学習のねらい
大岡信『折々のうた』に取り上げられた『梁塵秘抄』と『閑吟集』の歌を、その解説文を参考としながら読んでいきます。歌謡に関する基礎知識を押さえたうえで、それぞれから一つの歌を読み、歌謡の表現の特徴を考えます。
文法・表現
- 〜に取り上げられた〜(受身連体)
- 「に取り上げられた歌」=「被選入的歌」。
- 〜を参考としながら〜(並行+手段)
- 「を参考としながら読んでいきます」=「一邊參考一邊閱讀」。
- 〜を押さえたうえで、それぞれから〜(前提+並列)
- 「押さえたうえで、それぞれから一つの歌を読み」=「掌握後,從各書各讀一首」。
- 〜の特徴を考えます(漢語+意圖)
- 「歌謡の表現の特徴を考えます」=「思考歌謠的表達特色」。
中文翻譯
閱讀大岡信《折々のうた》中所選的《梁塵秘抄》與《閑吟集》之歌,並一邊參考其解說文一邊讀下去。在掌握有關「歌謠」的基礎知識之後,從各書中各選一首閱讀,思考歌謠的表現特色、加以鑑賞。
『折々のうた』は、もともと新聞の一面に毎日連載されたものですが、二十五年以上、通算六七六二回に及びました。それだけ日本には、さまざまなジャンルのすぐれた詩歌がたきさんあるということになります。
文法・表現
- 〜は、もともと〜されたものですが、〜(受身連体+逆接)
- 「もともと連載されたものですが」=「原本是被連載的,但…」。
- 〜以上、〜に及びました(範圍+程度)
- 「二十五年以上、通算六七六二回に及びました」=「達二十五年以上、共六七六二回」。「~に及ぶ」=達到。
- それだけ〜があるということになります(程度+帰結)
- 「それだけ〜あるということになります」=「由此可知有那麼多…」。
中文翻譯
《折々のうた》原本是在新聞的頭版每日連載之物,二十五年以上,合計達六七六二回。也就是說,日本有著各式各樣類型的優秀詩歌。
●学習のポイント●
〈一〉歌謡の特徴について知る
〈二〉「舞へ舞へ蝸牛……」の歌を理解し鑑賞する
〈三〉「思へど思はぬ……」の歌を理解し鑑賞する
文法・表現
- 〜の特徴について知る(漢語+格助詞)
- 「特徴について知る」=「了解…的特色」。
- 〜を理解し鑑賞する(並列)
- 「を理解し鑑賞する」=「理解並鑑賞」。
中文翻譯
〈一〉了解歌謠的特色
〈二〉理解並鑑賞「舞へ舞へ蝸牛……」之歌
〈三〉理解並鑑賞「思へど思はぬ……」之歌
■歌謡の特徴について知る
●歌謡とは
- 歌詞にリズムと曲をさまざまな形で付けて、音楽の伴奏とともに歌う歌のこと。
- 歌謡には多くのジャンルがあった。
【代表的な歌謡集】
- 『梁塵秘抄』
- 平安時代の終わり、一一八〇年頃成立。
- 編者は、後白河法皇。
- 全二十巻。うち歌集は十巻。現存は第一巻の一部と第二巻のみ。
- 「今様」というジャンルの歌を集めたもの。
- 『閑吟集』
- 室町時代、一五一八年。
- 「小歌」というジャンルの歌を中心にまとめたもの。
■「舞へ舞へ蝸牛……」の歌を理解し鑑賞する
子どもたちが蝸牛に向かって、舞わなければ子馬や子牛に蹴らせて踏み割らせるぞ、かわいく舞ったら花園につれていってやる、とはやしたてている歌です。子どもたちの心や様子を想像してみましょう。
文法・表現
- 〜に向かって、〜(方向)
- 「蝸牛に向かって」=「對著蝸牛」。
- 〜なければ〜に〜させる(条件+使役)
- 「舞わなければ、〜蹴らせて踏み割らせるぞ」=「若不跳舞,就讓…踢、踩」。「させる」=使役;「ぞ」=強調的終助詞。
- 〜たら〜(条件+帰結)
- 「かわいく舞ったら花園につれていってやる」=「若可愛地跳舞,就帶你去花園」。「~てやる」=施恩。
- 〜とはやしたてている歌(引用+連体)
- 「とはやしたてている歌」=「就這樣起鬨的歌」。「はやしたてる」=喧鬧地慫恿。
- 〜想像してみましょう(試行+勧誘)
- 「想像してみましょう」=「來想像看看」。
中文翻譯
孩子們對著蝸牛——若不舞,就讓小馬與小牛踢你、踩碎你;如果可愛地舞,就帶你去花園——這樣起鬨的歌。讓我們想像孩子們的心情與樣子吧。
【重要語句】
- うつくし …… 小さいものや弱いものに対して、かわいいと思う気持ちを表す。
■「思へど思はぬ……」の歌を理解し鑑賞する
恋に関する歌です。相手のことを思っていても、思っていないふりをして、しゃっとしている人は底が深い、という歌です。「しゃっと」というのはどういう態度のことか、また「底が深い」とはどういうことか、考えながら鑑賞しましょう。
文法・表現
- 〜ても、〜ふりをして(譲歩+態度)
- 「思っていても、思っていないふりをして」=「就算思念,也裝作沒思念」。
- 〜しゃっとしている〜は底が深い(連体+評価)
- 「しゃっとしている人は底が深い」=「神情自若的人是底深的」。
- 〜というのは〜か、また〜とは〜か(疑問の連鎖)
- 「というのはどういう態度のことか、また〜とはどういうことか」=「是怎樣的態度、是什麼意思」。
- 〜考えながら〜(並行)
- 「考えながら」=「邊思考邊…」。
中文翻譯
與戀愛相關的歌。雖然心中思念著對方,卻裝作沒思念,那種「しゃっとしている」的人,「底是深的」——是這樣的歌。「しゃっと」是怎樣的態度,又「底が深い」是怎樣的事,一邊思考一邊鑑賞吧。
*『閑吟集』でこの歌の次に並べられている歌:
思へど思はぬ振りをしてなう 思ひ痩せに痩せ候
文法・表現
- 〜に並べられている〜(受身連体)
- 「に並べられている歌」=「排列在…的歌」。
- 〜なう(終助詞・呼びかけ)
- 「なう」=室町時代口語的呼びかけ/詠嘆。
- 思ひ痩せに痩せ候(複合+強調)
- 「思ひ痩せに痩せ候」=「因思念而消瘦更甚」。
中文翻譯
*《閑吟集》中接在此歌之後的歌:「思へど思はぬ振りをしてなう 思ひ痩せに痩せ候」(雖然思念著卻裝作沒思念啊,因思念而瘦上加瘦)
〈現代語訳〉
思っていても思っていない振りをしてなあ、痩せに痩せてしまったのじゃ。
『梁塵秘抄』
舞へ舞へ蝸牛 舞はぬものならば
馬の子や牛の子に蹴ゑさせてむ 踏み破らせてむ
まことにうつくしく舞うたらば 華の園まで遊ばせむ
文法・表現
- 舞へ舞へ蝸牛(命令の反復+呼びかけ)
- 「舞へ舞へ蝸牛」=「跳吧跳吧,蝸牛」。「へ」=命令形。
- 〜ぬものならば(打消+仮定)
- 「舞はぬものならば」=「若不跳的話」。
- 〜に〜させてむ(使役+強意+推量)
- 「蹴ゑさせてむ」=「就會讓…踢」。「てむ」=完了「つ」+推量「む」。
- まことに〜たらば(強調+仮定)
- 「まことにうつくしく舞うたらば」=「若真的可愛地跳舞的話」。
- 〜まで遊ばせむ(範圍+使役+意志)
- 「華の園まで遊ばせむ」=「就讓你玩到花園」。「む」=意志。
中文翻譯
「舞へ舞へ蝸牛舞はぬものならば馬の子や牛の子に蹴ゑさせてむ踏み破らせてむまことにうつくしく舞うたらば華の園まで遊ばせむ」(《梁塵秘抄》)
【現代語訳】
舞い踊れ、舞い踊れ、蝸牛よ。舞わないならば、子馬や子牛に蹴らせてしまおう、踏み割らせよう。本当にかわいらしく舞ったならば、花の園まで連れて行ってあげよう。
平安歌謡。歌謡には大人の歌、それも恋の歌が多い。歌謡の性質上当然といえるが、中にこの歌のような童謡が混じっているのは楽しい。蝸牛に向かって、舞え舞え、舞わぬと馬の子や牛の子に踏みつぶさせるよ、とはやしている。蝸牛が立って舞うはずもないが、ここではのばした首を振る様子を舞と見たものか。蝸牛をマイマイというが、その音のつながりもあるかもしれない。
『閑吟集』
思へど思はぬ振りをして
しやつとしておりやるこそ底は深けれ
文法・表現
- 〜ど〜(古典逆接)
- 「思へど」=「儘管思念」。「ど」=已然形+ど=逆接。
- 〜振りをして(態度の連用)
- 「振りをして」=「裝作…」。
- しやつと(口語副詞)
- 「しやつと」=「神情自若、面不改色」。
- 〜おりやる(おる的尊敬語的口語)
- 「おりやる」=「居る/いる」的口語。室町時代用法。
- 〜こそ〜深けれ(強調的係結)
- 「底はこそ深けれ」=「底正是深的呢」。「こそ」=強調係助詞,要求已然形「深けれ」結句。
中文翻譯
「思へど思はぬ振りをしてしやつとしておりやるこそ底は深けれ」(《閑吟集》)
【現代語訳】
思っていても思っていないふりをして、しゃきっとしていらしゃる人こそが底は深いのだよ。
室町歌謡。女から見た男の理想像だろう。「隆達小歌」にも「思へど思はぬ振りみせてすき間に見る目のいとしさよや君」のような歌謡がある。また同じ『閑吟集』には「しやつとしたこそ人はよけれ」という小歌もある。「しやつと」して底深い男は、昔も今もイキな男の典型だった。しかし『閑吟集』の編者はなかなかの皮肉屋である。「思へど思はぬ振りをしてなう 思ひ痩せに痩せ候」。掲出歌の次にはこの歌がある。
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。