学習のねらい
松尾芭蕉『奥の細道』の平泉の場面を読みます。芭蕉が江戸を出発したのは、春の終わり、旧暦の三月二十七日でしたが、平泉に到着したのは真夏の五月十三日のことでした。芭蕉は、平泉の風景を詳細に描き、その歴史に思いを馳せます。平泉で芭蕉は何を思ったのでしょうか。読み解いていきましょう。
文法・表現
- 詳細に描き
- 「詳細描繪」。中止形表示順接並列。
- 思いを馳せます
- 「展開遐思・遙想」。思いを馳せる表示將思緒飛馳到某處。
- 読み解いていきましょう
- 「讓我們一一解讀吧」。読み解く表示解讀・解析。
中文翻譯
閱讀松尾芭蕉《奧之細道》的平泉場面。芭蕉從江戶出發是春末,舊曆三月二十七日,但抵達平泉是盛夏的五月十三日的事。芭蕉詳細描繪平泉的風景,並對其歷史展開遐思。芭蕉在平泉想了些什麼呢?讓我們一一解讀吧。
●学習のポイント●
〈一〉 平泉がどのように描かれているか理解する
〈二〉 中尊寺がどのように描かれているか理解する
〈三〉 「夏草や……」 「五月雨の……」の句から作者の心情を考える
■ 平泉がどのように描かれているか理解する
① 奥州藤原氏三代、藤原清衡、基衡、秀衡の時代に思いを馳せ、その旧跡を描く。
● 「大門の跡」 ……… 平泉館(三代の拠点)の正門の跡。
● 「秀衡が跡」 ……… 秀衡が住んでいた館の跡。
● 「金鶏山」 ……… 秀衡が平泉を守るために築いた山。
文法・表現
- 奥州藤原氏三代
- 「奧州藤原氏三代」。12世紀統治奧州(東北地方)的藤原氏三代領主。
- 旧跡を描く
- 「描繪舊跡」。旧跡=歷史遺址。
- 拠点
- 「據點・中心地」。
中文翻譯
① 遙想奧州藤原氏三代——藤原清衡、基衡、秀衡——的時代,描繪其舊跡。
●「大門の跡」……平泉館(三代據點)的正門舊址。
●「秀衡が跡」……秀衡所住館舍的舊址。
●「金鶏山」……秀衡為守護平泉而築造的山。
↓
② 「高館」に登り、そこから見えた風景を描く。
● 「北上川」 ……… 南部地方(岩手県北部)から南に流れ、太平洋に注ぐ大きな川。
● 「衣川」 ……… 北上川の支流。
● 「和泉が城」 ……… 秀衡の三男忠衡が住んでいた館の跡。
● 「泰衡らが旧跡」 … 秀衡の次男泰衡らが住んでた館の跡。
● 「衣が関」 ……… 高館の近くにあった古い関所。
文法・表現
- 支流
- 「支流」。
- 南部口をさし固め
- 「堅固守護南部方向的入口」。
- 夷を防ぐ
- 「防禦夷狄(蝦夷)」。夷=古代對東方異族的稱呼。
中文翻譯
② 登上「高館」,描繪從那裡看到的風景。
●「北上川」……從南部地方(岩手縣北部)向南流、注入太平洋的大河。
●「衣川」……北上川的支流。
●「和泉が城」……秀衡三男忠衡所住館舍的舊址。
●「泰衡らが旧跡」……秀衡次男泰衡等人所住館舍的舊址。
●「衣が関」……高館附近昔日的關所。
↓
③ 「高館」は、源義経が住んでいた館の跡で、義経が最後の戦をして自害した場所であることから、平泉の風景を眺めながら、その歴史に思いを馳せ、涙を流す。
文法・表現
- 自害した場所であることから
- 「因其是自盡之地」。ことから表示理由。
- 思いを馳せ
- 「遙想・展開遐思」。中止形表示順接。
- 涙を流す
- 「流下眼淚」。
中文翻譯
③ 「高館」是源義經所住館舍的舊址,也是義經進行最後一戰並自盡的地方,因此芭蕉在眺望平泉風景的同時,遙想其歷史,流下了眼淚。
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● 曽良の句
卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな
白い卯の花が揺れている様子。
↓
兼房が白毛を振り乱しながら戦っているように見える。
* 兼房 …… 義経の臣下。白髪を振り乱しながら奮戦し討ち死にした。
文法・表現
- 卯の花
- 「卯花・空木花」。梅雨前後盛開的白色小花。
- 白毛を振り乱しながら
- 「揮動白髮地」。ながら表示動作的同時進行。
- 兼房見ゆる
- 「看起來像兼房」。見ゆ是古語,意為看到・看起來像。
中文翻譯
白色的卯花搖曳晃動的樣子。
↓
看起來像是兼房揮動白髮奮戰的樣子。
*兼房……義經的臣下。揮舞白髮奮戰而戰死。
■ 中尊寺がどのように描かれているか理解する
① 経堂 ……… 三将(三代)の像を残す。
② 光堂 ……… 三代の棺、三尊の仏を安置する。
↓
「七宝」「珠の扉」「金の柱」は、破れ朽ちることなく、新な囲み、覆いによって守られている。
■ 「夏草や……」「五月雨の……」の句から 作者の心情を考える
① 夏草や 兵どもが 夢の跡
「兵ども」 ……… 義経とその臣下たち。
「夢」 ………………… 義経たちの功名や夢。
文法・表現
- 兵ども
- 「武士們・將士們」。ども是複數接尾詞,帶有輕蔑或親暱的語感。
- 功名
- 「功名・功績」。立功揚名。
中文翻譯
「兵ども」……義經及其臣下們。
「夢」……………義經他們的功名與夢想。
↓
義経たちの功名や夢ははかなく消え去り、その旧跡にはただ「夏草」が生い茂るばかりである。
文法・表現
- はかなく消え去り
- 「虛幻消逝」。はかなく是副詞,表示短暫虛無。
- 生い茂るばかりである
- 「只有茂盛生長」。ばかり表示只有・僅此。
中文翻譯
↓
義經他們的功名與夢想已虛幻消逝,其舊跡上只有「夏草」茂盛生長。
↓
人間の無力さ、はかなさを嘆く。
文法・表現
- 無力さ、はかなさを嘆く
- 「感歎無力與虛無」。嘆く表示哀嘆・感慨。
② 五月雨の 降り残してや 光堂
「五月雨」 …………… 梅雨の雨。
「降り残してや光堂」 …… 長年の間、五月雨は、光堂にだけ降らなかった。
文法・表現
- 五月雨
- 「五月雨・梅雨」。農曆五月的連綿細雨(梅雨)。
- 降り残してや
- 「只有……沒有降雨」。降り残す表示漏降、沒有落到某處。
中文翻譯
「五月雨」……梅雨的雨水。
「降り残してや光堂」……多年來,五月雨只有光堂沒有降雨(光堂倖免於梅雨的浸蝕)。
↓
光堂を守り続け、朽ちさせなかった人間の努力への感動。
文法・表現
- 守り続け
- 「持續守護」。続ける表示持續進行某動作。
- 朽ちさせなかった
- 「不使其腐朽」。させる使役+なかった否定過去。
- 人間の努力への感動
- 「對人類努力之感動」。への表示對象。
中文翻譯
↓
對持續守護光堂、不使其腐朽的人類努力之感動。
− 230 −
三代の
栄耀一睡の
中にして、
大門の
跡は
一里こなたにあり。
秀衡が
跡は
田野になりて、
金鶏山のみ
形を
残す。まづ
高館に
登れば、
北上川、
南部より
流るる
大河なり。
衣川は
和泉が
城を
巡りて、
高館の
下にて
大河に
落ち
入る。
泰衡らが
旧跡は、
衣が
関を
隔てて
南部口をさし
固め、
夷を
防ぐと
見えたり。さても、
義臣すぐつてこの
城にこもり、
功名一時の
叢となる。「
国破れて
山河あり、
城春にして
草青みたり。」と、
笠うち
敷きて、
時の
移るまで
涙を
落とし
侍りぬ。
夏草や 兵どもが 夢の跡
卯の花に 兼房見ゆる 白髪毛かな 曽良
かねて
耳驚かしたる
二堂開帳す。
経堂は
三将の
像を
残し、
光堂は
三代の
棺を
納め、
三尊の
仏を
安置す。
七宝散り
失せて、
珠の
扉風に
破れ、
金の
柱霜雪に
朽ちて、すでに
頽廃空虚の
叢となるべきを、
四面新たに
囲みて、
甍を
覆ひて
風雨をしのぎ、しばらく
千歳の
記念とはなれり。
五月雨の 降り残してや 光堂
【 現代語訳 】
(奥州藤原氏)三代の栄華も一眠りの間に見た夢のようににはかなく消えて、(平泉館の)正門の跡は一里ほど手前にある。秀衡の館の跡は田や野となって、金鶏山だけが昔のままの形を残している。まず高館に登ると、北上川(が眺められ)、(この川は)南部地方から流れてくる大河である。衣川は和泉が城を巡って流れ、高館の下で大河(北上川)に流れ落ちている。泰衡たちの旧跡は、(高館から眺めると)衣が関を挟んで南部地方からの入口を堅く守り、夷の侵入を防いでいたと見える。
それにしても、(源義経は)忠誠を誓った臣下たちをえりすぐってこの城にたてこもり、(勇ましく戦って功名を立てたが、その)功名も一時の間に(はかなく消えて、今、その跡は)草むらと化している。「国破れて山河あり、城春にして草青みたり。(都の長安は滅びて山川となり、城壁で囲まれた町は春になって草に覆われているばかりだ。)」と(口ずさみ)、笠を敷いて、時の経つのも忘れて涙を流しました。
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