学習のねらい
文語定型詩で描かれる風景を味わう。
●学習のポイント●
〈一〉 リズムに注意しながら音読しよう
〈二〉 表現上の工夫について挙げてみよう
〈三〉 「少年」の心情はどのようなものか、考えよう
■リズムに注意しながら音読しよう
今回は、文語定型詩になります。普段の話し言葉とはちょっと違う古い言葉遣いで、かつ、決まった言葉の数で書かれている詩です。言葉の音の数は、拍ともいいますが、これが七五調で書かれているのが特徴です。詩に込められたストーリーに注目する前に、まずはリズムに注意しながら音読してみましょう。
文法・表現
- 文語定型詩
- 「文語定型詩」。以文語(書面語)寫成、具有固定音節數的詩。
- ちょっと違う
- 「略有不同」。口語的程度副詞。
- 七五調
- 「七五調」。以七音節+五音節為一節奏單位的定型詩形式。
- 注目する前に
- 「在注目……之前」。先後順序的表現。
中文翻譯
本回是文語定型詩。以與平常口語略有不同的古老語詞,並以固定的詞數寫成的詩。詞語的音數,也稱為拍,其特徵是以七五調寫成。在注目於詩中所蘊含的故事之前,首先試著注意節奏朗讀看看吧。
■表現上の工夫について挙げてみよう
タイトルに「少年」とあるように、「少年」の視点で「君」のことをうたっている、というのが前提です。そのうえで表現に注目していくと、第一連と第二連に「花を敷き」という、同じ表現が出てきます。はじめの「花を敷き」は行の最後に置かれているのに、あとのほうは行の先頭に置かれていて、この詩の中でここだけ読点があります。このあとに「あはれ若き日」とありますから、ということは、少年はもう大人になっている、と解釈できます。はじめの「花を敷き」は、「つぶら瞳の君」と一緒に過ごしたのかもしれませんが、あとのほうは、先ほどの繰り返しのように見えて実は、違う視点で眺められているのがわかります。第一連の頃の少年と、第二連の頃の少年では、まったく異なった状況だったのでしょう。
文法・表現
- ~というのが前提です
- 「這是前提」。說明討論的前提條件。
- そのうえで
- 「在此基礎上・在這之上」。
- 繰り返しのように見えて実は
- 「雖看似重複,實際上卻」。逆接表現。
- 第一連の頃の少年
- 「第一連時期的少年」。の頃=那個時候。
中文翻譯
如標題所示「少年」,以「少年」的視角詠唱「君」,這是前提。在此基礎上注目於表現,第一連與第二連中出現了同樣的表現「花を敷き」。第一個「花を敷き」被置於行末,而後面那個則被置於行首,且在這首詩中,只有這裡有讀點。此後有「あはれ若き日」,因此,可以解釋為少年已經是大人了。第一個「花を敷き」,或許是與「つぶら瞳の君」一起度過的時光,而後面那個,雖看似是前面的重複,實際上卻可以看出是從不同的視角被眺望的。第一連時期的少年,與第二連時期的少年,應該是完全不同的狀況。
「真昼の丘べ」も二回出てきていますが、同じ行ではなく、改行されています。「丘べ」は、漢字で書くと「丘」に「辺」と書いて「丘辺」でしょう。丘のあたり、というこどです。第一連では「真ひるの丘べ花を敷き」とつながっていますが、第二連では「真昼の丘べ」で行が終わり、次の行で「花を敷き」とつづきます。
文法・表現
- 改行されています
- 「被換行了」。受身形表示狀態。
- 漢字で書くと
- 「用漢字寫的話」。假定的表達方式。
- ~でしょう
- 「吧・應該是~」。推量的語氣。
中文翻譯
「真昼の丘べ」也出現了兩次,但不在同一行,而是被換行了。「丘べ」用漢字寫的話,是「丘」加「辺(あたり)」寫作「丘辺」吧。意思是丘的周邊。第一連中是「真ひるの丘べ花を敷き」相連,但第二連中「真昼の丘べ」在那一行結束,下一行「花を敷き」繼續。
ここで、それぞれの行に詠まれた内容を見てみましょう。「瞳」も第一連の三行目と、第二連の二行目で、二回出てきます。「み瞳」とありますが、この「み」は、「お手紙」や「お茶」の「お」、御子」や「御髪」の「み」と同じで、敬意を添える接頭辞です。つまり、「み瞳」という言い方に「君」に対して募る想いが読み取れます。
文法・表現
- 見てみましょう
- 「看看吧」。「てみる」+勸誘形。
- 敬意を添える接頭辞
- 「添加敬意的接頭辭」。日文敬語用法。
- 募る想い
- 「日益高漲的思念」。「募る」=逐漸增強。
- 読み取れます
- 「可以讀取・可以解讀」。可能形。
中文翻譯
那麼,讓我們來看看各行所詠內容。「瞳」也在第一連的第三行與第二連的第二行,出現了兩次。雖寫作「み瞳」,但這個「み」,與「お手紙」「お茶」的「お」、「御子」「御髪」的「み」相同,是添加敬意的接頭辭。也就是說,「み瞳」這個說法中,可以讀出對「君」日益高漲的思念。
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第一連の最後が「うれひは青し空よりも」でした。第二連の冒頭は「影おほき林をたどり」です。第一連の最後で「空」と、自然の風景を詠み込んだあとに、第二連の冒頭でも、「林」ですから、自然の風景を詠んでいます。ここを基点にして、第一連を詩の冒頭の方にさかのぼりながら、一方で第二連は詩の終りの方へ進むと、どちらもその次の行に「瞳」が置かれていることがわかります。
文法・表現
- 冒頭
- 「開頭・冒頭」。文章或段落的起始處。
- 基点にして
- 「以……為基點」。
- さかのぼりながら
- 「一邊追溯・往回看」。ながら=同時進行。
- 置かれていることがわかります
- 「可以知道被置有」。受身形+可知表現。
中文翻譯
第一連的最後是「うれひは青し空よりも」。第二連的開頭是「影おほき林をたどり」。在第一連末尾詠入「空」這一自然風景之後,第二連的開頭也是「林」,因此是在詠自然風景。以此為基點,一邊往第一連的詩的開頭追溯,另一方面第二連向詩的末尾前進,可以發現兩者的下一行都置有「瞳」。
そうすると、第二連はそのまま先に進み、第一連は詩の冒頭までさかのぼることになりますから、「花を敷き」の読点のあと、「あはれ若き日」というのが実は、第一連の一行目に対応している、と読むことができます。
文法・表現
- そうすると
- 「如此一來・這樣的話」。結果・結論的接續詞。
- さかのぼることになります
- 「將溯回」。ことになる表示結果・必然。
- 対応している
- 「相對應・呼應」。対応する的て形連用。
中文翻譯
如此一來,第二連照樣向前推進,第一連則溯回到詩的開頭,因此「花を敷き」的讀點之後,「あはれ若き日」,實際上可以讀作是與第一連的第一行相對應的。
言ってみれば、この読点の前まで全部「あはれ若き日」と言われているかのようです。第一連で盛り上がった恋の想いが、第二連ではそこから折り返し、重なるように見せながら、実はまったく別の展開を見せている、というこどです。
文法・表現
- 言ってみれば
- 「可以說・換言之」。慣用表現。
- かのようです
- 「彷彿~一般」。比喻表現。
- 折り返し
- 「折返・回頭」。比喻詩中的結構。
- 重なるように見せながら
- 「彷彿重疊地展示著」。ながら表示對比。
中文翻譯
可以說,讀點之前的全部,彷彿都被稱為「あはれ若き日」一般。第一連中高漲的戀愛之情,到了第二連,彷彿是折返、重疊,但實際上展示的是完全不同的發展,就是這樣的意思。
■ 「少年」の心情はどのようなものか、考えよう
第一連と第二連が対をなしているとすると、例えば、第一連は現実の風景だけれども、第二連は少年の空想である、とも読めます。第一連の瞳は「つぶら瞳」でした。「つぶら」は漢字で書くと「円」ですから、まるくて可愛らしい目、という意味です。それを見つめていると、空よりも青い「うれひ」が襲ってきます。「うれい」は「憂鬱」の「憂」の字をあてて「憂い」ですから、瞳を見つめていると苦しくなる、という意味です。
文法・表現
- 対をなしているとすると
- 「如果說構成對比」。假定條件的表現。
- とも読めます
- 「也可以這樣讀」。可能形表示解釋的可能性。
- 漢字で書くと「円」
- 「用漢字寫作『円』」。
- 苦しくなる
- 「變得苦悶・感到痛苦」。なる表示狀態變化。
中文翻譯
如果說第一連與第二連構成對比,例如,第一連是現實的風景,但第二連是少年的空想,也可以這樣讀。第一連的瞳是「つぶら瞳」。「つぶら」用漢字寫作「円」,意思是圓潤可愛的眼睛。凝視著那眼睛,便湧來比天空還藍的「うれひ」。「うれい」取「憂鬱」的「憂」字寫作「憂い」,意思是凝視著那瞳,心中便感到苦悶。
第二連は七五調から五七調にリズムが変わります。「影おほき林」は、そのまま読めば、日ざしが強いので影ができる、という意味なのですが、このあとに「夢」ときますから、むしろはかない印象を与えています。
文法・表現
- リズムが変わります
- 「節奏改變」。
- そのまま読めば
- 「照字面讀的話」。假定條件。
- むしろ
- 副詞。「反而・倒不如說」。
- はかない印象を与えています
- 「給人虛幻的印象」。
中文翻譯
第二連的節奏從七五調變為五七調。「影おほき林」,照字面讀的話,意思是日照強烈所以產生陰影,但此後出現「夢」,反而給人一種虛幻的印象。
この次の「夢ふかき、み瞳を恋ひ」とは、夢の中で君のつぶらな瞳を思い出して、恋い焦がれている、といったところでしょうか。
文法・表現
- といったところでしょうか
- 「大概是~的意思吧」。推量的口語表現。
- 恋い焦がれている
- 「深深相戀・渴慕」。複合動詞,強烈的愛戀之情。
中文翻譯
接下來的「夢ふかき、み瞳を恋ひ」,大概是在夢中想起君的圓潤瞳孔,而深深相戀、渴慕之意吧。
そして、第三連ですが、行頭が「君」でそろっています。韻を踏んでいます。少年はずっと「つぶら瞳の君」に恋い焦がれているんだけれども、君が何を考えているかはまったくわからなくて、君のいない、たった一人の浜辺で、月の明るい夜に海に向かって石を投げている、という光景です。
文法・表現
- 行頭がそろっています
- 「行首整齊排列」。
- 韻を踏んでいます
- 「押韻」。各行以相同音節開頭的修辭技法。
- 恋い焦がれているんだけれども
- 「雖深深愛慕・渴慕著」。
- 向かって石を投げている
- 「面向……投石」。
中文翻譯
然後是第三連,行首全部以「君」整齊排列,押韻了。少年一直深深愛慕著「つぶら瞳の君」,但「君」在想什麼完全不知道,在沒有「君」的、只有一人的海濱,在月光明亮的夜晚,面向大海投石——就是這樣的光景。
第四連を解釈すると、「つぶら瞳の君」が、「夜な夜な」ですから、毎晩、夜になるたびに毛糸を編んでいるのを少年は知っているんだけれども、その編んでいる「ランプ敷き」が、自分のためのものではないことはわかっている、となります。「かぐろ」は「黒々としている」という意味なので、「君」は、黒の糸と赤の糸で編み物をしているんですね。「赤い糸」というのも「運命の赤い糸」という言い方もあるように、赤い糸で結ばれているかぎり、男女が添い遂げることができるはずなのですが、ここでは、少年と「君」との間の「赤い糸」はもう、ぷっつりと切れてしまっているような印象を受けます。
文法・表現
- 夜な夜な
- 「每晚・夜夜」。慣用副詞表示每晚重複。
- 自分のためのものではないことはわかっている
- 「明白那並不是為了自己」。
- 添い遂げることができる
- 「能夠白頭偕老」。添い遂げる=終身相守。
- ぷっつりと切れてしまっている
- 「截然斷絕了」。ぷっつり是擬態語,表示突然斷裂。
中文翻譯
解釋第四連的話,「つぶら瞳の君」「夜な夜な」,也就是每晚、每當夜晚來臨便編毛線,少年知道這件事,但那所編的「ランプ敷き」並不是為了自己,這是明白的。「かぐろ」意思是「黑黝黝的」,所以「君」是用黑色的線和紅色的線在編織物。「紅色的線」,也有「命運的紅色細線」這樣的說法,理應用紅色細線相繫的男女能夠白頭偕老,但在這裡,少年與「君」之間的「紅色細線」,給人一種已經截然斷絕的印象。
いったいどこまでが作者の意図なのか、正解はありませんが、われわれに残された表現の形から、さまざまな類推、解釈ができる詩になっています。
文法・表現
- いったいどこまでが
- 「究竟到哪裡是」。いったい表示追問的強調副詞。
- 正解はありません
- 「沒有正確答案」。
- さまざまな類推、解釈ができる
- 「可以做出各種類推、解釋」。可能形。
中文翻譯
究竟到哪裡是作者的意圖,沒有正確答案,但從留給我們的表現形式中,可以做出各種類推與解釋的,就是這樣的一首詩。
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1
野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘べ花を敷き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは青し空よりも。
2
影おほき林をたどり
夢ふかきみ瞳を恋ひ
あたたかき真昼の丘べ
花を敷き、あはれ若き日。
3
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし。
君をはなれて唯ひとり
月夜の海に石を投ぐ。
4
君は夜な夜な毛糸編む
銀の編み棒に編む糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰がものぞ。
● 佐藤春夫 一八九二年 [明治 25] ─ 一九六四年 [昭和 39]。
和歌山県生まれ。詩人、小説家。本文は『定本佐藤春夫全集』第一巻 (一九九九年刊) による。
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