言語げんご文化ぶんか #5・6

NHK高校こうこう講座こうざ ラジオ学習がくしゅうメモ


古文こぶん

古文こぶん入門にゅうもん 古文こぶん世界せかいへ [説話せつわ
宇治うぢ拾遺しふゐ物語ものがたり
絵仏師えぶっし良秀りやうしうぜんかい

学習がくしゅうのねらい

絵仏師えぶっし良秀りやうしういち
物語ものがたり前半ぜんはんみ、絵仏師えぶっし良秀りやうしう行動こうどう心情しんじょうり、良秀りやうしうがどのような人物じんぶつであるかかんがえてみましょう。また、活用かつようする動詞どうしなかでも、規則的きそくてき活用かつようをする四段よだん上一段かみいちだん下一段しもいちだん上二段かみにだん下二段しもにだん活用かつよう動詞どうしについてまなびましょう。

文法・表現

〜を読み、〜を読み取り、〜考えてみましょう(並列連用+勧誘)
を読み、を読み取り、考えてみましょう」=「讀…,讀取…,思考…」。
〜であるか考える(疑問内包)
であるか考える」=「思考是否為…」。
〜の中でも、〜(範圍内特定)
動詞の中でも」=「動詞之中」。
〜について学びましょう(漢語+勧誘)
について学びましょう」=「學習…」。

中文翻譯

【繪佛師良秀(一)】閱讀物語前半,讀取繪佛師良秀的行動與心情,思考良秀是怎樣的人物。又,在有活用的動詞中,學習進行規則性活用的「四段・上一段・下一段・上二段・下二段」活用的動詞。

学習がくしゅうのポイント●

〈1〉良秀りやうしう人物像じんぶつぞう
動詞どうし活用かつよう その1
さん良秀りやうしう心情しんじょう行動こうどう意味いみかんがえる

文法・表現

〜を読み取る(漢語動詞)
を読み取る」=「讀取」。
〜の意味を考える(漢語+目的)
の意味を考える」=「思考…的意義」。

中文翻譯

〈一〉讀取良秀的人物形象 〈二〉動詞的活用 其1 〈三〉思考良秀的心情與行動的意義

良秀りやうしう人物像じんぶつぞう

仏画ぶつがえがき、それをって生活せいかつする絵仏師えぶっし良秀りやうしういえとなりから出火しゅっかし、ひろがろうとしています。そのとき良秀りやうしう制作せいさくちゅう仏画ぶつが妻子さいしいえのこしたまま、一人ひとりし、大通おおどおりのかいがわって、いええるさまているのです。自分じぶん以外いがいのことにはまったく関心かんしんのない良秀りやうしう人物像じんぶつぞうえがされています。

文法・表現

〜を描き、それを売って生活する〜(連用+連体)
仏画を描き、それを売って生活する絵仏師良秀」=「畫佛畫並販賣維生的繪佛師良秀」。
〜の隣から出火し、〜(場所+連用)
の隣から出火し」=「從隔壁起火」。
〜ようとしています(兆候・寸前)
燃え広がろうとしています」=「正要燃燒擴展」。
〜まま、〜(狀態維持)
残したまま」=「留下著」。
〜が読み取れます(受身可能)
人物像が読み取れます」=「能讀取人物形象」。

中文翻譯

畫佛畫並販賣以維生的繪佛師良秀的家,從隔壁起火,火將要燃燒擴展。那時,良秀把製作中的佛畫與妻子留在家中,獨自逃出,立於大通的對面,看著家正在燃燒。可以讀取到「對於自己以外的事完全沒有興趣的良秀」的人物形象。

動詞どうし活用かつよう その1

古文こぶん動詞どうしには規則的きそくてき活用かつようをする種類しゅるい動詞どうしがあります。変化へんかする活用かつよう語尾ごび部分ぶぶんひょうにしました。カタカナかたかなぎょうによって変化へんかする部分ぶぶん、ひらがなはわらない部分ぶぶんあらわします。かく活用形かつようけいりゃくしてしめしましたが、うえから未然形みぜんけい連用形れんようけい終止形しゅうしけい連体形れんたいけい已然形いぜんけい命令形めいれいけいじゅんです。

文法・表現

〜には、〜があります(主語的所有)
動詞には、五種類の動詞があります」=「動詞中有五種動詞」。
〜の部分を表にしました(漢語+名詞化)
を表にしました」=「整理為表」。
〜は〜する部分、〜は〜部分を表します(並列+表示)
カタカナは〜部分、ひらがなは〜部分を表します」=「片假名表示…,平假名表示…」。
〜は略して示しましたが、〜の順です(連用+斷定)
略して示しましたが、〜の順です」=「以簡稱顯示,順序為…」。

中文翻譯

古文的動詞中,有進行規則性活用的五種動詞。把變化的活用語尾部分整理為表。片假名表示依「行」變化的部分,平假名表示不變化的部分。各活用形以簡稱表示——從上至下依序為未然形、連用形、終止形、連體形、已然形、命令形。

活用かつようするだん 未然形みぜんけい 連用形れんようけい 終止形しゅうしけい 連体形れんたいけい 已然形いぜんけい 命令形めいれいけい
四段よだん活用かつよう
上一段かみいちだん活用かつよう イる イる イれ イよ
下一段しもいちだん活用かつよう エる エる エれ エよ
上二段かみにだん活用かつよう ウる ウれ イよ
下二段しもにだん活用かつよう ウる ウれ エよ

講師こうし 吉田よしだ しげる


言語げんご文化ぶんか #5・6

つ」という動詞どうしは、変化へんかしない部分ぶぶん」と、あとつづなどによって変化へんかする部分ぶぶん「つ」にけられ、変化へんかしない部分ぶぶん語幹ごかん変化へんかする部分ぶぶん活用かつよう語尾ごび語尾ごび)といます。この「つ」は、語尾ごびだけでしめせば、「た・ち・つ・つ・て・て」と活用かつようしますから、タ行ぎょう四段よだん活用かつよう動詞どうしとなります。
る」は語幹ごかん語尾ごび区別くべつがありませんので、活用かつようさせると「る・る・れ・よ」となり、カ行ぎょう上一段かみいちだん活用かつよう動詞どうしです。また、「る」もおな種類しゅるい動詞どうしで、マ行ぎょう上一段かみいちだん活用かつよう動詞どうしです。上一段かみいちだん活用かつよう動詞どうしの「イ」が「エ」にわっただけのものが下一段しもいちだん活用かつよう動詞どうしです。これは「る」の一語いちごだけです。これも語幹ごかん語尾ごび区別くべつがありませんので、活用かつようさせると「る・る・れ・よ」となり、カ行ぎょう下一段しもいちだん活用かつよう動詞どうし説明せつめいできます。
また、ダ行ぎょう下二段しもにだん活用かつよう動詞どうしづ」を活用かつようさせると、「で・で・づ・づる・づれ・でよ」となります。上二段かみにだん活用かつよう動詞どうしは、下二段しもにだん活用かつようの「エ」を「イ」にえるだけですから、たとえば、「く」という動詞どうしは、「き・き・く・くる・くれ・きよ」となり、カ行ぎょう上二段かみにだん活用かつよう動詞どうしです。終止形しゅうしけいが「く」、「連体形れんたいけいが「くる」、「已然形いぜんけいが「くれ」となり、現代げんだいことなりますので注意ちゅういしましょう。下二段しもにだん活用かつよう動詞どうし同様どうようです。
動詞どうし活用かつようをマスターするのはたいへんなことですが、何回なんかいとなえたり、何度なんど活用かつようひょういたりしておぼえるのがよいとおもいます。

文法・表現

〜は、〜と、〜とに分けられ、〜と言います(受身+分類+命名)
は、〜と、〜とに分けられ、〜と言います」=「被分為…與…,叫做…」。
〜だけで示せば、〜(條件+帰結)
語尾だけで示せば、〜活用します」=「若只以語尾顯示,則…活用」。
〜から、〜の動詞となります(理由+斷定)
から、〜の動詞となります」=「因此成為…的動詞」。
〜によって、〜に分類されます(手段+受身)
によって、〜に分類されます」=「依…,被分類為…」。

中文翻譯

「立つ」這個動詞,可被分為不變化的部分「立」與「依後續語等而變化的部分『つ』」。把不變化的部分叫做「語幹」,變化的部分叫做「活用語尾(語尾)」。這個「立つ」如果只看語尾,會以「た・ち・つ・つ・て・て」進行活用,因此是「タ行四段活用」的動詞。各動詞依「活用的行」與「活用的段數」進行分類。「四段活用」是タ行的「た・ち・つ・て」這四段變化。

良秀りやうしう心情しんじょう行動こうどう意味いみかんがえる

せまからした良秀りやうしうに「たいへんなことですね」と火事かじ見舞みまいにひとこえけますが、良秀りやうしうさわ様子ようすもなく、いえけるのをただつめ、うなずいては、ときどきわらっているというのです。この良秀りやうしう行動こうどうにひそむ良秀りやうしう心情しんじょうはどのようなものなのでしょうか。それをかんがえながら、すすめていきましょう。

文法・表現

〜から逃げ出した〜(場所從離脱+連体)
火が迫る我が家から逃げ出した良秀」=「從火逼近的家逃出的良秀」。
〜に声を掛けますが、〜(連用+逆接)
声を掛けますが」=「打招呼,但…」。
〜様子もなく、〜(態樣的打消)
騒ぐ様子もなく」=「沒有慌亂之樣」。
〜ては、〜(反復)
うなずいては」=「反覆地點頭」。
〜というのです(強調的伝聞)
笑っているというのです」=「說是發笑著」。
〜にひそむ〜の心情はどのようなものなのでしょうか(連体+柔軟疑問)
にひそむ心情はどのようなものなのでしょうか」=「潛藏的心情是什麼樣的呢」。
それを〜から読み取ってみましょう(指示+勧誘)
それを段落から読み取ってみましょう」=「讓我們從段落中讀取看看」。

中文翻譯

從火逼近的自家逃出的良秀,被前來慰問火災的人說「真是不得了啊」打招呼,但良秀並無慌亂之樣,只是凝視著家正在燃燒,點頭、偶爾發笑——故事如此說。潛藏在良秀這行動之中的良秀的心情是什麼樣的呢?讓我們從這個段落讀取看看吧。


言語げんご文化ぶんか #5・6

学習がくしゅうのねらい

絵仏師えぶっし良秀りやうしう
良秀りやうしういえけるのをて、「もうけものよ」とっています。この言葉ことばにはどのような意味いみめられているのでしょうか。それをかんがえながらすすめましょう。また、不規則ふきそく活用かつようをするよん種類しゅるい動詞どうしまなんでいきます。さらに、この説話せつわ後世こうせいあたえた影響えいきょうについて理解りかいしましょう。

文法・表現

〜のを見て、〜と言っています(連用+進行)
家の焼けるのを見て、〜と言っています」=「看著家在燃燒,說…」。
〜にはどのような〜が込められているのでしょうか(受身+柔軟疑問)
にはどのような意味が込められているのでしょうか」=「蘊含什麼樣的意義呢」。
〜不規則な活用をする〜(連体修飾)
不規則な活用をする四種類」=「不規則活用的四種」。
さらに、〜に与えた影響について理解しましょう(追加+目的)
さらに、〜与えた影響について理解しましょう」=「再者,請理解所給予的影響」。

中文翻譯

【繪佛師良秀(二)】良秀看著家正在燃燒,說「もうけものよ(賺到了啊)」。這句話中蘊含了什麼樣的意義呢?請一邊思考一邊讀下去。又,學習不規則活用的四種動詞。再者,請理解此說話對後世產生的影響。

学習がくしゅうのポイント●

〈1〉良秀りやうしう言葉ことば意味いみ
動詞どうし活用かつよう その2
さん良秀りやうしうたいする姿勢しせいかんがえたあと、このはなし影響えいきょう理解りかいする

文法・表現

〜の意味を読み取る(漢語+目的)
意味を読み取る」=「讀取意義」。
〜を考えた後、〜を理解する(順序+目的)
を考えた後、影響を理解する」=「思考之後,理解影響」。

中文翻譯

〈一〉讀取良秀的話的意義 〈二〉動詞的活用 其2 〈三〉思考良秀對繪畫的態度後,理解此話的影響

良秀りやうしう言葉ことば意味いみ

良秀りやうしう仏画ぶつが妻子さいしのこっているいえけるのをて、「もうけものよ」と言葉ことばはっします。それは、いままでえがいてきた不動尊ふどうそん火炎かえん不十分ふじゅうぶんなもので、ここではじめてリアルな火炎かえんえがかた会得えとくできたとかんがえたからです。これをかして仏画ぶつがえがけば、おおくのいえてられるほどの収入しゅうにゅうられるのだとはなち、さらに、才能さいのうのないものほどものしむのだ、とって火事かじ見舞みまいの人々ひとびとをあざわらうのです。

文法・表現

〜が残っている〜(連体修飾+存続)
仏画や妻子が残っている家」=「留有佛畫和妻子的家」。
〜のを見て、〜と言葉を発します(連用+連體)
のを見て、〜と言葉を発します」=「看著…,發出…的話」。
それは、〜と考えたからです(理由)
それは、〜と考えたからです」=「那是因為認為…」。
〜を生かして〜ば、〜ほどの〜も得られるはず(手段+條件+程度+可能推量)
これを生かして仏画を描けば、ほどの収入も得られるはず」=「若利用這個畫佛畫,應該也能得到…程度的收入」。
〜という思いがあって、〜(連体+並列)
という思いがあって、〜と言うよりも、〜と感じている」=「有…的想法,與其說…,不如說感受到…」。
〜よりも、〜ことを重視している、と言える(比較+強調+可能)
よりも、〜ことを重視している、と言える」=「比起…,更重視…,可以說」。
ここに〜を読みとることができます(場所+可能)
ここに〜を読みとることができます」=「在此可以讀取…」。

中文翻譯

良秀看著留有佛畫與妻子的家正在燃燒,發出「もうけものよ」這話。那是因為(他)認為:至今所畫的不動尊的火焰是不充分的,在這裡才第一次掌握了「真實火焰的畫法」。若利用這個畫佛畫,恐怕能獲得足以建多座家的收入——這份打算,與其說是「賺到了」,不如說是「太棒了」。良秀比起作為繪佛師獲得收入、養家糊口,更重視「畫好佛畫」這件事,可以說。在這裡可以讀取到「執著於藝術的良秀的姿態」。

動詞どうし活用かつよう その2

今回こんかい不規則ふきそく活用かつようをするよん種類しゅるい動詞どうしまなびます。これらの動詞どうしカ行ぎょうサ行ぎょうナ行ぎょうラ行ぎょう活用かつようし、それぞれカ行ぎょう変格へんかく活用かつようサ行ぎょう変格へんかく活用かつようナ行ぎょう変格へんかく活用かつようラ行ぎょう変格へんかく活用かつようばれています。活用かつようひょうとそれにぞくする動詞どうしつぎしめします。

文法・表現

〜を学びます(敬体)
を学びます」=「學習」。
〜に活用し、〜と呼ばれています(受身+並列)
カ行〜活用し、〜と呼ばれています」=「在カ行…活用,被稱為…」。
〜を次に示します(指示の定型)
活用表とそれに属する動詞を次に示します」=「活用表與屬於它的動詞如下所示」。

中文翻譯

本回學習不規則活用的四種動詞。這些動詞分別在カ行、サ行、ナ行、ラ行進行活用,分別被稱為「カ行變格活用」「サ行變格活用」「ナ行變格活用」「ラ行變格活用」。下面顯示活用表與屬於它的動詞。

活用かつようするだん 未然形みぜんけい 連用形れんようけい 終止形しゅうしけい 連体形れんたいけい 已然形いぜんけい 命令形めいれいけい
(こ)
カ行ぎょう変格へんかく活用かつよう
くる くれ
こよ
す・おはす
サ行ぎょう変格へんかく活用かつよう
する すれ せよ
ぬ・
ナ行ぎょう変格へんかく活用かつよう
ぬる ぬれ
あり・をり・はべり
いまそかり(がり)
ラ行ぎょう変格へんかく活用かつよう

カ行ぎょう変格へんかく活用かつよう動詞どうしは「(こ)」一語いちごです。命令形めいれいけいが「こ」「こよ」のふたつのかたちがあることに注意ちゅういしましょう。サ行ぎょう変格へんかく活用かつようは「す」「おはす」の二語にごナ行ぎょう変格へんかく活用かつようは「ぬ」「ぬ(ぬ)」の二語にごラ行ぎょう変格へんかく活用かつようは「あり」「をり」「はべり」「いまそかり(いまそがり・いますかり・いますがり)」の四語よんごです。「」「す」の二語にご語幹ごかん語尾ごび区別くべつがありません。ラ行ぎょう変格へんかく活用かつようは、ラ行ぎょう四段よだん活用かつようくらべて、終止形しゅうしけいの「り」のみがことなっているにすぎません。よん種類しゅるい変格へんかく活用かつようぞくする活用かつようのしかたをおぼえたいものです。

文法・表現

〜は〜一語です(限定數量)
は『来』一語です」=「是『來』一個詞」。
〜の二つの形があることに注意しましょう(並列+注意喚起)
二つの形があることに注意しましょう」=「請注意有兩個形式」。
〜は〜の二語、〜は〜(並列の連鎖)
は『す』『おはす』の二語」=「是『す』『おはす』二個詞」。
「いまそかり(いまそがり・いますか…)」(異音表記)
『いまそかり』有多種音變表記,分別為「いまそがり」「いますかり」等。

中文翻譯

「カ行變格活用」的動詞是「來(こ)」一個詞。請注意命令形有「こ」「こよ」兩種形式。「サ行變格活用」是「す」「おはす」二個詞,「ナ行變格活用」是「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」二個詞,「ラ行變格活用」是「あり」「をり」「はべり」「いまそかり(いまそがり・いますか…)」


言語げんご文化ぶんか #5・6

良秀りやうしうたいする姿勢しせいかんがえたあと、このはなし影響えいきょう理解りかいする

文法・表現

(小標題)
小標題

中文翻譯

■思考良秀對繪畫的態度後,理解此話的影響

この出来事できごとあとえがいたは「良秀りやうしうがよぢり不動ふどう」とばれて、なが人々ひとびと称賛しょうさんされている、とむすばれています。良秀りやうしう火事かじさいに、仏画ぶつが妻子さいしのことよりも、不動尊ふどうそん火炎かえんえがくヒントをたことを一番いちばんしあわせとかんがえています。ここに芸術げいじゅつ執着しゅうちゃくする良秀りやうしう姿勢しせいみとることができます。その後そのご良秀りやうしうはなしは『十訓抄じっきんしょうかんろくにもられ、近代きんだいでは「羅生門らしょうもん」の作者さくしゃられる芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけが、このはなしから着想ちゃくそうして「地獄変じごくへん」という小説しょうせつ創作そうさくしました。さらに戦後せんご三島みしま由紀夫ゆきお芥川あくたがわの「地獄変じごくへん」をもとにいた新作しんさく歌舞伎かぶき地獄変じごくへん」が上演じょうえんされたり、同名どうめい映画えいが上映じょうえいされたりしました。これは、良秀りやうしう強烈きょうれつかたのち人々ひとびとにも影響えいきょうあたえたということを物語ものがたっているのかもしれません。

文法・表現

〜の後、〜と呼ばれて、〜と結ばれています(受身+連用+帰結)
の後、〜と呼ばれて、〜と結ばれています」=「之後,被稱為…,結尾說…」。
〜よりも、〜を一番の幸せと考えています(比較+斷定)
よりも、〜を一番の幸せと考えています」=「比起…,把…當作最大幸福」。
〜のように思える反面、〜のかもしれません(比況+對比+柔軟推量)
奇人のように思える反面、〜のかもしれません」=「雖然看似怪人,但或許…」。
〜が伝わって、〜が生まれることになります(受身+帰結)
このことが伝わって、〜作品が生まれることになります」=「這件事流傳下來,從而作品誕生」。

中文翻譯

故事結尾說:「在這件事之後,他所畫的畫被稱為『良秀がよぢり不動』,長久受到人們稱讚。」良秀在火災之際,比起佛畫與妻子,更把「獲得描繪不動尊火焰的靈感」當作最大的幸福。從這裡可以讀取到「執著於藝術的良秀的姿態」。雖然乍看是個怪人,但正因如此,他才完成了「良秀がよぢり不動」這幅傑作。 此事被流傳下來,使得「描寫『把家人作為犧牲品也要追求藝術的人』為主題的作品」隨之誕生。著名的有谷崎潤一郎的《刺青》、芥川龍之介的《地獄變》等。


言語げんご文化ぶんか #5・6

古文こぶん

宇治うぢ拾遺しふゐ物語ものがたり
絵仏師えぶっし良秀りやうしう

講師こうし 吉田よしだ しげる

これもいまむかし絵仏師えぶっし良秀りやうしうといふありけり。いえとなりよりて、かぜおしおほひてせめければ、でて、おほでにけり。ひとかするほとけもおはしけり。またきぬなども、さながらうちにありけり。
それもらず、ただでたるをことにして、かひのつらにてり。れば、すでにいえうつりて、けぶりほのほくゆりけるまで、おほかたかひのつらにちてながめければ、「あさましきこと。」とて、ひとどもとぶらひけれど、さわがず。「いかに。」とひとひければ、かひにちて、いえくるをて、うちうなづきて、時々ときどきわらひけり。「あはれ、しつるせうとくかな。としごろはわろくきけるものかな。」とときに、とぶらひにたるものども、「こはいかに、かくてはたまへるぞ。あさましきことかな。もののたまへるか。」とひければ、「なんでふもののたまふべきぞ。としごろ不動尊ふどうそん火炎くわえんしくきけるなり。いまれば、かうこそえけれと、心得こころえつるなり。これこそせうとくよ。このみちててにあらむには、ほとけだによくたてまつらば、百千ひやくせんいえなむ。わたうたちこそ、させるのうもおはせねば、ものをもしみたまへ。」とひて、あざわらひてこそてりけれ。
そののちにや、良秀りやうしうがよぢり不動ふどうとて、いま人々ひとびとへり。

文法・表現

これも今は昔(物語冒頭定型)
これも今は昔」=「這個現在算起也是從前」。
〜といふありけり(人物紹介)
といふありけり」=「有叫做…的人」。
〜より〜出で来て、〜せめければ(場所+連用+確定條件)
隣より火出で来て、〜せめければ」=「從隔壁起火,逼近,於是…」。
〜にけり(完了+過去)
大路へ出でにけり」=「出到大通了」。
〜書かする〜(使役連体)
人の書かする仏」=「人讓他畫的佛」。
〜もおはしけり(敬語的存在)
仏もおはしけり」=「也(敬)有著佛」。「おはす」=尊敬語的「ある」。
さながら(古典副詞)
さながら内にありけり」=「整個都在家中」。
〜たるをことにして(連用+名詞句)
逃げ出でたるをことにして」=「只把逃出當作要緊事」。
〜うちうなづきて、時々笑ひけり(連用+過去)
うちうなづきて、時々笑ひけり」=「點頭,偶爾發笑」。
あはれ、しつるせうとくかな(感動詞+完了+詠嘆)
あはれ、しつるせうとくかな」=「啊呀,真是得了一份大利啊」。「せうとく」=「所得」(漢語)。
年ごろは〜ものかな(過去継続+詠嘆)
年ごろはわろくかきけるものかな」=「這麼些年都畫得不好啊」。
こはいかに、〜給へるぞ(疑問+尊敬命令)
こはいかに、立ち給へるぞ」=「這是怎麼回事,您站著做什麼」。
〜物のつき給へるか(推量+尊敬)
物のつき給へるか」=「是被什麼附身了嗎」。
なんでふ〜べきぞ(反語)
なんでふ物のつくべきぞ」=「怎麼會被什麼附身呢」。
〜書きけるなり(過去継續+斷定)
あしく書きけるなり」=「畫得不好」。
〜こそ燃えけれと心得つる(強調係結+完了)
かうこそ燃えけれと心得つるなり」=「原來是這樣燃燒的——我心領神會了」。
〜だによく書き奉らば、〜なん(限定+謙譲+假定+強意推量)
仏だによく書き奉らば、百千の家もいできなん」=「只要佛畫得好,百千座家也能蓋起來」。
わたうたち(汝等)
わたうたち」=「你們」(古典代名詞)。
〜こそ〜給へ(強調的尊敬命令)
物をも惜しみ給へ」=「請珍惜些東西吧」。
あざ笑ひてこそ立てりけれ(強調的係結)
あざ笑ひてこそ立てりけれ」=「正是嘲笑著站著」。こそ+已然形係結。
〜にや、〜(推量+連体)
その後にや、〜」=「那以後吧,…」。「にや」=「にやあらむ」的省略。
〜とて、〜めで合へり(命名+讚美)
良秀がよぢり不動とて、めで合へり」=「叫做『良秀的扭動不動』,互相讚美」。

中文翻譯

(古文原文)これも今は昔、絵仏師良秀といふありけり。家の隣より火出で来て、風おしおほひてせめければ、逃げ出でて、大路へ出でにけり。人の書かする仏もおはしけり。また衣着ぬ妻子なども、さながら内にありけり。それも知らず、ただ逃げ出でたるをことにして、向かひのつらに立てり。見れば、すでに我が家に移りて、煙・炎くゆりけるまで、おほかた、向かひのつらに立ちて、眺めければ、「あさましきこと。」とて、人どもの来とぶらひけれど、騒がず。「いかに。」と人言ひければ、向かひに立ちて、家の焼くるを見て、うちうなづきて、時々笑ひけり。「あはれ、しつるせうとくかな。年ごろはわろくかきけるものかな。」と言ふ時に、とぶらひに来たる者ども、「こはいかに、かくては立ち給へるぞ。あさましきことかな。物のつき給へるか。」と言ひければ、「なんでふ物のつくべきぞ。年ごろ不動尊の火炎をあしく書きけるなり。今見れば、かうこそ燃えけれと心得つるなり。これこそせうとくよ。この道を立てて、世にあらんには、仏だによく書き奉らば、百千の家もいできなん。わたうたちこそ、させる能もおはせねば、物をも惜しみ給へ。」と言ひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。 その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めで合へり。

宇治うぢ拾遺しふゐ物語ものがたり


言語げんご文化ぶんか #5・6

現代げんだい語訳ごやく

これもいまとなってはむかしのことだが、絵仏師えぶっし良秀りやうしうというものがいた。(良秀りやうしうの)いえとなりからて、かぜがおおいかぶさるようにいて(が)せまったので、(良秀りやうしういえから)して、大通おおどおりへてしまった。(良秀りやうしういえには)ひとが(注文ちゅうもんして)えがかせているほとけ(の)もいらっしゃった。また(よるのため)着物きものていないつまなども、すべてそのままいえなかにいた。
良秀りやうしうは)それもかまわず、ただ(自分じぶんが)したのをさいわいなこととして、(とおりの)こうがわっていた。ると、(は)もういえうつって、けむりほのおがったときまで、(良秀りやうしうは)あらかたこうがわってながめていたので、「たいへんなことですね。」とって、人々ひとびと見舞みまいにたが、(良秀りやうしうはまったく)動揺どうようしない。「どうしたのですか。」と(ある)ひとったところ、こうがわって、いえけるのをて、うなずいて、ときどきわらった。「ああ、たいへんなもうけものをしたことよ。長年ながねんあいだ火炎かえんを)不十分ふじゅうぶんえがいたものだなあ。」と(良秀りやうしうが)ときに、見舞みまいに人々ひとびとが、「これはまたどうして、このようにおちになっているのですか。あきれはてたことよ。(わるい)れいいていらっしゃるのか。」とったところ、「どうしてれいくはずがあろうか。長年ながねんあいだ不動尊ふどうそん火炎かえん下手へたえがいていたのだ。今見いまみると、(火炎かえんは)このようにえるものなのだなあと理解りかいしたのだ。これこそもうけものよ。この(仏画ぶつがえがく)ことを職業しょくぎょうとしてきていくからには、せめてほとけだけでも上手じょうずえがもうげるならば、たくさんのいえもきっとできるだろう。おまえさんたちこそ、さほどの才能さいのうもおありでないので、ものしみなさるのだ。」とって、(人々ひとびとを)あざわらってっていた。
その後そのごであろうか、「良秀りやうしうのよじり不動ふどう」といって、いまでも人々ひとびと称賛しょうさんっている。

文法・表現

〜だが、〜がいた(譲歩+存在)
今となっては昔のことだが、〜がいた」=「從現在來看是從前,但有過…」。
〜から〜が出て、〜(場所+自動詞)
家の隣から火が出て」=「從家的隔壁出火」。
〜が〜のように吹いて、〜(連用+並列)
風がおおいかぶさるように吹いて」=「風像覆蓋過來那樣地吹」。
〜ので、〜(順接+理由)
迫ったので、逃げ出して」=「因為逼近,所以逃出」。
〜てしまった(完了+帰結)
大通りへ出てしまった」=「到大通了」。
〜(注文して)描かせている〜(補い訳+使役連体)
人が(注文して)描かせている仏(の絵)」=「人(訂製)讓他畫的佛(之畫)」。

中文翻譯

(現代語譯)這個從現在來看也是從前的事,有叫做繪佛師良秀的人。(良秀的)家從隔壁起火,因為風像覆蓋過來似地吹,火逼近,於是(良秀)從家中逃出,到大通去了。(良秀家中)有人(訂製)讓他畫的佛(畫)也(敬語)在其中。又,沒穿衣服的妻子等也都在屋內。(良秀)不顧那些,只把逃出當作要緊,站在對面那邊。看著(房子),已經火轉到自家,煙與火炎冒起來,(良秀)一直站在對面那邊眺望,於是「真是慘啊」這樣慰問前來的人們,(良秀)並不慌張。