p.34 信仰(仏教)
貴族の生活の中に、深く入り込んでいた。
仏教 — 現世の苦しみに耐え来世の幸福を願う信仰
大きく分けて、来世の利益・幸福を願う仏教と、現世の幸福を求める陰陽道・神道があったが、互いに融合していた。
❶ 現世利益の加持祈祷
平安時代前期
遣唐使に従い留学した最澄・空海が、八〇五年、八〇六年に相次いで帰国し天台宗、真言宗を開いた。政治の場から離れた比叡山、高野山で厳しい勤行の生活を求めた「山」の仏教であり、延暦寺の天台宗は、特に学問の仏教であった。しかし、藤原氏との関係が深まるにつれ世俗化し、加持祈祷(密教)を加えて現世の幸福を願う貴族の信仰を集めるようになった。多くの仏事を年中行事に折り込み、宗教化を進めた。
❷ 来世利益の阿弥陀信仰
平安時代中期
摂関政治の進展と時を同じくして浄土信仰が空也らによって普及し、西方の極楽浄土に往生できると説いた。浄土思想は広まった。宿世思想——前世、現世、来世を巡って生き続ける輪廻の思想。現世のことは、前世のことが因としておこる果(宿命、運命)であると信じられていた。阿弥陀仏を念じ唱える念仏によって、何日か参籠する間にまどろみ夢を見る。その夢をお告げとして授かりに行くのも物語の目的であった。当時の貴族は夢で見たことが実現すると信じ、夢の内容を聞き吉凶を判断する夢解き(夢合わせ)を専門家に聞かせた。吉夢は人に聞かれるとその人に奪われるとされた。
女性の観音信仰
願いを聞き届け苦悩を除き、成仏を助ける観世音菩薩が女性の信仰を得た。長谷寺(初瀬)、石山寺、清水寺に参詣・参籠する物語が男女を問わず人気だった。
加持祈祷(詳説)
病気平癒など招福攘災を祈願すること。験者や僧が仏に祈り、悪霊である物怪の霊力に勝ち調伏しなければ病気は治らないとされた。怨みを抱く人から抜け出し相手にとりつく生霊、夜の暗闇に出て魂を奪う鬼(百鬼夜行)も怖い存在であった。当時、出産は危険か多く物怪や生霊がとりつきやすいとされ、加持祈祷の他に陰陽師による吉凶占いや祈願が行われた。
『北野天神縁起絵巻』
(加持祈祷の場面)
- 出産をする女性
- 出産の無事を祈願する験者
- 弓の弦をはじき鳴らす
- 病気平癒を祈願する僧
- 祭文を読み上げる陰陽師
▼ 阿弥陀来迎図 ── 極楽浄土から死者を迎えに来る。
▼ 剃髪し出家する醍醐天皇
出典:(『松崎天神縁起』)
入道…在家のまま仏門に帰依。出家…家を出て俗世を離れること。
▼ 修法(加持)に用いた法具
- 頭巾
- 験者(山伏)
- 結袈裟
- 篠懸
- 法螺貝
- 括袴
- 脛巾
- 錫杖
- 五鈷
- 独鈷