学習のねらい
前回までで四つの「漢詩」を学習しました。今回は、「漢詩と日本文学」という題で、「漢詩」がどのように日本文学に影響を与えたのか、「漢詩」と「日本文学」との関係の一端を具体的に見ていきましょう。
文法・表現
- 〜という題で、〜(題目)
- 「『〜』という題で」=「以『…』為題」。
- どのように〜のか、〜の一端を見ていきましょう(疑問内包+勧誘)
- 「どのように〜のか、〜を見ていきましょう」=「如何…,來看…」。
中文翻譯
至上回為止學習了四首「漢詩」。本回以「漢詩與日本文學」為題,具體看看「漢詩」是如何影響日本文學的、「漢詩」與「日本文學」之關係的一端吧。
●学習のポイント●
〈一〉漢詩と日本文学について
〈二〉清少納言「雪のいと高う降りたるを」と白居易の漢詩
〈三〉【言語活動】「春暁」の訳詩について
文法・表現
- 〜について(範囲)
- 「について」=「關於」。
中文翻譯
〈一〉關於漢詩與日本文學
〈二〉清少納言「雪のいと高う降りたるを」與白居易的漢詩
〈三〉【語言活動】關於「春暁」的譯詩
■漢詩と日本文学について
中国の詩を、日本人は「漢詩」と呼んで、古くから愛誦してきました。「漢詩」学習の初回に、孟浩然の「春暁」を学びましたが、その一句目、「春眠暁を覚えず」などのように、私たちがつい口ずさんでしまう詩句もたくさんあります。
文法・表現
- 〜と呼んで、〜してきました(受身的動作の継続)
- 「『漢詩』と呼んで、〜してきました」=「稱為『漢詩』,一直愛誦」。
- 〜のように、〜詩句もたくさんあります(例示+多数)
- 「〜のように、〜もたくさんあります」=「像…那樣,也有許多」。
- つい〜てしまう(無意識)
- 「つい口ずさんでしまう」=「不知不覺哼出口」。
中文翻譯
中國的詩,日本人稱為「漢詩」,從很久以前便愛誦。「漢詩」學習的最初一回,我們學了孟浩然的「春暁」,其第一句「春眠暁を覚えず」等等,是我們不知不覺會脫口而出的詩句,這樣的詩句還有很多。
「漢詩」は、昔から現在まで、絵画や書道の世界、詩吟など、日本の精神文化に大きな影響を与えてきました。日本人は、長い間にわたって、中国の進んだ文化を崇敬し、それを取り入れながら工夫し、独自の文化を生み出す努力をしてきたのです。
文法・表現
- 〜から〜まで、〜に大きな影響を与えてきました(時間+影響の継続)
- 「昔から現在まで、〜に大きな影響を与えてきました」=「從昔到今,給予了…大的影響」。
- 〜にわたって、〜(範囲の長期)
- 「長い間にわたって」=「歷經長時間」。
- 〜ながら工夫し、〜する努力をしてきた(並行+努力の継続)
- 「取り入れながら工夫し、〜努力をしてきた」=「一邊吸收、一邊下功夫,一直努力」。
中文翻譯
「漢詩」從昔到今,對於繪畫、書道的世界、詩吟等等,對日本的精神文化給予了很大的影響。日本人長期以來,崇敬中國進步的文化,一邊吸收一邊下功夫,努力創造出獨自的文化。
平安時代には、遣唐使の派遣によって、「唐風文化」が黄金期を迎えます。この時代、漢詩文を暗唱し、身につけることは、日本の知識人たちの間でも、教養の一つでした。日本の古典をみると、外国の文学作品である「漢詩」が、驚くほどよく使われています。当時の知識人の意識の中では、「漢詩」はもはや外国のものではなく、日本の古典として存在していたのでしょう。
文法・表現
- 〜によって、〜を迎えます(手段+帰結)
- 「派遣によって、〜を迎えます」=「藉由派遣,迎來」。
- 〜は教養の一つでした(評価)
- 「教養の一つでした」=「是教養之一」。
- 〜驚くほどよく使われています(程度+受身)
- 「驚くほどよく使われています」=「被使用得驚人地多」。
- 〜はもはや〜ではなく、〜として存在していたのでしょう(否定+推量)
- 「はもはや〜ではなく、〜として存在していたのでしょう」=「已不再是…,而是作為…存在著吧」。
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在平安時代,藉由遣唐使的派遣,「唐風文化」迎來黃金期。在這個時代,背誦並吸收漢詩文,在日本的知識分子之間,也是教養之一。看日本的古典,作為外國文學作品的「漢詩」被使用得驚人地多。當時知識分子的意識中,「漢詩」已經不是外國的,恐怕已作為日本的古典而存在了。
■清少納言「雪のいと高う降りたるを」と白居易の漢詩
次に、実際に二つの作品、白居易の「漢詩」と清少納言の『枕草子』を読んで、「漢詩」と「日本文学」がどのように関係しているのか、その一例を見ていきましょう。まず、白居易の作品、「香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す」という長い題名の漢詩からです。
文法・表現
- 〜を読んで、〜のか、〜を見ていきましょう(並行+疑問内包+勧誘)
- 「を読んで、〜のか、〜を見ていきましょう」=「讀讀看,如何…,來看…」。
中文翻譯
接下來,實際讀兩個作品——白居易的「漢詩」與清少納言的《枕草子》——看看「漢詩」與「日本文學」是如何關聯的,其中一例吧。首先,從白居易的作品「香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す」這個長標題的漢詩開始。
香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す
白居易
日高く睡り足りて猶ほ慵く起つ
小閣に衾を重ねて寒を怕れず
遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き
香炉峰の雪は簾を撥げて看る
匡廬は便ちこれ名を逃るるの地
司馬仍ほ老を送るの官たり
心泰く身寧きはこれ帰する処
故郷何くんぞ独り長安にのみ在らんや
文法・表現
- 〜たり〜たり(並列の対句)
- 「枕を欹てて聴き」「簾を撥げて看る」=對句。
- 〜んや(反語)
- 「長安にのみ在らんや」=「豈獨在長安乎」。
中文翻譯
(書き下し文)日高く睡り足りて猶ほ慵く起つ/小閣に衾を重ねて寒を怕れず/遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き/香炉峰の雪は簾を撥げて看る/匡廬は便ちこれ名を逃るるの地/司馬仍ほ老を送るの官たり/心泰く身寧きはこれ帰する処/故郷何くんぞ独り長安にのみ在らんや
【現代語訳】
① 日は高くのぼり、睡眠も十分取ったが、まだ起きるのは面倒だ。
② この小さな家で、掛け布団を何枚も重ねているから、寒さの心配も無い。
③ 遺愛寺の鐘の音は、枕を傾けて高くして聴き、
④ 香炉峰に白く積もる雪は、(手を伸ばして)すだれ(の端の方を)少し持ち上げてながめる。
⑤ (ここ)廬山こそは、世俗の名利を避けて暮らすのに適した土地であり、
⑥ 司馬という仕事もやはり余生を送るのに適した閑職である。
⑦ 身も心も平穏でいられる場所こそ、(人間の)安住の地。
⑧ 故郷はどうしてただ長安にあるだけであろうか。(いや長安だけが故郷ではあるまい。)
文法・表現
- 〜が、〜面倒だ(譲歩+評価)
- 「取ったが、起きるのは面倒だ」=「但是起床麻煩」。
- 〜ほど〜(程度の超越)
- 「名利を避けて暮らすのに適した」=「避世俗名利之地」。
- 〜のみ〜らんや(限定+反語)
- 「長安にのみ在らんや」=「豈只在長安乎」。
中文翻譯
【現代語譯】
① 日已高升,睡眠也充分了,但起床還是麻煩。
② 在這個小家中,疊了好幾床棉被,所以也不擔心寒冷。
③ 遺愛寺的鐘聲,將枕傾斜抬高地聽,
④ 香炉峰白白堆積的雪,(伸手)將簾(之端)稍微舉起來眺望。
⑤ (此處)廬山正是避世俗名利、適合隱居生活的土地,
⑥ 司馬這個工作也是適合送老之餘生的閑職。
⑦ 身心都能平穩的場所,就是(人之)安住之地。
⑧ 故鄉怎會只在長安呢?(不,故鄉並不只是長安。)
■ 詩の形式 ➡ 「七言律詩」(一句が七字で全部で八句)
文法・表現
- 〜律詩(漢詩形式)
- 七言律詩=一句七字、共八句。
中文翻譯
■ 詩之形式 ➡「七言律詩」(一句七字共八句)
題名の「香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す」は、「香炉峰のふもとに新しく山居を占って定め、草堂ができあがったばかりのときに、ふと詠って東壁に書きつけた詩」ということになります。
文法・表現
- 〜ということになります(言い換え)
- 「ということになります」=「就是說」。
- 〜たばかりのときに、ふと〜(時間+偶発)
- 「できあがったばかりのときに、ふと」=「剛完成的時候,忽然」。
中文翻譯
題名「香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す」是「在香炉峰下新占卜選定山居、草堂剛建成的時候,忽然詠詩寫在東壁上的詩」之意。
この詩は、白居易が江州に左遷され、長官を補佐する「司馬」という閑職についたときの作品です。五首連作詩のうちの一つで、その四番目にあたります。
文法・表現
- 〜に左遷され(受身)
- 「江州に左遷され」=「被左遷到江州」。
- 〜のうちの一つで、その〜にあたります(位置)
- 「のうちの一つで、その四番目にあたります」=「是其中之一,相當於第四首」。
中文翻譯
這首詩,是白居易被左遷到江州、擔任輔佐長官的「司馬」這個閑職時的作品。是五首連作詩之中的一首,相當於其中第四首。
詩の前半(一句から四句)は、「ある朝のこと、日はすでに高く昇ってしまったのに、なかなか布団から抜け出せない。役所に出向いたところで仕事があるわけじゃないし、とのんびり鐘の音を聴き、峰の雪を眺めやる。そんな長閑な様子」をうたっています。
文法・表現
- 〜のに、なかなか〜できない(逆接+難)
- 「のに、なかなか抜け出せない」=「明明…,卻怎麼也離不開」。
- 〜ところで〜があるわけじゃない(譲歩+否定)
- 「出向いたところで仕事があるわけじゃない」=「即使去也沒有工作」。
中文翻譯
詩之前半(一句到四句)詠的是——「某天早晨,日已高升,卻怎麼也離不開棉被。即使去衙門也並沒有什麼工作,便悠閒地聽鐘聲、眺望峰上的雪。這樣悠閒的樣子」。
詩の後半(五句から八句)は、左遷の境遇での白居易の人生観を述べています。普通なら長安に帰りたいと思う気持ちを、心身ともに安らかなら、どこだって故郷のようではないか、と言っているのです。しかし、これは本心ではなく、都、長安だけが故郷ではない、とわざわざいう、その言葉の裏に、やはり切々たる長安への慕情が読み取れる、というのが一般的なこの詩の解釈です。
文法・表現
- 〜なら〜のではないか(仮定+柔軟疑問)
- 「安らかなら、どこだって故郷のようではないか」=「若…,哪裡不像故鄉嗎」。
- 〜ではなく、〜とわざわざいう(否定+強調)
- 「本心ではなく、わざわざいう」=「並非本心,而是特意說」。
- 〜の裏に、やはり〜が読み取れる、というのが一般的な〜(裏意+一般化)
- 「の裏に、やはり〜読み取れる、というのが一般的な解釈です」=「在背後,仍可讀出…,這是一般的解讀」。
中文翻譯
詩之後半(五句到八句)敘述了左遷處境下白居易的人生觀。將通常會想回長安的心情,說成「身心都平穩的話,哪裡不就像故鄉嗎」。但是,這並非他的本心,而是特意說「不只長安才是故鄉」——在這句話背後,仍能讀出切切的對長安的思念之情——這是對此詩一般的解讀。
詩の頷聯(三句・四句のこと)「遺愛寺の鐘は 枕を欹てて聴き」「香炉峰の雪は 簾を撥げて看る」は、特に日本人には、なじみの深いフレーズです。では、『枕草子』の「雪のいと高う降りたるを」を見ましょう。
文法・表現
- 〜には、なじみの深いフレーズです(評価)
- 「日本人には、なじみの深いフレーズです」=「對日本人來說是熟悉的句子」。
中文翻譯
詩之頷聯(三句、四句)「遺愛寺の鐘は 枕を欹てて聴き」「香炉峰の雪は 簾を撥げて看る」,特別對日本人來說,是非常熟悉的詞句。那麼,讓我們看《枕草子》的「雪のいと高う降りたるを」吧。
雪のいと高う降りたるを
清少納言
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まり候ふに、「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。
文法・表現
- 〜参りて(古語の謙譲)
- 「御格子参りて」=「放下御格子」(謙譲)。
- 〜と仰せらるれば、〜(敬語+条件)
- 「と仰せらるれば」=「說了之後」。
- 〜させて、〜たれば、〜給ふ(使役+条件+敬語)
- 「上げさせて」=「命人舉起」。
中文翻譯
(古文原文)雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まり候ふに、「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。
【現代語】
雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子を下ろし申し上げて、炭櫃に火をおこして、(女房たちが)世間話などをして集まっておそばにお仕えしていると、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪は、どうであろう。」とおっしゃるので、(私が人に命じて)御格子を上げさせて、(自分で)御簾を高く巻き上げたところ、(中宮様は)お笑いになられる。」
文法・表現
- 〜のに、いつもと違って〜(逆接的場面提示)
- 「降り積もっているのに、いつもと違って」=「明明…,卻與往常不同」。
- 〜とおっしゃるので、〜上げさせて、〜上げたところ、〜笑いになられる(敬語の連鎖)
- 「とおっしゃるので、〜上げさせて、〜上げたところ、〜お笑いになられる」=「說了之後,命人升起,捲起之後便笑了起來」。
中文翻譯
【現代語】
雪降積得很高,與往常不同地將御格子放下,在火爐中升火,(女房們)說著閒話聚在側侍奉著時,(中宮樣)說:「少納言啊,香炉峰之雪如何呢。」我(命人)將御格子升起,(自己)將御簾高高捲起,(中宮樣)便笑了起來。
これは、ある雪の降った朝、中宮様が清少納言に、「香炉峰の雪は、どうであろう」とおっしゃたので、清少納言がすかさず、スルスルと御簾を上げてみせました、というお話です。
文法・表現
- 〜とおっしゃったので、〜すかさず、〜(理由+即時行動)
- 「とおっしゃったので、すかさず」=「說了之後,立刻」。
中文翻譯
這是——某下雪的早晨,中宮樣對清少納言說「香炉峰之雪如何呢」,清少納言立刻嗖嗖地升起御簾給她看——這樣的故事。
もちろん、中宮様のところから、「香炉峰」が見えるわけはありません。清少納言は、白居易の「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」という句を覚えていて、見事に中宮様の期待に応えました。そして、この清少納言の機転の早さに、他の女官たちも拍手喝采、盛り上がった場面です。
文法・表現
- 〜わけはありません(否定の必然)
- 「見えるわけはありません」=「不可能看見」。
- 〜を覚えていて、見事に〜に応えました(記憶+応答)
- 「を覚えていて、見事に応えました」=「記得而漂亮地回應」。
中文翻譯
當然,從中宮樣那裡是看不見「香炉峰」的。清少納言記得白居易「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」這個句子,漂亮地回應了中宮樣的期待。而且對清少納言這個機智之快,其他女官們也鼓掌喝采,是場面熱烈的一幕。
● 最後の中宮様の「笑い」について
→ 自分の思った通りに行動した清少納言に対する、賞賛と満足の気持ち。
文法・表現
- 〜に対する、〜気持ち(対象+感情)
- 「に対する、〜気持ち」=「對於…的心情」。
中文翻譯
● 關於最後中宮樣的「笑」
→ 對於完全按自己所想行動的清少納言,賞讚與滿足的心情。
また、清少納言も、得意な気持ちで、この出来事を『枕草子』に書きつけました。清少納言が仕えた中宮定子様のサロンでは、このように機知に富んだ明るい会話が日常的になされたことが分かります。
文法・表現
- 〜たことが分かります(証拠+知識)
- 「なされたことが分かります」=「可知是被進行的」。
中文翻譯
又,清少納言也以得意的心情,將這件事寫入了《枕草子》。可見清少納言所侍奉的中宮定子樣的沙龍中,這樣富於機智的明朗對話,是日常進行的。
■「春暁」の訳詩について
漢詩の「訳詩」というのは、基本的には漢詩を日本語に訳すことです。しかし、その訳し方はさまざまで、作者の内面に迫り、それを踏まえつつも、自由詩、創作詩として訳出されることがほとんどです。
文法・表現
- 〜というのは、〜することです(定義)
- 「というのは、〜ことです」=「所謂…就是…」。
- 〜の内面に迫り、それを踏まえつつも、〜ことがほとんどです(並行+傾向)
- 「に迫り、踏まえつつも、〜ことがほとんどです」=「接近,並以此為基礎,多是…」。
中文翻譯
所謂漢詩的「譯詩」,基本上就是把漢詩翻譯成日語。但其譯法各式各樣,大多是——一方面接近作者內面、以此為基礎,一方面又作為自由詩、創作詩來譯出。
今回は、第三十五回で学習した漢詩「春暁」について、三にんの「訳詩」を見ていきます。
文法・表現
- 〜について、〜を見ていきます(対象+勧誘の進行)
- 「について、〜を見ていきます」=「就…來看…」。
中文翻譯
本回,將就第35回所學的漢詩「春暁」,看三位的「譯詩」。
春暁
孟浩然
春眠暁を覚えず 処々啼鳥を聞く
夜来風雨の声 花落つること知んぬ多少ぞ
「春暁」の訳詩を一つずつ見ていきます。それぞれの訳詩における「着眼点」や「表記の仕方」、「春暁のイメージの捉え方」に注意しましょう。
文法・表現
- 〜ずつ見ていきます(順次)
- 「一つずつ見ていきます」=「一個一個地看」。
- 〜に注意しましょう(注意の勧誘)
- 「に注意しましょう」=「請注意」。
中文翻譯
一個一個地來看「春暁」的譯詩。請注意各譯詩中的「著眼點」、「表記方式」、「對春暁意象的把握方式」。
(一) 井伏 鱒二 (広島県出身の昭和の小説家)
春暁 井伏鱒二 訳
ハルノネザメノウツツデ聞ケバ
トリノナクネデ目ガサメマシタ
ヨルノアラシニ雨マジリ
散ッタ木ノ花イカホドバカリ
● 「カタカナと漢字まじり」の表記。
● 「カタカナ」は、漢文訓読の送り仮名に使用。
→ 「漢字」と「カタカナ」の表記には、漢文らしさが感じられる。
● 三句目だけリズムが違う。
● 三つの句のリズムが七・七調。転句(三句目)だけ七・五調。
→ 転句は場面が変わるところなので、変化を表現。
● 内容
● 承句(二句目)「処々」が訳出されていない。
● 同じく承句、「鳥の鳴く音で目がさめました」と、はっきり「目覚めた」と言っている。
文法・表現
- 〜らしさが感じられる(特徴の印象)
- 「漢文らしさが感じられる」=「能感受到漢文氣息」。
- 〜が訳出されていない(受身の否定)
- 「訳出されていない」=「未被譯出」。
- はっきり〜と言っている(明示)
- 「はっきり「目覚めた」と言っている」=「明確說『醒了』」。
中文翻譯
● 「片假名與漢字混雜」的表記。
● 「片假名」用於漢文訓讀的送り仮名。
→ 「漢字」與「片假名」的表記,可感受到漢文的氣息。
● 只有第三句節奏不同。
● 三個句子的節奏是七七調。轉句(第三句)只有七五調。
→ 轉句是場面變換之處,所以表現變化。
● 內容
● 承句(第二句)「處處」未被譯出。
● 同樣承句中,「鳥之鳴聲使我醒了」明確地說「醒了」。
(二) 土岐 善麿 (明治から昭和初期にかけての歌人・国文学者)
春あけぼの 土岐善麿 訳
春あけぼのの うすねむり
まくらにかよう 鳥の声
風まじりなる 夜べの雨
花ちりけんか 庭もせに
● 七五調の、リズムが心地よい、美しい訳詩。
● 起句から転句(一句から三句)は名詞(体言)で終わっている。
→ 結句(四句)だけが、体言止めになっていない(印象に残る)。
● 結句の最後、「庭もせに」
→ 「せに」は、「狭に」と書く。
「花が所狭しと、たくさん散り落ちた庭の様子」を想像している。
文法・表現
- 〜だけが〜になっていない(限定的否定)
- 「結句だけが体言止めになっていない」=「只有結句不是體言止」。
- 「〜」を想像している(想像)
- 「を想像している」=「在想像」。
中文翻譯
● 七五調的、節奏舒適、美麗的譯詩。
● 起句到轉句(一句到三句)以名詞(體言)結束。
→ 只有結句(四句)不是體言止(給人留下印象)。
● 結句的最後「庭もせに」
→ 「せに」寫作「狭に」。
「花漫天落下、庭中所狹(滿滿)的樣子」被想像出來。
(三) 前野 直彬 (昭和から平成初めにかけての中国文学者)
春のあかつき 前野直彬 訳
春の眠りに明けそめたとも知らなかったが
あちらでもこちらでも さえずる鳥の声
そうだ ゆうべは風雨の音がしていた
さて花はどれほど散ったかしら
● 口語体で、分かりやすい工夫。
● 作者孟浩然の言葉(漢語)と気持ちに忠実に、丁寧に訳している。
文法・表現
- 〜に忠実に、丁寧に〜(程度+態度)
- 「に忠実に、丁寧に訳している」=「忠實地、仔細地翻譯」。
中文翻譯
● 以口語體,下了易懂的功夫。
● 忠實於作者孟浩然的詞語(漢語)與心情,仔細地翻譯。
まとめ
「春暁」の訳詩を三つ鑑賞しましたが、それぞれ特徴がありました。みなさんはどの「訳詩」が一番好きですか?
漢詩を自分なりの言葉で訳す「訳詩」は、やってみると楽しいものです。みなさんも自分の好きな漢詩をみつけたら、「作者の状況・心情」を理解したうえで、「自分の感じた詩のイメージ」を大切に、句のつながりやリズムを整え、言葉を選びながら、素敵な「訳詩」を作ってみてくださいね。
文法・表現
- 〜が、それぞれ〜(逆接+並列)
- 「鑑賞しましたが、それぞれ特徴がありました」=「鑑賞了,但各有各的特色」。
- 〜やってみると〜ものです(試み+一般化)
- 「やってみると楽しいものです」=「動手做就是件愉快的事」。
- 〜たうえで、〜を大切に、〜整え、〜選び、〜作ってみてください(順序+勧誘)
- 「理解したうえで、大切に、整え、選び、作ってみてください」=「理解後、重視、整理、選擇,做做看」。
中文翻譯
我們鑑賞了「春暁」的三首譯詩,各有各的特色。各位最喜歡哪一首「譯詩」呢?
以自己的語言翻譯漢詩「譯詩」這件事,動手做做看是件愉快的事。各位若也找到自己喜歡的漢詩,理解「作者的狀況・心情」之後,重視「自己所感受的詩的意象」,整理句子的連貫與節奏,一邊挑選詞語,做出美好的「譯詩」看看吧。
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文法・表現
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