言語げんご文化ぶんか #69・70

古文こぶん

古文こぶん たびこころ紀行きこう

おく細道ほそみち全二回ぜんにかい②】

平泉ひらいずみ

松尾まつお芭蕉ばしょう

講師こうし 山本やまもと 章博あきひろ

学習がくしゅうのねらい

松尾まつお芭蕉ばしょうおく細道ほそみち』の平泉ひらいずみ場面ばめんみます。芭蕉ばしょう江戸えど出発しゅっぱつしたのは、はるわり、旧暦きゅうれき三月二十七日さんがつにじゅうななにちでしたが、平泉ひらいずみ到着とうちゃくしたのは真夏まなつ五月十三日ごがつじゅうさんにちのことでした。芭蕉ばしょうは、平泉ひらいずみ風景ふうけい詳細しょうさいえがき、その歴史れきしおもいをせます。平泉ひらいずみ芭蕉ばしょうなにおもったのでしょうか。いていきましょう。

文法・表現

詳細に描き
「詳細描繪」。中止形表示順接並列。
思いを馳せます
「展開遐思・遙想」。思いを馳せる表示將思緒飛馳到某處。
読み解いていきましょう
「讓我們一一解讀吧」。読み解く表示解讀・解析。

中文翻譯

閱讀松尾芭蕉《奧之細道》的平泉場面。芭蕉從江戶出發是春末,舊曆三月二十七日,但抵達平泉是盛夏的五月十三日的事。芭蕉詳細描繪平泉的風景,並對其歷史展開遐思。芭蕉在平泉想了些什麼呢?讓我們一一解讀吧。

学習がくしゅうのポイント●

いち平泉ひらいずみがどのようにえがかれているか理解りかいする
中尊寺ちゅうそんじがどのようにえがかれているか理解りかいする
さん〉 「夏草なつくさや……」 「五月雨さみだれの……」のから作者さくしゃ心情しんじょうかんがえる

平泉ひらいずみがどのようにえがかれているか理解りかいする

奥州藤原氏三代おうしゅうふじわらしさんだい藤原ふじわら清衡きよひら基衡もとひら秀衡ひでひら時代じだいおもいをせ、その旧跡きゅうせきえがく。
● 「大門だいもんあと」 ……… 平泉館ひらいずみのたち三代さんだい拠点きょてん)の正門せいもんあと
● 「秀衡ひでひらあと」 ……… 秀衡ひでひらんでいたたちあと
● 「金鶏山きんけいざん」 ……… 秀衡ひでひら平泉ひらいずみまもるためにきずいたやま

文法・表現

奥州藤原氏三代
「奧州藤原氏三代」。12世紀統治奧州(東北地方)的藤原氏三代領主。
旧跡を描く
「描繪舊跡」。旧跡=歷史遺址。
拠点
「據點・中心地」。

中文翻譯

① 遙想奧州藤原氏三代——藤原清衡、基衡、秀衡——的時代,描繪其舊跡。 ●「大門の跡」……平泉館(三代據點)的正門舊址。 ●「秀衡が跡」……秀衡所住館舍的舊址。 ●「金鶏山」……秀衡為守護平泉而築造的山。

② 「高館たかだち」にのぼり、そこからえた風景ふうけいえがく。
● 「北上川きたかみがわ」 ……… 南部地方なんぶちほう岩手県北部いわてけんほくぶ)からみなみながれ、太平洋たいへいようそそおおきなかわ
● 「衣川ころもがわ」 ……… 北上川きたかみがわ支流しりゅう
● 「和泉いずみじょう」 ……… 秀衡ひでひら三男さんなん忠衡ただひらんでいたたちあと
● 「泰衡やすひららが旧跡きゅうせき」 … 秀衡ひでひら次男じなん泰衡やすひららがんでたたちあと
● 「ころもせき」 ……… 高館たかだちちかくにあったふる関所せきしょ

文法・表現

支流
「支流」。
南部口をさし固め
「堅固守護南部方向的入口」。
夷を防ぐ
「防禦夷狄(蝦夷)」。夷=古代對東方異族的稱呼。

中文翻譯

② 登上「高館」,描繪從那裡看到的風景。 ●「北上川」……從南部地方(岩手縣北部)向南流、注入太平洋的大河。 ●「衣川」……北上川的支流。 ●「和泉が城」……秀衡三男忠衡所住館舍的舊址。 ●「泰衡らが旧跡」……秀衡次男泰衡等人所住館舍的舊址。 ●「衣が関」……高館附近昔日的關所。

③ 「高館たかだち」は、源義経みなもとのよしつねんでいたたちあとで、義経よしつね最後さいごいくさをして自害じがいした場所ばしょであることから、平泉ひらいずみ風景ふうけいながめながら、その歴史れきしおもいをせ、なみだながす。

文法・表現

自害した場所であることから
「因其是自盡之地」。ことから表示理由。
思いを馳せ
「遙想・展開遐思」。中止形表示順接。
涙を流す
「流下眼淚」。

中文翻譯

③ 「高館」是源義經所住館舍的舊址,也是義經進行最後一戰並自盡的地方,因此芭蕉在眺望平泉風景的同時,遙想其歷史,流下了眼淚。

− 229 −

曽良そら

はな兼房かねふさゆる 白毛しらがかな

しろはなれている様子ようす
  ↓
兼房かねふさ白毛しらがみだしながらたたかっているようにえる。
兼房かねふさ …… 義経よしつね臣下しんか白髪しらがみだしながら奮戦ふんせんにした。

文法・表現

卯の花
「卯花・空木花」。梅雨前後盛開的白色小花。
白毛を振り乱しながら
「揮動白髮地」。ながら表示動作的同時進行。
兼房見ゆる
「看起來像兼房」。見ゆ是古語,意為看到・看起來像。

中文翻譯

白色的卯花搖曳晃動的樣子。 ↓ 看起來像是兼房揮動白髮奮戰的樣子。 *兼房……義經的臣下。揮舞白髮奮戰而戰死。

中尊寺ちゅうそんじがどのようにえがかれているか理解りかいする

経堂きょうどう ……… 三将さんしょう三代さんだい)のぞうのこす。
光堂ひかりどう ……… 三代さんだいひつぎ三尊さんぞんほとけ安置あんちする。

七宝しっぽう」「たまとびら」「こがねはしら」は、やぶちることなく、あらたかこみ、おおいによってまもられている。

■ 「夏草なつくさや……」「五月雨さみだれの……」のから 作者さくしゃ心情しんじょうかんがえる

夏草なつくさつはものどもが ゆめあと

つはものども」 ……… 義経よしつねとその臣下しんかたち。
ゆめ」 ………………… 義経よしつねたちの功名こうみょうゆめ

文法・表現

兵ども
「武士們・將士們」。ども是複數接尾詞,帶有輕蔑或親暱的語感。
功名
「功名・功績」。立功揚名。

中文翻譯

「兵ども」……義經及其臣下們。 「夢」……………義經他們的功名與夢想。

義経よしつねたちの功名こうみょうゆめははかなくり、その旧跡きゅうせきにはただ「夏草なつくさ」がしげるばかりである。

文法・表現

はかなく消え去り
「虛幻消逝」。はかなく是副詞,表示短暫虛無。
生い茂るばかりである
「只有茂盛生長」。ばかり表示只有・僅此。

中文翻譯

↓ 義經他們的功名與夢想已虛幻消逝,其舊跡上只有「夏草」茂盛生長。

人間にんげん無力むりょくさ、はかなさをなげく。

文法・表現

無力さ、はかなさを嘆く
「感歎無力與虛無」。嘆く表示哀嘆・感慨。

中文翻譯

↓ 感歎人類的無力與虛無。

五月雨さみだれのこしてや 光堂ひかりどう

五月雨さみだれ」 …………… 梅雨つゆあめ
のこしてや光堂ひかりどう」 …… 長年ながねんあいだ五月雨さみだれは、光堂ひかりどうにだけらなかった。

文法・表現

五月雨
「五月雨・梅雨」。農曆五月的連綿細雨(梅雨)。
降り残してや
「只有……沒有降雨」。降り残す表示漏降、沒有落到某處。

中文翻譯

「五月雨」……梅雨的雨水。 「降り残してや光堂」……多年來,五月雨只有光堂沒有降雨(光堂倖免於梅雨的浸蝕)。

光堂ひかりどうまもつづけ、ちさせなかった人間にんげん努力どりょくへの感動かんどう

文法・表現

守り続け
「持續守護」。続ける表示持續進行某動作。
朽ちさせなかった
「不使其腐朽」。させる使役+なかった否定過去。
人間の努力への感動
「對人類努力之感動」。への表示對象。

中文翻譯

↓ 對持續守護光堂、不使其腐朽的人類努力之感動。

− 230 −

平泉ひらいずみ

三代さんだい栄耀えよう一睡いっすいうちにして、大門だいもんあと一里いちりこなたにあり。秀衡ひでひらあと田野でんやになりて、金鶏山きんけいざんのみかたちのこす。まづ高館たかだちのぼれば、北上川きたかみがわ南部なんぶよりながるる大河たいがなり。衣川ころもがわ和泉いずみじょうめぐりて、高館たかだちもとにて大河たいがる。泰衡やすひららが旧跡きゅうせきは、ころもせきへだてて南部口なんぶぐちをさしかためめ、えぞふせぐと見えみえたり。さても、義臣ぎしんすぐつてこのしろにこもり、功名こうみょう一時いちじくさむらとなる。「国破くにやぶれて山河さんがあり、城春しろはるにして草青くさあおみたり。」と、かさうちきて、ときうつるまでなみだとしはべりぬ。

夏草なつくさつはものどもが ゆめあと

はな兼房かねふさゆる 白髪しらがかな     曽良そら


かねて耳驚みみおどろかしたる二堂にどう開帳かいちょうす。経堂きょうどう三将さんしょうぞうのこし、光堂ひかりどう三代さんだいひつぎおさめ、三尊さんぞんほとけ安置あんちす。七宝しっぽうせて、たまとびらかぜやぶれ、こがねはしら霜雪そうせつちて、すでに頽廃たいはい空虚くうきょくさむらとなるべきを、四面しめん新たあらたかこみて、いらかおおひて風雨ふううをしのぎ、しばらく千歳せんざい記念かたみとはなれり。

五月雨さみだれのこしてや 光堂ひかりどう

現代語訳げんだいごやく

奥州藤原氏おうしゅうふじわらし三代さんだい栄華えいが一眠ひとねむりのあいだゆめのようににはかなくえて、(平泉館ひらいずみのたちの)正門せいもんあと一里いちりほど手前てまえにある。秀衡ひでひらたちあととなって、金鶏山きんけいざんだけがむかしのままのかたちのこしている。まず高館たかだちのぼると、北上川きたかみがわ(がながめられ)、(このかわは)南部地方なんぶちほうからながれてくる大河たいがである。衣川ころもがわ和泉いずみじょうめぐってながれ、高館たかだちした大河たいが北上川きたかみがわ)にながちている。泰衡やすひらたちの旧跡きゅうせきは、(高館たかだちからながめると)ころもせきはさんで南部地方なんぶちほうからの入口いりぐちかたまもり、えぞ侵入しんにゅうふせいでいたと見えみえる。

それにしても、(源義経みなもとのよしつねは)忠誠ちゅうせいちかった臣下しんかたちをえりすぐってこのしろにたてこもり、(いさましくたたかって功名こうみょうてたが、その)功名こうみょう一時いっときあいだに(はかなくえて、いま、そのあとは)くさむらとしている。「国破くにやぶれて山河さんがあり、城春しろはるにして草青くさあおみたり。(みやこ長安ちょうあんほろびて山川さんせんとなり、城壁じょうへきかこまれたまちはるになってくさおおわれているばかりだ。)」と(ずさみ)、かさいて、ときつのもわすれてなみだながしました。

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