[音楽]
[Jingle/Title]: NHK 高校 講座 言語 文化の 時間です。
木本: 皆さん、ごきげんいかがですか? 木本 景子です。 今回から 言語 文化の 勉強を 始めましょう。 今回のテーマは 古文に 親しむ。 講師は 吉田 茂 先生です。よろしくお 願いします。
吉田: こちらこそよろしくお 願いします。
[Jingle/Music]
吉田: 改めまして 吉田 茂です。 言語 文化の 古文を 担当します。 専門は 平安 文学で、 長年 主に 高校で 古典の 授業を 担当してきました。 高校生の 頃はあまり 古文が 好きではなかったのですが、 長く 付き 合ううちにすっかり 古文の 虜になってしまいました。 1 年間 楽しく 勉強していきましょう。
木本: 初めまして。 木本 景子です。 高校生の 時から 競技かるたをしておりまして、 百人一首に 触れる 機会は 多いんですけれども、この 言語 文化を 通して 多くの 作品に 触れて 学ぶことを 楽しみにしています。
吉田: さて、 木本さん、 今年 桜はご 覧になりましたか?
木本: はい、 見ました。こう 日本人だからか、やはり 桜を 見ると 心が 躍るような、そしてまたなんだか 懐かしいような、そんな 気持ちになりますよね。
吉田: 我が 国では 1 月の 沖縄に 始まり、 5 月の 北海道と、その 土地土地で 桜を 見ることができますね。 桜が 咲いたと 聞くと、なんとなく 心が 浮き 立つものです。
木本: 逆に、なんだか 桜が 散るのを 見ると、 何かこう 切ない 感じもしてきますよね。
吉田: そうですね。 桜には 不思議な 力があって、その 力が 私たちに 様々な 思いを 生じさせているのではないか、とさえ 思えてしまいます。それほどに 桜の 花には、 私たちの 心を 捉えて 離さない 魅力がありますね。
木本: そうですね。
吉田: 古代の 人々も 私たち 同様、 桜に 心を 奪われていたようです。 万葉集の 時代から 現代に 至るまで、 詩歌や 随筆、 小説など 様々なものに 桜は 描かれています。
木本: そういえば、 最近のポップスの 中にも、こう 人の 思いと 桜とを 結びつけて 歌われる 曲もたくさんありますよね。
吉田: はい。 古代から 現代まで、 桜をモチーフにする 作品が 作り 続けられているんです。それらが 文化 的に 価値の 高いものであるならば、 桜をモチーフにした 言語 文化と 言えるのです。
木本: なるほど。
吉田: ということで、 今回はそのことから 学んでいくことにしましょう。
木本: はい。それでは、 今回の 学習のポイントを 紹介します。 1. 言語 文化って 何? 2. 名文 選を 読み、 古文の 読み 方に 慣れる。 3. 古語と 現代 語の 違いを 理解する。 この 三つです。それでは、 始めましょう。
[Jingle/Title]: 言語 文化って 何?
木本: 吉田 先生、 言語 文化ってどんな 文化を 言うんですか?
吉田: 言語 文化とは、 我が 国の 長い 歴史の 中で 作り 出され、 現代まで 受け 継がれてきた 言葉や 作品、 また 言葉による 芸術など、 文化 的に 価値の 高いものを 言うのです。
木本: うーん。 難しいですね。どういうことですか?
吉田: では、 具体 例を 挙げますね。 日本語そのもの、また 漢字や 漢字から 誕生したひらがな・カタカナも 言語 文化の 一つです。 それから、 竹取 物語や 源氏 物語。 竹取 物語はかぐや 姫が 月に 帰ってしまう 話ですね。 源氏 物語の 主人公は?
木本: えっと、 光源氏ですね。 源氏 物語は 漫画で 読みました。
吉田: 漫画といえば、 漫画で 人気が 出た、 競技かるたの 大会で 用いられる 小倉 百人一首もその 一つです。
木本: 私は 高校 時代からカルタをやっているので、 暗唱できます。 例えば、 [朗詠] ちはやぶる 神代も 聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは。 ですね。
吉田: 素晴らしい。また、 能や 狂言、 歌舞伎などの 芸能も 言語 文化なんです。 それから、のち 現代 文で 学習する 芥川 龍之介の 羅生門。 さらに、 江國 香織の 小説などもそうです。 また、 中国で 生まれた 漢文や 漢詩は、 訓読という 方法で 受け 入れられ、 我が 国の 文学 作品や 芸能などに 影響を 与えました。これも 言語 文化に 含まれます。
木本: 色々なものが 言語 文化に 含まれるんですね。
吉田: そうなんです。 言語 文化は 非常に 幅広いものを 指すのです。この 言語 文化への 理解を 深めるために 新たにできた 科目が、 言語 文化という 科目です。
木本: 具体 的にどんなことを 学ぶのでしょうか?
吉田: 古文や 漢文には、それが 書かれた 時代 特有の 感じ 方や 考え 方、 生活のありさまが 描かれていますから、 私たちのルーツを 考えるヒントを 得たいと 思います。 知らない 時代のことを 考えることで、 自分を 見つめることに 繋がるとよいですね。
木本: なるほど。でも、 先生がさっき 挙げた 江國 香織は 現代の 作家ですよね?
吉田: そうなんです。ですからこの 言語 文化は、 現在 進行 形のものであるとも 言えるのです。 今後、 皆さんや 木本さんが 書いた 文章、また 携わった 芸術が、のちに 文化 的に 価値が 高いと 評価されれば、それは 未来の 言語 文化の 一つになるのです。
木本: 過去から 未来まで 続くのが 言語 文化なんですね。
吉田: そうなんです。ですからこの 科目を 学びながら、 皆さん 一人ひとりが 言語 文化の 担い 手であることを 自覚してくださればありがたいと 思っています。 今回から 84 回にわたって 学習を 進めていきます。 古文は 私 吉田と 山本 章宏 先生、 漢文は 渡辺 恭子 先生、 現代 文では 齋藤 祐 先生と 小山 志門 先生が 担当します。 1 年間 頑張って 学んでいきましょう。
木本: はい。
[Jingle/Title]: 名文 選を 読み、 古文の 読み 方に 慣れる。
吉田: 古文に 親しむためには、まず 古文の 読み 方に 慣れるところから 始めるとよいと 思います。 それでは 木本さん、 名文と 言われる 作品の 冒頭を 読んでください。
木本: 『竹取 物語』 今は 昔、 竹取の 翁といふ 者ありけり。 野山にまじりて 竹を 取りつつ、よろづのことに 使ひけり。 名をば、さぬきのみやつことなむいひける。 その 竹の 中に、もと 光る 竹なむ 一筋ありける。 あやしがりて 寄りて 見るに、 筒の 中 光りたり。 それを 見れば、 三 寸ばかりなる 人、いとうつくしうてゐたり。
『枕草子』 春は、あけぼの。やうやう 白くなりゆく 山際、 少し 明かりて、 紫だちたる 雲の 細くたなびきたる。
夏は、 夜。 月のころはさらなり、 闇もなほ、 蛍の 多く 飛びちがひたる。 また、ただ 一つ 二つなど、ほのかにうち 光りて 行くもをかし。 雨など 降るもをかし。
『源氏 物語』 いづれの 御 時にか、 女御、 更衣あまた 候ひ 給ひける 中に、いとやむごとなき 際にはあらぬが、すぐれて 時めき 給ふありけり。
吉田: はい、ありがとうございます。 今 読んでいただいた 竹取 物語、 枕草子、 源氏 物語の 三つの 作品は、ともに 平安 時代に 書かれたものです。この 時代を 文学 史では 中古と 呼びます。
古文では、 現代の 文章とは 仮名遣いが 違うところがあります。 竹取 物語の 中で、「 竹取の 翁といふ 者ありけり」の「いふ」を「ゆう」、 「 使ひけり」の「つかひ」を「つかい」と 読みましたね。 語の 途中や 語の 終わりに 出てくる「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」と 発音します。
他に「む」を「ん」と 読みました。 これはひらがなが 成立した 頃には「ん」というカナがまだなく、「む」で 代用していたことと 関係するようです。
なるほど。
木本: 吉田さん、「ゐたり」の「ゐ」の 文字を 見たことがありますか?
吉田: 平仮名の「る」に 似たような 文字ですね。あまり 見かけない 文字ですよね。
木本: これが 歴史 的 仮名遣いの 一つで、ワ 行の「い」に 当たる 文字です。
枕草子はどうでしょうか?
吉田: 中学校の 時に 暗唱の 練習をしたことを 思い 出しました。
木本: そうですね。 古文の 名文を 暗唱できるようにすることも 言語 文化を 学ぶ 目標の 一つです。 多くの 名文を 暗唱できるようにしたいものですね。
また、 古文には 伸ばす 音、 長音のルールがあります。
吉田: どこがその 伸ばした 音なんでしょうか?
木本: 枕草子の 朗読では、「やうやう」は「ようよう」と 発音しましたね。 アの 音とウの 音が 連続すると「オー」となり、 竹取 物語では「うつくしう」のイの 音とウの 音が 連続すると「ユー」となっていましたね。 他にエとウで「ヨー」、 オとウで「オー」となります。
吉田: なるほど。そのように 伸ばして 読むんですね。
木本: 他に、 現代 文では 見られない 表記があります。 例えば 語の 初めにワ 行の「を」が 来る「をかし」がありましたね。
吉田: 確かに、 現代では 使わない 表記ですね。
木本: 源氏 物語はどうでしたか?
吉田: 現代では 使わない 単語が 多く、 朗読しただけでは 内容はわかりませんでした。でも、 源氏 物語は 漫画や 映画、 演劇になったりしていますよね。
木本: その 通りです。 平安 時代に 書かれた 古典 作品が、 現代でも 漫画や 映画、 演劇と 形は 変わりますが、 受け 継がれていることこそ 言語 文化の 継承・ 発展ということになりますね。 木本さん、 機会があれば 映画や 演劇もご 覧ください。
[Jingle/Title]: 古語と 現代 語の 違いを 理解する。
木本: 吉田 先生、 先ほど 読んだ 源氏 物語の 冒頭にあった「あまた」や「やむごとなき」などの 言葉は、 現代では 使わない 言葉ですね。
吉田: そうです。 現代ではあまり 用いませんので、 古語と 考えていいでしょう。 この 古語をもう 少し 詳しく 説明するために、 三つの 作品の 冒頭を 木本さんに 読んでもらいましょう。それではお 願いします。
木本: 『方丈記』 ゆく 河の 流れは 絶えずして、しかも、もとの 水にあらず。 淀みに 浮かぶうたかたは、かつ 消えかつ 結びて、 久しくとどまりたるためしなし。 世の 中にある、 人と 栖と、またかくのごとし。
『平家 物語』 祇園 精舎の 鐘の 声、 諸行 無常の 響きあり。 娑羅 双樹の 花の 色、 盛者 必衰の 理をあらはす。 おごれる 人も 久しからず、ただ 春の 夜の 夢のごとし。 猛き 者もつひには 滅びぬ、ひとへに 風の 前の 塵に 同じ。
『徒然草』 つれづれなるままに、 日暮らし、 硯にむかひて、 心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく 書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
吉田: はい、ありがとうございます。 今 読んでもらった 方丈記、 平家 物語、 徒然草は 鎌倉 時代の 作品で、 鎌倉 時代から 江戸 時代の 前までの 時代を、 文学 史では 中世と 呼びます。
木本: 現代ではあまり 使わない「うたかた」とか「ことわり」などの 言葉が 出てきましたね。
吉田: 方丈記の「うたかた」は、ここでは 泡のことですが、 泡のように 儚く 消えやすい 例えの 意味でも 用いられます。 現代でも「うたかたの 恋」「うたかたの 夢」などの 表現がありますから、 純粋な 古語ではありません。 平家 物語に 見える「ことわり」は 漢字で 書くと 理屈の「 理」と 書きます。 漢字からおおよその 意味は 想像できますが、 現代ではあまり 用いませんから 古語と 考えてよいでしょう。
同様に、 徒然草の「つれづれ」や「よしなし」、「ものぐるほし」も 古語です。 さらに、 徒然草に 見える「あやし」は、 現代 語では「あやしい」「 不審だ」の 意味で 用いられますが、 古文では 一般に「 不思議だ」の 意味になります。
木本: 現代 語とは 意味が 違う んですね。
吉田: このように、 古語の 意味と 現代 語の 意味とが 異なる 語を、 古今 異義 語と 呼ぶのです。 竹取 物語の「うつくし」は「かわいい」の 意、 枕草子の「をかし」は「 趣がある」の 意ですから、 これらも 古今 異義 語と 言うことができます。 この 古今 異義 語に 注意して 学習すると 効率 的ですよ。
木本: なるほど。 覚えておきます。
吉田: 次に、 江戸 時代の 俳人、 松尾 芭蕉の 書いた『 奥の 細道』の 冒頭 部分を 読んでもらいましょう。
木本: 『 奥の 細道』 月日は 百代の 過客にして、 行きかふ 年もまた 旅人なり。 舟の 上に 生涯を 浮かべ、 馬の 口とらへて 老いを 迎ふる 者は、 日々 旅にして、 旅を 栖とす。
吉田: 木本さん、 読んでみていかがでしたか?
木本: 「 百代の 過客」など 難しい 語が 混じっていますが、どこか 現代 語に 近い 感じがしました。
吉田: そうですね。 『 奥の 細道』が 書かれた 江戸 時代を 文学 史では 近世と 呼びますが、 この 時代になると、ぐっと 現代の 文章に 近いものも 現れます。 言葉や 文章は 時代によって 変化するという 視点を 持ちながら 言語 文化を 学んでいきたいものですね。
木本: はい。
[音楽]
木本: それでは、 今回の 講座のポイントを 確認しましょう。 言語 文化って 何? 名文 選を 読み、 古文の 読み 方に 慣れる。 古語と 現代 語の 違いを 理解する。 でした。
吉田: 言語 文化を 学ぶことは、 私たちのルーツを 知ること、 それぞれの 時代の 人がどのようなことを 考えてきたか 理解するということです。 また、すべての 人が 言語 文化を 担っていくのだという 自覚も 持ちたいですね。
木本: そうですね。
吉田: 古文に 親しむ 第 一歩は、 古文の 読み 方に 慣れることです。 読み 方のルールを 意識して 何 度も 読んで、 古文の 読みに 慣れてください。 また、 古今 異義 語に 注意しながら 勉強すると 効率 的ですよ。
木本: 1 年間 頑張っていきましょう。
[音楽]
ナレーター: ラジオ 高校 講座 言語 文化にはホームページがあります。ホームページには、 番組の 内容が 事前にわかる 学習メモ、 学習した 内容が 理解できているかどうか 確認できる 理解 度チェックがあります。 朗読の 部屋では、 取り 上げた 作品の 朗読を 聞くことができます。また、ラジオの 放送が 終わった 後に 番組が 聞けるようになっています。 何 度でも 繰り 返して 聞くことができるので、わからなかったところはわかるまで 聞いてください。ラジオとホームページを 活用して 言語 文化を 学んでいってください。
木本: さて、 今回は 吉田 茂 先生と 古文に 親しむというテーマで 進めてきました。 吉田 先生、ありがとうございました。
吉田: ありがとうございました。
ナレーター: NHK 高校 講座 言語 文化。 木本 景子と 吉田 茂 先生でお 送りしました。
[音楽]