NHK高校講座 言語文化の時間です。 今回は小説の読み方。講師は小山志門先生です。
小山:ご機嫌いかがですか?小山です。前回までで6回にわたって「とんかつ」「雨漏りの音」の小説を学習してきました。今回は「小説の読み方」というテーマで、ここまでの学習のポイントも踏まえながら学習をしていきましょう。今日は高校生の2人に来ていただきました。それでは簡単に自己紹介をお願いします。
田口:はい、田口ルカです。よろしくお願いします。
森子:森子小春です。よろしくお願いします。
小山:はい、よろしくお願いします。それでは今回の学習のポイントを確認しましょう。
1 フィクションであるという捉え方について。
2 描写から心情を味わう。
3 読書のつながりを広げよう。
以上の3つです。それでは始めましょう。
フィクションであるという捉え方について。
小山:さて、学校の授業や教科書もあるので、小説を読んだことがないという人はいないとは思うんですが、皆さん普段小説をよく読むでしょうか?ま、読む人も読まない人も、小説を読むことは好きでしょうか?そして読んだ時に、小説にはどんなメリットがあると思いますか?田口さんいかがですか?
田口:はい、小説を読むことは好きですね。小説の世界を想像するのが楽しいからです。メリットは読解力がつくとわ、言葉の知識がつくとわですかね。
小山:うん。田口さん普段はこう、どれくらいの頻度で小説を読んでますか?
田口:そうですね、月に1冊とか、それくらいですかね。
小山:毎月読み進められているといろんな本に出会えていいかなと思いますね。森子さんはこの点いかがですか?
森子:私は結構本を読みます。週に2冊ぐらいは読むと思います。
小山:たくさん読むんですね。どんなところが小説を読んでていいなと思いますか?
森子:作者の方々が作る世界観が新鮮で、自分では体験できないことを本を通して体験しているような感覚が楽しいと思います。
小山:2人とも、本を読みながら言葉の勉強にもなってるっていう感じでしょうかね。
田口・森子:はい。
小山:そして2人とも共通してたのが、小説の世界とか世界観を感じるのが好きだっていうような感じでおっしゃってたを思うんですが、作家の方々が作る世界観、小説っていうのは「フィクション」ってやつですよね。フィクションってどういうものかはご存知ですか?田口さんいかがですか?
田口:現実ではない架空の、想像みたいな感じですかね。
小山:そうですよね。架空の、作者が想像して設定した世界で、お話を進めていくというのがフィクションです。そうやって想像して作られた世界を2人とも楽しめているということでしょうかね。
田口・森子:そうですね。はい。
小山:じゃあさらにちょっと質問を進めたいをんですが、そういうフィクション、現実じゃなくてフィクションという小説を読むメリットってなんなんでしょうかね。森子さん、フィクションを読むメリットってなんだと思いますか?
森子:そうですね。自分じゃなくても、だれかになりたい姿とかなりたい人物に自分が世界に入り込んで楽しめるということですかね。
小山:はい、ありがとうございます。素敵な考え方だと思いますね。田口さんは、フィクションを読むことのメリットってなんだと思いますか?
田口:うーん、そうですね。自分ではなんかできないようなこととかっていうのを、こう自分がその世界に入り込んで体験する、みたいな、なんかそんな感じのメリットかなと思います。
小山:やっぱり現実の世界って、どうしても主人公っていうのはもう自分自身でしかありませんよね。人の目になってものを見ることはできませんから、現実の主人公っていうのは自分でしかないわけです。分からないことも自分で解決するしかないんですが、でもフィクションである小説となると、架空の物語だからこそ作り出される世界で、人の気持ちに焦点をあてて描いていく。現実じゃ見えにくい人の気持ちを読者に注目させてもらえる。そういうフィクションのメリットっていうのがあると思います。作者は読者を心情にたどりつけるように物語を設定し、いろんな行動をさせて事件を起こし、変化を生じさせます。そういうフィクションであるからこそ、現実ではなかなか触れられない人間の心の動きに注目して触れることができる。そういうのがフィクションのメリットかなと思います。
描写から心情を味わう。
小山:皆さんは「とんかつ」「雨漏りの音」を読んでいかがでしたか?「とんかつ」について面白いなとか、興味深いなと思ったところを聞かせてください。田口さんいかがですか?
田口:はい。え、母親が息子の大好物がとんかつであることを言う時に、「寺育ちのくせに」がつくことが興味深いです。
小山:この「寺育ちのくせに」の「寺育ち」っていうのがちょっとどういうことだったかというと、精進料理とかっていうのは聞いたことありますか?
森子:ないです。
小山:精進料理っていうのがあって、それは例えばお寺とか修行中の人たちが食べるような料理、そこにはお肉とか出てこないんですね。
田口:へえー。
森子:うんうん。
小山:ので、「お寺育ちのくせに」というニュアンスはおそらく、お寺で育った人なのにそんなとんかつ、お肉を求めるなんて、っていうニュアンスが入っていたかもしれません。
田口・森子:あー、なるほど。
小山:そういった1つ1つの表現とかをさらっと読み過ごしてしまうっていうのは確かにありますよね。のでそういったのに注目して理解が深まっていくのも面白いかもしれませんね。物語を読む時に、登場人物の様子だけに注目するんじゃなくて、細かいアイテムに注目するっていうのはすごく大事です。例えば皆さん想像してみてほしいをですが、今回この料理がとんかつじゃなかったら、どんなふうに作品の印象が変わってしまうでしょうか?息子がたべたかった料理がポークソテーだって書いてあったら、田口さんどんな印象受けますか?
田口:うーん、なんかお寺とか、まったく関係ない感じの……。
小山:そうですよね。今回の宿も地味な和風の旅館だったので、ポークソテーって出てきてもピンとこないですよね。例えば森子さん、今回の料理がすき焼きだった、すき焼きが食べたいってなったら、どんなふうに思いますか?
森子:そうですね、なんかすごい豪華な感じで、なんか最後の晩餐にはちょっと違うんじゃないかなって思います。
小山:ありがとうございます。すき焼きだととっても豪華で、なんか贅沢な感じがします。宿も地味な宿で、母親も少年もとっても地味な控えめな登場人物でした。その雰囲気もぴったり合うような「とんかつ」という料理が、今回の題名にもなってるをですね。そんなふうにアイテム1つ1つも小説の雰囲気を作っている。そういったものにも注目してほしいなと思います。
小山:次に、難しいなと思ったところも聞いてみたいをですが、「雨漏りの音」という小説もありましたが、田口さん、「雨漏りの音」でなにか難しいところありましたか?
田口:うーん、そうですね。まああんまりなかったですかね。「とんかつ」のほうがちょっと難しかったです。
小山:なるほど。森子さんはいかがですか?
森子:あ、私は「雨漏りの音」は、結構私的には身近に感じる内容がすごく多く描写されていて、「とんかつ」よりはそんなに難しいなって思うところはなかったかもしれません。
小山:どういうところがこう、身近に感じますか?茜の気持ちには共感できたりしましたか?
森子:なんか茜がそのおとといの人に感じる心情だったりとかが、そうですね、結構分かりやすいのかなと思います。
小山:はい。田口さんもね、男性ですけれども、茜の気持ちには共感できたりしますか?
田口:まあそうですね。まあなんか「雨漏りの音」とかって、まあ普段はまったく気にしない音ですけど、その、とつぜんなくなったらすごい違和感というのがそのある、っていうのは共感できますね。
小山:なるほど。いま田口さんがおっしゃってくれたように、この「雨漏りの音」も「雨漏りの音」っていうこのアイテムというか、登場人物直接関わらないアイテムの部分で、世界に入り込んでいけるっていうところあったかもしれませんね。ちょっと聞いてみたいなと思うをですが、この「雨漏りの音」の小説全体を通したテーマってなんだと思いましたか?田口さんいかがですか?
田口:うーん、そうですね、「音」とかですかね。
小山:うん。森子さんはいかがですか?
森子:あ、私は「未来の子供に託す」みたいなイメージが、最後の文章から読み取れて、それがテーマっぽいのかなと思いました。
小山:ま、物語を普段読んでいるときに、1つ1つテーマがなにかとか、主題はなにかって考えてるともうつかれちゃうので、ま、普段からそんな必要はないと思うんですが、なにかの機会のときに、その作品を通してなにを作者言いたかったのかなって少し考える機会があると、読書の味わいが広がることがあります。ただテーマってなかなか難しいので、作品の終わりに「テーマはこれですよ」って作者が説明してくれてるわけでもありませんから、とっても難しいをですが、作者の意図を受け止めるという意味では、とっても意味のある作業だと思います。そこで皆さんに少し意識してもらったらいいかなと思うのは、登場人物の心情や変化をしっかり追いかけて読んでいくことです。登場人物の心情理解を中心にして、変化にも注目をして読んでいくと、その作品でなにを描きたかったのか、というのが少し考えられるようになっていくと思います。そういうふうに作品を通してなにが言いたかったのか、作者の意図を常に問いかけ続けていると、テーマを考える力がついをいくと思います。ぜひ、ま、そういった作業もしてみてほしいなと思います。
読書のつながりを広げよう。
小山:最後に、皆さんの読書活動を共有しておきましょう。それぞれが読んでいるものを話し合うことで、新しい作品に出会うきっかけになったらいいなと思います。一番おススメの小説を聞いてみたいと思います。じゃ、田口さんからお願いします。
田口:はい、え、僕はえ、櫻井千姫さんの「70年分の夏を君に捧ぐ」をご紹介したいと思います。え、これは1945年と2015年の日本が舞台で、こう主人公が昔と今を往来するをですが、まあ当たり前にある幸せに気づかせてくれたり、昔の時代生き抜いた人たちの思いを背負って生きていく姿が自分たちにつながっていく、というところがポイントですね。
小山:この1945年ってことは、戦争のこととなにか絡んでいるお話ですか?
田口:そうですね、第二次世界大戦のときの日本と、ま、それが終わってもうだいぶ復興した日本とを、ま、主人公の、ま、心が往来する、なるほど……物語です。
小山:ありがとうございます。田口さんはこの本とは、どんなふうに出会ったをですか?
田口:ちょっと遠くに行って、でそっから駅に帰ってきて。で、その駅にある書店を、ま、ちらっと覗いたときにこの本が置いてあって、でそれを少し読んでみたときに、「あ、これ面白そうだな」と思って買いましたね。
小山:なるほど。本屋さんに行ってふと気になったをですね、その本がね。
田口:そうですね。
小山:で手にしてみたら面白そうだな。
田口:はい。
小山:あーなるほど。ま、偶然の出会いだけれどもいい本に出会えたって感じでしょうかね。
田口:そうですね。
小山:じゃあ次は森子さんにも聞いてみましょう。森子さんの1番のおススメの小説はなんですか?
森子:はい、私は知念実希人作の「ひとつむぎの手」という本です。この本は、人生のヒントをくれる内容で、登場人物の心情をリアルに表現されていて、より身近に内容を感じることがポイントだと思います。この本の主人公は医者で、自分の医者としての人生を選択しなければならない、っていう葛藤と、あとは少しミステリーも入った内容です。
小山:なるほど。森子さんはこの本にはどこで出会ったをですか?
森子:あ、この本は私の友達に「すごいおススメだよ」って紹介されて読みました。
小山:こう、読み終わったときにどんな気持ちになるようなお話ですか?
森子:なんかすごい、この人はこういう選択をしたんだな、っていう面白さと、自分だったらどういうふうにしたのかなみたいな、すごい考えさせられる本です。
小山:人生の選択とか、なにか決めることに迷っている人たちが読むと、励まされたり背中押されたりしそうですね。
森子:はい。
小山:お2人の紹介する本をね、あの聞かせてもらったをですが、私もあの、1つ「ボッコちゃん」っていう作品があります。星新一さんの作品の文庫本をんですが、1つ1つの話がとっても短いショートショートっていうジャンルの、こう短編小説集です。ちょっと長い本が読みづらいな、つかれるなっていうときに、おススメですね。話のストーリーの展開も、こう「オチ」の部分もとっても飽きずに読めるので、ぜひ読んでみてほしいなって思います。お2人はご紹介してくださったをですが、なかなか本に出会うっていうのも難しいところがあるので、どんなふうに本を手にすればいいのかな、どういうふうに本に出会えばいいのかなっていうのもちょっと聞いてみたいをですが、こうなにか本読みたいな、時間あるし本でも読んでみようかなと思ったときに、どうやって新しい本をお2人は選びますか?森子さんから聞いてみてもいいですか?
森子:はい。え、私はお気に入りの本の作者のほかの本を調べて、読んでみたいと思ったら本を選びます。
小山:なるほど。田口さんはいかがでしょう?
田口:表紙やあらすじ、書き出しなどを見て、まあ面白そうかをご自分で考えて、まあ面白そうだなと思った本を選びます。
小山:なるほど。お2人の選び方がだいぶ違いましたね。こう面白いなと思った内容をつなげて、あるいは作者からつながっていく森子さんと、こう直感的に面白そうかなって選ぶ田口さん。たしかに表紙でだいぶ違いますよね、印象がね。
田口:そうですね。
小山:はい。あの、単行本なんかだったらすごくキラキラしていたりとか、おしゃれなデザインだったりとか、たしかに表紙を手にするっていうのはいいかもしれないですね。あの、私も昔高校生のころ思い出すと、例えば本の一番終わりのページに、その出版社のおススメ新作集とか、その作者のほかの本、発行されているほかの本の一覧とか並んでいるので、それを順番に片っ端から読んだ、っていうようなことも思い出しましたね。のでいろいろ、作者から興味をつなげたり、内容やテーマでつなげたり、あるときは直感的に「面白そうだな」っていうものを手にしたりして、新しい本に出会えるといいですね。
小山:今回は「小説の読み方」を学習してきました。学習のポイントは、
1 フィクションであるという捉え方について。
2 描写から心情を味わう。
3 読書のつながりを広げよう。
この3つでした。今回は「小説の読み方」ということで3つのポイントから学習しました。
小山:高校生の森子さん、田口さんと一緒に小説を読むことの面白さを確認し、新しい本との出会い方もしることができました。ぜひ皆さんも、手元にある本からでもいいですし、新しい本を探してもいいので、たくさんの小説に触れてほしいなと思います。一方、小説を読むことの難しさもありました。その難しさというのは、現実の人間関係の難しさとも共通します。「わからない」ということを切り捨てるのではなく、いろんな情報をヒントにして、登場人物の心情に迫ってほしいなと思います。
NHK高校講座 言語文化、講師は小山志門先生でした。