言語文化 #42-44
長嶋 有
講師 小山 志門
学習のねらい
今回の教材は「雨漏りの音」という小説です。新しい結婚生活を控えた「茜」という女性が登場します。「茜」は二人で暮らす家を探す中で、「雨漏り」の記憶を思い出し、そこから家族に対するある感覚を思い起していきます。今回は、冒頭の場面で、物語の設定を把握し、「茜」と夫になる「晴人」との関係を確認しましょう。また物語の中で「雨漏りの音」がどういう役割を果たすのか注目してみましょう。
本回的教材是「雨漏りの音」這部小說。即將迎來新婚生活的「茜」這位女性登場。「茜」在尋找兩人共住的家的過程中,想起了「漏雨」的記憶,由此回想起對家人的某種感覺。本回於開頭場面把握物語的設定,確認「茜」與將成為丈夫的「晴人」之關係吧。並注目於「漏雨之音」在物語中扮演什麼樣的角色。
●学習のポイント●
〈一〉場面の整理をする
〈二〉「雨漏り」に対する二人の反応を整理する
〈三〉「床」を見た茜の心情について考える
〈一〉整理場面 〈二〉整理對於「漏雨」兩人的反應 〈三〉思考看著「地板」的茜的心情
まず、舞台設定の確認をしましょう。
「茜」と「晴人」の二人が「見取図」を見ている場面から始まります。不動産屋に案内してもらい、自分たちが過ごす新居を探しています。これから新しい生活が始まる二人なのですが、実際見に行った家が「雨漏り」するほど「古い」家であることや、ジメジメした気配なども描かれ、新婚生活に胸を躍らせるという軽やかな感じがしません。「晴人」の心情は直接表現されていないので分かりませんが、「茜」は気持ちが表現されていて、少し理屈っぽく考えようとする性格などを読み合わせると、少し重くて慎重な雰囲気がにじみ出ています。新婚生活に胸を躍らせて、ストーリーが進んでいくという話ではなさそうです。
首先,確認舞台設定吧。 從「茜」與「晴人」兩人看著「平面圖」的場面開始。讓不動產業者導覽,正在尋找自己將居住的新居。雖然是即將開始新生活的兩人,但實際去看的家是會「漏雨」般的「老舊」之家,也描繪出潮濕的氣息——並沒有對新婚生活雀躍的輕盈感。「晴人」的心情未被直接表現所以不清楚,但「茜」的心情被表現出來,與她稍微愛講道理的性格合在一起讀,便滲出稍微沉重而謹慎的氛圍。看來這並不是「對新婚生活雀躍、故事就此進展」這樣的故事。
そんな二人がどうなっていくのか? とか、どうして新婚生活を控えた「茜」が少し重い雰囲気でいるのか、など、言葉で表現されている「茜」の心情を中心に追いかけながら、「晴人」をはじめとした周りの人間と「茜」との関係を考えながら読み進めるとよいでしょう。
這樣的兩人會怎樣呢?或者,為什麼即將新婚的「茜」會帶著稍微沉重的氛圍——這些等等,以言語表現的「茜」的心情為中心追蹤、並思考以「晴人」為首周圍的人與「茜」的關係,這樣讀下去比較好。
「見取図の下部の『雨漏りする箇所あり』という特記事項に、茜と晴人はまるで異なる反応を同時にみせた」という一文に注目してみましょう。
請注意「對於平面圖下部『有漏雨之處』這個特記事項,茜與晴人同時呈現出完全不同的反應」這一句。
「晴人」は「え、それはちょっと。」と困惑していて「雨漏り」は「NOだ」という拒否の反応です。それに対し「茜」は「へぇー。」と「雨漏り」をむしろ楽しんでいるような反応をしました。新居が「雨漏りする」家だったら、「それはちょっと困る」というのが普通の反応だと思います。どうやら「茜」の実家は最近まで「雨漏り」していたようで、そんな経験の中から「雨漏り」に対する反応が出たようです。
「晴人」說「欸、那有點……。」表現困惑——「漏雨」是「NO」的拒絕反應。對此「茜」「嘿——。」似乎反而是覺得「漏雨」有趣的反應。新居若是「會漏雨」的家,「那有點困擾」應該是普通的反應吧。看來「茜」的老家最近還在「漏雨」,從這經驗中產生出對「漏雨」的反應。
私は、この二人の反応に、作者の意図を汲んでほしいと思います。読み手を引き付ける冒頭に出てきた出来事ですから、この二人の違いを読者にしっかり注目させたかったはずです。今回のズレは、これから長い二人の生活を送る「家」、つまり、二人の土台に対する反応のズレということです。些細なズレとは言えませんよね。そういった「晴人」とのズレを感じ取ったのではないでしょうか。そういう点において、少し重い雰囲気が漂っていたのではないでしょうか。
我希望各位從這兩人的反應中讀取作者的意圖。因為這是吸引讀者的開頭出現的事件,作者一定是想讓讀者好好注目兩人的不同。本回的偏差,是對於兩人將過長久生活的「家」、也就是兩人的根基的反應之偏差。並非微小的偏差呢。應該是感受到了那樣的與「晴人」的偏差吧。在這點上,可能漂著稍微沉重的氛圍。
「雨漏り」に対する反応の他にも、たとえば、「茜」と「晴人」が物件に入っていく場面にもズレが描かれています。「おっと、気を付けて」と「晴人」が「茜」に「慇懃に」手を差し出します。「慇懃に」というのは「丁寧に、優しく接する」ことですが、それを「茜」は「わざとらしい、と笑いながらとる」とあります。これは新婚夫婦の自然な気配りのようにも見えますが、それに違和感がなければ感じないはずの「わざとらしさ」を見つけているのです。このように、二人の感覚の違い、「茜」のズレに対する意識が強調されているように思います。
除了對「漏雨」的反應外,例如「茜」與「晴人」進入物件的場面也描繪出偏差。「噢、小心」——「晴人」「慇懃地」對「茜」伸出手。「慇懃地」是「禮貌地、親切地對待」的意思,但「茜」「邊笑邊接,覺得做作」。這也可能看作是新婚夫婦自然的關心,但她發現了「若沒有違和感應該不會感到」的「做作」。如此一來,兩人感覺的差異、「茜」對偏差的意識被強調出來了。
さて、「物件探し」という点では、この「雨漏り」のする物件を二人とも借りる気はない様子でした。だから「茜」は「尋ねる必要はなかったのだガ」と自分でも思いながらも、「雨漏り」する場所を不動産屋の女性にわざわざ確認をします。この確認が、物語を次の場面へ誘導するきっかけとなります。
那麼,在「找物件」這一點上,看來兩人都沒有要租這「漏雨」的物件。所以「茜」雖自己也想著「沒必要問」,卻特意向不動產業者的女性確認「漏雨」的地方。這個確認,成為將物語引導到下個場面的契機。
場所を教えてもらったときの「茜」の行動に注目してください。雨漏りのしみを見上げる二人に対して、「茜」だけすぐに視線を床に移しました。漏れた雨を受け止める洗面器をおいた床に注目しているのです。そこから「茜」は、単なる出来事としての「雨漏り」ではなく、自分自身の経験した「雨漏り」を思い出していきます。その物思いは「茜」の頭の中でどんどん深まっていきます。床を眺め、そこに意識を集中していく。頭はぼんやりと現実から離れていく。そうやって、「茜」は二つ目の物件に向かう車内で、自分の世界に入り込んでいくのです。さて「茜」がどんな思いを巡らせているのかは、次回一緒に読んでいきましょう。
請注意被告知地點時「茜」的行動。對於仰望漏雨痕跡的兩人,只有「茜」立刻將視線移到地板上。她注目於放置接漏雨用洗臉盆的地板。從那兒,「茜」開始回想——並非單純事件的「漏雨」,而是自己經歷過的「漏雨」。那思緒在「茜」腦中越來越深。眺望地板,將意識集中於那裡。腦袋茫然地離開現實。如此一來,「茜」在前往第二個物件的車中,進入了自己的世界。「茜」在思索什麼,下回一起讀吧。
言語文化 #42-44
学習のねらい
今回は、「茜」が「雨漏りの音」をきっかけにして思い出す過去の出来事について読み取りましょう。直接表現されていない心情や関係を読み取ることも必要となりますから、登場人物の様子や動作など、細かいところにも注目しましょう。どんな心情を抱いているのか、どういう関係を作っているのか、想像豊かに読めるとよいでしょう。
本回讀取「茜」以「漏雨之音」為契機所回想的過去事件吧。也需要讀取未直接表現的心情與關係,所以請注目登場人物的樣子、動作等細微之處。抱有什麼心情、構築什麼關係——能富於想像地讀就好了。
●学習のポイント●
〈一〉「雨漏り」の思い出を整理する
〈二〉父親の行動から心情を考える
〈三〉茜の父への思いを考える
〈一〉整理「漏雨」的回憶 〈二〉從父親的行動思考心情 〈三〉思考茜對父親的情感
「茜」がまず初めに思い出しているのは「雨漏りの音」です。その音は、「ティン、ティン」と反響する音だど言います。そもそも「雨漏り」自体、経験した人でないとイメージしづらいです。ですから、みなさんも、天井を見上げ、そこから足元の床に水滴が一滴ずつ落ちる様子や、その受け皿が出す音などについて、想像しながら読んでください。「茜」の実家では「雨漏り」の受け皿として「アルマイト」の洗面器を使っていたようです。「アルマイト」は金属であるアルミニウムを酸化させたものだそうです。だとすると、たしかに、「ぽつん、ぽつん」ではなく、金属的な反響音がしそうです。「ティン、ティン」静かな部屋に反響する「雨漏りの音」。なんとなく耳に残りそうな気がしますね。
「茜」最初想起的是「漏雨之音」。據說那個聲音是「叮、叮」這樣迴響的聲音。「漏雨」本身,沒有經驗過的人就難以想像。所以請各位也一邊想像——抬頭看天花板、水滴從那裡一滴一滴落到腳下的地板,與接住它的容器發出的聲音——一邊讀。「茜」的老家好像是用「鋁陽極氧化(アルマイト)」的洗臉盆作為「漏雨」的接住容器。「アルマイト」據說是把鋁這種金屬氧化後的東西。如此一來,的確不是「噗通、噗通」,而是金屬般的迴響音吧。「叮、叮」在寂靜的房間迴響的「漏雨之音」。感覺彷彿會留在耳中呢。
「茜」は「雨漏り」の音が頭の中に響き、どんどん物思いにふけっていきます。まず「雨漏り」のこと自体を思い出します。自分の家が「ただただボロかった」こと。「茜」の家の「雨漏り」は長く続いていたこと。「二十秒に一度くらい」の「雨漏り」。そんなにひどくないから、あまり神経質にはならず「横着な間に合わせの工夫で」雨漏りに対応していたこと。「でも、そういえば、まるで気にしていないわけでもなかった」こと。その「雨漏り」自体の思い出から、「茜」は、さらに自分の家族とのことを考えていきます。音にいざなわわて自分の家族のことを思い出していくのです。
「茜」「漏雨」之音在腦中迴響,越來越陷入沉思。首先想起「漏雨」這件事本身。自己的家「就只是破舊」。「茜」家的「漏雨」已持續了很久。「大約二十秒一次」的「漏雨」。因為沒那麼嚴重,所以也不太神經質,「用懶散湊合的辦法」對應漏雨。「但是這麼說來,倒也不是完全不在意」。從「漏雨」本身的回憶,「茜」進一步想著與自家家人的事。被音引誘、回想起自家家人。
ある雨の夜、「茜」が勉強部屋から台所に出てきたときの思い出が書いてあります。このとき、ある「違和感」を感じています。その「違和感」は何でしょうか。
まず一つ目。夜中にふと気づいたら父が泥酔してソファで寝ころんでいる。そこにいると思っていないからビックリしますよね。「茜」が感じた「違和感」の一つです。そしてその父がソファで寝ころびながら、突然「聞こえないだろ」と言います。それによって、「茜」が「あっとひらめ」いたこと。普段聞こえるはずの「雨漏りの音」が聞こえないことです。それが「茜」が感じていたもう一つの「違和感」の正体でした。「茜」が洗面器を確認すると、底に雑巾が敷いてありました。それによって、響くはずの雨漏りの音が聞こえなくなっていたのですね。「父」はそれを「だらり」とした格好で聴いていたわけです。
寫著某個雨夜,「茜」從書房出來到廚房時的回憶。這時感受到某種「違和感」。那「違和感」是什麼呢? 首先第一個。夜半忽然發現父親爛醉地躺在沙發上睡著。沒料到他在那裡,會嚇一跳呢。這就是「茜」感到的「違和感」之一。然後那父親躺在沙發上時,突然說「聽不到吧」。藉此,「茜」「啊」地想到——平常應該聽得到的「漏雨之音」聽不到了。這就是「茜」感到的另一個「違和感」的真貌。「茜」確認洗臉盆,發現底下鋪了抹布。因此本該迴響的漏雨之聲變得聽不到了。「父親」就以「鬆垮」的姿勢聽著它。
このとき、父親はどんな気持ちで雑巾を敷き、音を聴いていたのでしょうか?
ヒントになるのは、「気になってさ」という言葉です。つまり、父も「雨漏り」のことが気になっていたということです。「茜」の回想にもあったように、しばらく「雨漏り」を修理しないでいた家族だったわけですが、「父」も雨漏りがする家のボロさが気になっていたり、直したほうがよいだろうと思っていたのかもしれませんよね。「父親」ですから、自分の家、家族の住み心地などに責任を感じていたかもしれません。いろんな気持ちを抱え、酔っ払い、家に帰って寝転がり、ずっと気になっていた雨漏りの音を消して、それをただ聴いていた。「父」にしかわかない思いを抱きながら寝ころんでいたような気がします。
這時,父親是以怎樣的心情鋪上抹布、聽著那聲音呢? 線索是「在意呢」這句話。也就是說,父親也在意「漏雨」。如「茜」回想中所說,這是一家暫時不修「漏雨」的家庭,但「父親」可能也在意漏雨家的破舊、覺得應該修一下。畢竟是「父親」,可能對自己的家、家人的居住舒適度感到責任。懷著各種心情、喝醉、回家躺下,把一直在意的漏雨之音遮住,只是靜靜地聽著它。讓人感覺他像是懷著只有「父親」才知道的思緒躺著。
この場面で「茜」は「父」に対して「父じゃないというか、なんの役割もない生身の生き物みたいな目をした」と感じています。この感覚は、想像しながらしっかり理解したいところです。この場面、「父」は我を忘れるほどに酔い、だらりと眠り込んでいたのですよね。普段見知った人が、完全に脱力してソファに倒れ込んでいたらどうでしょう? 「茜」はびっくりして一瞬「父」じゃないように感じたのでしょう。しかもこのとき「父」は、「聞こえないだろ」と予想していなかった言葉も発しました。普段との様子の違いに驚いている中、今まで「茜」が思ってもいなかった「父」の感覚を知らされたのです。自分が知っている「父」とは違う別の一面を持つ一人の人間として「父」を見た。これが「雨漏りの音」から思い出したエピソードです。
在這場面中,「茜」對「父親」感到「不像父親,像是沒有任何角色的活生生的生物般的眼神」。這份感覺,請邊想像邊好好理解。在這場面,「父」醉到忘我地睡得鬆鬆垮垮的對吧。如果平常熟悉的人,完全脫力倒在沙發上會如何呢?「茜」應該是嚇了一跳,一瞬間覺得「不像父親」吧。而且這時「父」也說出沒料到的話「聽不到吧」。在驚訝於與平常不同樣子的同時,又被告知至今「茜」想都沒想過的「父」的感覺。將「父」作為——擁有與自己所認識的「父」不同的另一面的一個人類——來看。這就是從「漏雨之音」回想起的軼事。
皆さん、この「茜」の感覚は、自分なりに整理して理解しておきましょう。家族というものは、時間をかけて関係が出来上がっていて、お互いの認識や関係になかなか変化を感じません。変化があっても少しずつなので気付きにくいのです。けれど、あるとき、何かのきっかけで、その変化に気付いたり、強く感じるときがあります。あれお父さんてこんな人だっけ? お姉ちゃんってこんなこと考える人なんだ、とそれまで自分が思っていた家族と違うという違和感にふと気に付く。その瞬間を描いたのが、この「茜」のエピソードなんじゃないでしょうか?
各位,這份「茜」的感覺請以自己的方式整理理解吧。「家人」是經過時間構築起來的關係,彼此的認識與關係不太能感到變化。即使有變化也是一點一點的所以不容易察覺。但是,在某個時刻、某個契機,會察覺到那變化、或強烈感受到。「咦,爸爸是這樣的人嗎?」「姊姊原來會想這種事啊」——突然察覺到與自己所認為的家人不同的違和感。描繪這瞬間的,不就是「茜」的這個軼事嗎?
さて、この「父」への感覚を思い出した「茜」は、この後現実に戻ります。その思い出が現在とどうつながっていくか、続きは次回一緒に読んでいきましょう。
那麼,回想起對「父」這份感覺的「茜」,之後回到了現實。那個回憶與現在如何連結,下回一起讀吧。
言語文化 #42-44
学習のねらい
「雨漏りの音」の学習も最後です。過去の思い出から現実に戻ってきた場面を読みましょう。「茜」の過去の思い出が、現在にどうつながっていくのか読み進めましょう。また、作品の特徴を確認し、描かれた家族関係を自分自身に置き換えて考えてみることも読書の楽しみの一つですね。
「雨漏りの音」的學習也是最後。讀讀從過去回憶回到現實的場面吧。「茜」過去的回憶如何連結到現在,往下讀吧。並且,確認作品的特徵,將描繪的家族關係代入自己自身來思考,這也是讀書的樂趣之一呢。
●学習のポイント●
〈一〉二人の様子を整理し、最後の場面の茜の心情を捉える
〈二〉作品の構成や表現上の特徴を整理する
〈三〉作品の読み取りを通じ、人間関係の有り様を振り返る
〈一〉整理兩人的樣子,把握最後場面的茜的心情 〈二〉整理作品的構成或表現上的特徵 〈三〉透過作品的解讀,回顧人際關係的樣態
「茜」が過去の思い出を現在の自分たちに当てはめ、意味付けをしていく場面です。
「茜」將過去的回憶套用到現在的自己們、賦予意義的場面。
二つ目の物件の玄関にあがるシーンに注目してみましょう。「晴人」が「茜」に「恭しく手を差し伸べ」ています。この王子様がお姫様にするような動作は「トキワ荘」みたいな物件にあがるときにもやっていましたね。「茜」が「晴人」とのズレを意識したシーンでした。実は本文を最後まで読み進めると、「茜」のお腹の中に新しく生まれる子供がいることが分かります。その事実を踏まえると、「晴人」が手を差し出すという行為は、身重の妻に対する夫のやさしさでもあり、生まれてくる子供を大切にする父親としての自覚とも読み取れます。
請注目第二個物件玄關上去的場面。「晴人」對「茜」「恭敬地伸出手」。這個王子對公主般的動作,在登上像「常磐莊」這樣的物件時也做過呢。是「茜」意識到與「晴人」之偏差的場面。其實讀到本文最後會發現,「茜」的肚中懷有將出生的孩子。基於這一事實,「晴人」伸手這個行為,可以解讀為對身懷六甲的妻子的丈夫之溫柔,也可解讀為珍視即將出生的孩子的父親的自覺。
夫として父親として、その役割を果たそうとしている「晴人」。その「晴人」に、先ほど「茜」が思い返した過去の父親に対する感覚を重ねます。すると、「晴人」も何年か後、何十年か後には、「茜」が感じたように、子供から父でない者のように感じられる日がくるのかもしれない、と想像したわけです。それは、もう二人の関係を続けられないというような深刻な感覚ではありません。これから自分たちが迎えるであろう変化を想像し、家族としての一歩を踏み出しているのだと、私はとらえました。「茜」の新しい家族としての出発の物語が「雨漏りの音」という小説であると言えるかもしれません。
作為丈夫、作為父親,試圖盡其角色的「晴人」。將剛才「茜」想起的對過去父親的感覺,疊在「晴人」身上。如此一來,「晴人」也在幾年後、幾十年後,或許會像「茜」當時感到的那樣,被孩子感到像是不是父親之人——「茜」這樣想像。那並不是「兩人關係已無法持續」這樣深刻的感覺。而是想像今後自己們將迎來的變化,作為家族踏出一步——我這樣把握。「茜」作為新家族出發的物語就是「雨漏りの音」這部小說——或許可以這樣說。
少し捉えどころが難しい小説だったかもしれませんが、作者の構成や表現上の工夫を捉えて読んでいくと、自分のこととして置き換えられたと思います。復習の意味も込めて、本作品の特徴の中でも大きなポイントを二つ確認しておきましょう。
或許是個有點難以掌握的小說,但若能捕捉作者的構成或表現上的功夫來閱讀,我想能把它代換為自己的事。為了複習,也來確認本作品特徵中兩個大要點吧。
まず一つ目は「音」を効果的に使っていることです。その一番の効果は「雨漏り」の「ティン、ティン」という擬音語です。非常に特徴的な擬音語を使うことで、どんな雨漏りだったかを具体的に想像させられたと思います。その想像により、読者である私たちも「茜」と同じように、雨漏りの回想にぐいっと入り込むことができたのだと思います。
首先第一個是有效地使用「聲音」。最大的效果就是「漏雨」的「叮、叮」這個擬音。藉由使用非常特徵性的擬音,讓人能具體想像那是怎樣的漏雨。藉由那想像,作為讀者的我們也能像「茜」一樣,一頭栽進漏雨的回想中。
二つ目は、過去の回想をうまく活用したことです。本作品は、「雨漏り」に対する「晴人」とのズレをきっかけにして、過去の「雨漏り」を思い出し、父との関係を見つめるという構成となっていました。さらに、回想で意識した過去の父との関係を、現在の晴人に重ね、そこから、「晴人」と新しい子供との未来に思いをはせていきます。現在から過去、過去から現在、現在から未来へと展開していく。過去の「雨漏り」の記憶が、逆に現在と未来をつなぐ架け橋ともなっているのです。
第二個是巧妙運用過去的回想。本作品以對「漏雨」與「晴人」之偏差為契機,回想起過去的「漏雨」,凝視與父親的關係——是這樣的構成。更進一步,將回想中意識到的與父親過去之關係,重疊到現在的晴人身上,從那裡展開對「晴人」與將出生孩子的未來之思緒。從現在到過去、從過去到現在、從現在到未來地展開。過去「漏雨」的記憶,反過來也成為連接現在與未來的橋樑。
静かで穏やかな物語でした。今回の小説を読み、自分の家にある特徴的な音を思い出したり、自分と家族との関係を振り返ったりした人も少なくないのではないでしょうか。
是寂靜安穩的物語。讀本回小說,想起自家特徵性的聲音、回顧自己與家人關係的人應該不少吧。
私も、「茜」の思い出に合わせて実家のことを思い出していました。住んでいた家の雰囲気、さまざまな音、いろんなことが思い出せました。家族関係の変化という点では、私自身の反抗期のことも思い出されました。それまで仲良く過ごしていた家族に対して、小さいころとは違う反抗的な時期がありました。ある時期を過ぎたら大人になっていて、また家族と関係を持っていました。高校生の頃には、「茜」のように父や母に布団をかけてあげるというようなやさしさは持っていなかったです。
我也配合「茜」的回憶,想起了老家的事。住過的家的氛圍、各種聲音,許多事都能回想起來。在家族關係變化這一點上,也想起了自己反抗期的事。對之前融洽相處的家人,曾有過與小時候不同的反抗期。過了某段時期就長大了,又與家人有了連結。高中時代,沒有像「茜」那樣為父母蓋棉被的溫柔。
「家族」というものは自分自身が身を置いていますし、自分以外の家族の関わり方については知りませんから、客観的に家族の在り方を見つめたり、すぐに関係を修正したりすることが、難しいものです。時間を置いて気付くことがあったり、他の人と話してはじめて理解できたりします。そういう意味では、小説を通して自分以外の誰かの経験に触れ、そういう考え方もあるんだな、と気付かされたり、自分の家族に置き換えて振り返るきっかけを手に入れられることに、読書の意義を強く感じます。別に「茜」の感覚が、全員に共感されるものとも限りませんし、そうである必要もありません。でも、この「茜」が、自身が感じた違和感を未来につなげたように、小説を読んだ感覚を自分自身のことに置きかえ、これからのことを思い描くきっかけにできれば、それはとても素敵な経験と言えるのではないでしょうか?
「家族」這東西,自己本身就身在其中,又因為不知道家族以外的人的相處方式,所以客觀地看家族的存在方式、立刻修正關係——這是難的事。也有過些時間才察覺的、與其他人說了才理解的情況。在這意義上,透過小說接觸自己以外的某人的經驗,被讓你察覺到「原來也有那樣的想法」、得到代入自己的家族來回顧的契機——我強烈感受到讀書的意義。「茜」的感覺不一定全員都會共鳴,也沒必要那樣。但是,正如「茜」將自身感受到的違和感連到未來那般——將讀小說的感覺代入自身、能成為描繪今後的契機,那不就是非常美好的經驗嗎?
さて、三回にわたり「雨漏りの音」を読み進めてきました。作品を、作者の意図や工夫を受け止めながら丁寧に読むことができれば、より深く考えたり、自分のことを見つめなおすきっかけを手に入れることができるものです。ぜひ、いろいろな小説を読み、作品に心を寄せて、より自分自身のプラスにしてもらえたらよいなと思います。
那麼,歷經三回讀完了「雨漏りの音」。若能一邊接收作者的意圖與用心,一邊仔細地讀作品,便能得到更深的思考、重新審視自己的契機。請務必讀各種小說,將心寄於作品,希望能對自身自己有更多正面助益。
長嶋 有
見取図の下部の「雨漏りする箇所あり」という特記事項に、茜と晴人はまるで異なる反応を同時にみせた。
「え、それはちょっと。」
「へぇー。」
二人とも、具体的な好悪の言葉は続かなかったが、へぇーと感心した茜は内心しくじったと思った。間違えた、そこは「それはちょっと。」が正しい反応だ。家の雨漏りは欠陥であり、よくないこと。楽しい、ワクワクする「装置」ではない。
「築年の古い家ですから。でも、修理はきくと思いますよ。」軽自動車のハンドルを握る不動産屋の女は後部座席の二人にとりなして、赤信号で停車する。晴人は腕組みをして顔をあげた。もとよりリフォーム前提で検討している物件だったが、雨漏りはさらに費用がかさむ案件だ。
茜の暮らした実家は最近のリフォームまで雨が漏っていた。そう告げると、晴人の眉間にしわが寄る。やはり、雨漏りに対する反応の正解はそっちだった。
「そういえばたしかに去年、お伺いするときに言ってたっけ、『最近まで雨漏りしてたんだ。』って。」
「うん。」
「その『最近』っていつのこと、平成になっても雨漏ってた?」
「うん、漏る漏る……いや、漏った漏った。二年くらい前まで。」今度は眉間にしわではなく、うわあ、と純粋に驚く顔。
「え、あの家って、そんなに古かったっけ。」
「いや、だって、晴人が来たときはリフォーム後だから。」
晴人を連れて帰省したとき、茜は内心驚いていたのだ。きれいになった! と。
エンジンのかかる音がして顔を前に向けると、軽自動車が青信号になった十字路を直進した。これも「最近」だ。アイドリングストップ機能で、停車が長いとエンジンが自動でストップする。
この世の進化は毎年毎月、たゆまずに行われているだろうが、個々の暮らしはそのようには進まない。毎月リフォームし続けたり、毎年車を買い替えたりはできない。あるときまである技術の中に囲まれて変わらずに暮らし、あるタイミングでいきなりそのときの最新に切り替えるから、家の内装でも自動車でも、必ず、格段の変化をみせつけられる。
ついさっき、不動産屋の裏手にとめられたこの車に乗り込んだとき、晴人も「広いなあ。」とつぶやいたが、あれも過去のそれと比較しないと出てこない感慨だ。
車は大きな通りから住宅街に入り込み、一軒の家の前に寄せて停車した。
「着きました。」鍵を受け取り、駐車してくるという女の車を見送り、二人でいきなり中に入らずに家を見上げた。
「なんか……『トキワ荘』みたい。」
「分かる!」茜は驚いて晴人の顔をみた。同じ固有名詞を思い浮かべていたのだ。アパートではなく一軒家なのに。それに、かつて天才漫画家が集った有名なアパートの姿を実際にはちゃんと知っているわけでもないのに。
住宅街の中の、昭和っぽいたたずまいの家のイメージが二人とも漫画で知ったそれしかなかった。晴人が鍵を差し込み引き戸を動かす。ガラガラガラ。これも「古い」と感じさせる音がしてその奥に暗い玄関と廊下が現れる。ひんやりした玄関に入り込むとき、「トキワ荘」のような不思議な既視感を二人は再び味わった。
「おっと、気を付けて。」靴脱ぎからの段差を先に越えた晴人が慇懃に差し出した手を茜はわざとらしい、と笑いながらとる。
だいたいの内見を終え玄関に戻ると、遅れてきた不動産屋の女が制服姿のお尻をこちらに向けながら、二人の靴をそろえ直していた。
茜は女に、雨漏りする場所を尋ねた。晴人が尋ねなかったのは、雨漏りの有無以前に借りる気がなかったからだろう。茜も茜で気乗りしなかった。間取りが複雑で、思った以上に住みにくそうだ。先に図らずも露呈した、駐車のしにくさもデメリットだ。隣家の塀と敷地間の近さや、ジメジメした気配も気になる。だから、尋ねる必要はなかったのだガ。三人で台所まで戻り、女が天井を指さすと染みのようなものがみえる。
というこどは……。晴人と女はずっと天井を見上げていたが、茜だけすぐに視線を床に移した。というこどは、このへんに洗面器を置いたか。ビニール樹脂製というのか、ひと昔前によくみたタイプの床の、ここに。
二つ目の物件に向かう車内の後部座席で、茜の頭の中には音が鳴っていた。
雨漏りの音だ。
アルマイトの洗面器を断続的にうつ水滴のテン、テン、という音は、もっと微細に聴くとティン、ティンとかすかに器の中で反響した。二十秒に一度くらいだったか。夜通し雨の降り続く中を寝て起きても洗面器が一杯になることはなかった。
雨漏りを父も母も弟も自分も、どうしていただろう。おもしろがっていた?
いや、なんとも思ってなかった、が近い。横着な間に合わせの工夫で、特にストレスを感じることもなく過ごしていた。
うちは貧乏だったという気が、そもそもいしない。家屋は古いが広かったし、車も三度も買い替えた。家族旅行にもよく出かけた。学校で友人と自分のなにか(学用品や服装や弁当の中身など)を比較してみじめに感じることもなかった。感じていたのは、ただただ家がボロいという事実だけだ。
でも、そういえば、まるで気にしていないわけでもなかった。
いつか、なにかの付き合いで泥酔した父が居間のソファで寝入った夜遅く、雨が降り出した。自室の十四インチのテレビ画面がカラーバーを映し出し、のびをして勉強部屋から台所に出てきた茜は、しばらく違和感に気付かなかった。冷蔵庫からお茶を出してコップに注ぎ、ソファに倒れる父をみやった。ワイシャツの襟のボタンを外しただけで、だらりと床に下がった手には眼鏡を持ったままだ。
「もう、父さん、風邪ひくよ。」口に出しながら、そうやって布団で寝なかったことで本当に風邪をひいた人を別にみたことないな、とも思って、でも一応近付くことにした。バスタオルを持ってきてかけると父の目が開いた。
その一瞬、父じゃないというか、なんの役割もない生身の生き物みたいな目をした。
「聞こえないだろ。」父はそうしゃべったあとで、喉を鳴らした。痰がからんでいたのだろう。
「なにが聞こえないの。」
「音が。」茜は耳をすませた。ソファの側の窓から雨音がする。
あっとひらめき、慌てて台所に向かうと、洗面器の底に雑巾が敷いてあった。
「気になってさ。」振り向くと、父はソファから起き上がって、ネクタイを片手で取り外した。もう生き物じゃない、いつもの父だった。茜は「なるほどね。」とかのかなんとか返事したのだったか。
今にしてみれば、なんの含蓄もない話だ。それでも茜は覚えている。夜遅くまでアルマイトをたたく水と金属の衝突音と、それを気にしていないようで、気にした父。その後リフォームされるまで、同じ工夫は特にされなかったと思う。
「神式なんですか、いいですね。」運転席の女が弾んだ声音をあげた。
「そうなんですよ。」いつの間にか結婚式の話を晴人はしていたらしい。
二つ目の物件の前で今度は茜が鍵を受け取った。今度の家はトキワ荘みたいではない。小さな玄関で、追い越すように先に三和土をあがった晴人が恭しく手を差し伸べる。
「もう、いいから、それ。」
「いやいや。」おなかの中に子供がいる実感さえまだ持てないのに、なんでもうわべから、それも芝居がかった形で応じる男。手をとってもらい、茜は晴人の顔をみた。
これから生まれてくる自分たちの子供が、この家で暮らす、この玄関で靴を脱ぎ、この段差を何度も越え、なにごともなく過ごし育ち、不意に父親を父でなく生き物のように感じる夜が訪れることを考えながら。
● 長嶋 有 一九七二年[昭和 47]─
小説家。本文は『私に付け足されるもの』(二〇一八年刊)による。
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