【三】 木曽の最期
学習のねらい
『平家物語』「木曽の最期」の三回目です。兼平は義仲に自害することを勧め、義仲は一騎で粟津の松原に向かいます。兼平は義仲が自害するまで敵をふせぐために、一騎で五十騎を相手にして大奮闘しました。その激しい戦闘の様子が描かれていたのが前回の場面でした。今回は、まずそれぞれれの最期はどのようなものであったのかを理解します。そして、それを比較してみましょう。
文法・表現
- ~回目
- 「第~次」。回數的數量詞用法。
- ~を勧める
- 「勸~」。
- ~を相手にして
- 「以~為對手」。
- ~のが前回の場面でした
- 「~的是前回的場面」。「のが」是形式名詞「の」+主格助詞。
- それぞれ
- 「各自」。
中文翻譯
《平家物語》「木曾的最期」的第三回。兼平勸義仲自盡,義仲一騎前往粟津的松原。兼平為了在義仲自盡之前抵擋敵人,一騎對戰五十騎大為奮鬥。描寫那激烈戰鬥情景的,是前回的場面。本回首先理解各自的最期是怎樣的。然後試著加以比較。
● 学習のポイント ●
〈一〉 木曽義仲の最期の状況を理解する
〈二〉 今井四郎兼平の最期の状況を理解する
〈三〉 それぞれの最期の描かれ方を比較する
文法・表現
- ~にはまって
- 「陷入~」。
- 瞬間
- 「瞬間」。
- 望んでいた
- 「曾希望的」。「望む」のて形+いた。
- 潔く
- 形容詞「潔し」的連用形。「乾脆・果斷地」。
- 衝撃的
- 形容動詞。「衝擊性的」。
中文翻譯
義仲的最期……陷入深田無法動彈,因擔心兼平而回頭的瞬間被討取。所希望的自盡未能達成。 兼平的最期……乾脆地、衝擊性地自盡。
■ 木曽義仲の最期の状況を理解する
文法・表現
- ~にはまって
- 「陷入~」。
- 瞬間
- 「瞬間」。
- 望んでいた
- 「曾希望的」。「望む」のて形+いた。
- 潔く
- 形容詞「潔し」的連用形。「乾脆・果斷地」。
- 衝撃的
- 形容動詞。「衝擊性的」。
中文翻譯
義仲的最期……陷入深田無法動彈,因擔心兼平而回頭的瞬間被討取。所希望的自盡未能達成。 兼平的最期……乾脆地、衝擊性地自盡。
自害するために粟津の松原に向かった義仲でしたが、自害することはできず、敵に討たれてしまいます。それまでの経過は以下の通りです。
文法・表現
- ~するために
- 「為了~」。表示目的。
- ~でしたが
- 「是~但是」。逆接。
- ~てしまいます
- 「~掉了」。完了,含遺憾的語感。
- 以下の通り
- 「如下所述」。
中文翻譯
義仲為了自盡而前往粟津的松原,但無法自盡,被敵人討取了。直到那時為止的經過如下所述。
◎ 義仲が討たれるまで
義仲は、深い田に薄氷が張っているのに気がつかず、そこに馬を乗り入れて動けなくなってしまう。
↓
義仲は、兼平がどうしているのか気がかりで振り向く。
↓
石田次郎為久が、振り向いた義仲の顔を弓矢で射る。
↓
義仲は、重傷を負いうつ伏せになってしまう。
↓
石田次郎為久の家来が二人やってきて義仲の首を取り、為久は首を太刀の先に刺し高く掲げて勝ち名乗りを上げる。
文法・表現
- ~のに気がつかず
- 「沒有注意到~」。
- 乗り入れる
- 複合動詞。「騎入・駛入」。
- 動けなくなってしまう
- 「變得無法動彈」。「動ける」可能形否定+「なる」+「てしまう」。
- 気がかり
- 「擔心・掛念」。
- 勝ち名乗りを上げる
- 慣用句。「揚聲報出勝利之名」。武士在戰場上戰勝後高聲宣告自己的姓名與功績。
中文翻譯
義仲沒有發現深田上結了薄冰,將馬騎入其中而動彈不得。↓義仲擔心兼平的情況如何,回頭觀望。↓石田次郎為久用弓箭射回頭的義仲的臉。↓義仲身負重傷,趴伏在地。↓石田次郎為久的家臣兩人前來取了義仲的首級,為久將首級插在太刀尖端高高舉起,揚聲報出戰勝之名。
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【 重要語句 】
● 入相 ……… 夕方のこと。
【 注意すべき表現 】
● 追つかかつてよつぴいて
↑ 音便
追ひかかりてよくひきて
● 取つてんげり
↑ 音便
取りてけり
● ひやうふつ → 矢が飛んで当たる音
■ 今井四郎兼平の最期の状況を理解する
兼平は、義仲が討たれたことを知って自害します。その様子は次の通りです。
文法・表現
- ~が討たれた
- 受身形過去。「被討取了」。
- ~ことを知って
- 「知道~」。
- 次の通り
- 「如下所述」。
中文翻譯
兼平知道義仲被討取了之後自盡。其情景如下所述。
◎ 兼平の自害
兼平は、為久の勝ち名乗りによって、義仲が討たれたことを知り、もはや戦う意味はないと思う。
↓
「これを見給へ、東国の殿ばら、日本一の剛の者の自害する手本」といって、太刀の先を口に含む。
↓
馬から飛び落ちて、その太刀に体を貫かれて没する。
文法・表現
- ~によって
- 「藉由~・因為~」。表示原因・手段。
- もはや
- 副詞。「已經・再也」。
- ~と思う
- 「認為~」。
- 剛の者
- 「勇者・武勇之士」。
- 貫かれて
- 受身形。「被貫穿」。
- 没する
- 動詞。「死亡・身故」。
中文翻譯
兼平因為久報出戰勝之名,得知義仲被討取了,認為已經沒有再戰的意義。↓「請看,東國的諸位大人,這就是日本第一勇者自盡的範例」說罷,將太刀的尖端含入口中。↓從馬上跳下,被那把太刀貫穿身體而亡。
【 重要語句 】
● 剛の者 ……… 強くて勇敢な者。
■ それぞれの最期の描かれ方を比較する
義仲と兼平の二人の最期は対照的です。兼平が自害したのに対し、義仲は兼平が心配していた通り、名もない武将に討たれ、不名誉な戦死を遂げます。しかし、義仲は死の間際まで兼平のことを思っていました。優しく人間的な義仲が描かれているのです。
文法・表現
- 対照的
- 形容動詞。「對照性的・形成對比的」。
- ~に対し
- 「相對於~」。
- ~通り
- 「正如~那樣」。
- 名もない
- 「無名的」。
- 不名誉な
- 形容動詞。「不名譽的」。
- ~間際まで
- 「直到~的瞬間為止」。
- 人間的な
- 形容動詞。「富有人情味的・有人性的」。
中文翻譯
義仲與兼平兩人的最期是對照性的。相對於兼平自盡,義仲一如兼平所擔心的,被無名的武將討取,遭遇了不名譽的戰死。然而義仲到死的瞬間都還在思念兼平。這裡描繪的是溫柔而富有人情味的義仲。
義仲の最期 ……… 深い田にはまって動けなくなり、兼平を心配して振り返ったその瞬間に討たれた。望んでいた自害はできなかった。
兼平の最期 ……… 潔く、衝撃的な自害。
文法・表現
- ~にはまって
- 「陷入~」。
- 瞬間
- 「瞬間」。
- 望んでいた
- 「曾希望的」。「望む」のて形+いた。
- 潔く
- 形容詞「潔し」的連用形。「乾脆・果斷地」。
- 衝撃的
- 形容動詞。「衝擊性的」。
中文翻譯
義仲的最期……陷入深田無法動彈,因擔心兼平而回頭的瞬間被討取。所希望的自盡未能達成。 兼平的最期……乾脆地、衝擊性地自盡。
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木曽の最期 その③
● 義仲の最期と兼平の自害
文法・表現
- ~にはまって
- 「陷入~」。
- 瞬間
- 「瞬間」。
- 望んでいた
- 「曾希望的」。「望む」のて形+いた。
- 潔く
- 形容詞「潔し」的連用形。「乾脆・果斷地」。
- 衝撃的
- 形容動詞。「衝擊性的」。
中文翻譯
義仲的最期……陷入深田無法動彈,因擔心兼平而回頭的瞬間被討取。所希望的自盡未能達成。 兼平的最期……乾脆地、衝擊性地自盡。
木曽殿はただ
一騎、
粟津の
松原へ
駆け給ふが、
正月二十一日、
入相ばかりのことなるに、
薄氷は
張つたりけり、
深田ありとも
知らずして、
馬をざつと
うち入れたれば、
馬の頭も
見えざりけり。あふれどもあふれども、
打てども
打てども
働かず。
今井が
行方のおぼつかなさに、
振り仰ぎ給へる
内甲を、
三浦の
石田の
次郎為久、
追つかかつてよつぴいてひやうふつと
射る。
痛手なれば、
真向を
馬の頭に
当てて、うつぶし
給へるところに、
石田が
郎等二人落ち合ふて、つひに
木曽殿の
首をば
取つてんげり。
太刀の
先に
貫き、
高くさし上げ、
大音声をあげて、
「この
日ごろ
日本国に
聞こえさせ
給ひつる
木曽殿をば、
三浦の
石田次郎為久が
討ち奉ったるぞや。」
と
名のりければ、
今井四郎いくさしけるが、これを
聞き、
「
今は
誰をかばはんとてか、いくさをもすべき。これを
見給へ、
日本一の
剛の
者の
自害する
手本。」
とて、
太刀の
先を
口に
含み、
馬より
逆さまに
飛び落ち、
貫かつてぞ
失せにける。さてこそ
粟津のいくさはなかりけれ。
【巻第九】
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【 現代語訳 】
木曽殿(義仲)はただ一騎で、粟津の松原へ向かって馬を走らせなされるが、正月二十一日、夕暮れの頃のことである上に、薄い氷が張っていて、(その下に)深い田があることも知らないで、馬をざっと勢いよく乗り入れてしまったので、馬の頭も見えなくなった。(鐙で馬の腹を蹴って)あおってもあおっても、(鞭で)打っても打っても動かない。今井(兼平)の行方が気になって、振り仰ぎなされた(義仲の)甲の内側を、三浦次郎為久が、追いついて(弓を)よく引いて、ひょうふっと射る。重傷なので、甲の正面を馬の頭に当てて、うつ伏せになられたところに、石田の家来二人が来合わせて、とうとう木曽殿の首を取ってしまった。(その首を)太刀の先に貫いて、高く差し上げ、大声をあげて、
「この常々日本国に評判でいらっしゃった木曽殿を、三浦次郎為久が討ち取り申し上げたぞ。」
と名乗ったので、今井四郎(兼平)は戦っていたが、これを聞いて、
「今は誰をかばおうとして、いくさをしようか。これをご覧なさい、東国のかたがた、日本一の武勇の者が自害する手本だ。」
と言って、太刀の先を口に含み、馬から逆さまに飛び落ち、貫かれて死んでしまった。こうして粟津の戦いは終わった。
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