言語げんご文化ぶんか #66

現代げんだいぶん

いのちをうたう [詩歌しいか3]

少年しょうねん

佐藤さとう春夫はるお

講師こうし 齋藤さいとう たすく

学習がくしゅうのねらい

文語ぶんご定型ていけいえがかれる風景ふうけいあじわう。

学習がくしゅうのポイント●

いちリズムりずむ注意ちゅういしながら音読おんどくしよう
表現ひょうげんじょう工夫くふうについてげてみよう
さん〉 「少年しょうねん」の心情しんじょうはどのようなものか、かんがえよう

リズムりずむ注意ちゅういしながら音読おんどくしよう

今回こんかいは、文語ぶんご定型ていけいになります。普段ふだんはな言葉ことばとはちょっとちがふる言葉遣ことばづかいで、かつ、まった言葉ことばかずかれているです。言葉ことばおとかずは、はくともいいますが、これが七五調しちごちょうかれているのが特徴とくちょうです。められたストーリーに注目ちゅうもくするまえに、まずはリズムりずむ注意ちゅういしながら音読おんどくしてみましょう。

文法・表現

文語定型詩
「文語定型詩」。以文語(書面語)寫成、具有固定音節數的詩。
ちょっと違う
「略有不同」。口語的程度副詞。
七五調
「七五調」。以七音節+五音節為一節奏單位的定型詩形式。
注目する前に
「在注目……之前」。先後順序的表現。

中文翻譯

本回是文語定型詩。以與平常口語略有不同的古老語詞,並以固定的詞數寫成的詩。詞語的音數,也稱為拍,其特徵是以七五調寫成。在注目於詩中所蘊含的故事之前,首先試著注意節奏朗讀看看吧。

表現ひょうげんじょう工夫くふうについてげてみよう

タイトルに「少年しょうねん」とあるように、「少年しょうねん」の視点してんで「きみ」のことをうたっている、というのが前提ぜんていです。そのうえで表現ひょうげん注目ちゅうもくしていくと、第一連だいいちれん第二連だいにれんに「はなき」という、おな表現ひょうげんてきます。はじめの「はなき」はぎょう最後さいごかれているのに、あとのほうはぎょう先頭せんとうかれていて、このなかでここだけ読点とうてんがあります。このあとに「あはれわか」とありますから、ということは、少年しょうねんはもう大人おとなになっている、と解釈かいしゃくできます。はじめの「はなき」は、「つぶらひとみきみ」と一緒いっしょごしたのかもしれませんが、あとのほうは、さきほどのかえしのようにえてじつは、ちがう視点してんながめられているのがわかります。第一連だいいちれんころ少年しょうねんと、第二連だいにれんころ少年しょうねんでは、まったくことなった状況じょうきょうだったのでしょう。

文法・表現

~というのが前提です
「這是前提」。說明討論的前提條件。
そのうえで
「在此基礎上・在這之上」。
繰り返しのように見えて実は
「雖看似重複,實際上卻」。逆接表現。
第一連の頃の少年
「第一連時期的少年」。の頃=那個時候。

中文翻譯

如標題所示「少年」,以「少年」的視角詠唱「君」,這是前提。在此基礎上注目於表現,第一連與第二連中出現了同樣的表現「花を敷き」。第一個「花を敷き」被置於行末,而後面那個則被置於行首,且在這首詩中,只有這裡有讀點。此後有「あはれ若き日」,因此,可以解釋為少年已經是大人了。第一個「花を敷き」,或許是與「つぶら瞳の君」一起度過的時光,而後面那個,雖看似是前面的重複,實際上卻可以看出是從不同的視角被眺望的。第一連時期的少年,與第二連時期的少年,應該是完全不同的狀況。

真昼まひるおかべ」も二回にかいてきていますが、おなぎょうではなく、改行かいぎょうされています。「おかべ」は、漢字かんじくと「おか」に「あたり」と書いかいて「丘辺おかべ」でしょう。おかのあたり、というこどです。第一連だいいちれんでは「ひるのおかはなき」とつながっていますが、第二連だいにれんでは「真昼まひるおかべ」でぎょうわり、つぎぎょうで「はなき」とつづきます。

文法・表現

改行されています
「被換行了」。受身形表示狀態。
漢字で書くと
「用漢字寫的話」。假定的表達方式。
~でしょう
「吧・應該是~」。推量的語氣。

中文翻譯

「真昼の丘べ」也出現了兩次,但不在同一行,而是被換行了。「丘べ」用漢字寫的話,是「丘」加「辺(あたり)」寫作「丘辺」吧。意思是丘的周邊。第一連中是「真ひるの丘べ花を敷き」相連,但第二連中「真昼の丘べ」在那一行結束,下一行「花を敷き」繼續。

ここで、それぞれのぎょうまれた内容ないようてみましょう。「ひとみ」も第一連だいいちれん三行目さんぎょうめと、第二連だいにれん二行目にぎょうめで、二回にかいてきます。「みひとみ」とありますが、この「み」は、「お手紙てがみ」や「おちゃ」の「お」、」や「ぐし」の「み」とおなじで、敬意けいいえる接頭辞せっとうじです。つまり、「みひとみ」というかたに「きみ」にたいしてつのおもいがれます。

文法・表現

見てみましょう
「看看吧」。「てみる」+勸誘形。
敬意を添える接頭辞
「添加敬意的接頭辭」。日文敬語用法。
募る想い
「日益高漲的思念」。「募る」=逐漸增強。
読み取れます
「可以讀取・可以解讀」。可能形。

中文翻譯

那麼,讓我們來看看各行所詠內容。「瞳」也在第一連的第三行與第二連的第二行,出現了兩次。雖寫作「み瞳」,但這個「み」,與「お手紙」「お茶」的「お」、「御子」「御髪」的「み」相同,是添加敬意的接頭辭。也就是說,「み瞳」這個說法中,可以讀出對「君」日益高漲的思念。

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第一連だいいちれん最後さいごが「うれひは青し空よりもうれいはおおしそらよりも」でした。第二連だいにれん冒頭ぼうとうは「かげおほきはやしをたどり」です。第一連だいいちれん最後さいごで「そら」と、自然しぜん風景ふうけいんだあとに、第二連だいにれん冒頭ぼうとうでも、「はやし」ですから、自然しぜん風景ふうけいんでいます。ここを基点きてんにして、第一連だいいちれん冒頭ぼうとうほうにさかのぼりながら、一方いっぽう第二連だいにれんおわりのほうすすむと、どちらもそのつぎぎょうに「ひとみ」がかれていることがわかります。

文法・表現

冒頭
「開頭・冒頭」。文章或段落的起始處。
基点にして
「以……為基點」。
さかのぼりながら
「一邊追溯・往回看」。ながら=同時進行。
置かれていることがわかります
「可以知道被置有」。受身形+可知表現。

中文翻譯

第一連的最後是「うれひは青し空よりも」。第二連的開頭是「影おほき林をたどり」。在第一連末尾詠入「空」這一自然風景之後,第二連的開頭也是「林」,因此是在詠自然風景。以此為基點,一邊往第一連的詩的開頭追溯,另一方面第二連向詩的末尾前進,可以發現兩者的下一行都置有「瞳」。

そうすると、第二連だいにれんはそのままさきすすみ、第一連だいいちれん冒頭ぼうとうまでさかのぼることになりますから、「はなき」の読点とうてんのあと、「あはれわか」というのがじつは、第一連だいいちれん一行目いっぎょうめ対応たいおうしている、とむことができます。

文法・表現

そうすると
「如此一來・這樣的話」。結果・結論的接續詞。
さかのぼることになります
「將溯回」。ことになる表示結果・必然。
対応している
「相對應・呼應」。対応する的て形連用。

中文翻譯

如此一來,第二連照樣向前推進,第一連則溯回到詩的開頭,因此「花を敷き」的讀點之後,「あはれ若き日」,實際上可以讀作是與第一連的第一行相對應的。

ってみれば、この読点とうてんまえまで全部ぜんぶ「あはれわか」とわれているかのようです。第一連だいいちれんがったこいおもいが、第二連だいにれんではそこからかえし、かさなるようにせながら、じつはまったくべつ展開てんかいせている、というこどです。

文法・表現

言ってみれば
「可以說・換言之」。慣用表現。
かのようです
「彷彿~一般」。比喻表現。
折り返し
「折返・回頭」。比喻詩中的結構。
重なるように見せながら
「彷彿重疊地展示著」。ながら表示對比。

中文翻譯

可以說,讀點之前的全部,彷彿都被稱為「あはれ若き日」一般。第一連中高漲的戀愛之情,到了第二連,彷彿是折返、重疊,但實際上展示的是完全不同的發展,就是這樣的意思。

■ 「少年しょうねん」の心情しんじょうはどのようなものか、かんがえよう

第一連だいいちれん第二連だいにれんついをなしているとすると、たとえば、第一連だいいちれん現実げんじつ風景ふうけいだけれども、第二連だいにれん少年しょうねん空想くうそうである、ともめます。第一連だいいちれんひとみは「つぶらひとみ」でした。「つぶら」は漢字かんじくと「つぶら」ですから、まるくて可愛かわいらしい、という意味いみです。それを見つめていると、そらよりもあおい「うれひ」がおそってきます。「うれい」は「憂鬱ゆううつ」の「うれい」のをあてて「い」ですから、ひとみつめているとくるしくなる、という意味いみです。

文法・表現

対をなしているとすると
「如果說構成對比」。假定條件的表現。
とも読めます
「也可以這樣讀」。可能形表示解釋的可能性。
漢字で書くと「円」
「用漢字寫作『円』」。
苦しくなる
「變得苦悶・感到痛苦」。なる表示狀態變化。

中文翻譯

如果說第一連與第二連構成對比,例如,第一連是現實的風景,但第二連是少年的空想,也可以這樣讀。第一連的瞳是「つぶら瞳」。「つぶら」用漢字寫作「円」,意思是圓潤可愛的眼睛。凝視著那眼睛,便湧來比天空還藍的「うれひ」。「うれい」取「憂鬱」的「憂」字寫作「憂い」,意思是凝視著那瞳,心中便感到苦悶。

第二連だいにれん七五調しちごちょうから五七調ごしちちょうリズムりずむわります。「かげおほきはやし」は、そのままめば、ざしがつよいのでかげができる、という意味いみなのですが、このあとに「ゆめ」ときますから、むしろはかない印象いんしょうあたえています。

文法・表現

リズムが変わります
「節奏改變」。
そのまま読めば
「照字面讀的話」。假定條件。
むしろ
副詞。「反而・倒不如說」。
はかない印象を与えています
「給人虛幻的印象」。

中文翻譯

第二連的節奏從七五調變為五七調。「影おほき林」,照字面讀的話,意思是日照強烈所以產生陰影,但此後出現「夢」,反而給人一種虛幻的印象。

このつぎの「ゆめふかき、みひとみひ」とは、ゆめなかきみのつぶらなひとみおもして、がれている、といったところでしょうか。

文法・表現

といったところでしょうか
「大概是~的意思吧」。推量的口語表現。
恋い焦がれている
「深深相戀・渴慕」。複合動詞,強烈的愛戀之情。

中文翻譯

接下來的「夢ふかき、み瞳を恋ひ」,大概是在夢中想起君的圓潤瞳孔,而深深相戀、渴慕之意吧。

そして、第三連だいさんれんですが、行頭ぎょうとうが「きみ」でそろっています。いんんでいます。少年しょうねんはずっと「つぶらひとみきみ」にがれているんだけれども、きみなにかんがえているかはまったくわからなくて、きみのいない、たった一人ひとり浜辺はまべで、つきあかるいよるうみかっていしげている、という光景こうけいです。

文法・表現

行頭がそろっています
「行首整齊排列」。
韻を踏んでいます
「押韻」。各行以相同音節開頭的修辭技法。
恋い焦がれているんだけれども
「雖深深愛慕・渴慕著」。
向かって石を投げている
「面向……投石」。

中文翻譯

然後是第三連,行首全部以「君」整齊排列,押韻了。少年一直深深愛慕著「つぶら瞳の君」,但「君」在想什麼完全不知道,在沒有「君」的、只有一人的海濱,在月光明亮的夜晚,面向大海投石——就是這樣的光景。

第四連だいよんれん解釈かいしゃくすると、「つぶらひとみきみ」が、「な」ですから、毎晩まいばんよるになるたびに毛糸けいとんでいるのを少年しょうねんっているんだけれども、そのんでいる「ランプき」が、自分じぶんのためのものではないことはわかっている、となります。「かぐろ」は「黒々くろぐろとしている」という意味いみなので、「きみ」は、くろいとあかいとものをしているんですね。「あかいと」というのも「運命うんめいあかいと」というかたもあるように、あかいとむすばれているかぎり、男女だんじょげることができるはずなのですが、ここでは、少年しょうねんと「きみ」とのあいだの「あかいと」はもう、ぷっつりとれてしまっているような印象いんしょうけます。

文法・表現

夜な夜な
「每晚・夜夜」。慣用副詞表示每晚重複。
自分のためのものではないことはわかっている
「明白那並不是為了自己」。
添い遂げることができる
「能夠白頭偕老」。添い遂げる=終身相守。
ぷっつりと切れてしまっている
「截然斷絕了」。ぷっつり是擬態語,表示突然斷裂。

中文翻譯

解釋第四連的話,「つぶら瞳の君」「夜な夜な」,也就是每晚、每當夜晚來臨便編毛線,少年知道這件事,但那所編的「ランプ敷き」並不是為了自己,這是明白的。「かぐろ」意思是「黑黝黝的」,所以「君」是用黑色的線和紅色的線在編織物。「紅色的線」,也有「命運的紅色細線」這樣的說法,理應用紅色細線相繫的男女能夠白頭偕老,但在這裡,少年與「君」之間的「紅色細線」,給人一種已經截然斷絕的印象。

いったいどこまでが作者さくしゃ意図いとなのか、正解せいかいはありませんが、われわれにのこされた表現ひょうげんかたちから、さまざまな類推るいすい解釈かいしゃくができるになっています。

文法・表現

いったいどこまでが
「究竟到哪裡是」。いったい表示追問的強調副詞。
正解はありません
「沒有正確答案」。
さまざまな類推、解釈ができる
「可以做出各種類推、解釋」。可能形。

中文翻譯

究竟到哪裡是作者的意圖,沒有正確答案,但從留給我們的表現形式中,可以做出各種類推與解釋的,就是這樣的一首詩。

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現代げんだいぶん

少年しょうねん

佐藤さとう春夫はるお

講師こうし 齋藤さいとう たすく

ゆきやまゆき海辺うみべゆき

ひるのおかはな

つぶらひとみきみゆゑに

うれひはあおそらよりも。


かげおほきはやしをたどり

ゆめふかきみひとみ

あたたかき真昼まひるおか

はなき、あはれわか


きみひとみはつぶらにて

きみこころりがたし。

きみをはなれてただひとり

月夜つくようみいしぐ。


きみ毛糸けいと

ぎんぼういと

かぐろなるいとあかきいと

そのラムプがものぞ。

佐藤さとう春夫はるお 一八九二せんはっぴゃくきゅうじゅうにねん明治めいじ 25] ─ 一九六四せんきゅうひゃくろくじゅうよんねん昭和しょうわ 39]。
和歌山わかやまけんまれ。詩人しじん小説家しょうせつか本文ほんぶんは『定本ていほん佐藤さとう春夫はるお全集ぜんしゅう第一だいいちかん一九九九せんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅうねんかん) による。

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