学習のねらい
漢詩の中でも唐の時代の詩を「唐詩」と言います。その唐詩から今回は、「春暁」を学習します。語句の意味を考えたり、作品の書かれた背景を学んだりすることで、詩人たちが全力を尽くして表現の限界に挑戦していった作品を鑑賞しましょう。
文法・表現
- 〜と言います(定義の定型)
- 「唐の時代の詩を『唐詩』と言います」=「稱為『唐詩』」。
- 〜たり〜たりすることで、〜(並列+手段)
- 「考えたり学んだりすることで」=「透過思考、學習等」。
- 〜を尽くして〜(手段の連用)
- 「全力を尽くして挑戦していった」=「竭盡全力挑戰」。
中文翻譯
在漢詩之中,唐代的詩稱為「唐詩」。本回從唐詩中學習「春暁」。藉由思考語句的意義、學習作品被寫下時的背景,鑑賞詩人們竭盡全力挑戰表現極限而成的作品吧。
●学習のポイント●
〈一〉「唐詩」について
〈二〉「春暁」の構成法と「唐詩(近体詩)のきまり」について
〈三〉作者「孟浩然」と「春暁」の作られた背景について
文法・表現
- 〜について(漢語格助詞)
- 「『唐詩』について」=「關於『唐詩』」。
- 〜と〜と〜について(並列)
- 「構成法と『きまり』について」=「關於構成法與規則」。
中文翻譯
〈一〉關於「唐詩」
〈二〉關於「春暁」的構成法與「唐詩(近體詩)的規則」
〈三〉關於作者「孟浩然」與「春暁」被創作時的背景
■ 「唐詩」について
「唐詩」とは、唐代(日本でいえば奈良・平安時代頃)に作られた詩のことです。
「唐」は、詩が最も盛んになった時代で、詩の評価が人物評価にまでなったほどです。役人になるための難しい試験(=科挙)にも、詩を作る問題が出題されました。ですから、「唐詩」は、三千年の歴史を持つ中国の「漢詩」の中でも、最も完成度が高いものなのです。
文法・表現
- 〜とは、〜のことです(定義の定型)
- 「『唐詩』とは、〜のことです」=「所謂『唐詩』,就是…」。
- 〜ほどです(程度)
- 「人物評価にまでなったほどです」=「到了成為人物評價的程度」。
- 〜にも、〜が出題されました(受身)
- 「試験にも、〜出題されました」=「在試驗中也被出題」。
中文翻譯
所謂「唐詩」,是唐代(在日本來說大約是奈良・平安時代)所創作的詩。
「唐」是詩最為興盛的時代,到了詩的評價甚至成為人物評價的程度。連為了當官員的困難考試(=科舉)中,也出了作詩的題目。所以「唐詩」在擁有三千年歷史的中國「漢詩」之中,也是完成度最高的東西。
■ 「春暁」の構成法と「唐詩(近体詩)のきまり」について
中文翻譯
●暁……………夜明時分
●覚えず…………無所察覺
●処々……………在此處彼處
●啼鳥……………鳥的啼叫聲。鳥的鳴囀
●夜来……………昨晚
●声……………聲音
●知る多少ぞ……知る+疑問詞(「多少」)=不知。不明白。
口語譯「散落了多少呢」
「春暁」の構成法
「春暁」は、「春の明け方」という意味です。この詩は、作者である孟浩然が、寝床の中で感じた、春の朝の様子をうたっています。また、「春暁」は、四つの句からなっていますが、このような構成法を「起承転結の構成」といい、現在も文章や物事の組み立てに使われています。それでは、「春暁」の詩を具体的に見てみましょう。
文法・表現
- 〜という意味です(定義)
- 「『春の明け方』という意味です」=「是『春之拂曉』的意思」。
- 〜をうたっています(表現)
- 「春の朝の様子をうたっています」=「詠出了春之朝的樣貌」。
- 〜からなっています(構成)
- 「四つの句からなっています」=「由四個句子所構成」。
中文翻譯
「春暁」是「春之拂曉」的意思。這首詩,作為作者的孟浩然,在睡床之中感受到的春日清晨之樣貌被詠了出來。又,「春暁」是由四句構成,這樣的構成法稱為「起承轉結的構成」,現在也被用於文章與事物的構成。那麼,讓我們具體地來看「春暁」這首詩吧。
- 第一句 (起句)
寝床の中にいて、うとうとしながら春の訪れを感じている作者の様子がうたわれています。「起句」は、歌い起こしです。まず初めに読者を引きつけなければならないところなので、作者は力を入れて作ります。
文法・表現
- 〜ながら〜ている(並行進行)
- 「うとうとしながら春の訪れを感じている」=「一邊迷糊一邊感受到春的到來」。
- 〜なければならない(必然)
- 「読者を引きつけなければならない」=「必須吸引讀者」。
中文翻譯
詠出了——身處睡床之中、迷迷糊糊地感受著春之到來的作者的樣貌。「起句」是歌的起筆。因為是必須首先吸引讀者的地方,作者會用力地創作。
- 第二句 (承句)
眠りから完全には覚めていない作者の耳に、鳥の鳴き声が飛び込んでなきます。この二句目は初めの「起句」を受けてこれを更に発展させる役目をします。
文法・表現
- 〜には〜が飛び込んで(受動的場面)
- 「耳には、鳴き声が飛び込んで」=「耳邊飛入了啼聲」。
- 〜を受けて〜役目をします(職責)
- 「『起句』を受けて〜役目をします」=「承接『起句』,發揮…的職責」。
中文翻譯
在還未完全從睡眠中醒來的作者耳邊,飛入了鳥的啼聲。這第二句承接最初的「起句」,發揮使之更進一步發展的職責。
- 第三句 (転句)
前半二句の明るい情景から一転して、「夜」「風雨」という言葉が暗い雰囲気を感じさせます。三句目で場面が転換するのです。
文法・表現
- 〜から一転して(場面の急変)
- 「明るい情景から一転して」=「從明亮的情景一變」。
- 〜が転換する(自動詞)
- 「場面が転換する」=「場面被轉換」。
中文翻譯
從前半二句的明亮情景一變,「夜」「風雨」這些詞語讓人感受到陰暗的氛圍。在第三句場面被轉換。
- 第四句 (結句)
庭の花はどのくらい散ったかしら、と作者の意識が花に移っていくところで目が覚めます。第四句は全体のまとめです。
文法・表現
- 〜かしら(柔らかい疑問)
- 「散ったかしら」=「散落了嗎」。柔軟疑問。
- 〜が〜に移っていく(漸進)
- 「意識が花に移っていく」=「意識逐漸轉移到花上」。
中文翻譯
「庭中之花散落了多少呢」——當作者的意識移到花上時,醒來了。第四句是整體的總結。
【語句の意味】
- 暁 …………… 夜明け方
- 覚えず ………… 気がっかない
- 処々 …………… あちらこちらで
- 啼鳥 …………… 鳥の鳴き声。鳥のさえずり
- 夜来 …………… ゆうべ
- 声 ……………… 音
- 知る多少ぞ …… 知る + 疑問詞 (「多少」) = 知らない。分からない。
口語訳 「どのくらい散ったのかしら」
「唐詩 (近体詩) のきまり」
詩の形式
この「春暁」の詩は、一句が五文字でできています。これを「五言詩」といいます。また、「起承転結」四つの句で構成されています。これを「絶句」といいます。ですから、「春暁」の詩の形式は、「五言絶句」となります。「五言絶句」は、近体詩の中で最も短い形式ですので、詩人は言葉を選びながら作ります。
また、「五言詩」では、一つの句が「2文字 + 3文字で5字」、という構成になっていることを覚えておくと、読むときや意味を考えるときに便利です。
文法・表現
- 〜でできています(構成)
- 「五文字でできています」=「由五個字所組成」。
- 〜といいます(命名)
- 「『五言詩』といいます」=「稱為『五言詩』」。
- 〜から構成されています(受身)
- 「四つの句で構成されています」=「由四個句子構成」。
- 〜を覚えておくと、〜便利です(条件+帰結)
- 「覚えておくと、〜便利です」=「如果記住,就方便」。
中文翻譯
這首「春暁」的詩,一句由五個字組成。這稱為「五言詩」。又,由「起承轉結」四個句子構成。這稱為「絕句」。所以,「春暁」這首詩的形式,就是「五言絕句」。「五言絕句」是近體詩之中最短的形式,所以詩人是一邊挑選詞語一邊創作的。
又,記住「五言詩」中一個句子是「2字+3字、共5字」這樣的構成,在閱讀或思考意義時會很方便。
韻 (押韻)
「春暁」の二句目の最後の漢字は、「鳥」。四句目の最後の漢字は、「少」。「チョウ」と「ショウ」で、音読みするとどちらも、伸ばしたときの母音が「OU オウ」という音で共通です。このように音の響きを同じにすることを「韻を踏む」または、「押韻」といいます。「五言詩」では、偶数句の最後の漢字に「韻」を踏むのが原則です。ただし、この「春暁」は例外で、一句目の最後の漢字「暁」でも韻を踏んでいます。また、韻の位置は、目た目の句末で、訓読したときの句末ではないので気をつけましょう。詩というなのはもともと音楽性を持っているので、こんなきまりができました。韻は、中国語で読んだときの、音の響きの美しさを意識しているのですが、多くは「音読み」でも分かりますので安心してください。
文法・表現
- 〜と〜は、〜が共通です(共通点)
- 「『チョウ』と『ショウ』で、〜が共通です」=「『チョウ』與『ショウ』,共通」。
- 〜を踏むのが原則です(規則)
- 「韻を踏むのが原則です」=「踏韻是原則」。
- ただし、〜は例外で、〜(例外提示)
- 「ただし、これは例外で」=「但是,這是例外」。
中文翻譯
「春暁」第二句最末的漢字是「鳥」。第四句最末的漢字是「少」。「チョウ」與「ショウ」,用音讀讀出來時延長的母音都是「OU オウ」這個音,是共通的。像這樣使聲音的響聲相同,稱為「押韻」或「踏韻」。「五言詩」中,原則上在偶數句句末的漢字踏韻。但是「春暁」是例外,第一句最末的漢字「暁」也踏了韻。又,韻的位置是視覺上的句末,並非訓讀時的句末,請注意。詩這個東西原本就帶有音樂性,所以才有這樣的規則。韻意識的是用中文讀時音的響聲之美,但很多情況下用「音讀」也聽得出來,所以請放心。
■ 作者 「孟浩然」 と 「春暁」 の作られた背景について
孟浩然は、唐代自然詩人の先駆者として有名です。彼の詩のうまさは抜群だったのですが、残念ながら役人になるための試験 (=科挙) には、合格することができませんでした。しかし、役人になれなかったからこそ、この詩のように、夜が明けたのにも気づかず、ぬくぬくと春のねむりを貪る詩を作ることができたのです。
文法・表現
- 〜として有名です(資格)
- 「先駆者として有名です」=「作為先驅者而有名」。
- 〜ながら〜(残念)
- 「残念ながら」=「遺憾的是」。
- 〜なれなかったからこそ、〜できた(強い因果)
- 「役人になれなかったからこそ、〜できた」=「正因為當不了官員,才能夠…」。
中文翻譯
孟浩然作為唐代自然詩人的先驅者而有名。他的詩之精妙是出類拔萃的,遺憾的是,為了當官員的考試(=科舉)他無法合格。然而,正因為無法當官員,才能夠創作出這首詩這樣——對天已亮也未察覺、暖暖地貪戀春日睡眠之詩。
漢文
「春暁」 (孟浩然)
春暁
孟浩然
春眠不レ覚レ暁
処々聞二啼鳥一
夜来風雨の声
花落つること知レ多レ少ぞ
『唐詩選』
〈書き下し文〉
春眠暁を覚えず
処々啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少ぞ
文法・表現
- 〜を覚えず(古典の打消)
- 「暁を覚えず」=「未察覺到拂曉」。
- 知る多少ぞ(反語)
- 「知る多少ぞ」=「誰知多少呢」。反語。
中文翻譯
(書き下し文)春眠暁を覚えず/処々啼鳥を聞く/夜来風雨の声/花落つること知る多少ぞ
【現代語訳】
春の夜の眠りは心地よいから、夜が明けたのにも気がつかない。
(うとうとしていると)あちらこちらから鳥のさえずりが聞こえてくる。
(そういえば眠りに落ちる前に)昨夜はしきりに風と雨の音がしていたが、(その風と雨にたたかれて)
(庭に一面に咲いていた)花はどれくらい散っただろうか。
文法・表現
- 〜から(理由)
- 「心地よいから」=「因為舒適」。
- 〜のにも気がつかない(譲歩+打消)
- 「明けたのにも気がつかない」=「連天亮了都沒察覺」。
- そういえば〜(思い出し)
- 「そういえば」=「這麼說來」。
- どれくらい〜だろうか(疑問詠嘆)
- 「どれくらい散っただろうか」=「散落了多少呢」。
中文翻譯
春夜的睡眠很舒適,所以連天亮了都沒察覺到。
(迷迷糊糊間)從這裡那裡傳來鳥的啼囀。
(這麼說來,入睡前)昨夜風與雨的聲音不斷響著,(被那風雨拍打)
(庭中開滿的)花散落了多少呢。
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文法・表現
- 〜及び〜を〜禁じます(漢語並列+強調)
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