言語文化 #52・53
講師 吉田 茂
学習のねらい
長年思い続けていた女を盗み出し、逃避行を続ける男の心情を読み取ります。また、「白玉か」の歌に込められた男の心情を理解しましょう。さらに、絵巻の絵を解釈することによって、この男と女の恋の物語を振り返ります。
讀取多年思念的女子被盜出後、繼續逃亡的男人之心情。並且,理解「白玉か」這首歌中所寄寓的男人之心情。再藉由解釋繪卷之繪,回顧這男女的戀情之物語。
●学習のポイント●
〈一〉男と女の逃避行を読み取る
〈二〉男の心情の推移を追跡し、歌に託された男の思いを理解する
〈三〉絵巻を確認しながら、この物語を振り返る
〈一〉讀取男女的逃亡 〈二〉追蹤男人心情的推移,理解寄寓於歌中的男人之想法 〈三〉一邊確認繪卷一邊回顧此物語
長年求婚し続けた女をやっとのことで盗み出した男は、闇夜の中、逃避行を続けます。男に背負われた女は、キラキラッと光って見えた草の上においた露を、「あれは何ですか」と尋ねますが、先を急ぐ男には答える余裕がありません。
多年求婚不已的女子,男人終於把她偷了出來,在暗夜中繼續逃亡。被男人背著的女子,看見閃閃發光的、落在草上的露,「那是什麼呢?」這樣問,但急著趕路的男人沒有餘裕回答。
【重要語句】
● え(副詞)…(下に打消の語をともない)…できない。
● 得(ア行下二段動詞)…手に入れる。結婚する。
● よばふ(ハ行四段動詞)…求婚する。呼び続ける。
● 率る(ワ行上一段動詞)…引き連れる。ともなう。
●え(副詞)……(下接打消之語)……不能。 ●得(ア行下二段動詞)……得到、結婚。 ●よばふ(ハ行四段動詞)……求婚、不停地呼喚。 ●率る(ワ行上一段動詞)……帶領、伴隨。
【読解のポイント】
① 同格の格助詞「の」
● 「の」の前の語句と後の語句とが、一つの文の中で同じ価値を持つ語として、並んでいることを同格という。
● 一般に「で」と訳し、後の語句の下に体言(名詞)がない場合は、前の語句の体言を補って訳す。
① 同格的格助詞「の」 ●「の」前後的語句,在一個句子中作為具有同樣價值的詞並列著——這稱為同格。 ●一般譯為「で」,當後一個語句下沒有體言(名詞)時,補上前一語句的體言來翻譯。 女の え得まじかりけるを = 女で、え得まじかりける(女)を え……まじかり(打消推量助動詞「まじ」的連用形) →不可能 (意義……是個無法得到的女子)
女の え得まじかりけるを = 女で、え得まじかりける(女)を
え …… まじかり(打消推量の助動詞「まじ」の連用形)
→ 不可能
(意味 … 女で、手に入れられそうもなかった女を)
② この女はどのような境遇の人物だったか
手に入れられそうもなかった女性。露も知らない女性。
→ 身分の高い家柄の姫君で、家の中で大切に育てられている女性。
② 這個女子是怎樣境遇的人物 無法得到的女性。連露都不知的女性。 →身分高的家世的姬君、在家中被珍貴地養育的女性。
深夜、激しい雷雨にみまわれた男は、女を荒れ果てた蔵の奥に入れ、夜を明かそうとします。ところが、鬼が女を一口に食ってしまったのです。恋する女を失った男は、どうしようもなく、悲嘆と絶望に満た歌を詠むしかなかったのです。
深夜,遭逢激烈雷雨的男人,將女子藏入荒廢之倉的內側,想等到天明。然而,鬼一口就把女子吃掉了。失去所愛女子的男人,無可奈何,只能詠出充滿悲嘆與絕望的歌。
【重要語句】
● あばらなり(形容動詞)……荒れ果てている。
● あなや(感動詞)……ああ。あれぇ。
● やうやう(副詞)……しだいに。
●あばらなり(形容動詞)……荒廢。 ●あなや(感動詞)……啊啊、哎呀。 ●やうやう(副詞)……漸漸。
【読解のポイント】
① 「なむ」の識別
未然形 + 「なむ」(願望の終助詞)他に対しての願望(……してほしい)
連用形 + 「なむ」〈完了(強意)の助動詞の未然形「な」に推量の助動詞「む」の終止形「む」が付いたもの〉(きっと……だろう)
連体形 + 「なむ」(強意の係助詞)
① 「なむ」的辨別 未然形+「なむ」(願望的終助詞):對他人的願望(請……) 連用形+「なむ」〈完了(強意)助動詞的未然形「な」加上推量助動詞「む」的終止形「む」〉(一定……吧) 連體形+「なむ」(強意的係助詞) ② 「露」→易逝之物、易逝生命的比喻。 「消え」是「露」的緣語。 ③ 「まし」是反實假想的助動詞。在此表現實際上無法實現之希望的意義。
② 「露」 → はかないもの、はかない命の喩え。
「消え」は「露」の縁語。
③ 「まし」は反実仮想の助動詞。ここでは、実現不可能な希望の意を表す。
「伊勢物語絵巻」(模本)
絵巻などの絵の意味を解釈することを「絵解き」といいます。これを行いながら、この恋の物語を振り返っていきましょう。
解釋繪卷等之繪的意義稱為「絵解き」。一邊進行此舉,一邊回顧這個戀情的物語吧。
【絵巻の見方】
● 右から左へと見ていきます。
● 「異時同図」という手法で描かれていますので、同じ人物が何時も描かれますが、別の人物ではありません。
● あくまでも、物語の一つの解釈であることを踏まえ、見てください。
●從右往左看。 ●以「異時同圖」這種手法描繪,所以同一人物會被多次描繪,但並非別人。 ●請記得,這只是物語的一種解釋,再看吧。
学習のねらい
実は「芥川」には続きがあるのです。物語の続きの内容を理解し、前回読んだ部分と、続きを含む全体を読んでみて、どのような違いがあるか考えてみましょう。また、「芥川」における和歌の役割を理解します。さらに、『伊勢物語』が後世の文学や芸能にどのような影響を及ぼしたか、その一端を理解しましょう。
其實「芥川」是有後續的。理解物語後續的內容,與上回讀過的部分對比、再讀含後續的整體,思考有怎樣的差異吧。並且,理解「芥川」中和歌的角色。再者,理解《伊勢物語》對後世文學或藝能帶來了怎樣的影響的一端。
●学習のポイント●
〈一〉物語の続きの内容を確認する
〈二〉この物語における和歌の役割を理解する
〈三〉『伊勢物語』の後世への影響の一端を知る
〈一〉確認物語後續的內容 〈二〉理解此物語中和歌的角色 〈三〉了解《伊勢物語》對後世影響的一端
女はのち「二条の后」と呼ばれる、藤原高子であることが示されます。男に盗み出されて、女が泣いているところを、兄の基経・国経によって救い出されたのを「鬼に食われた」と表していること、高子が後宮に入る前のことだと真相が明かされています。続きの部分の有無によって、物語がどのように違ってくるか、考えましょう。
之後揭示——女子是被稱為「二条の后」的藤原高子。她被男人盜出後正在哭泣時,被兄長基經・国經救出——這件事被表為「被鬼吃了」;又揭示這是高子入後宮之前的事的真相。讓我們思考——有沒有後續部分,物語會如何不同。
● 前半のみ = 昔話・説話的な物語 ……絵巻も同様
● 全体 = 政治的・歴史的な物語
●僅前半 = 昔話・說話般的物語 ……繪卷亦同 ●整體 = 政治的・歷史的物語
女を失った男の悲嘆や絶望感が凝縮されて表現されているのが「白玉か」の和歌です。このように、和歌には人間の感情を凝縮して、三十一音で表現して見せる力があることを理解しましょう。
把失去女子之男人的悲嘆與絕望凝縮表現出來的,就是「白玉か」這首和歌。如此,請理解——和歌有將人類的感情凝縮、以三十一音表現出來的力量。
● 神話時代、ヤマタノオロチの退治で有名なスサノオノミコトが出雲で詠んだ、次の歌が和歌の起源とされています。
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を
(盛んに雲がわき立つ出雲の幾重にもめぐらした垣根、妻を籠もらせるために八重垣を造る、その美しい八重垣を。)
●神話時代,以擊退八岐大蛇而有名的須佐之男命在出雲所詠的下面這首歌,被視為和歌的起源。 「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」 (雲盛起立、出雲幾重環繞的籬笆,為讓妻子棲身而造八重籬,那美麗的八重籬啊。)
● 『万葉集』が編纂されたのが八世紀の半ばのことですから、それから数えても、和歌には千二百年以上の歴史があります。
●《萬葉集》是八世紀中葉編纂的,所以從那時算起,和歌也有一千二百年以上的歷史。
● ある語源説に、うた(歌)と、うった(訴)えるの「う(っ)た」がもともと同じで、心情を他者に対して訴えるものが「歌」という考えがあります。
●某種語源說中,「うた(歌)」與「うったえる(訴)」的「う(っ)た」本來相同,將心情訴於他人之物就是「歌」——這樣的看法。
『伊勢物語』は作品として広く読まれたばかりでなく、いろいろな分野に影響を及ぼしました。ここでは、特に文学や芸能に限定してお話ししますので、影響の一端を理解しましょう。
《伊勢物語》不僅作為作品被廣泛閱讀,也對各種領域帶來影響。在此特別限定於文學與藝能來說,請理解其影響的一端吧。
● 平安時代 …… 『源氏物語』やそれ以後の物語に影響を与えました。『源氏物語』の主人公である光源氏の人物造形にも何らかの影響があるど思われます。
● 鎌倉時代 …… 『伊勢物語』が歌作りの教科書として用いられました。『伊勢物語』の注釈書も書かれるようになりました。
● 室町時代 …… 能を大成した世阿弥が「雲林院」「井筒」など、『伊勢物語』から材を得て、能の曲を創作しました。「雲林院」は古い作品を世阿弥が改作したものです。また、のち再度の改作がなされ、現在の曲になっています。「井筒」はたいへん人気のある能です。
● 江戸時代 …… 木版印刷の普及で、絵入りの『伊勢物語』が出版され、多くの人々が『伊勢物語』を読み、楽しみました。『仁勢物語』(作者不詳、一六四〇年までに刊行された)というパロディまで登場します。
● 現代 ……… 例えば、俵万智の『恋する伊勢物語』、高樹のぶ子の『小説 伊勢物語 業平』などがあります。
●平安時代……對《源氏物語》及其後的物語帶來影響。《源氏物語》主角光源氏的人物造形上,似乎也有某種影響。 ●鎌倉時代……《伊勢物語》被作為作歌教科書使用。也開始有人撰寫《伊勢物語》的註釋書。 ●室町時代……集大成能劇的世阿彌取材自《伊勢物語》創作了「雲林院」「井筒」等能曲。「雲林院」是世阿彌改作古老作品而成。又之後再次改作,成為現在的曲。「井筒」是非常受歡迎的能。 ●江戶時代……隨木版印刷的普及,附圖的《伊勢物語》出版,許多人讀並欣賞《伊勢物語》。甚至出現了《仁勢物語》(作者不詳,至一六四〇年前刊行)這樣的諧仿之作。 ●現代………例如有俵万智的《戀する伊勢物語》、高樹のぶ子的《小說 伊勢物語 業平》等。
機会があれば、『伊勢物語』全文を、現代語でもよいので読んでみてください。「昔、男」の新しい一面を見出すことができるかもしれません。また、古典芸能の一つである能にも興味を持っていただきたいど思います。実際に舞台を見るのが一番よいのですが、テレビなどでも放送されることもありますし、さまざまな映像資料もありますので、それらを活用して、御覧になるのもよいど思います。
如有機會,請務必讀《伊勢物語》全文,現代語譯版也可以。或許能發現「昔、男」新的一面。另外也希望各位對作為古典藝能之一的能劇有興趣。最理想是實際看舞台,但有時電視也會轉播,也有各種影像資料,活用這些來觀看也不錯。
『伊勢物語』 豆知識
● 作者不詳。
● 十世紀初頭までには原型ができ、のちに増補や改訂がなされ、今の形になったのは、十世紀後半頃と考えられています。
● 「昔、男……」、「昔、男ありけり。……」と書き出されます。
● 男のモデルは、歌人で有名な在原業平(八二五 〜 八八〇)とされています。業平の祖父は平城天皇ですから、もとは皇族の家柄です。
● 成人の儀式をすませた男の恋の話から始まり、男が死ぬ直前、歌を詠む話までの、およそ百二十五段からなる歌物語です。いわば、男の一代記とも言える作品です。
● 『伊勢物語』では業平らしき男の恋の話が多く描かれますので、業平は平安時代一番のプレイボーイと言われることもあります。
●作者不詳。 ●十世紀初頭已有原型,後來經過增補與改訂,成為現在的形態大約是在十世紀後半。 ●以「昔、男……」、「昔、男ありけり。……」這樣的句式開頭。 ●男人的模型是以歌人聞名的在原業平(825 〜 880)。業平的祖父是平城天皇,原本就是皇族家世。 ●從成人之男的戀愛故事開始,到男人死前所詠歌的故事為止,由大約一百二十五段構成的歌物語。可以說是男人的一代記之作。 ●《伊勢物語》中有許多疑似業平之男的戀愛故事,所以業平有時被稱為平安時代第一的花花公子。
昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ川を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。行くさき多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、胡簶を負ひて戸口にをり、はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれども、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。
(古文原文)昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ川を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。行くさき多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、胡簶を負ひて戸口にをり、はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれども、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。
白玉か 何ぞと人の 問ひし時 露と答へて 消えなましものを
(和歌)白玉か 何ぞと人の 問ひし時 露と答へて 消えなましものを
【第六段】
【現代語訳】
昔、(ある)男がいた。女で、手に入れることができそうもなかった(高貴な)女を、長年にわたって求婚し続けてきたが、やっとのことで、(女を)盗み出して、たいそう暗い夜に逃げて来た。芥川という川のほとりを連れて行ったところ、草の上に置いている露を(見て、女は)、「あれは何ですか。」と男に尋ねた。これから行く道のりは遠く、(そのうえ)夜も更けてしまったので、鬼のいる所とも知らないで、そのうえ雷までたいそうひどく鳴り、雨もひどく降ってきたので、(男は)荒れ果てた蔵(の中)に、女を奥の方に押し入れて、男は弓を持ち、胡簶を背負って(蔵の)戸口にいて、早く夜が明けてほしいと思い続けながら(戸口に)座っていたところが、(蔵にいた)鬼が早くも一口で(女を)食ってしまった。「あれぇ。」と(女は)叫んだれども、雷の鳴る騒がしい音のために(男は悲鳴を)聞くことができなかった。しだいに夜も明けてきたので、(蔵の奥を)見と、連れてきた女もいない。(男は)足ずりをして泣くけれどもどうしようもない。
あの光るなは、真珠ですか、何ですかとあの人が尋ねた時に、あれは露ですよと答えて、(私も露のように)消えてしまえばよかったのに。
【現代語譯】 昔,有一個男人。一個無法得手的(高貴的)女子,他多年來不斷求婚,終於把(她)盜出,在非常暗的夜逃了出來。經過一個叫做芥川的河邊時,(女人見到)放在草上的露(問男人):「那是什麼?」往前的路還遠,夜又深了,(他)不知那是鬼所在之處,又雷響得很厲害、雨也下得很大,所以(男人)把女子推進荒廢的倉中、自己拿弓、背胡簶、坐在門口,一邊想著「快點天亮吧」一邊坐著,(藏裡的)鬼已經一口把(女人)吃了。「啊呀!」(女人)叫了,但因雷響太大、(男人)沒能聽到(女人的悲鳴)。漸漸天亮了,(看蔵內)一看,帶來的女子也不見了。(男人)跺腳哭也無用。 那發光的,是真珠嗎、是什麼呢——當她問我時,若回答「那是露」,自己也(像露一樣)消失了就好了啊。
これは、二条の后の、いとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御せうと堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下臈にて、内裏へ参り給ふに、いみじう泣く人あるを聞きつけて、とどめて取り返し給うてけり。それをかく鬼とは言ふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。
(參考 後續本文)これは、二条の后の、いとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御せうと堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下臈にて、内裏へ参り給ふに、いみじう泣く人あるを聞きつけて、とどめて取り返し給うてけり。それをかく鬼とは言ふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。
【現代語訳】
この話は、二条の后(藤原高子)が、いとこの女御(藤原明子)のお側に、お仕えするようなかたちで住んでいらっしゃったのを、高子は容貌がたいそう美しくていらっしゃったので、男が盗み出して背負って出て行ったのを、高子の兄である堀河大臣基経、長兄の大納言国経が、まだ位が低くて、宮中へ参上なさる時に、ひどく泣く人がいるのを聞きつけて、(その人が妹だと知って、その場に)とどめて取り返しなさったのである。それをこのように、「鬼」が食ったのだと言ったのである。まだ二条の后がとても若くて、普通の人(入内前で、臣下の身分)でいらっしゃった時のこととか言うことだ。
【現代語譯】 這個故事是——二条の后(藤原高子)作為侍奉表姊女御(藤原明子)的身分住在她身邊時,因高子容貌非常美麗,男人便把她偷盜出、背著逃出。高子的兄長堀河大臣基經、長兄大納言國經,當時還官位低下,正前往宮中參上時,聽到有人在大哭——(發現那人是妹妹,便把她)留下、取回了她。這件事便這樣被說成「鬼」吃了她。據說那是二条の后還很年輕、還是普通的人(入內前、臣下身分)時的事。
【注】
● 二条の后 ……… 藤原高子(八四二 〜 九一〇)。長良の娘。清和天皇の后となり、のちの陽成天皇を産む。
● いとこの女御 … 藤原明子(八二九 〜 九〇〇)。良房の娘。文徳天皇の后、のちの清和天皇を産む。
● 堀河の大臣 …… 藤原基経(八三六 〜 八九一)。高子の兄。良房の養子となる。
● 国経 …………… 藤原国経(八二八 〜 九〇八)。高子の長兄。
●二条の后……藤原高子(842 〜 910)。長良之女。成為清和天皇之後、生下後來的陽成天皇。 ●いとこの女御……藤原明子(829 〜 900)。良房之女。文德天皇之後、生下後來的清和天皇。 ●堀河の大臣……藤原基經(836 〜 891)。高子之兄。成為良房的養子。 ●國經……藤原國經(828 〜 908)。高子的長兄。
このページの文書・画像の無断転載及び商用利用を固く禁じます。
嚴禁未經授權轉載及商用本頁文件、圖像。