言語げんご文化ぶんか #62

漢文かんぶん

論語ろんごのことにば [論語ろんご

論語ろんご八章はっしょう人間にんげんつめる

講師こうし 渡辺わたなべ恭子きょうこ

学習がくしゅうのねらい

論語ろんご』の二回目にかいめ、「人間にんげん」についてです。今回こんかい学習がくしゅうでは、まず『論語ろんご』とはどのような書物しょもつなのかをまなびます。そして、実際じっさいに「人間にんげん」にかんするみっつの章句しょうくあじわうことで、孔子こうし理想りそうとした人間にんげんとはどういうひとなのか、人間にんげんはどうあるべきなのか、つまり「孔子こうし人間観にんげんかん」について理解りかいふかめていきましょう。

学習がくしゅうのポイント●

いち〉 『論語ろんご』とはどのような書物しょもつなのか
〉 「人間にんげん」についてべたみっつの章句しょうくあじわおう
さん〉 「孔子こうし人間観にんげんかん」についての理解りかいふかめよう

■ 『論語ろんご』とはどのような書物しょもつなのか

論語ろんご』は、孔子こうしとその弟子でしたちが、はなしたり、おこなったりしたこと、そして問答もんどうなどが、おも内容ないようになっています。孔子こうし死後しご門人もんじんたちのによってまとめられました。『論語ろんご』の章句しょうくは、一般的いっぱんてきにはおよそ五百ごひゃくあるとわれていますが、それが二十にじゅうのまとまりにけられていて、それぞれ名前なまえ篇名へんめい)がけられています。『論語ろんご』は、『古事記こじき』によると、いまから一七〇〇年せんななひゃくねんくらいまえ応神天皇おうじんてんのう時代じだいに、百済くだら博士はかせである王仁わにによって日本にほんつたえられたとされています。日本にほんはいってきた中国ちゅうごく書物しょもつとしては最古さいこのものになります。

文法・表現

~たり~たりすること
「做~或~的事」。「たり」連用,表示列舉代表性動作。
門人たちの手によってまとめられました
「由門人們彙整而成」。受身形,表示施事者。
一般的には~と言われています
「一般認為~」。慣用表現。
それぞれ名前が付けられています
「各有名稱」。受身形+ている,表示狀態。
~とされています
「被認定為~・據說~」。

中文翻譯

《論語》的主要內容是孔子與其弟子們的言行以及問答等。孔子死後,由門人們彙整而成。《論語》的章句,一般認為大約有五百條,分成二十個部分,各有名稱(篇名)。根據《古事記》,《論語》是在距今約一千七百年前的應神天皇時代,由百濟博士王仁傳入日本的。這是傳入日本的中國書籍中最古老的。

やがて、日本にほんでも『論語ろんご』は必読書ひつどくしょひとつになり、平和へいわつづいた江戸時代えどじだいには、幕府ばくふ教育きょういく政策せいさくのもと、学者がくしゃはもとより寺子屋てらこやまなどもにいたるまで、おおくのひとまれるようになりました。

文法・表現

やがて
副詞。「不久・漸漸地」。
必読書
「必讀書」。
~はもとより~に至るまで
「從~到~為止」。表示廣泛的範圍。
読まれるようになりました
「變得被閱讀了・開始被閱讀了」。受身+ようになる,表示漸進的變化。

中文翻譯

不久,《論語》在日本也成為必讀書之一,在太平之世持續的江戶時代,在幕府的教育政策之下,從學者到在寺子屋學習的孩子,許多人都開始閱讀。

■ 「人間にんげん」についてべたみっつの章句しょうくあじわおう

(1)曽子そうしいわく、「われたびかえりみる。ひとために……」

曽子そうしが、いかに誠実せいじつ努力家どりょくかであったことがかる章句しょうく

文法・表現

いかに
副詞。「多麼・如何」。
努力家
「勤勉者・努力的人」。
~が分かる
「可以了解~」。

中文翻譯

● 可以了解曽子是多麼誠實勤勉的章句。

ポイント

ちゅう」「しん」は「じん」にたつするための重要じゅうよう手段しゅだん
・ 「ちゅう」 …… 真心まごころくすこと。
・ 「しん」 …… 誠実せいじつであること。

文法・表現

達するための
「為了達到」。「ための」表示目的。
真心を尽くすこと
「竭盡真心」。
誠実であること
「誠實」。形容動詞的名詞化。

中文翻譯

「忠」「信」是達到「仁」的重要手段。・「忠」……竭盡真心。・「信」……誠實。

(2)いわく、「巧言令色こうげんれいしょくすくなじん。」

● 「仁者じんしゃ」は、自分じぶんにも他人たにんにも誠実せいじつでなければなりません。

文法・表現

~でなければなりません
「必須~」。

中文翻譯

● 「仁者」對自己和對他人都必須誠實。

ポイント

じん
・ 「じん」 …… 孔子こうし最高さいこうとくとしたもの。ふか人間愛にんげんあい
・ 「巧言令色こうげんれいしょく」[四字熟語よじじゅくご
   …… せかけだけで誠実せいじつさのないこと。おぼえましょう!

(3)うまやけたり。退朝たいちょうしていわく、……

孔子こうしが、なによりもひとおもんじたことをしめすエピソード。

文法・表現

なによりも
「比任何事都更・最」。
重んじる
動詞。「重視・看重」。
示すエピソード
「顯示的故事」。連體修飾。

中文翻譯

● 顯示孔子比任何事都更看重人的故事。

ポイント

孔子こうしが、高価こうかうまよりもひとあんじたこと。
・ 「ひとそこなへるか」(「疑問ぎもん」をあらわす)
   …… 「ひと怪我けがはなかったかね。」とやくしましょう。

文法・表現

案じる
動詞。「擔憂・掛念」。
疑問を表す
「表示疑問」。
「乎(か)」
疑問助詞。古典漢文中置於句末表示疑問。

中文翻譯

孔子憂慮人的安危勝過貴重的馬。・「人を傷なへるか」(表示「疑問」)……譯為「人有沒有受傷呢。」

■ 「孔子こうし人間観にんげんかん」についての理解りかいふかめよう

ここでのキーワードは、「じん」と「ちゅう」と「しん」です。

文法・表現

キーワード
外來語。「關鍵詞」。

中文翻譯

此處的關鍵詞是「仁」「忠」「信」。

じん」とは、孔子こうし目指めざした、人間にんげんとしてもっと理想的りそうてきかたです。「ふか人間愛にんげんあい」を意味いみするといわれています。

文法・表現

目指した
「所追求的」。連體修飾用法。
最も理想的な
「最理想的」。「最も」修飾形容動詞。
といわれています
「據說是」。

中文翻譯

所謂「仁」,是孔子所追求的、作為人的最理想的生活方式。據說意指「深厚的人類之愛」。

もう一方いっぽうのキーワード「ちゅう」と「しん」ですが、「ちゅう」とは、「他人たにんのために、自分じぶん真心まごころくすこと」でした。また、「しん」とは、「嘘偽うそいつわりのない誠実せいじつさ」、もっとかりやすくいうと、「うこととおこなうことが一致いっちしていること」です。自分じぶん言葉ことば責任せきにんち、った言葉ことば約束やくそくをどこまでもまもとおす、そんな誠実せいじつかたをいいいます。つまり、「ちゅう」や「しん」といった態度たいどは、「じん」にたつするための重要じゅうよう手段しゅだんなのです。孔子こうしは、個人個人こじんこじんが「じん」をにつければ、人間愛にんげんあいにあふれた、理想的りそうてき社会しゃかいができるとかんがえていました。

文法・表現

もう一方の
「另一個・另一方的」。
真心を尽くすこと
「竭盡真心」。
言うことと行うことが一致していること
「言行一致」。
どこまでも守り通す
「始終遵守・貫徹到底」。複合動詞「守り通す」。
個人個人が
「個人個人・每個人」。

中文翻譯

另一個關鍵詞「忠」與「信」,「忠」是指「為他人竭盡自己的真心」。而「信」是指「沒有謊言欺騙的誠實」,更淺顯地說,就是「言行一致」。對自己的話負責,始終遵守說過的話和約定,說的就是這樣誠實的生活方式。也就是說,「忠」「信」這樣的態度,是達到「仁」的重要手段。孔子認為,個人個人若能習得「仁」,就能建立充滿人類之愛的理想社會。

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漢文かんぶん

論語ろんご八章はっしょう人間にんげんつめる

講師こうし 渡辺わたなべ恭子きょうこ

曽子そうしいわく、「われたびかえりみる。ひとためはかりてちゅうなる朋友ほうゆうまじわりてしんなるつたえへてしゅうなる。」
学而がくじ

いわく、「巧言令色こうげんれいしょくすくななるじん。」
学而がくじ

うまやけたり。退朝たいちょうしていわく、「ひとそこなへる。」はずうまを。
郷党きょうとう

くだぶん

曽子そうしいわはく、「われたびかえりみる。ひとためはかりてちゅうならざるか。朋友ほうゆうまじわりてしんならざるか。ならはざるをつたふるか。」と。

口語訳こうごやく

そう先生せんせいがおっしゃった、「わたし一日いちにちのうちに何時なんど自分じぶん自身じしん反省はんせいする。ひと相談そうだんにのってあげながら、まごころをくさないことはなかったか。友達ともだち交際こうさいして、誠実せいじつでなかったのではないか。まだ身まだみにつけていないなまかじりのことを、ひとおしつたえることはなかったか。」と。

くだぶん

いわはく、「巧言令色こうげんれいしょくすくななしじん。」と。

口語訳こうごやく

先生せんせいがおっしゃった、「たくみな弁舌べんぜつや、りつくろった表情ひょうじょうひとには、すくないなあと本当ほんとうじんこころは。」と。

くだぶん

うまやけたり。あしたより退しりぞきていわはく、「ひとそこなへるか。」と。うまはず。

口語訳こうごやく

孔子こうしいえの)うまやけてしまった。(こう先生せんせい朝廷ちょうていから退出たいしゅつして、(いえかえってきた。そしてすぐに)うことに、「ひと怪我けがはなかったか。」と。(その後、)うまのことについては(何一なにひとつ)たずねなかった。

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