(♪ オープニング音楽おんがく)

かわ: NHK 高校こうこう 講座こうざ言語げんご 文化ぶんかはじまります。

かわ: みなさん、ご機嫌きげんいかがですか。かわ です。今回こんかいぶっりょうしゅうみます。このおはなし稚児ちごそらおなじ『しゅう物語ものがたり』におさめられているおはなしなんだそうですね。どんなおはなしなんでしょうか。講師こうし吉田よしだ しげる 先生せんせいです。よろしくおねがいします。

吉田よしだ: こちらこそよろしくおねがいします。

(♪ 音楽おんがく)

吉田よしだ: 今回こんかい次回じかいの2かいにわたって『しゅう物語ものがたり』におさめられてる説話せつわんでいきます。

かわ:しゅう物語ものがたり』は鎌倉かまくら時代じだい初期しょき説話せつわしゅうということでしたが、どれくらいの説話せつわおさめられているんですか?

吉田よしだ: 200 ちか説話せつわおさめられています。でも『しゅう物語ものがたり』よりもまえ成立せいりつした『こんじゃく物語ものがたりしゅう』などの説話せつわしゅう共通きょうつうするはなしすくなくありません。

かわ: なぜなんでしょうか?

吉田よしだ: 説話せつわしゅうそのものが民間みんかんつたわる面白おもしろはなしを、いろいろなひとからってまれたものなので、複数ふくすう説話せつわしゅうるということがあるんだとおもいます。

吉田よしだ: 今回こんかいむ「ぶっりょうしゅう」も『しゅう物語ものがたり』よりものち鎌倉かまくら時代じだいなかごろに成立せいりつした『じっきんしょう』という説話せつわしゅうおなはなしっています。『じっきんしょう』とは数字すうじじゅう教訓きょうくんくんへんすくないのしょうきます。でもそれは『しゅう物語ものがたり』からの影響えいきょうかんがえられますので、ぶっりょうしゅうは『しゅう物語ものがたり』のオリジナルとかんがえてよいとおもいます。

かわ: ということは、『じっきんしょう』の作者さくしゃぶっりょうしゅう面白おもしろいとおもったんですね。

吉田よしだ: そうだとおもいますよ。

かわ: どんな面白おもしろいおはなしなんでしょうか。たのしみです。

かわ: それでは、今回こんかい学習がくしゅうのポイントです。いちりょうしゅう人物じんぶつぞうる。 動詞どうし活用かつよう そのいちさんりょうしゅうしんじょう行動こうどう意味いみかんがえる。以上いじょうみっつです。それでは、学習がくしゅうはじめましょう。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: りょうしゅう人物じんぶつぞう

吉田よしだ: それでは、ぶっりょうしゅう前半ぜんはん朗読ろうどくいてみましょう。朗読ろうどく高山たかやま 久美子くみこさんです。

高山たかやま (朗読): これもいまむかしぶっりょうしゅうというありけり。

高山たかやま (朗読): いえとなりよりて、かぜおおいてめければ、でておおでにけり。

高山たかやま (朗読): ひとかするほとけ御座おわしけり。またきぬなども、さながらうちにありけり。

高山たかやま (朗読): それもらず、ただでたるをことにして、むかいのつらにてり。

高山たかやま (朗読): れば、すでにいえうつりて、けぶりほのおくゆりけるまで、大方おおかたむかいのつらにちてながめければ、

高山たかやま (朗読): 「あさましきこと」とて、ひとどもとぶらいけれど、さわがず。

高山たかやま (朗読): 「いかに」とひといければ、むかいにちて、いえくるをて、うちうなづきて、時々ときどきわらいけり。

吉田よしだ: では、本文ほんぶんんで解釈かいしゃくしていきます。

吉田よしだ: これもいまむかしぶっりょうしゅうというありけり。

吉田よしだ: 「これもいまむかし」とはじまっています。「これもいまとなってはむかしはなしだが」という、説話せつわおおもちいられるしです。

かわ: あ、そうですね。以前いぜんんだ「稚児ちごそら」もおなしでした。説話せつわしゅうしゅう物語ものがたり』のおおくは「これもいまむかし」ではじまるんですよね。

吉田よしだ: そのとおりです。

吉田よしだ: ぶっとは、てらなどにかざ仏像ぶつぞうほとけえがくことを仕事しごとにしているひとです。これもいまむかしのことだが、ぶっりょうしゅうというひとがいた、となります。

吉田よしだ: かわさん、そういうお仕事しごとをされているかたをどのように想像そうぞうされますか?

かわ: そうですね、真面目まじめひとほとけさまのひとですから、信仰しんこうしんあつひと、そのために尊敬そんけいされているイメージでしょうか。

吉田よしだ: そうですね。そのように想像そうぞうされるぶっりょうしゅうの... いえとなりよりて。

吉田よしだ: これは現代げんだいやくする必要ひつようはなく、わかりますね。

かわ: はい、わかります。りょうしゅういえとなりからてきた。つまり、となりいえ火事かじになった、ということですよね。

吉田よしだ: そのとおりです。りょうしゅうとなりいえから出火しゅっかしたが、

吉田よしだ: かぜおおいてめければ。

吉田よしだ: かぜいかぶさるようにいたため、せまってきたので、

吉田よしだ: でておおでにけり。

吉田よしだ: 以前いぜん現代げんだいやくをするさい注意ちゅういてんれましたが、ここでは主語しゅごおぎなって、りょうしゅう自分じぶんいえからしておおきなとおりにた、というわけです。

かわ: わあ、たすかったーというかんじでしょうか。

吉田よしだ: はい。

吉田よしだ: でも、ひとかするほとけ御座おわしけり。

吉田よしだ: ここの「御座おわしけり」の「御座おわし」は、ほとけうやま尊敬そんけいですから、いえなかにはひと注文ちゅうもんしてりょうしゅうかせているほとけもいらっしゃった。

吉田よしだ: ほとけばかりではありません。

吉田よしだ: またきぬなどもさながらうちにありけり。

吉田よしだ: また、きぬよるころもいでそれをうえけてていたつまも。「さながら」はそっくりそのままのですから、つまもそのまま、まだいえなかているのです。

かわ: え、りょうしゅうたすけにかないのですか?

吉田よしだ: そうなんです。りょうしゅうというおとこほとけも、さらに妻子さいしまでものこして、自分じぶん一人ひとりだけでしたのです。

かわ: 最初さいしょ想像そうぞうした人物じんぶつぞう全然ぜんぜんちがいました。

吉田よしだ: はい。

吉田よしだ: つづきは、それもらず、ただでたるをことにして、むかいのつらにてり。

吉田よしだ: 「それもらず」は「おかまいなく」とか「無視むしして」とかです。

吉田よしだ: ただ自分じぶんしたのを、つぎの「こと」はやくむずかしいのですが、「特別とくべつなこと」「さいわいなこと」とやくすといいですね。ですから、「ただ自分じぶんだけがしたことをさいわいなこととして」とやくしましょう。

吉田よしだ: 「つら」は、あるものにめんしたところをしますので、おおめんしたこうがわっているのです。

かわ: はあ、しんじられないです。りょうしゅうさん、それでいいのっておもいます。

吉田よしだ: そうですね。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: 動詞どうし活用かつよう そのいち

吉田よしだ: 今回こんかい動詞どうし活用かつようまなんでいきましょう。さっきんだ「むかいのつらにてり」の「て」が動詞どうしです。ちてながめければの「ち」もおな動詞どうしです。おな意味いみ動詞どうしですが、かたち変化へんかしています。

かわ: これを活用かつようしているというのでしたね。

吉田よしだ: はい。変化へんかしていない部分ぶぶん」を語幹ごかん変化へんかしている部分ぶぶん「て」「ち」を活用かつよう語尾ごび、または語尾ごびいます。この動詞どうしは、未然みぜんけい連用れんようけい終止しゅうしけい連体れんたいけい已然いぜんけい命令めいれいけいじゅん活用かつようさせると、「」と、タぎょうのアだん・イだん・ウだん・エだんだんにわたって活用かつようします。このような活用かつようだん活用かつよういます。

かわ: なるほど。とすると、「つ」はタぎょうだん活用かつよう動詞どうしなんですね。

吉田よしだ: はい、そのとおりです。

吉田よしだ: そして、さきほど解釈かいしゃくした「きぬぬ」の「」は、語幹ごかん語尾ごびとが区別くべつできない動詞どうしで、「る・る・れ・よ」と活用かつようします。すべて「キ」のイだんおと共通きょうつうします。じゅうおんおもかべてください。イだんなかのウだんよりうえにありますね。ですから、かみいちだん動詞どうしいます。子音しいんはずして活用かつようさせれば、「い・い・いる・いる・いれ・いよ」となります。あとてくる「れば」の「る」もおなかみいちだん動詞どうしです。

吉田よしだ: かわさん、この「る」を活用かつようさせてください。

かわ: はい。えー、マぎょう活用かつようさせればいいわけですから、「る・る・れ・よ」でしょうか。

吉田よしだ: はい、そのとおりです。さっきの「る」はカぎょうかみいちだん動詞どうしいまの「る」はマぎょうかみいちだん動詞どうしです。

吉田よしだ: つぎしもいちだん動詞どうしです。これは「る」のいちのみです。古文こぶんでは蹴鞠けまり場面ばめんてきます。鹿しかかわつくったまりってあそんだり、きそったりします。「る」は「る・る・れ・よ」と活用かつようします。

かわ: イのおとが「エ」のおとわりましたね。さきほどの「る」はイだん活用かつようしたのでかみいちだん動詞どうしだったんですが、この「る」はエのだんおと活用かつようするのでしもいちだん動詞どうしうんですね。

吉田よしだ: はい、そのとおりです。かみいちだん活用かつようおぼえておけば応用おうようできますね。

吉田よしだ: つぎは、おおでにけりの「で」です。「で」の終止しゅうしけい語尾ごびの「で」のおとをウだんおとえればいいので、「づ」です。「づ」を活用かつようさせると、「で・で・づ・づる・づれ・でよ」となります。語尾ごび子音しいんると「え・え・う・うる・うれ・えよ」となります。エだんとウだんおとにわたっていますから、しもだん活用かつよういます。

かわ: ということは、「づ」はダぎょうしもだん動詞どうしですか?

吉田よしだ: そうです。

吉田よしだ: また、でての「げ」の終止しゅうしけい基本きほんけいは「げる」ではなく、語尾ごびの「げ」をウだんおとえて「ぐ」となります。活用かつようさせると、「げ・げ・ぐ・ぐる・ぐれ・げよ」となります。かみいちだん動詞どうしたいしてしもいちだん動詞どうしがあったように、しもだん動詞どうしたいしてかみだん動詞どうしもあるのです。

かわ: かみだんですか?

吉田よしだ: ぶっりょうしゅうにはてきていませんので、現代げんだいの「きる」の古語こごりて説明せつめいしましょう。古語こご終止しゅうしけいは「きる」ではなく「く」です。「き・き・く・くる・くれ・きよ」と活用かつようし、イだんとウだん活用かつようしていますので、「く」はカぎょうかみだん動詞どうし説明せつめいできます。まえ同様どうように、語尾ごび子音しいんはずしてしまえば、「い・い・う・うる・うれ・いよ」となります。

かわ: なるほど。しもだん活用かつようの「エ」が「イ」にわっただけですね。

吉田よしだ: そうですね。ここまでまなんだだけでも、だんかみいちだんしもいちだんかみだんしもだん活用かつようの5種類しゅるいがあります。また、これらの活用かつよう動詞どうしには法則ほうそくせいがありますので、子音しいんはずしたものをしてみるとよいとおもいます。するとその法則ほうそくせいがよくわかりますよ。

かわ: ああ、ではその法則ほうそくおぼえればいいんですね。

吉田よしだ: そうですね。その法則ほうそくせいあたまれることが、動詞どうし活用かつようおぼえる早道はやみちだとおもいます。

吉田よしだ: 活用かつようほかにもあるのですが、それは次回じかいまなぶことにしましょう。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: りょうしゅうしんじょう行動こうどう意味いみかんがえる

吉田よしだ: それでは、ぶっりょうしゅう解釈かいしゃくもどりましょう。

吉田よしだ: れば、すでにいえうつりて。

吉田よしだ: ここも主語しゅごがありませんが、「すでにいえうつりて」とありますので、りょうしゅうると、はすでに自分じぶんいえまでうつって、となります。

吉田よしだ: けぶりほのおくゆりけるまで。

吉田よしだ: けむりほのおがったときまで。ここでも「とき」をおぎなうとわかりやすくなりますね。

かわ: はい。

吉田よしだ: 大方おおかたむかいのつらにちてながめければ。

吉田よしだ: りょうしゅうとおりのかいがわって、自分じぶんいええるのをながめていたのです。

かわ: いえなかには妻子さいしもいるんですよね。

吉田よしだ: はい、そうです。ここでまわりのひとたちはこううんです。

吉田よしだ: あさましきこと。

吉田よしだ: 古語こごの「あさまし」は、予想よそうちがったことにおどろあきれた、という気持きもちをあらわ形容詞けいようしです。

かわ: 現代げんだいの「あさましい」とはすこ意味いみちがいますね。

吉田よしだ: はい。ここでは「おどろあきれて、たいへんなことですね」となります。

吉田よしだ: とぶらいけれどさわがず。

吉田よしだ:とぶらい」には訪問ほうもんするのもありますが、ここでは「見舞みまう」ので「たいへんですね」とって、ちかくのひとたちが火事かじ見舞みまいにたけれど、りょうしゅうすこしもさわがない、というのです。

かわ: 自分じぶんいえけてたらバタバタあわてますよ。ましては妻子さいしなかにいるんですから。どうしよう、どうしようとおもいますよね。

吉田よしだ: そうですよね。でもりょうしゅうさわがず、ただだまってえるつめているのです。

かわ: なぜなんでしょうか。

吉田よしだ: はい。なぜでしょうか。

吉田よしだ: 「いかに」とひといhiいければの、この「いかに」は現代げんだいでも使つか副詞ふくしです。「どうしたのですか」と見舞みまいのひとうと、

吉田よしだ: むかいにちて、いえくるをて、うちうなづきて、時々ときどきわらいけり。

吉田よしだ: とおりのかいにって、自分じぶんいえけるのをて、ふむふむとうなづいては、時々ときどきわらっていた、というのです。

かわ: りょうしゅうさん、どうしてしまったのでしょうか。

吉田よしだ: どうでしょう。

吉田よしだ: ここまでりょうしゅう行動こうどうてきました。まとめますと、となりいえ火事かじになったので、ほとけ妻子さいしなどおかまいなしで一人ひとりす。自分じぶんいえにもうつってきても、あわてずさわがず、じっとそのえるさまている。そしてうなづいて、時々ときどきわらっていた、というのです。りょうしゅう行動こうどうについてはわかったとおもいますが、りょうしゅう心理しんりはどのようなものだったんでしょうか。このつづきは次回じかいむことにしましょう。

(♪ 音楽おんがく)

かわ: さて、今回こんかい講座こうざのポイントをまとめておきましょう。学習がくしゅうのポイントは、いちりょうしゅう人物じんぶつぞうる。動詞どうし活用かつよう そのいちさんりょうしゅうしんじょう行動こうどう意味いみかんがえる。このみっつでした。

吉田よしだ: まずぶっとは、てらなどにおさめる仏像ぶつぞうほとけさまのさまのえがくことで生活せいかつしているひとです。はじめにかわさんが信仰しんこうしんあつく、まわりから尊敬そんけいされるひと想像そうぞうされるとおっしゃいましたが、どうもそのような人物じんぶつではなく、りょうしゅう薄情はくじょうにもいえなかにいる妻子さいしほうっておいて、一人ひとりして、とおりのこうから自分じぶんいええているのをているのです。

かわ: 想像そうぞうしたイメージとまったちがってました。

吉田よしだ: そうですよね。

吉田よしだ: つぎ動詞どうし活用かつようまなびました。これをおぼえるにはくちとなえるのもいいですが、かみしてみるのもいいですね。

かわ: はい。

吉田よしだ: また、法則ほうそくせい注目ちゅうもくするとおぼえやすいとおもいます。

吉田よしだ: さて、このりょうしゅう火事かじ見舞みまいに人々ひとびとから「たいへんですね」とこえをかけられても反応はんのうで、ただじっとえるいえてうなづき、時々ときどきわらっていた、というのです。いかがでしたか?

かわ: りょうしゅう行動こうどうれたのですが、そのような行動こうどうりょうしゅうのどのようなしんじょう関係かんけいがあるのか、まだよくわかりません。なぞですね。

吉田よしだ: そうですね。そのなぞかすために、次回じかいはこのつづきをんでみましょう。

(♪ 音楽おんがく)

かわ: さて、今回こんかい吉田よしだ しげる 先生せんせいぶっりょうしゅう前半ぜんはんみました。吉田よしだ先生せんせい、ありがとうございました。

吉田よしだ: ありがとうございました。

かわ: NHK 高校こうこう講座こうざ言語げんご文化ぶんかかわ と、吉田よしだ しげる 先生せんせいでおおくりしました。

(♪ エンディング音楽おんがく)

(♪ 音楽おんがく)

かわ: NHK 高校こうこう 講座こうざ言語げんご 文化ぶんかはじまります。

かわ: みなさん、ご機嫌きげんいかがですか。かわ です。今回こんかい前回ぜんかいつづいて、ぶっりょうしゅう後半こうはんんでいきましょう。前回ぜんかいりょうしゅうえるいえてうなづいているところまででした。つづきはどうなるんでしょうか。講師こうし吉田よしだ しげる 先生せんせいです。よろしくおねがいします。

吉田よしだ: こちらこそよろしくおねがいします。

(♪ 音楽おんがく)

吉田よしだ: 今回こんかいぶっりょうしゅう後半こうはんみます。前回ぜんかいぶっりょうしゅういえ火事かじになったのですが、りょうしゅうみちかいにって、ほとけ妻子さいしいえなかのこっているのに、自分じぶんいええるのをうなづきながらている、というところまででした。

かわ: そうでしたね。うなづくだけでなく、時々ときどきわらっていましたね。

吉田よしだ: はい。前回ぜんかいすこれた『じっきんしょう』には、「うちうなづき、うちうなづきして、時々ときどきわらいて」とかれています。ですからここは、ちょっとうなづいて、ではなく、なんもうなづいて、とんだほうがよいとおもいます。そしてりょうしゅうはうなづくだけでなくわらっていた、というのです。

かわ: なぜいええるのをてうなづいてわらっていたんでしょうか。つづきがになりますね。

かわ: それでは、今回こんかい学習がくしゅうのポイントです。いちりょうしゅう言葉ことば意味いみる。動詞どうし活用かつよう そのさんりょうしゅうたいする姿勢しせいかんがえたあと、このはなし影響えいきょう理解りかいする。以上いじょうみっつです。それでは、学習がくしゅうはじめましょう。

(♪ ジングル)

吉田よしだ: それでは、ぶっりょうしゅう後半こうはん朗読ろうどくいてみましょう。朗読ろうどく高山たかやま 久美子くみこさんです。

高山たかやま (朗読): あはれ、しつる聖徳しょうとくかな。 としごろはわろくきけるものかな、とときに、 とぶらひにきたるものども、 こはいかに、かくてはたまへるぞ。 あさましきことかな。もののたまへるか、といければ、 なんでふもののくべきぞ。 としごろ不動尊ふどうそん火炎かえんをあしくきけるなり。 いまれば、かうこそえけれと心得こころえつるなり。 これこそ聖徳しょうとくよ。 このみちたteててにあらむには、ほとけだにたてまつらば、 ひゃくせんいえなむ。 わとうたちこそ、させるのう御座おわせねば、ものをもしみたまへ、 といhiひて、あざわらひてこそてりけれ。

高山たかやま (朗読): そののちにや、りょうしゅうがよぢり不動ふどうとて、いま人々ひとびとへり。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: りょうしゅう言葉ことば意味いみ

吉田よしだ: では、解釈かいしゃくをしていきます。

吉田よしだ: あはれ、しつる聖徳しょうとくかな。

吉田よしだ: 「あはれ」は「ああ」という意味いみ感動かんどうです。「ああ、たいへんなもうものをしたことよ」というのです。「聖徳しょうとく」は漢字かんじてれば「しょとく」、収入しゅうにゅう意味いみの「所得しょとく」の意味いみで、これを「もうもの」とやくしたのです。

吉田よしだ: としごろはわろくきけるものかな。

吉田よしだ:としごろ」はここでは「長年ながねん」がよいでしょう。ほとけ長年ながねん十分じゅうぶんいてきたものだな、です。「かな」は現代げんだいでも「素晴すばらしきかな人生じんせい」などとふるめかしいかたがありますが、その「かな」ですね。文法ぶんぽうてきには詠嘆えいたんじょいます。「あはれかな」と感動かんどう表現ひょうげん連続れんぞくしてもちいられるところに注意ちゅういしたいですね。りょうしゅう自分じぶんいええるのをて、「もうものだ」「十分じゅうぶんであった」とつよおもって言葉ことばはっしていることがわかります。

かわ: なるほど。

吉田よしだ: 火事かじ見舞みまいにているものたちは、

吉田よしだ: こはいかに、かくてはたまへるぞ。あさましきことかな。もののたまへるか、とうのです。

吉田よしだ: むずかしいところですね。現代げんだいやくしますと、「これはまたどうして、このようにおちになっているのですか」ということです。そして「あさまし」。これは2登場とうじょうです。

かわ: 前回ぜんかいは「たいへんですね」とやくしました。

吉田よしだ: そうでしたね。ここでは本来ほんらい意味いみ、「おどろあきれる」ですから、「おどろあきれたことよ」とやくします。そして「もの」という言葉ことばは、古文こぶんでは正体しょうたいがわからず、人間にんげんがいをなすものをすことがあるのです。「もの」の「もの」もそうで、人間にんげんがいをなすれいしています。ですから、「なにれいいていらっしゃるのか」となります。妻子さいしたすけようともせず、いええるのをてうなづいたりわらったりしている、そのりょうしゅう心配しんぱいしての言葉ことばでしょう。

かわ: いええるのをてうなづいたりわらったりしてたら、そうおもわれますよね。

吉田よしだ: はい。それにたいしてりょうしゅうは、

吉田よしだ: なんでふもののくべきぞ。としごろ不動尊ふどうそん火炎かえんをあしくきけるなり。

吉田よしだ: いまだしのところは、もと文章ぶんしょうでは「なんでふ」といてありますが、「なんじょう」とみました。これは現代げんだいの「なんでそうするの?」の「なんで」とおなじですから、「どうしてれいくはずがあろうか。いや、れいかれてなどいない」と、きっぱり否定ひていします。そして、「長年ながねん不動尊ふどうそん火炎かえんほのお)をひどく、下手へたいたものだ」とっているのです。不動尊ふどうそん不動明王ふどうみょうおうのことで、このほとけ背後はいご火炎かえん背負せおった姿すがたえがかれますね。

かわ: そういうほとけさまなんですね。

吉田よしだ: そうなんです。

吉田よしだ: いまれば、かうこそえけれと心得こころえつるなり。

吉田よしだ: いまると、ほのおはこのようにえていたのだと、わかったのだ、とつづけます。

かわ: どういうことですか?

吉田よしだ: いままでなんほのおえがいてきたが、すべ下手へたであったということを、自分じぶんいええる火炎かえんおもった、ということです。

吉田よしだ: だから、これこそ聖徳しょうとくよ。このみちててにあらむには、ほとけだにたてまつらば、ひゃくせんいえなむ、といます。

吉田よしだ: 「これこそもうものだ。このみち職業しょくぎょうとしてきていくからには」となって、つぎの「たてまつる」は謙譲けんじょうで、ほとけさまをうやま謙譲けんじょうです。「見事みごとぶつもうげるならば、どんどん注文ちゅうもんはいゆたかになり、ひゃくせんいえてることができるだろう」と、りょうしゅうっています。

かわ: だからりょうしゅうはうなづいてわらっていたんですね。

吉田よしだ: はい。

吉田よしだ: さらにりょうしゅうつづけます。

吉田よしだ:とうたちこそ、させるのう御座おわせねば、ものをもしみたまへ、といhiひて、あざわらひてこそてりけれ。

吉田よしだ: 「おまえさんたちこそ、さほどの才能さいのうありでないので、ものしみなさるのだ」とって、あざわらいながらっていた、というのです。

かわ: なるほど。見舞みまいに人々ひとびとして、さほどの才能さいのうがないものものしむものだ。おれはちがうがね、ふふふふ、というかんじでしょうか。

吉田よしだ: そのとおりです。ここまでんでくれば、りょうしゅうがうなづいてわらっていたときしんじょう想像そうぞうできますね。

かわ: はい、なぞけました。でも、ぶっですから、見事みごとぶつえがいてみちきわめたいというりょうしゅう気持きもちには共感きょうかんできますが、妻子さいしのことをかえりみず、ぶつのことばかりかんがえているのは、どうでしょうか。

吉田よしだ: そうですね。でも妻子さいしのことをかえりず、ぶつみちささげるようなかたも、もしかしたらあるのかもしれませんね。あまりに傲慢ごうまんなのはいけませんが、どこかでりょうしゅうのようなかたあこがれるひともいるのではないのでしょうか。

かわ: たしかに、わたしもちょっとあこがれる部分ぶぶんもありますね。くもわるくも、りょうしゅう強烈きょうれつひとです。

吉田よしだ: はい。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: 動詞どうし活用かつよう その

吉田よしだ: 今回こんかい前回ぜんかいつづいて、動詞どうし活用かつようについてまなんでいきましょう。前回ぜんかい規則きそくてき活用かつようする動詞どうしを5種類しゅるい説明せつめいしました。

かわ: はい。えーっと、だんかみいちだんしもいちだんかみだんしもだん活用かつようの5種類しゅるいでしたね。

吉田よしだ: そうです、その5種類しゅるいです。そのほかに、古文こぶんでは規則きそく活用かつようする動詞どうしの4種類しゅるいがあります。カぎょう変格へんかく活用かつよう、サぎょう変格へんかく活用かつよう、ナぎょう変格へんかく活用かつよう、ラぎょう変格へんかく活用かつようです。これをよこならべてき、一番いちばんうえだけをむと「カサナラ」となり、「ない」をつけて「カサナラない変格へんかく活用かつよう」とおぼえるとよいでしょう。

かわ: なるほど。「カサナラない」ですね。

吉田よしだ:ぎょう変格へんかく活用かつよう現代げんだいの「る」で、古語こごでは終止しゅうしけいである基本きほんけいは「」となります。この動詞どうしまえべつ動詞どうし、たとえば「で」がつくような複合ふくごう動詞どうしのぞけば、カぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうしは「いちです。

かわ: いっしかないんですか?

吉田よしだ: そうなんです。未然みぜんけいから已然いぜんけいまで、「る・れ」となり、命令めいれいけいは「」「よ」のふたつの活用かつようちます。

吉田よしだ:ぎょう変格へんかく活用かつようは、現代げんだいの「する」にあたる「す」と、今回こんかいてきた「御座おわす」のです。「せ・し・す・する・すれ・せよ」と活用かつようします。「ほとけ御座おわしけり」の「御座おわし」は、サぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうし御座おわす」の連用れんようけい文法ぶんぽうてき説明せつめいできます。最後さいごほうてきた「のう御座おわせねば」の「御座おわせ」は、サぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうし御座おわす」の未然みぜんけいです。

かわ: なるほど。

吉田よしだ: つぎに、ナぎょう変格へんかく活用かつようは「ぬ」と、何処どこそこへ「く」のあらわす「ぬ」ののみです。ナぎょう変格へんかく活用かつよう活用かつよう語尾ごびは、「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」と活用かつようします。

吉田よしだ: かわさん、「ぬ」はどのように活用かつようしますか?

かわ: はい。語幹ごかんふくめて活用かつようさせるんですよね。えー、「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」ですか?

吉田よしだ: はい、そのとおりです。

吉田よしだ: 最後さいごのラぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうしには、「あり」「をり」(これはワぎょうの「を」です)、「はべり」「いまそかり」(これは「いますかり」となることがあります)が、このよんだけです。ラぎょう変格へんかく活用かつよう活用かつよう語尾ごびは、「ら・り・り・る・れ・れ」となります。ラぎょう変格へんかく活用かつよう終止しゅうしけいが「り」であるのにたいし、ラぎょうだん活用かつようでは「る」となりますので、そこだけがちがってほかおなじです。

かわ: なるほど、おぼえやすいですね。

吉田よしだ: はい。「にあらむには」の「あら」を文法ぶんぽうてき説明せつめいすると、ラぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうし「あり」の未然みぜんけいとなります。ここまで変格へんかく活用かつようの4種類しゅるい説明せつめいしてきました。これらの変格へんかく活用かつようぞくする動詞どうしかずすくないので、そのままおぼえてしまうとよいですね。

かわ: そうですね。これくらいならおぼえられるかもしれません。

(♪ ジングル)

表題ひょうだい: りょうしゅうたいする姿勢しせいかんがえたあと、このはなし影響えいきょう理解りかいする

かわ: くもわるくも強烈きょうれつりょうしゅうでしたが、最終さいしゅう部分ぶぶんになりますので、解説かいせつをおねがいします。

吉田よしだ: はい。

吉田よしだ: そののちにや、りょうしゅうがよぢり不動ふどうとて、いま人々ひとびとへり。

吉田よしだ: 「そののちのことか、りょうしゅういたを『りょうしゅうのよぢり不動ふどう』とって、いまでも人々ひとびと賞賛しょうさんっている」ということです。りょうしゅう「が」の「が」は、現代げんだいの「の」にあたります。

かわ: 先生せんせい、「よぢり不動ふどう」ってなんですか?

吉田よしだ: 「よぢり不動ふどう」とは、不動尊ふどうそん背負せお火炎かえんがリアルに再現さいげんされ、よぢれたようにえがかれ、さらにその火炎かえんのためにをよぢらせているような姿すがたとして不動明王ふどうみょうおうえがいたぶつのことです。そのぶつりょうしゅうくなったいまでも、人々ひとびとによって賞賛しょうさんされつづけている、というのです。

かわ: なるほど。りょうしゅう傑作けっさくえがくことができたということですね。

吉田よしだ: はい。火事かじさいに、妻子さいしいえのことよりも、がる火炎かえん不動尊ふどうそん火炎かえんえがくヒントをたことが、かれよろこびだったのでしょう。そしてその経験けいけん表現ひょうげんして、本物ほんもの不動尊ふどうそんえがくことができたことに、なによりのしあわせをかんじたのだとおもいます。

かわ: かれにとって一番いちばん大切たいせつなのは、いえでも妻子さいしでもなく、ぶつ芸術げいじゅつだったということでしょうか。

吉田よしだ: そのとおりです。現代げんだいであればこの強烈きょうれつ個性こせい人間にんげんとして非難ひなんされるかもしれませんが、『しゅう物語ものがたり』のかれた時代じだいでは、りょうしゅう道徳どうとくてきであろうがなかろうが、芸術げいじゅつささげ、名作めいさくのこした人物じんぶつ興味きょうみのあった人々ひとびとおおかった、ということを物語ものがたはなしだとおもいます。だからぶっりょうしゅうはなし説話せつわひとつとしてのこ意味いみがあったのです。

かわ: なるほど。りょうしゅう人物じんぶつをどう評価ひょうかするかはべつとして、このおとこ強烈きょうれつ個性こせい、また、妻子さいしなどにもくれず芸術げいじゅつだけに人生じんせいささげようとしたりょうしゅうかたに、つよ興味きょうみった人々ひとびとがいた、ということですね。

吉田よしだ: そのとおりです。のち時代じだいですが、その一人ひとり近代きんだい作家さっかである芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけです。芥川あくたがわあとまなぶように『こんじゃく物語ものがたりしゅう』のはなしから材料ざいりょうて「羅生門らしょうもん」をきました。それと同様どうように、芥川あくたがわはこのぶっりょうしゅうはなしなどからそうて、「地獄じごくへん」という小説しょうせつきました。かわさん、おみになったことはありますか?

かわ: んだことなかったんですけど、今回こんかいのおはなしいてんでみたいとおもいました。

吉田よしだ: そうですか。みなさんもぜひおみください。

吉田よしだ: 芸術げいじゅつおにのようなりょうしゅう姿すがたは、『しゅう物語ものがたり』で提示ていじされ、それがまえれた『じっきんしょう』にがれ、それがだいぶ時代じだいへだてて近代きんだいになって芥川あくたがわ小説しょうせつ地獄じごくへん」、そして戦後せんご同名どうめい歌舞伎かぶき映画えいががそれを継承けいしょうしました。ここにりょうしゅうにまつわる言語げんご文化ぶんか連続れんぞくせいることができます。

(♪ 音楽おんがく)

かわ: さて、今回こんかい講座こうざのポイントをまとめておきましょう。学習がくしゅうのポイントは、いちりょうしゅう言葉ことば意味いみる。動詞どうし活用かつよう そのさんりょうしゅうたいする姿勢しせいかんがえたあと、このはなし影響えいきょう理解りかいする。このみっつでした。

吉田よしだ: 今回こんかい内容ないようをまとめておきましょう。りょうしゅうぶつ妻子さいしもろともいえけてしまっても、不動尊ふどうそん背負せお火炎かえんほのお)がうまくかければよいとかんがえる人物じんぶつでした。また、火事かじ見舞みまいに人々ひとびとさげすんでいました。

かわ: はい。

吉田よしだ: 動詞どうし活用かつようでは、変格へんかく活用かつようの4種類しゅるいまなびました。ぞくするすくないので、おぼえてしまいましょう。

吉田よしだ: そして、りょうしゅう火炎かえん見事みごとさと、その火炎かえんのためにをよじっているかのような不動尊ふどうそん評判ひょうばんとなり、のちでも賞賛しょうさんされたというはなしでした。ぶっりょうしゅうはなしのちかたちわりますが、現代げんだいまで継承けいしょうされてきたことにれました。これはこのはなし現代げんだいでも人間にんげんかたかんがえさせる材料ざいりょうとなっていることを意味いみするのだとおもいます。

(♪ 音楽おんがく)

かわ: さて、今回こんかい吉田よしだ しげる 先生せんせいぶっりょうしゅう後半こうはんみました。吉田よしだ先生せんせい、ありがとうございました。

吉田よしだ: ありがとうございました。

かわ: NHK 高校こうこう講座こうざ言語げんご文化ぶんかかわ と、吉田よしだ しげる 先生せんせいでおおくりしました。

(♪ エンディング音楽おんがく)