲学的省察に達する。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」の冒頭は古典文学屈指の名文。
元暦2年(1185)に京都を襲った大地震の記録。山は崩れ、川はあふれ、土地は割れ、家屋は倒壊し、寺社も多く損壊した。長明は地震の凄惨な光景を冷静に描写する。