言語げんご文化ぶんか #37

漢文かんぶん

漢詩かんしあじわう [漢詩かんし

春望しゅんぼう」 (杜甫とほ

講師こうし 渡辺わたなべ 恭子きょうこ

学習がくしゅうのねらい

今回こんかいは、杜甫とほ作品さくひん春望しゅんぼう」を学習がくしゅうします。今までいままで学習したがくしゅうした詩のしの中でなかで最ももっとも長いながい八句はっく詩ですしです語句のごくの意味をいみを考えたりかんがえたり書かれたかかれた背景をはいけいを学んだりまなんだりすることで、作品をさくひんを鑑賞しましょうかんしょうしましょう。また、「対句ついく」という初めてはじめて登場するとうじょうする技法もぎほうも覚えましょうおぼえましょう

文法・表現

〜たり〜たりすることで、〜(手段)
たり〜たりすることで」=「透過…」。
〜も覚えましょう(追加の勧誘)
「技法も覚えましょう」=「也記住技法吧」。

中文翻譯

本回學習杜甫的作品「春望」。在至今所學的詩中,是最長的八句之詩。藉由思考語句的意義、學習被寫下時的背景,鑑賞作品吧。又,也記住首次登場的「對句」這個技法吧。

学習がくしゅうのポイント●

いち詩のしの内容をないようを理解しようりかいしよう
詩のしの書かれたかかれた時代じだい背景とはいけいと作者さくしゃ杜甫とほ」について
さん詩のしの理解とりかいと唐詩とうし近体詩きんたいし)のきまり」について

文法・表現

〜について(漢語格助詞)
について」=「關於」。

中文翻譯

〈一〉理解詩的內容 〈二〉關於詩被寫下的時代背景與作者「杜甫」 〈三〉理解詩,與關於「唐詩(近體詩)的規則」

詩のしの内容をないようを理解しようりかいしよう

春望しゅんぼう」は、「春のはるの日のひの眺めながめ」という意味ですいみです。この詩はしは、「人生じんせい」、その中でもなかでも憂いとういと悲しみかなしみ」をテーマにした作品ですさくひんです戦乱でせんらんで荒廃したこうはいしたみやこ長安のちょうあんの春景色をはるげしきを眺めながらながめながら家族のかぞくのことを思いやりおもいやり老いておいて行くゆく焦燥感をしょうそうかんをうたい、役人としてのやくにんとしての気持ちもきもちももうたっています。「春望しゅんぼう」は、杜甫のとほの代表作としてだいひょうさくとして知らないしらない人がひとがいないほど有名ですゆうめいです

文法・表現

〜という意味です(定義)
「『春の日の眺め』という意味です」=「春之日的眺望之意」。
〜をテーマにした作品です(連体修飾)
『憂いと悲しみ』をテーマにした作品です」=「以憂與悲為主題的作品」。
〜ながら〜、〜うたい、〜うたっています(並列)
「眺めながら、〜思いやり、〜うたい、〜うたっています」=「一邊眺望,一邊思念,吟詠」。
〜知らない人がいないほど〜です(程度)
知らない人がいないほど有名です」=「有名到無人不知的程度」。

中文翻譯

「春望」是「春之日的眺望」之意。這首詩是以「人生」,其中又特別以「憂與悲」為主題的作品。一邊眺望因戰亂荒廢的都長安的春景,一邊思念家人,吟詠著漸老的焦慮感,也吟詠著作為官員的心情。「春望」作為杜甫的代表作,是有名到無人不知的程度。

語句のごくの意味いみ

詩のしの書かれたかかれた時代じだい背景とはいけいと作者さくしゃ杜甫とほ」について

杜甫はとほは李白とりはくと並んでならんでとう」を代表するだいひょうする大詩人ですだいしじんです幼いおさない頃からころから読書好きのどくしょずきの努力家でどりょくかで、よりよい社会をしゃかいを作りたいとつくりたいと願ってねがっていました。しかし、官吏登用試験かんりとうようしけん科挙かきょ)には合格ごうかくできなかったのですが、詩のしの上手さがうまさが買われてかわれて皇帝からこうていからちょっとした役職をやくしょくをもらったのです。ところが、「安禄山の乱あんろくさんのらん」が起こりおこり杜甫はとほは反乱軍にはんらんぐんに捕らえられとらえられみやこ長安ちょうあん)に軟禁されてなんきんされてしまいます。「春望しゅんぼう」は、このときに作ったつくったものです。杜甫はとほは、このあとすきを見てみて脱出だっしゅつ再びふたたび皇帝にこうていに仕えますつかえます。しかし、正義感がせいぎかんが強すぎてつよすぎて皇帝からこうていから嫌われきらわれ再びふたたび失脚しっきゃく家族をかぞくを連れてつれて流浪のるろうの旅にたびに出ますでます杜甫はとほは世渡りがよわたりがあまりうまくない人でしたひとでした

文法・表現

〜と並んで〜(並列)
「李白と並んで」=「李白並列」。
〜には合格できなかったのですが、〜(譲歩)
には合格できなかったのですが」=「雖然無法合格」。
〜が買われて、〜をもらったのです(受動的+帰結)
が買われて、〜もらったのです」=「因…被看中,獲得…」。
ところが、〜起こり、〜捕らえられ、〜軟禁されてしまいます(事件の連鎖+受身)
ところが、〜捕らえられ、〜軟禁されてしまいます」=「然而被捕,被軟禁」。
〜が強すぎて〜(過度)
「正義感が強すぎて」=「正義感太強」。

中文翻譯

杜甫,與李白並列,是代表「唐」的大詩人。從幼年起就愛讀書、是個努力家,願望創造更好的社會。然而,雖然沒能合格官吏登用考試(科舉),但因詩的高明被看中,從皇帝那兒得到了一個小官職。然而「安祿山之亂」發生,杜甫被叛軍俘虜,被軟禁在都(長安)。「春望」就是在這個時候所作的。杜甫之後尋找機會脫逃,再次仕奉皇帝。但因正義感太強而被皇帝厭惡,再次失勢。帶著家人開始流浪之旅。杜甫是個不太擅長處世的人。

詩のしの理解とりかいと唐詩とうし近体詩きんたいし)のきまり」について

春望しゅんぼう」は、「個人としてこじんとして」と「役人としてやくにんとして」の二つのふたつの立場たちば視点してん)から詩がしがうたわれていることに特徴がとくちょうがあり、それが杜甫とほらしさだといわれています。例えば三句目さんくめ時にときに感じてはかんじては」は、戦乱のせんらんの時にときに目をめを向けるむける役人としてのやくにんとしての視点してん」。四句目よんくめの「別れをわかれを恨みてはうらみては」は、家族のかぞくの安否をあんぴを気遣うきづかう家長としてのかちょうとしての視点してん」です。以下もいかもこれと同様にどうように各句かくく交互にこうごに二つのふたつの立場からたちばから述べられてのべられています。

文法・表現

〜うたわれていることに特徴があり(受身連体+特徴)
うたわれていることに特徴があり」=「在…被吟詠這一點上有特徴」。
〜らしさだといわれています(伝聞+特性)
杜甫らしさだといわれています」=「據說是杜甫的風格」。
例えば〜は、〜「〜視点」です(例示)
例えば、〜視点です」=「例如…,的視角」。
〜と同様に、〜述べられています(並行+受身)
「これと同様に」=「與此同樣」。

中文翻譯

「春望」之特色,在於從「作為個人」與「作為官員」這兩個立場(視角)來吟詠詩,據說這正是杜甫的風格。例如第三句「時に感じては」是面向戰亂之時的「作為官員的視角」。第四句的「別れを恨みては」是掛心家人安否的「作為家長的視角」。以下也與此同樣,每句交互地從兩個立場敘述。

※ 「律詩りっし」では、第三句とだいさんくと第四句だいよんく第五句とだいごくと第六句をだいろっくを対句ついく」にするきまりになっています。「対句ついく」とは、二つのふたつの句をくを対応させてたいおうさせて表現するひょうげんする技法ですぎほうです。「対句ついく」ととなる二つのふたつの句はくは内容上ないようじょう関係がかんけいがあって、文法的にもぶんぽうてきにも構造がこうぞうが同じでなければおなじでなければなりません。「春望しゅんぼう」では、これ以外にいがいに第一句とだいいっくと第二句もだいにくも対句ついく」になっており、「五言律詩ごごんりっし」としては破格ですはかくです

文法・表現

〜きまりになっています(規則)
きまりになっています」=「規定為」。
〜を対応させて表現する技法(連用+名詞)
対応させて表現する技法」=「讓…對應而表現的技法」。
〜なければなりません(必要)
同じでなければなりません」=「必須相同」。
〜以外に、〜なっており、〜としては破格です(追加+評価)
これ以外に、〜になっており、〜としては破格です」=「此外也是…,作為是破格的」。

中文翻譯

※在「律詩」中,第三句與第四句、第五句與第六句要對作「對句」。所謂「對句」,是讓兩個句子相對應而表現的技法。成為「對句」的兩個句子,必須在內容上有關係,文法上也必須結構相同。在「春望」中,除此之外,第一句與第二句也是「對句」,作為「五言律詩」是破格的。


漢文かんぶん

春望しゅんぼう】 (杜甫とほ

国破山河在国破れて山河在り
城春草木深城春にして草木深し
感時花濺涙時に感じては花にも涙を濺ぎ
恨別鳥驚心別れを恨みては鳥にも心を驚かす
烽火連三月烽火三月に連なり
家書抵万金家書万金に抵たる
白頭搔更短白頭搔けば更に短く
渾欲不勝簪渾て簪に勝へざらんと欲す

唐詩三百首とうしさんびゃくしゅ

書き下し文かきくだしぶん

国破れて山河在りくにやぶれてさんがあり 城春にして草木深ししろはるにしてそうもくふかし
時に感じては花にも涙を濺ぎときにかんじてははなにもなみだをそそぎ 別れを恨みては鳥にも心を驚かすわかれをうらみてはとりにもこころをおどろかす
烽火三月に連なりほうかさんげつにつらなり 家書万金に抵たるかしょばんきんにあたる
白頭搔けば更に短くはくとうかけばさらによりみじかく 渾て簪に勝へざらんと欲すすべてしんにたえざらんとほっす

現代語訳げんだいごやく

国の都くにのみやこ長安は破壊されたちょうあんははかいされたけれども、山と川やまとわかだけは以前といぜんと変わらずにかわらずに存在しているそんざいしている
長安のちょうあんの町にはまちには春がはるがめぐってきて、草や木がくさやきが昨年とさくねんと同じようにおなじように深々とふかぶかと生い茂っているおいしげっている
戦乱のせんらんの続くつづく時世にじせいに深くふかく心をこころを動かされてうごかされて、(目をめを楽しませるたのしませるはずの)咲く花さくはな(のいろどり)を見てもみても(はらはらと)涙をなみだをこぼし、
家族やかぞくや友人とのゆうじんとの生き別れをいきわかれを恨めしくうらめしく思っておもって、(耳をみみを快くこころよくさせるはずの)鳴く鳥なくとり(のさえずり)を聞いてもきいてもびっくとす。
(いくさを告げるつげる)のろしは、数ヶ月すうかげつ(まったく)やむ気配はなくけはいはなく
交通のこうつうの途絶してしまったとぜつしてしまった状況ではじょうきょうでは家族からのかぞくからの手紙はてがみは、(もし届いたとどいたならば)巨額のきょがくの金にかねに相当するそうとうするものに思われるだろうおもわれるだろう
私のわたしの心痛のしんつうのために増えたふえた白髪をしらがをかきむしると、ますます(抜け落ちてぬけおちて髪がかみが薄くうすく乏しくなりとぼしくなり
全くまったく役人がやくにんがかぶる冠をかんむりをとめる)かんざしもさせなくなりそうだ。

文法・表現

〜けれども、〜だけは〜(譲歩+限定)
破壊されたけれども、山と川だけは」=「雖然被破壞,但唯有山與河」。
〜にも〜を濺ぎ/〜にも心を驚かす(受動的反応)
「花にも涙を濺ぎ」「鳥にも心を驚かす」=「對著花也落淚/對著鳥也驚心」。
〜に抵たる(相當)
「万金に抵たる」=「相當於萬金」。
〜搔けば更に〜(条件+程度)
搔けば更に短く」=「越搔越短」。
〜に勝へざらんと欲す(古語の様態)
勝へざらんと欲す」=「將要支撐不住」。

中文翻譯

(現代語譯)國的都長安雖然被破壞,但山與河與從前一樣不變地存在著。 長安城中春天又來了,草木(與去年同樣)深深地茂盛著。 感於(戰亂持續的)時世、深深動心,(本該悅目的)盛開的花(之色彩),看了也(簌簌地)落淚, 怨恨(與家人友人的)生離,(本該悅耳的)啼鳥(之鳴囀),聽了也驚動心。 (告戰之)烽火,數月(完全)沒有止息的跡象, (在交通斷絕的狀況下)來自家人的信,(如果送到)便覺得相當於巨額之金。 我(因心痛而增)的白髮,越搔越(脫落而)稀薄, 完全(無法用)簪子(固定官員之冠了),將要支撐不住了。

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文法・表現

〜及び〜を〜禁じます(漢語並列+強調)
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