p.124 『枕草子』
をかしの文学
枕草子とは
長保3年(1001)頃成立、清少納言(せいしょうなごん、966頃-1025頃)による。約300段の章段からなる、日本最古の随筆文学。中宮定子に仕えた7年余の宮廷生活で見聞きしたこと、四季の感想、人物観などを、独自の鋭い感性で描く。「春はあけぼの」「枕草子の名所」など名段多数。
作者
清少納言は清原元輔(後撰集撰者)の娘で、漢学に深く通じた才女。993年頃から中宮定子(藤原道隆の娘)に仕える。定子が亡くなる1000年頃まで、約7年間宮中に勤めた。「清」は清原氏、「少納言」は朝廷の官職名。本名は不詳。「香炉峰の雪」のエピソード(白居易の漢詩を体現したこと)で有名。
成立
中関白家(定子の父道隆の家)の没落、定子の早逝(1000年)といった逆境の中で、定子の輝かしい宮廷生活を回想して書かれた。「枕」(草子の枕=書名)に関するエピソードが冒頭に置かれる。長保3年(1001)頃の完成と推定。
内容(三大章段)
- 随筆的章段 ── 「春はあけぼの」「うつくしきもの」など、四季や物事の感想を独自の感性で描く章段。
- 類聚(類想)的章段 ── 「すさまじきもの」「めでたきもの」「鳥は」「虫は」「木は」など、ものづくしの段。同種の事物を列挙する形式。
- 日記的章段 ── 中宮定子の宮廷での具体的なエピソードを記録する段。「香炉峰の雪」「清涼殿の丑寅の隅」など。
文体
簡潔で鋭く、断定的な調子。「をかし」(趣がある)「あはれ」(しみじみと感じる)「いみじ」(程度がはなはだしい)といった言葉が多用される。「をかし」の文学と呼ばれる。漢学の素養に裏付けられた知性と、女性らしい繊細な感性が結びついた独特の文体。
「春はあけぼの」(第一段)
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。