p.110 『源氏物語』
中古仮名文学の最高傑作
源氏物語とは
平安時代中期、1000年頃から1010年頃にかけて紫式部が書いた長編物語。全54帖。光源氏とその子孫の3代にわたる物語を、貴族社会の繊細な人間心理と「もののあはれ」の美意識で描く。日本古典文学の最高傑作。
作者
紫式部(むらさきしきぶ、970頃-1014以後)。藤原為時の娘で、藤原宣孝と結婚するが28歳頃に死別。その後、中宮彰子(藤原道長の長女)に女房として仕える。中宮彰子のために書き始められたという説が有力。父の漢学の素養を受け継ぎ、白楽天など中国文学にも通じていた。
成立
1000年頃から1010年頃にかけて段階的に執筆された。当初は中宮彰子のための内輪の読み物として始まり、宮中で広く読まれて評判となった。藤原道長が原稿用紙を提供したという記録あり(紫式部日記)。完成までに約10年を要した。
内容(全54帖の構成)
- 第一部(桐壺〜藤裏葉、33帖) ── 光源氏の誕生から栄華を極めるまで。父桐壺帝の寵愛、藤壺との禁断の恋、葵上・夕顔・空蝉・末摘花・花散里・明石の君など多くの女性との関わり。子の夕霧・冷泉帝の成長、紫の上との結ばれと共生。
- 第二部(若菜上〜幻、8帖) ── 光源氏の晩年。女三宮との結婚と柏木の罪、紫の上の死、源氏の出家への決意。「ものの哀れ」と人生の哀愁の極致。
- 第三部(匂宮〜夢浮橋、13帖、宇治十帖を含む) ── 光源氏の死後、子孫の薫と匂宮の物語。宇治十帖(橋姫から夢浮橋まで)は、薫と匂宮を中心に、宇治の大君・中君・浮舟との恋を描く。仏教的色彩が濃く、人生の無常を主題とする。
「最愛の人」にきしいの少女
光源氏の最愛の女性「紫の上」は、藤壺の姪。源氏が若い頃に山里で見つけ、自分の手で育てて理想の女性とした。源氏の生涯にわたって愛され、源氏の精神的支えとなる。「若紫」の巻が初登場。
「葵」の葬儀(殉死禁制との悲劇)
源氏の正妻、葵上(あおいのうえ)の悲劇的な死。出産後、六条御息所の生霊に取り憑かれて急死する。源氏が深く悲しむ場面。第9帖。