言語げんご文化ぶんか #57-59

古文こぶん

古文こぶん 古人いにしえびとかた物語ものがたり

平家へいけ物語ものがたり 木曽きそ最期さいご全三回ぜんさんかい=①】

講師こうし 山本やまもと 章博あきひろ

いち木曽きそ最期さいご

学習がくしゅうのねらい

平家へいけ物語ものがたり』「木曽きそ最期さいご」を三回さんかいけてんでいきます。今回こんかいはまず、「木曽きそ最期さいご」の場面ばめんいた経緯けいい背景はいけい理解りかいします。そのうえで、主人公しゅじんこう木曽きそ義仲よしなかみなもとの義仲よしなか)と家来けらい今井いまい四郎しろう兼平かねひら会話かいわのシーンを読解どっかいします。想像力そうぞうりょくはたらかせて、ふた心情しんじょうせまってみましょう。

文法・表現

~に分けて
「分為~」。動詞「分ける」的て形,表示方式・手段。
~に至る
「到達~」。表示經過某個過程之後到達某個地點或階段。
その上で
「在此基礎上」。表示在前述事項完成之後再進行下一步。
~てみましょう
「試著~吧」。「て+みる」表示嘗試,加「ましょう」表示勸誘。

中文翻譯

將《平家物語》「木曾的最期」分為三回來閱讀。本回首先理解到達「木曾的最期」場面為止的經過與背景。在此基礎上,閱讀主角木曾義仲(源義仲)與家臣今井四郎兼平的對話場面。讓我們發揮想像力,貼近兩人的心情。

学習がくしゅうのポイント ●

いち場面ばめん背景はいけい理解りかいする
木曽きそ義仲よしなか今井いまい四郎しろう兼平かねひら会話かいわ理解りかいする
さん木曽きそ義仲よしなか今井いまい四郎しろう兼平かねひら心情しんじょうかんがえる

場面ばめん背景はいけい理解りかいする

◎ 「木曽きそ最期さいご」の場面ばめんまでの義仲よしなかうご

信濃しなののくに現在げんざい長野ながのけん)の木曽きそ挙兵きょへいし、北陸ほくりく地方ちほうすすむ。
 ↓
倶利伽羅くりからとうげたたかいで平家へいけぐん勝利しょうりし、京都きょうとる。
 ↓
京都きょうと平家へいけは、みやこてて西にしげる。
 ↓
義仲よしなかは、京都きょうと横暴おうぼういをかえし、みなもとの頼朝よりともてきにまわす。
 ↓
頼朝よりともは、義仲よしなか追討ついとうのために、鎌倉かまくらからぐんおくる。
 ↓
義仲よしなかぐんは、宇治うじ勢田せたたたかいで頼朝よりともぐん敗北はいぼくし、義仲よしなか六条ろくじょう河原かわらたたかいでやぶれる。
 ↓
義仲よしなかは、勢田せたかってげていたところ、勢田せたたたかいでやぶれた今井いまい四郎しろう兼平かねひらと、打出うちではま再会さいかいする。
 ↓
義仲よしなかぐん三百さんびゃくあまりがあつまって、最後さいごたたかいをはじめる。
 ↓
六千ろくせん相手あいてたいして、義仲よしなかぐん三百さんびゃくは、たちまち五十ごじゅうになり、になり、ついに義仲よしなか兼平かねひらになってしまう。

文法・表現

挙兵する
「起兵」。組織軍隊起事的動作。
~を捨てて
「拋棄~而」。動詞「捨てる」的て形,表示動作的方式。
敵にまわす
「與~為敵」。慣用表現,將某人變成敵人。
追討
「追討」。追擊並討伐叛亂者的軍事行動。
たちまち
副詞。「轉眼間・瞬間」。

中文翻譯

在信濃國(現在的長野縣)的木曾起兵,進軍北陸地方。↓在俱利伽羅峠之戰中戰勝平家軍,攻入京都。↓京都的平家拋棄都城向西逃亡。↓義仲在京都反覆做出橫暴的行為,與源賴朝為敵。↓賴朝為了追討義仲,從鎌倉派遣軍隊。↓義仲軍在宇治與勢田之戰中敗於賴朝軍,義仲也在六條河原之戰中戰敗。↓義仲正向勢田方向逃走時,在打出之濱與在勢田之戰中戰敗的今井四郎兼平再會。↓義仲軍三百餘騎集合,開始最後一戰。↓對於對手的六千騎,義仲軍三百騎轉眼間變成五十騎、變成五騎,最終只剩義仲與兼平兩騎。

木曽きそ義仲よしなか今井いまい四郎しろう兼平かねひら会話かいわ理解りかいする

義仲よしなか兼平かねひらと、たったになってしまったところで、義仲よしなかつかれをせます。兼平かねひらは、なにとか義仲よしなかをはげましますが、これ以上いじょうたたかうことは義仲よしなか不名誉ふめいよ戦死せんしげることになるとかんがえ、義仲よしなか自害じがいすることをすすめます。そこへ五十ごじゅうほどのあらたなてきあらわれますが、義仲よしなか兼平かねひらとともににたいと、最後さいごまでたたかうことをのぞみます。しかし、兼平かねひら再度さいど自害じがいするように義仲よしなかつようながします。

文法・表現

たった
副詞。「僅僅・只有」。強調數量之少。
~てしまう
表示動作的完了,常含遺憾・無奈的語感。
~ところで
「在~之時」。表示時間點。
何とか
副詞。「想方設法・好歹」。
~ことになる
「將會~・變成~」。表示結果性的判斷。
再度
副詞。「再次」。漢語副詞。

中文翻譯

在義仲與兼平只剩兩騎之時,義仲顯露出疲憊。兼平想方設法激勵義仲,但他認為再戰下去將使義仲遭遇不名譽的戰死,於是勸義仲自盡。此時又出現了大約五十騎的新敵人,義仲希望與兼平一同赴死,望戰至最後。然而兼平再度強烈催促義仲自盡。

重要じゅうよう語句ごく

● のたまふ ……… 尊敬そんけい。おっしゃる。

木曽きそ義仲よしなか今井いまい四郎しろう兼平かねひら心情しんじょうかんがえる

義仲よしなか兼平かねひら会話かいわをもう一度いちどじっくりみながら、それぞれの心情しんじょう想像そうぞうしてみましょう。

文法・表現

もう一度
「再一次」。
じっくり
副詞。「仔細地・慢慢地」。
~ながら
「一邊~一邊~」。表示動作的同時並行。
それぞれ
「各自」。

中文翻譯

讓我們再一次仔細閱讀義仲與兼平的對話,想像各自的心情。

義仲よしなか兼平かねひら会話かいわ心情しんじょうなが

義仲よしなかごろはなにともおぼえぬよろいが、今日きょうおもうなつたるぞや。」
 ↓
つかれ、弱気よわき
 ↓
兼平かねひら臆病おくびょう」であってはならない。わたしてきふせぐから粟津あわづ松原まつばら自害じがいなされ。
 ↓
義仲よしなか最後さいごまでまもりたい。立派りっぱ最期さいごげてほしい。
 ↓
義仲よしなか所々ところどころたれんよりも、ひとところでこそにをもせめ。」
 ↓
兼平かねひら一緒いっしょにたい。
 ↓
兼平かねひら 再度さいど自害じがいするようにうながす。
 ↓
義仲よしなかよわっているのでつことはできない。せめて名誉めいよある戦死せんしをしてほしい。

文法・表現

おぼえぬ
古典文法。「おぼゆ」(感じる)的未然形+打消助動詞「ず」的連體形「ぬ」。「感覺不到的」。
~なつたるぞや
古典文法。「なる」的連用形音便+完了助動詞「たり」+強調助詞「ぞ」+詠歎助詞「や」。
~ではならない
「不可以~・不能~」。表示禁止。
~なされ
尊敬語的命令形。「請您~」。
せめて
副詞。「至少・哪怕」。

中文翻譯

義仲:「平日不覺得怎樣的鎧甲,今天卻變重了。」↓疲憊、示弱。↓兼平:不可「怯懦」。我來抵擋敵人,請您在粟津的松原自盡。↓想守護義仲到最後。希望他達成體面的最期。↓義仲:「與其在各處被討死,不如在同一處戰死吧。」↓想與兼平一起死。↓兼平:再次催促自盡。↓義仲已虛弱,無法取勝。至少希望他能有名譽地戰死。

木曽きそ最期さいご   その①  

義仲よしなか兼平かねひらわか

今井いまい四郎しろう木曽きそ殿どの主従しゅうじゅうになつてのたまひけるは、
ごろはなにともおぼえぬよろひが、今日きょうおもうなつたるぞや。」
今井いまい四郎しろう申しもうしけるは、
おんもいまだ疲れつかれさせたまはず。おんうま弱りよわりさうらはず。なにによつてか、一領いちりょう御着背長おんきせながおもうはおぼさうふべき。それはかたおんせいさうらはねば、臆病おくびょうでこそさはおぼさうへ。兼平かねひらいちにんさうらふとも、武者むしゃせんおぼせ。ななさうらへば、しばらくふせつかまつらん。あれに見えみえさうらふ、粟津あはづ松原まつばら申すもうす、あのまつなかおん自害じがいさうへ。」
とて、つてくほどに、また、新手あらて武者むしゃ五十ごじゅうばかり出で来いでくたり。
きみはあの松原まつばら入らいらたまへ。兼平かねひらはこのかたきふせさうらはん。」
申しもうしければ、木曽きそ殿どののたまひけるは、
義仲よしなかみやこにていかにもなるべかりつるが、これまで逃れのがれるは、なんぢといつしょなんとおもふためなり。所々ところどころたれんよりも、ひとところでこそにをもせめ。」
とて、うまはな並べならべ駆けかけんとしたまへば、今井いまい四郎しろううまより飛び降りとびおりしゅううまくち取りとりついで申しもうしけるは、
弓矢ゆみや取りとりは、としごろごろいかなる高名かうみやうさうらへども、最期さいごとき不覚ふかくしつれば、長きながききずにてさうらふなり。しん疲れつかれさせたまひてさうらふ。続くつづくせいさうらはず。かたき押し隔ておしへだてられ、いふかひなきいうかいなきひと郎等らうどう組み落とさくみおとされさせたまひて、たれさせたまひなば、『さばかり日本につぽんごく聞こえきこえさせたまひつる木曽きそ殿どのをば、それがしが郎等らうどう討ちうち奉ったてまつったる。』なんど申さもうさんことこそ口惜くちをしうさうらへ。ただあの松原まつばら入らいらたまへ。」
申しもうしければ、木曽きそ
「さらば。」
とて、粟津あわづ松原まつばらへぞ駆けかけたまふ。

現代げんだい語訳ごやく

今井いまい四郎しろう兼平かねひら)と、木曽きそ殿どの義仲よしなか)と、主従しゅうじゅうになって(木曽きそ殿どのが)おっしゃったことには、
「いつもはなにともおもわれないよろいが、今日きょうおもくなったぞ。」
今井いまい四郎しろうが、申し上げもうしあげたことには、
「おからだもまだお疲れつかれになっていらっしゃいません。おうまよわっていません。どうして、一着いっちゃく御着背長おんきせながおもくおおもいになるはずがございましょうか。それは味方みかたにご軍勢ぐんぜいがございませんので、臆病おくびょうしんからそのようにおおもいになるのです。兼平かねひら一人ひとりがおりますに過ぎすぎませんが、せん武者むしゃとお思いおもいください。(残りのこりの)ななはちほんありますので、しばらくふせをいたしましょう。あそこに見えています(松原まつばらを)、粟津あわづ松原まつばら申し上げもうしあげます。あの松原まつばらなか自害じがいなさいませ。」
言っいって、(うましりに)むち打っうっ進んすすんでいくうちに、また、新手あらて武者むしゃ五十ごじゅうほどてきた。
殿とのはあの松原まつばらへお入りはいりください。兼平かねひらはこのてきふせぎましょう。」
申し上げもうしあげたところ、木曽きそ殿どのがおっしゃったことには、
義仲よしなかは、みやこ最期さいご遂げるとげるつもりであったが、ここまで逃れのがれてきたのは、おまえとおなところのうとおもうためである。別々べつべつところたれるようなことよりも、おなところにをもしよう。」
言っいって、うまはな並べならべて(てきなかうまを)駆け入れかけいれようとなさるので、今井いまい四郎しろうは、うまから飛び降りとびおり主君しゅくんうまくち取りとりついでお申し上げもうしあげたことには、
武士ぶしというものは、長いながい年月ねんげつどのような武功ぶこうがございましても、最期さいごとき不覚ふかくをとってしまうと、永久えいきゅう不名誉ふめいよとなるものでございます。あなたは疲れつかれていらっしゃいます。あと続くつづく軍勢ぐんぜいはございません。かたき押し離さおしはなされて、取るとる足りたりない無名むめい武士ぶし家来けらい組み落とさくみおとされなさって、おたれになってしまったならば、(もない家来けらいが)『あれほど日本につぽんごく評判ひょうばんでいらしゃった木曽きそ殿どのを、だれそれの家来けらい討ちうち申し上げもうしあげた。』などと申し上げもうしあげるとしたら、それこそ残念ざんねんでございます。ただあの松原まつばらへお入りはいりください。」
申し上げもうしあげたので、木曽きそ殿どのは、
「そういうことならば(しかたない)。」
言っいって、粟津あわづ松原まつばらうま走らはしらせなさる。

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