言語げんご文化ぶんか #35

漢文かんぶん

漢詩かんしあじわう [漢詩かんし

春暁しゅんぎょう」 (孟浩然もうこうねん

講師こうし 渡辺わたなべ 恭子きょうこ

学習がくしゅうのねらい

漢詩かんしなかでもとう時代じだいを「唐詩とうし」といます。その唐詩とうしから今回こんかいは、「春暁しゅんぎょう」を学習がくしゅうします。語句ごく意味いみかんがえたり、作品さくひんかれた背景はいけいまなんだりすることで、詩人しじんたちが全力ぜんりょくくして表現ひょうげん限界げんかい挑戦ちょうせんしていった作品さくひん鑑賞かんしょうしましょう。

文法・表現

〜と言います(定義の定型)
「唐の時代の詩を『唐詩』と言います」=「稱為『唐詩』」。
〜たり〜たりすることで、〜(並列+手段)
「考えたり学んだりすることで」=「透過思考、學習等」。
〜を尽くして〜(手段の連用)
「全力を尽くして挑戦していった」=「竭盡全力挑戰」。

中文翻譯

在漢詩之中,唐代的詩稱為「唐詩」。本回從唐詩中學習「春暁」。藉由思考語句的意義、學習作品被寫下時的背景,鑑賞詩人們竭盡全力挑戰表現極限而成的作品吧。

学習がくしゅうのポイント●

いち〉「唐詩とうし」について
〉「春暁しゅんぎょう」の構成法こうせいほうと「唐詩とうし近体詩きんたいし)のきまり」について
さん作者さくしゃ孟浩然もうこうねん」と「春暁しゅんぎょう」のつくられた背景はいけいについて

文法・表現

〜について(漢語格助詞)
「『唐詩』について」=「關於『唐詩』」。
〜と〜と〜について(並列)
「構成法『きまり』について」=「關於構成法規則」。

中文翻譯

〈一〉關於「唐詩」 〈二〉關於「春暁」的構成法與「唐詩(近體詩)的規則」 〈三〉關於作者「孟浩然」與「春暁」被創作時的背景

■ 「唐詩とうし」について

唐詩とうし」とは、唐代とうだい日本にほんでいえば奈良なら平安時代頃へいあんじだいごろ)につくられたのことです。
とう」は、もっとさかんになった時代じだいで、評価ひょうか人物評価じんぶつひょうかにまでなったほどです。役人やくにんになるためのむずかしい試験しけん(=科挙かきょ)にも、つく問題もんだい出題しゅつだいされました。ですから、「唐詩とうし」は、三千年さんぜんねん歴史れきし中国ちゅうごくの「漢詩かんし」のなかでも、もっと完成度かんせいどたかいものなのです。

文法・表現

〜とは、〜のことです(定義の定型)
「『唐詩』とは、〜のことです」=「所謂『唐詩』,就是…」。
〜ほどです(程度)
「人物評価にまでなったほどです」=「到了成為人物評價的程度」。
〜にも、〜が出題されました(受身)
「試験にも、〜出題されました」=「試驗中也被出題」。

中文翻譯

所謂「唐詩」,是唐代(在日本來說大約是奈良・平安時代)所創作的詩。 「唐」是詩最為興盛的時代,到了詩的評價甚至成為人物評價的程度。連為了當官員的困難考試(=科舉)中,也出了作詩的題目。所以「唐詩」在擁有三千年歷史的中國「漢詩」之中,也是完成度最高的東西。

■ 「春暁しゅんぎょう」の構成法こうせいほうと「唐詩とうし近体詩きんたいし)のきまり」について

文法・表現

〜とは〜(語義)
古典語の語義解説

中文翻譯

●暁……………夜明時分 ●覚えず…………無所察覺 ●処々……………在此處彼處 ●啼鳥……………鳥的啼叫聲。鳥的鳴囀 ●夜来……………昨晚 ●声……………聲音 ●知る多少ぞ……知る+疑問詞(「多少」)=不知。不明白。         口語譯「散落了多少呢」

 「春暁しゅんぎょう」の構成法こうせいほう

春暁しゅんぎょう」は、「はるがた」という意味いみです。このは、作者さくしゃである孟浩然もうこうねんが、寝床ねどこなかかんじた、はるあさ様子ようすをうたっています。また、「春暁しゅんぎょう」は、つのからなっていますが、このような構成法こうせいほうを「起承転結きしょうてんけつ構成こうせい」といい、現在げんざい文章ぶんしょう物事ものごとてに使つかわれています。それでは、「春暁しゅんぎょう」の具体的にぐたいてきにてみましょう。

文法・表現

〜という意味です(定義)
「『春の明け方』という意味です」=「『春之拂曉』的意思」。
〜をうたっています(表現)
「春の朝の様子をうたっています」=「詠出了春之朝的樣貌」。
〜からなっています(構成)
「四つの句からなっています」=「四個句子所構成」。

中文翻譯

「春暁」是「春之拂曉」的意思。這首詩,作為作者的孟浩然,在睡床之中感受到的春日清晨之樣貌被詠了出來。又,「春暁」是由四句構成,這樣的構成法稱為「起承轉結的構成」,現在也被用於文章與事物的構成。那麼,讓我們具體地來看「春暁」這首詩吧。

語句ごく意味いみ

唐詩とうし近体詩きんたいし) のきまり」

 形式けいしき
この「春暁しゅんぎょう」のは、一句いっく五文字ごもじでできています。これを「五言詩ごごんし」といいます。また、「起承転結きしょうてんけつつの構成こうせいされています。これを「絶句ぜっく」といいます。ですから、「春暁しゅんぎょう」の形式けいしきは、「五言絶句ごごんぜっく」となります。「五言絶句ごごんぜっく」は、近体詩きんたいしなかもっとみじか形式けいしきですので、詩人しじん言葉ことばえらびながらつくります。
また、「五言詩ごごんし」では、ひとつのが「2文字もじ + 3文字もじで5」、という構成こうせいになっていることをおぼえておくと、むときや意味いみかんがえるときに便利べんりです。

文法・表現

〜でできています(構成)
「五文字でできています」=「五個字所組成」。
〜といいます(命名)
「『五言詩』といいます」=「稱為『五言詩』」。
〜から構成されています(受身)
「四つの句で構成されています」=「四個句子構成」。
〜を覚えておくと、〜便利です(条件+帰結)
「覚えておくと、〜便利です」=「如果記住就方便」。

中文翻譯

這首「春暁」的詩,一句由五個字組成。這稱為「五言詩」。又,由「起承轉結」四個句子構成。這稱為「絕句」。所以,「春暁」這首詩的形式,就是「五言絕句」。「五言絕句」是近體詩之中最短的形式,所以詩人是一邊挑選詞語一邊創作的。 又,記住「五言詩」中一個句子是「2字+3字、共5字」這樣的構成,在閱讀或思考意義時會很方便。

 いん押韻おういん
春暁しゅんぎょう」の二句目にくめ最後さいご漢字かんじは、「ちょう」。四句目よんくめ最後さいご漢字かんじは、「しょう」。「チョウ」と「ショウ」で、音読おんよみするとどちらも、ばしたときの母音ぼいんが「OU オウ」というおと共通きょうつうです。このようにおとひびきをおなじにすることを「いん踏むふむ」または、「押韻おういん」といいます。「五言詩ごごんし」では、偶数句ぐうすうく最後さいご漢字かんじに「いん」を踏むふむのが原則げんそくです。ただし、この「春暁しゅんぎょう」は例外れいがいで、一句目いっくめ最後さいご漢字かんじぎょう」でもいん踏んでふんでいます。また、いん位置いちは、句末くまつで、訓読くんどくしたときの句末くまつではないのでをつけましょう。というなのはもともと音楽性おんがくせいっているので、こんなきまりができました。いんは、中国語ちゅうごくごんだときの、おとひびきのうつくしさを意識いしきしているのですが、おおくは「音読おんよみ」でもかりますので安心あんしんしてください。

文法・表現

〜と〜は、〜が共通です(共通点)
「『チョウ』と『ショウ』で、〜が共通です」=「『チョウ』『ショウ』,共通」。
〜を踏むのが原則です(規則)
「韻を踏むのが原則です」=「踏韻是原則」。
ただし、〜は例外で、〜(例外提示)
ただし、これは例外で」=「但是,這是例外」。

中文翻譯

「春暁」第二句最末的漢字是「鳥」。第四句最末的漢字是「少」。「チョウ」與「ショウ」,用音讀讀出來時延長的母音都是「OU オウ」這個音,是共通的。像這樣使聲音的響聲相同,稱為「押韻」或「踏韻」。「五言詩」中,原則上在偶數句句末的漢字踏韻。但是「春暁」是例外,第一句最末的漢字「暁」也踏了韻。又,韻的位置是視覺上的句末,並非訓讀時的句末,請注意。詩這個東西原本就帶有音樂性,所以才有這樣的規則。韻意識的是用中文讀時音的響聲之美,但很多情況下用「音讀」也聽得出來,所以請放心。

作者さくしゃ孟浩然もうこうねん」 と 「春暁しゅんぎょう」 のつくられた背景はいけいについて

孟浩然もうこうねんは、唐代自然詩人とうだいしぜんしじん先駆者せんくしゃとして有名ゆうめいです。かれのうまさは抜群ばつぐんだったのですが、残念ざんねんながら役人やくにんになるための試験しけん (=科挙かきょ) には、合格ごうかくすることができませんでした。しかし、役人やくにんになれなかったからこそ、こののように、けたのにもづかず、ぬくぬくとはるのねむりをむさぼつくることができたのです。

文法・表現

〜として有名です(資格)
「先駆者として有名です」=「作為先驅者而有名」。
〜ながら〜(残念)
残念ながら」=「遺憾的是」。
〜なれなかったからこそ、〜できた(強い因果)
役人になれなかったからこそ、〜できた」=「正因為當不了官員,才能夠…」。

中文翻譯

孟浩然作為唐代自然詩人的先驅者而有名。他的詩之精妙是出類拔萃的,遺憾的是,為了當官員的考試(=科舉)他無法合格。然而,正因為無法當官員,才能夠創作出這首詩這樣——對天已亮也未察覺、暖暖地貪戀春日睡眠之詩。


漢文かんぶん

春暁しゅんぎょう」 (孟浩然もうこうねん

春暁しゅんげう
孟浩然まうかうねん

春眠しゅんみんえずおぼあかつきを
処々しょしょきく啼鳥ていちょうを
夜来やらい風雨の声ふううのこえ
花落はなおつることしるしょう

唐詩選とうしせん

書き下し文かきくだしぶん

春眠暁しゅんみんあかつき覚えずおぼえず
処々啼鳥しょしょていちょう聞くきく
夜来風雨の声やらいふううのこえ
花落つるはなおつること知る多少ぞしるたしょうぞ

文法・表現

〜を覚えず(古典の打消)
「暁を覚えず」=「未察覺到拂曉」。
知る多少ぞ(反語)
知る多少ぞ」=「誰知多少呢」。反語

中文翻譯

(書き下し文)春眠暁を覚えず/処々啼鳥を聞く/夜来風雨の声/花落つること知る多少ぞ

現代語訳げんだいごやく

はる夜のよの眠りは心地よいねむりはここちよいから、夜が明けたよがあけたのにも気がつかないきがつかない
(うとうとしていると)あちらこちらからとりのさえずりが聞こえてくるきこえてくる
(そういえば眠りに落ちる前ねむりにおちるまえに)昨夜はさくやはしきりに風と雨かぜとあめ音がおとがしていたが、(その風と雨かぜとあめにたたかれて)
庭に一面に咲いていたにわにいちめんにさいていた花はどれくらい散ったはなはどれくらいちっただろうか。

文法・表現

〜から(理由)
「心地よいから」=「因為舒適」。
〜のにも気がつかない(譲歩+打消)
「明けたのにも気がつかない」=「天亮了都沒察覺」。
そういえば〜(思い出し)
そういえば」=「這麼說來」。
どれくらい〜だろうか(疑問詠嘆)
どれくらい散っただろうか」=「散落了多少呢」。

中文翻譯

春夜的睡眠很舒適,所以連天亮了都沒察覺到。 (迷迷糊糊間)從這裡那裡傳來鳥的啼囀。 (這麼說來,入睡前)昨夜風與雨的聲音不斷響著,(被那風雨拍打) (庭中開滿的)花散落了多少呢。

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文法・表現

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