(♪ オープニング音楽おんがく)

NHK 高校こうこう講座こうざ言語げんご文化ぶんか時間じかんです。

: みなさん、ご機嫌きげんいかがですか。もとけいです。今回こんかいからたわらずいひつ、「さくらさくらさくら」をんでいきます。講師こうしさいとうゆう先生せんせいです。よろしくおねがいします。

さい: さいとうゆうです。よろしくおねがいします。

(♪ 音楽おんがく)

さい: さて、今回こんかい次回じかいんでいく「さくらさくらさくら」という作品さくひん、どんな作品さくひんなんでしょうか。

さい: はい。筆者ひっしゃたわらさんは歌人かじんで、現代げんだい短歌たんか代表だいひょうするかたです。やわらかいはなし言葉ことば存分ぞんぶん使つかって、日常にちじょうこまやかな場面ばめんをすくいげる歌風かふう特徴とくちょうがあります。今回こんかいげる「さくらさくらさくら」は、歌人かじんである筆者ひっしゃ自分じぶんおもいにしたがってつづったずいひつです。ふでしたがうといてずいひつ、エッセイともいます。

: とてもたのしみです。

: それでは、今回こんかい学習がくしゅうのポイントを紹介しょうかいします。

: いちみっつの話題わだい整理せいりしよう。

: 海外かいがいさくらかた確認かくにんしよう。

: さんさくら女王じょおうさまうたいにくいはな

: このみっつです。それでは、学習がくしゅうはじめましょう。

(♪ ジングル)

さい: それでは、今回こんかい学習がくしゅうするところの朗読ろうどくいてください。筆者ひっしゃつづろうとしているおもいに注目ちゅうもくしてみましょう。朗読ろうどく高山たかやま久美子くみこさんです。

高山たかやま (朗読): さくらさくらさくら たわら

高山たかやま (朗読): 世界せかいでは、「はな」といえばすなわちさくらのことをす。

高山たかやま (朗読): 歌人かじんたちにおおくのめいませてきたというてんにおいて、さくらはまさにナンバーワンのはな堂々どうどうたるめいだ。

高山たかやま (朗読): 最近さいきんでは、さまざまな輸入ゆにゅうばなることができるし、かつてないほど洗練せんれんされたバラのはならんはなれることもできる。

高山たかやま (朗読): シクラメンやポインセチアなど、季節きせつ風物詩ふうぶつしとして定着ていちゃくしたものもある。

高山たかやま (朗読): が、そんななかにあっても、さくらだけは別格べっかくというがする。

高山たかやま (朗読): なんというか、「はな」という言葉ことばではくくりきれない、存在そんざいそのものがてしないひろがりをった、まこと不可思議ふかしぎなもの――、それがさくらだ。

高山たかやま (朗読): けれどさくらたいするおもれは、日本にほんじん独特どくとくのもののようだ。

高山たかやま (朗読): 以前いぜん、デンマークの高校こうこうで、日本にほん古典こてんについてはなしをする機会きかいがあった。

高山たかやま (朗読): 言葉ことばふるくなっても、そのしんじょうにおいては現代げんだいわたしたちがおおいに共感きょうかんできるものがある、というようなことをべ、そのれいとして、『げん物語ものがたり』にえがかれた「ひとする気持きもち」や『物語ものがたり』にてくる「さくらへのおもれ」などをげた。

高山たかやま (朗読):げん物語ものがたり』のほうは、デンマークのわかひとたちにもかりやすかったようだ。

高山たかやま (朗読): が、さくらのほうは、どうもぴんとこないというかおをしている。

高山たかやま (朗読): たとえば、とわたしは、ありわらなりひらつぎうたげた。

高山たかやま (朗読): なかえてさくらのなかりせば はるこころはのどけからまし

高山たかやま (朗読):物語ものがたり』に登場とうじょうするで、『きんしゅう』にもおさめられている有名ゆうめい作品さくひんである。

高山たかやま (朗読):はるになるとわたしたちは、もうすぐさくらくなあとわくわくし、はやかないかなあとイライラもし、けばいたでうきうきするいっぽうかぜあめることをしんぱいし、はじめるとがっかりしてしまう……。

高山たかやま (朗読): 本当ほんとうさくらというのはわたしたちのこころまわすもの。

高山たかやま (朗読): このさくらというものがなければ、はるこころはどんなにかのんびりとおだやかなものであろうか、という逆説ぎゃくせつてきかたで、さくらのすばらしさと存在そんざいかんをたたえているんですね。」

高山たかやま (朗読): われながらうまく説明せつめいできたとおもったのだけれど、学生がくせいたちはぽかんとしている。

高山たかやま (朗読): なぜ、だい大人おとながそこまでいっしょうけんめいになるのか、ずいぶんおおげさなんじゃないの、という反応はんのうである。

高山たかやま (朗読):おおげさなんかじゃありません。いまだって、さくら前線ぜんせんというのがあって毎日まいにちテレビのニュースや新聞しんぶん報道ほうどうされているんですよ。」とさくら前線ぜんせんのことを紹介しょうかいすると、今度こんどはぽかんをとおして、みんなゲラゲラわらはじめる始末しまつ

高山たかやま (朗読):はないたとかかないとかいった話題わだいを、毎日まいにちわざわざニュースでやるなんて、ずいぶんのんきなんですね。」というわけだ。

高山たかやま (朗読): そうわれてみると、たとえば、チューリップ前線ぜんせんとか、ひまわり前線ぜんせんとか、そういうことをねんがらねんじゅうやっているとしたら、これはじつにのんきなかんじがする。

高山たかやま (朗読): そういうおかしさを、かれらはかんじたのだろう。

高山たかやま (朗読): でもでも、さくら前線ぜんせんは、おかしくないのだ。

高山たかやま (朗読): なんてったってさくらである。

高山たかやま (朗読): さくらは、我々われわれ日本にほんじんにとっては別格べっかく女王じょおうさまなのだ。

高山たかやま (朗読): そこのところが、どうも理解りかいされにくいようだった。

高山たかやま (朗読): しかも、これはデンマークでの体験たいけんではないのだが、べつのヨーロッパのくにで、「なんで、あんなうすきたないろはながいいのか?」と質問しつもんされたことがある。

高山たかやま (朗読): たしかに、ピンクといっても、バラやスイートピーのようにはっきりしてはいない。

高山たかやま (朗読): どちらかというと、ねぼけたようないろである。

高山たかやま (朗読): しかしそれが、日本にほんはるやさしいあおぞらとぼんやりした空気くうきとに、じつによくうのだ。

高山たかやま (朗読): たとえば真紅しんくさくらなんて、かんがえただけでもまいがしそうだ。

高山たかやま (朗読): さくらというのは、はなだけをして観賞かんしょうするものではないのかもしれない。

高山たかやま (朗독): さくらいている空間くうかんごと、そして時間じかんごと、日本にほんはるという舞台ぶたいすべてをふくめてさくらなのだというがする。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: みっつの話題わだい整理せいりしよう

さい: 作品さくひん前半ぜんはん朗読ろうどくいてもらいましたが、このあと後半こうはんわせて、この随筆ずいひつおおきくみっつの話題わだい展開てんかいしています。そこで、全体ぜんたいみっつの話題わだい整理せいりしてみましょう。けて整理せいりすることがこの随筆ずいひつ理解りかいするために大切たいせつなポイントです。

: どのようにしたらいいんでしょうか?

さい: はい。まず接続せつぞく注目ちゅうもくしてみます。話題わだいわるとき逆説ぎゃくせつ転換てんかんあらわ接続せつぞくくことがよくあります。逆説ぎゃくせつ接続せつぞくたとえば、「しかし」「けれど」「が」「でも」などですね。そして、この随筆ずいひつ主題しゅだいであるさくらたいする視点してんわったところをさがしてみます。

: 逆説ぎゃくせつ接続せつぞくはじまるのは…

: あ、「けれど」ではじまる段落だんらくがありますね。「けれどさくらたいするおもれは、日本にほんじん独特どくとくのもののようだ。」というところですか?

さい: いいですね。ほかにはありますか?

: えっとですね。逆説ぎゃくせつ接続せつぞくはじまる段落だんらくはなさそうなんですが、さくらかんする視点してんわるところはありますね。「ところで、歌人かじんにとっては、さくらというものはもっとうたいたくて、もっとうたいにくいはなである。」というところです。

さい: はい、そうですね。冒頭ぼうとうぶんと、いまてきたふたつのぶんつないでみると、こうなります。

さい: 世界せかいでは「はな」といえばすなわち「さくら」のことをす。

さい: けれどさくらたいするおもれは、日本にほんじん独特どくとくのもののようだ。

さい: ところで、歌人かじんにとっては、さくらというのはもっとうたいたくて、もっとうたいにくいはなである。

さい: いかがでしょうか。おおきくまとめると、これがこの随筆ずいひつべられているみっつの話題わだいなんです。

: なるほど。接続せつぞく注意ちゅういして、主題しゅだいたいする視点してんわったところをさがすと、おおよその内容ないようがわかるんですね。

さい: そうなんです。この随筆ずいひつはまずさくらについて説明せつめいをしています。日本にほん歌人かじんたちにおおくのめいませてきたはなでナンバーワンのはなだとっています。輸入ゆにゅうされるさまざまなはなくらべても別格べっかくだと筆者ひっしゃっています。

: さらに、「はな」という言葉ことばではくくりきれない不思議ふしぎなものだともっていますね。

さい: はい。そのつぎで「けれどさくらたいするおもれは」と逆説ぎゃくせつ接続せつぞくはなし転換てんかんし、筆者ひっしゃがデンマークの高校こうこう日本にほん古典こてんはなしをする機会きかいがあったことをべています。そこで「そのしんじょうにおいては現代げんだいわたしたちがおおいに共感きょうかんできるものがある」とっています。

: さいとう先生せんせい、ここでう「そのしんじょう」ってどんなしんじょうなんでしょうか。

さい: はい。日本にほん古典こてんにおける言葉ことばたくされた、のさまざまなしんじょうです。

: 言葉ことばたくされたのさまざまなしんじょうのことならば、現代げんだいにおいてもおおいに共感きょうかんできるところがありますね。

さい: はい。このあと筆者ひっしゃは『げん物語ものがたり』や『物語ものがたり』をれい説明せつめいするのですが、デンマークのわかひとにはさくらはなしはピンとこなかったようです。そこで、ありわらなりひらの、「なかえてさくらのなかりせば はるこころはのどけからまし」という紹介しょうかいしました。

: もとさんはこのはご存知ぞんじですか?

: はい。ありわらなりひらきですし、この印象いんしょうてきです。本文ほんぶんではこのあと筆者ひっしゃがこの解釈かいしゃくしていますが、最後さいごほうに「逆説ぎゃくせつてきかた」とありますね。こののどこが逆説ぎゃくせつてきかたなんでしょうか。

さい: はい。逆説ぎゃくせつとは、わんとすることをあえて反対はんたいかたべることです。たとえば「いそがばまわれ」や「けるがち」とかもますが、それのことですよね。

: そうです。ここでは、「さくらはななどなければいいのに」というかたで、「さくらはなほど素晴すばらしいものはない」という意味いみあらわしています。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: 海外かいがいの「さくら」のかた確認かくにんしよう

さい: さて、つづきをすすめていきましょう。ありわらなりひら日本にほんにおけるさくらへのしんじょう説明せつめいしたところ、学生がくせいたちはぽかんとしていたといます。

: だい大人おとなおおげさなんじゃないのという反応はんのうだったようですね。さらにさくら前線ぜんせん紹介しょうかいしたら、ぽかんをとおしてゲラゲラわらはじめる始末しまつだったそうです。そんなに面白おもしろいことなんでしょうか。

さい: さくらくのかかないのかということに、なぜそこまでいっしょうけんめいになるのか、ずいぶんおおげさなのではないかとかんじています。テレビのニュースや新聞しんぶんさくら前線ぜんせん報道ほうどうされることについても、わざわざらせるほどのものではないとかんがえているんでしょう。

: なるほど。わたしたちは馴染なじみがあってたりまえのようにかんじられますが、海外かいがいかたからするとそうかんじられるんですね。

さい: はい。すすめると今度こんどは、べつのヨーロッパのくにひと質問しつもんされたことがべられています。さくらいろを「あんなうすきたないろはな」とべ、色調しきちょうがはっきりしないことをマイナスにとらえている様子ようすがうかがえますね。

: そんなふうにかんじられるなんて意外いがいでしたね。

さい: はい。筆者ひっしゃは「さくらはなだけして観賞かんしょうするのではなく、いている空間くうかん時間じかんなど、日本にほんはるという舞台ぶたいすべてをふくめてさくらなのだ」とべています。はるになってお花見はなみかけたい気分きぶんおもしてください。もとさんはどんな気分きぶんでしょうか。

: そうですね。やはりこう、さくら時期じき満開まんかいときっている姿すがたきでして、こう、れたんだ青空あおぞらもとで、のんびりながめながらなごやかな時間じかんにひたりたいなという気分きぶんと、あとはみんなでワイワイとこう景色けしきやその空間くうかん自体じたいたのしむという、めでたいという気分きぶんもありますね。

さい: いいですね。どこかのさくらを、いつ、だれおとずれたいのか、そこでどのような時間じかんごしたいのか。お花見はなみ自分じぶん自身じしんおもえがいているしあわせのかたちづかせてくれます。はるおとずれはわかれもあればあたらしい出会であいもあって、そのような季節きせつかんおぼえさせるのもさくら特徴とくちょうですね。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい:さくら」が「女王じょおうさま」? 「うたいにくいはな」?

さい: さて、つぎ段落だんらく冒頭ぼうとう筆者ひっしゃは「歌人かじんにとってもっとうたいたくてもっとうたいにくいはな」とっています。

: どういうことなんでしょうか。

さい: すこまえで「さくら別格べっかく女王じょおうさまなのだ」とっていましたね。さくら歌人かじんたちにおおくのめいませてきたまさにナンバーワンとあるので、こと日本にほんにおいては、さくらがあらゆるはなとは別格べっかく位相いそうことなる存在そんざいだということをっています。そのことを女性じょせい擬人ぎじんして表現ひょうげんしているのがこの「女王じょおうさま」という表現ひょうげんなんです。

: なるほど。では、なぜうたいにくいんですか?

さい: はい。さくら日本にほんはる象徴しょうちょうするはな筆者ひっしゃっていましたね。そうであるゆえに、歌人かじんとしてはげたいテーマであることは間違まちがいありません。ですから、「もっとうたいたいはな」とえます。

: では、なぜうたいにくいんですか?

さい: はい。すでにかぞれないほどさくらうたまれており、めいばれるものもたくさんあるからです。そのそばに自分じぶんうたならべるとなるとけるので、うたいにくい、というわけです。

高山たかやま (朗読): ところで、歌人かじんにとっては、さくらというのはもっとうたいたくて、もっとうたいにくいはなである。

高山たかやま (朗読): 歌人かじんとよばれるからには、さくらはなうたを(それもできればめいを)ものしたいとおもう。

高山たかやま (朗読): が、冒頭ぼうとうでもれたように、すでにかぞえきれないほどのうたまれており、だい先輩せんぱいめいもたくさんある。

高山たかやま (朗読): ってみれば、日本にほんにとってのさんのようなものだろうか。

高山たかやま (朗読): こころるならば満開まんかいしたでそっとわれたかったさよなら

高山たかやま (朗読): るというしょうのかたちはなびらはふとほほんでえだはなれる

高山たかやま (朗読): すうねんまえんだうタである。

高山たかやま (朗読): 自分じぶんこころるときには、さくらはな満開まんかいであってほしいとおもった。

高山たかやま (朗読): そしてまた、さくら様子ようすていると、それは「わる」といううしきのものではなく、まさにしょうしているかのようにかんじられた。

高山たかやま (朗読): ならば、いまろうとしている自分じぶんこころも、しょうへとえることができるかもしれない……。

高山たかやま (朗読): そんなはげましを、もらったようながする。

高山たかやま (朗読): 最後さいごに、わたしはじめてんださくらうたいっしゅ

高山たかやま (朗読): 毎年まいとしさくらはな季節きせつわると、ひとつのゆめからめたような気分きぶんになる。

高山たかやま (朗読): それは芝居しばいわったときの感覚かんかくにもている。

高山たかやま (朗読): さくらさくらさくら わり なにもなかったような公園こうえん

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: 筆者ひっしゃ短歌たんかさんしゅてみよう

さい: 筆者ひっしゃ短歌たんかさんしゅ紹介しょうかいされていましたね。

: はい。はなんだうたでしたね。ふたつははっきりさくらはいってはいないんですが、さくらうたったものですよね。

さい: そうです。ひとつずつていきましょう。まずひとうたもとさん、んでみてください。

: はい。こころるならば満開まんかいしたでそっとわれたかったさよなら。

さい: このうたと、もうひとつのうたつづけたあとに、作者さくしゃ自身じしんが「自分じぶんこころるときには、さくらはな満開まんかいであってほしいとおもった」とあるので、いまんでいただいた場面ばめんはすべて作者さくしゃ空想くうそうです。そしてうたなかに「さよなら」「こころる」とあるんですね。

: ということは、わかれのうたなんでしょうか。

さい: そうですね。別離べつり失恋しつれん場面ばめんうたっているんですね。さらに「こころる」のと「さくらる」ことをけていて、わかれをげられた「わたし」のこころが、えだからはなれてひろがりちる無数むすうはなびらにたとえられています。また「そっとわれたかった」とあるので、実際じっさいは「満開まんかいした」ではないところで、相手あいてに、おそらく唐突とうとつわかれをげられたのではないでしょうか。「さくらる」という光景こうけいから「こころる」という造語ぞうごへとむすびつけた連想れんそう見事みごとです。

: こう、気持きもちと情景じょうけいかさなりますね。

さい: 場面ばめんえますよね。では、つぎうたんでみてください。

: はい。るというしょうのかたちはなびらはふとほほんでえだはなれる。

さい: こちらのうたは「はなびら」が「ほほむ」という擬人ぎじんほう使つかわれています。ることを「ぶ」と、けるをかさねた「しょう」とえ、あたかもはなびらが自分じぶん意志いしつかのような印象いんしょうあたえています。

: たしかに「しょう」とすると、なんだかくぞというような前向まえむきなかんじがしますよね。

さい: そうですよね。うたあと作者さくしゃ自身じしんべているように、ることが「わり」ではなく、「しょう」することによってつぎの「はじまり」へとつながっているんです。さくら場面ばめんさびしいうたにするのではなく、はげましのうたへとんでみせています。

: なるほど。はなることがかなしいことではなくなっているんですね。

さい: そうですね。それでは最後さいごうたんでみてください。

: はい。さくらさくらさくら わり なにもなかったような公園こうえん

さい: うたしで「さくらさくらさくら」と言葉ことばかえしたかなきであらわすことで、あたかもさくら様子ようす文字もじえがいているような印象いんしょうあたえています。

: 面白おもしろいですね。随筆ずいひつのタイトルはこのうたからているんですね。

さい: そうですね。また、「わり」と、最初さいしょ最後さいごつづけてしまうことで、さくらいているみじか時間じかん象徴しょうちょうし、最後さいごに「なにもなかったような公園こうえん」という日頃ひごろれた風景ふうけいとしんでみせているんです。筆者ひっしゃさくら季節きせつわりを「ひとつのゆめからめたような気分きぶん」「芝居しばいわったときの感覚かんかく」としるしているように、自分じぶんていた満開まんかいさくらが、現実げんじつだったのかまぼろしだったのかからなくなるような不思議ふしぎ感覚かんかくえがいているんです。

: なるほど。さくらいている時間じかんみじかさまでめられているというのはおどろきでした。この32文字もじなかにドラマがぎゅっとまっていて面白おもしろいですね。

さい: そうですね。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい:自分じぶんこころる」?

さい: 筆者ひっしゃ短歌たんかふたつづけて紹介しょうかいされたあと、「自分じぶんこころとき」という表現ひょうげんがありましたね。

: はい。

さい: この「こころる」というのは、筆者ひっしゃ独特どくとくまわしだとおもいます。この随筆ずいひつさくらがテーマになっていますが、たとえば受験じゅけん合格ごうかく合格ごうかくを「さくらく」や「さくらる」とったりしますよね。

: はい。みみじみがありますね。

さい: しんじょう象徴しょうちょうてき表現ひょうげんとしてさくらはな様子ようすもちいられることは、いまなおにすることがあります。ですから、「こころる」は、なにんだりすることをしているとおもわれます。

: なにがあってむんでしょうか。

さい: 本文ほんぶんではこのあとに「いまろうとしている自分じぶんこころ」とあるので、したしかったひととの別離べつりまれているとかんがえられます。この「自分じぶんこころる」とは、自分じぶんおもどおりにことはこばず、気持きもちがみだれたりしおれたりしている様子ようすしているとかんがえられるんです。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい:さくら」にたいする日本にほん独特どくとく感覚かんかく筆者ひっしゃかんがえについてまとめよう

さい: ここまでんできて、さくらたいする独特どくとく感覚かんかく筆者ひっしゃかんがえについてまとめてみましょう。

: はい。まず本文ほんぶん冒頭ぼうとうには、世界せかいでは「はな」といえば「さくら」のことをす、とありましたね。

さい: そうですね。さくらはまさにナンバーワンのはなとありました。古典こてん世界せかいでもさくら特別とくべつだとっているくらい、日本にほんではみんなさくら大好だいすきなんですね。

: たしかにそうですね。本文ほんぶんにもありましたが、はるになるとさくら前線ぜんせんはなしがニュースでげられたり、さくらくだけでニュースになったりしますからね。でも、どうしてわたしたちはそんなにもさくら大好だいすきなんでしょうか。

さい: それは、「はな」といえばすなわちさくらあらわすごとく、はな代表だいひょうさくらになっているからだとおもわれます。堂々どうどうたるめいとして別格べっかくさくらは、筆者ひっしゃわせれば「女王じょおうさま」の称号しょうごうにふさわしい。この感覚かんかくは、筆者ひっしゃ実際じっさいおとずれたヨーロッパの人々ひとびとには共感きょうかんされませんでしたが、日本にほんという島国しまぐににおいては、むかしから現代げんだいへとつらなる、普遍ふへんてき感性かんせいとしてがれているんです。それは『げん物語ものがたり』や『物語ものがたり』といった古典こてん名作めいさくでもげられ、現代げんだいでもさまざまな作品さくひんげられ、日常にちじょうでもさくら前線ぜんせんさくら開花かいかがニュースになっていることでもわかりますよね。

: たしかに、3がつ中旬ちゅうじゅんくらいから、さくらはいつくのかな、お花見はなみにはいつこうかな、などと関心かんしんたかまってきますよね。

さい: そうですよね。筆者ひっしゃうように、歌人かじんとしてうたいたいテーマではありながらうたいたいテーマである「さくら」は、逆説ぎゃくせつてき意味いみにおいて、「さくらというものがなければ」というおもいをいだかせるほどに、わたしたちをつかんではなさない魅力みりょくそなえているのです。

: それでは、ここまでさくらについていろいろてきましたが、もとさん、いかがでしたか?

: そうですね。この内容ないよう学習がくしゅうしたことで、よりいっそうさくらたいする愛情あいじょうというか、いとおしさみたいなものがしました。

さい: はいはい。

: はい。で、さらにですね、あの、「さくらさくらさくら」というこの表現ひょうげんたのしさ、この文字もじつらなりだったり、おとかさなりだったりっていうのもかんじられましたし、たわらさんのまれた短歌たんかふかみにれることで、こう自分じぶんなか想像そうぞうりょくもかきてられて、こころゆたかになったようながしました。

さい: はい。

: そしてこのさくらにちなんでなんですけれども、この日本にっぽん国花こっかくにはなになっているくらいですし、やはりこうむかしからわらずに現代げんだいでもあいされていて、わたしたちのこころうごかしている特別とくべつはなだなというふうにかんじましたね。あの、満開まんかい綺麗きれいき誇ほこっているときはもちろ ん、こう一番いちばんがる時期じきだとおもうんですけれども、このちいさなつぼみをつけて、あ、はるおとずれをかんじたってこううれしくなったりだとか、このはなしずくて、いつもとはちがうようなつやのある情景じょうけいだなって感動かんどうしたり、こうはなびらが姿すがただったり、ざくらになってあたらしいよそおいをても季節きせつかんじたり、こううつろっていくたのしさ、感動かんどうがあるというのもさくら魅力みりょくだなとあらためてかんじました。

さい: いいですね。「はなどき」っていますけど、これまさにさくら満開まんかいときのことをさしてますし、よるでもほのかにあかるくえることを「はなかり」というかたもします。いまもとさんが「はなしずく」っていう言葉ことばげてくれましたけれども、ほかにも「はないかだ」ですとか「はなはし」など、たくさんまれているんですよね。

: この身近みぢかなところに、日本にほんならではのうつくしい言葉ことば言葉ことばひびきっていうのがありますよね。その魅力みりょくうた作品さくひんとしてもかたちのこしたいとか、おもいをかさねたいという人々ひとびとこころきつけるんだろうなというふうにおもいましたね。ながあいされているさくらなんですけれども、100ねん、200ねん、1000ねんもきっとわらずにあいされつづけているんだろうなというふうにおもいました。

さい: 古典こてん世界せかいまれているものっていうのは、もうこえうしなわれているんですけど、我々われわれのこされた文字もじつうじて、うたつうじて、1000ねんまえひとこころのぞることができる、共感きょうかんできるっていうのが、古典こてんまなんでいくことの非常ひじょうおおきな意味いみだとおもいます。

: 共感きょうかんするところからたのしさをつけて、この古典こてん世界せかいたのしむというポイントというかきっかけになったらうれしいですよね。

さい: ぜひそうなってほしいですね。

(♪ ジングル)

: それでは、今回こんかい学習がくしゅうのポイントを確認かくにんしましょう。

: いち筆者ひっしゃ短歌たんかさんしゅてみよう。

: 自分じぶんこころる?

: さんさくらたいする日本にほん独特どくとく感覚かんかく筆者ひっしゃかんがえについてまとめてみよう。

: 以上いじょうみっつでした。

さい: 今回こんかい筆者ひっしゃ自身じしんんだうた情景じょうけいとして想像そうぞうしてみました。うたなかにはそれぞれ、の場面ばめんられていましたね。表現ひょうげんとしては「こころる」など、筆者ひっしゃならではのかたもありました。また、さくらたいするわたしたちの感覚かんかくは、なが年月ねんげつをかけてかさねられてきた部分ぶぶんもあるようです。つらゆきによる『きんしゅうじょ序文じょぶんにこんな表現ひょうげんがあります。「やまとうたは、ひとこころたねとして、よろづのこととぞなれりける」。ひとこころをもとにして、いろいろな言葉ことばになったものだという意味いみですが、さくら短歌たんか歴史れきしなかで、まだひらかないつぼみの状態じょうたいからし、満開まんかい、そしてるまで、さらにったあとと、ひとこころをもとにしてさまざまな情景じょうけいとしてえがかれてきたんですね。

(♪ ジングル)

: さて、今回こんかいさいとうゆう先生せんせいたわらの「さくらさくらさくら」という随筆ずいひつんできました。さいとう先生せんせい、ありがとうございました。

さい: ありがとうございました。

: NHK 高校こうこう講座こうざ言語げんご文化ぶんかもとけいと、さいとうゆう先生せんせいでおおくりしました。

(♪ エンディング音楽おんがく)