【二】 木曽の最期
学習のねらい
『平家物語』「木曽の最期」の二回目です。前回は、木曽義仲と今井四郎兼平とたった二騎になってしまい、義仲は兼平に促されて、自害をするために粟津の松原に向かった、というところまでを読みました。今回は、その義仲と別れた後の、今井四郎兼平の戦いの場面になります。迫力ある描写を読み味わいましょう。
文法・表現
- ~回目
- 「第~次」。回數的數量詞用法。
- ~に促されて
- 「在~的催促下」。受身形+て形,表示原因。
- ~というところまで
- 「直到~為止」。表示前述讀到的範圍。
- 読み味わう
- 複合動詞。「閱讀並品味」。
中文翻譯
《平家物語》「木曾的最期」的第二回。前回讀到了木曾義仲與今井四郎兼平只剩兩騎,義仲在兼平的催促下,為了自盡而前往粟津的松原為止。本回是與義仲分別之後,今井四郎兼平戰鬥的場面。讓我們閱讀並品味充滿魄力的描寫。
● 学習のポイント ●
〈一〉 今井四郎兼平の武具・馬具について知る
〈二〉 今井四郎兼平の最後の闘いの状況を理解する
〈三〉 今井四郎兼平の心情を考える
■ 今井四郎兼平の武具・馬具について知る
『平家物語』には、武士が身に付ける武具、馬に付ける馬具が多く出て来ますので、整理しておきましょう。
文法・表現
- 身に付ける
- 慣用句。「穿戴在身上」。
- ~が多く出て来ます
- 「經常出現」。「多く」修飾動詞,表示頻率。
- ~ておきましょう
- 「先~吧」。「ておく」表示事前準備,加「ましょう」表示勸誘。
中文翻譯
《平家物語》中經常出現武士身上配戴的武具、馬上配戴的馬具,所以先整理一下。
● 武具 鎧 / 甲 / 弓 ・ 矢 / 太刀
● 馬具 轡 / 手綱 / 鐙
■ 今井四郎兼平の最後の闘いの状況を理解する
兼平の戦闘の場面が詳細に描かれているので、その経過について理解しましょう。
文法・表現
- 詳細に
- 副詞。「詳細地」。
- 描かれている
- 「描く」的受身形+ている。表示「被描寫著的」狀態。
- ~について
- 「關於~」。
中文翻譯
兼平的戰鬥場面被詳細地描寫了,所以讓我們理解其經過。
◎ 義仲と兼平の関係
中原兼遠(義仲のめのと) → 信濃の国の木曽で義仲を育てた
↓
兼遠の子ども(義仲のめのと子) = 樋口次郎兼光 ・ 今井四郎兼平 ・ 巴
文法・表現
- めのと(乳母)
- 「乳母」。古語,指代替母親餵養的女性。
- めのと子(乳母子)
- 「乳兄弟」。乳母所生的孩子,與被乳養者一同長大。
- 育てた
- 「育てる」的過去形。「養育了」。
中文翻譯
中原兼遠(義仲的乳母)→ 在信濃國的木曾養育了義仲。↓兼遠的子女(義仲的乳兄弟)=樋口次郎兼光・今井四郎兼平・巴。
◎ 兼平の戦闘の経過
〈兼平〉 名乗り 「日ごろは音にも聞きつらん……兼平討つて見参に入れよ。」
↓
八本の矢を射る → 敵八騎を射落とす。
文法・表現
- 名乗り
- 名詞。「自報姓名」。武士在戰場上報出身分姓名的習俗。
- 見参に入れよ
- 古語。「拜見・呈獻」。「見参」是見面・拜見,「に入れる」是使對方看到。
- 射落とす
- 複合動詞。「射落」。用箭射使對方落馬。
中文翻譯
〈兼平〉自報姓名 「平日想必只聽過名聲……來討取兼平拜見吧。」↓射出八支箭 → 射落敵方八騎。
− 185 −
↓
太刀で切って回り、敵を大勢斬り倒す。
↓
〈敵〉 兼平に正面から向かえない。
↓
兼平を囲って、矢を雨のように射る。
↓
〈兼平〉 よい鎧を着ていたため、隙間を射られることもなく、負傷しなかった。
文法・表現
- 切って回る
- 複合動詞。「斬殺四方・揮刀亂砍」。
- 正面から
- 「從正面」。
- ~を囲って
- 「包圍~」。
- 雨のように
- 「如雨一般」。比喻表現。
- ~こともなく
- 「也沒有~」。表示同時的否定。
中文翻譯
↓用太刀斬殺四方,砍倒大量敵人。↓〈敵〉無法從正面與兼平對峙。↓包圍兼平,如雨般射箭。↓〈兼平〉因為穿著優良的鎧甲,沒有被射中縫隙之處,沒有負傷。
【 重要語句 】
● さんざんに …… あちらこちらに。
● やにはに ……… 一気に、ただちに、たちどころに。
● あまた …………… たくさん。
■ 今井四郎兼平の心情を考える
兼平はどのような思いで戦っていたのでしょうか。兼平のこの時の最大の願いは、何であったのでしょうか。それは、義仲の名誉を守ること、つまり、義仲が敵に討ち取られずに、自害を遂げることです。
文法・表現
- どのような
- 連體詞。「怎樣的」。
- ~のでしょうか
- 「~呢」。婉曲的疑問表現。
- つまり
- 接續詞。「也就是說・換言之」。
- ~ずに
- 「不~而」。打消的中止形。
- 遂げる
- 動詞。「達成・完成」。
中文翻譯
兼平是懷著怎樣的心情戰鬥的呢?兼平此時最大的願望是什麼呢?那就是守護義仲的名譽,也就是讓義仲不被敵人討取,能完成自盡。
兼平は、勝てないことは分かっていても、何とか義仲が自害するまでは敵を押さえ込もうと、孤軍奮闘したのです。
文法・表現
- ~ても
- 「即使~也」。表示逆接。
- 何とか
- 副詞。「想方設法・好歹」。
- ~ようと
- 「想要~」。意志形+と,表示意圖。
- 押さえ込もう
- 「押さえ込む」的意志形。「壓制住・按住」。
- 孤軍奮闘
- 四字熟語。「孤軍奮戰」。
中文翻譯
兼平雖然知道無法取勝,但仍想方設法在義仲自盡之前壓制住敵人,孤軍奮戰。
− 186 −
木曽の最期 その②
● 兼平の最後の戦い
今井四郎ただ一騎、五十騎ばかりが中へ駆け入り、鐙ふんばり立ち上がり、大音声あげて名のりけるは、
「日ごろは音にも聞きつらん、今は目にも見給へ。木曽殿の御めのと子、今井四郎兼平、生年三十三にまかりなる。さる者ありとは、鎌倉殿までも知ろしめされたるらんぞ。兼平討つて見参に入れよ。」
とて、射残したる八筋の矢を、さしつめ引きつめ、さんざんに射る。死生は知らず、やにはに、敵八騎射落とす。その後打ち物抜いて、あれに馳せ合ひこれに馳せ合ひ、切つて回るに、面を合はする者ぞなき。分捕りあまたしたりけり。ただ、
「射取れや。」
とて、中に取り込め、雨の降るやうに射けれども、鎧よければ裏かかず、あき間を射ねば手も負はず。
【 現代語訳 】
今井四郎はただ一騎で、五十騎ほどの中へ突進し、鐙を踏んばって立ち上がり、大音声をあげて名乗ったことには、
「いつもはうわさで聞いているだろう、今は目でもご覧なされ。(自分は)木曽殿の御めのと子、今井四郎兼平、生年三十三になり申す。そのような(兼平というたいした)者がいるとは鎌倉殿(源頼朝)までもご存じでいらっしゃるだろうよ。兼平を討ち取って(頼朝に)ご覧に入れよ。」
と言って、射残してあった八本の矢を、(弓に)つがえては引き、あちらこちらに射る。(矢で射られた者が)死んだか、まだ生きているかは分からないが、たちまち、敵を八騎射落とす。その後は太刀を抜いて、あちらに馬を走らせて戦い、こちらに馬を走らせて戦い、切って回るが、面と向かって相手になる者はいない。敵をたくさん殺傷した。(敵は)ただ、
「射殺せよ。」
と言って、(兼平を)中に取り囲んで、雨が降るように(矢を)射たが、鎧がよいので裏まで通らず、鎧や甲の隙間を射ないから(兼平は)傷も受けない。
− 187 −
このページの文書・画像の無断転載及び商用利用を固く禁じます。