言語げんご文化ぶんか #32

古文こぶん

うたのこころ詩歌しいか2]

折々おりおりのうた 大岡おおおか まこと全四回ぜんよんかい=③】

新古今和歌集しんこきんわかしゅう

講師こうし 山本やまもと 章博あきひろ

学習がくしゅうのねらい

大岡おおおかまこと折々おりおりのうた』にげられた『新古今和歌集しんこきんわかしゅう』のうたを、その解説文かいせつぶん参考さんこうとしながらんでいきます。『新古今和歌集しんこきんわかしゅう』にかんする基礎知識きそちしきさえたうえで、藤原定家ふじわらのさだいえ藤原家隆ふじわらのいえたか和歌わかみ、その表現ひょうげん特徴とくちょうかんがえ、鑑賞かんしょうします。

文法・表現

〜に取り上げられた〜(受身連体)
に取り上げられた歌」=「被選入的歌」。
〜を参考としながら〜(並行+手段)
を参考としながら読んでいきます」=「一邊參考一邊閱讀」。
〜を押さえたうえで、〜(前提+目的)
基礎知識を押さえたうえで」=「掌握基礎之後」。
〜の特徴を考えてみましょう(漢語+勧誘)
特徴を考えてみましょう」=「思考特色」。

中文翻譯

閱讀大岡信《折々のうた》中所選的《新古今和歌集》之歌,並一邊參考其解說文一邊讀下去。在掌握有關《新古今和歌集》的基礎知識之後,閱讀藤原定家與藤原家隆的和歌,思考其表現的特色、加以鑑賞。

万葉集まんようしゅう』から『新古今和歌集しんこきんわかしゅう』まで、五七五七七ごしちごしちしちうたんできていますが、『折々おりおりのうた』は、五七五七七ごしちごしちしちだけではなく、五七五ごしちご俳句はいく川柳せんりゅう次回学習じかいがくしゅうする歌謡かよう、また、近現代詩きんげんだいし漢詩かんしなど、幅広いはばひろい詩歌しいかげたものです。

文法・表現

〜から〜まで、〜を読んできています(範圍+繼続)
から〜まで、〜を読んできています」=「從…到…一直在讀」。
〜だけではなく、〜(範圍拡張)
だけではなく」=「不只…還」。
〜も取り上げた、〜です(連体+斷定)
も取り上げた、〜詩歌集です」=「也收錄…的詩歌集」。
〜ぜひ〜に触れてください(強い勧誘)
ぜひ〜に触れてください」=「請務必接觸…」。

中文翻譯

從《萬葉集》到《新古今和歌集》,我們一直閱讀著五七五七七的歌,而《折々のうた》並非只有五七五七七,還收錄了五七五的俳句與川柳、下回將學習的歌謠,以及近現代詩、漢詩等,是收羅了廣泛詩歌之物。

学習がくしゅうのポイント●

いち〉『新古今和歌集しんこきんわかしゅう』について知るしる
〉「うめはな……」の和歌わか理解りかい鑑賞するかんしょうする
さん〉「志賀しがうらや……」の和歌わか理解りかい鑑賞するかんしょうする

文法・表現

〜について知る(漢語)
について知る」=「了解…」。
〜を理解し鑑賞する(並列)
を理解し鑑賞する」=「理解並鑑賞」。

中文翻譯

〈一〉了解《新古今和歌集》 〈二〉理解並鑑賞「梅の花……」之和歌 〈三〉理解並鑑賞「志賀の浦や……」之和歌

■『新古今和歌集しんこきんわかしゅう』について知るしる

■「うめはな……」の和歌わか理解りかい鑑賞するかんしょうする

軒下のきしたにいる人物のじんぶつの袖にはそでには梅のうめの花がはなが盛んにさかんに香りをかおりを移そうとうつそうとし、そして袖にはそでには涙がなみだがたくさんたまってい、て、軒からのきから漏れるもれる月のつきの光がひかりが盛んにさかんにそれを照らすてらす梅のうめの花のはなのにおいと、月のつきの光とひかりと、どちらが袖のそでの上をうえを支配するかしはいするか争ってあらそっているようだ、という歌ですうたです。この人物はじんぶつは何をなにを思っておもって泣いてないているのでしょうか、想像してそうぞうしてみましょう。

文法・表現

〜には、〜が〜しようとし、〜(並列+意圖)
袖には、梅の花が〜移そうとし」=「袖中梅花要移香」。
〜が漏れる〜(連体修飾)
軒から漏れる月の光」=「從簷下漏入的月光」。
〜と〜と、どちらが〜か、〜(選擇+疑問)
梅の花のにおいと、月の光と、どちらが袖の上を支配するか」=「梅香與月光,哪一個支配袖上」。
〜争っている、という〜(同格+連体)
争っている、という意味の歌」=「『正在競爭』,是這意義的歌」。

中文翻譯

在屋簷下之人物的袖上,梅花正盛地將香氣移到袖上,並且袖上積了許多淚水,從屋簷漏下的月光盛地照映其上。梅花的香味與月光——哪一方將支配袖上呢,彷彿在相爭——是這樣意義的歌。這位人物在想著什麼而流淚呢,讓我們想像看看吧。

重要語句じゅうようごく

■「志賀しがうらや……」の和歌わか理解りかい鑑賞するかんしょうする

夜がよが更けてふけて気温がきおんが下がってさがっていくと、琵琶湖のびわこの浦はうらは岸からきしから沖のおきの方にほうにかけて徐々にじょじょに凍ってこおっていきます。凍ったこおったところには波がなみが立ちませんのでたちませんので波打ち際がなみうちぎわが沖のおきの方へほうへ遠ざかってとおざかっていきます。その沖のおきの波のなみの間からあいだから凍ったこおったような月がつきが出てくるでてくる、そしてその月光がげっこうが凍ったこおった湖面をこめんを照らすてらす、という風景をふうけいを詠んだよんだ歌ですうたです。この風景からふうけいから、どのようなことを感じるでしょうかかんじるでしょうか

文法・表現

〜が〜と、〜(条件+帰結)
夜が更けて気温が下がっていくと、〜凍っていきます」=「夜深氣溫降,便會凍」。
〜から〜にかけて徐々に〜(範圍+程度)
岸から沖の方にかけて徐々に凍っていきます」=「從岸向湖中逐漸結冰」。
〜ところには〜立ちません(場所+打消)
凍ったところには波が立ちません」=「結冰處不會起浪」。
〜が〜遠ざかっていきます(連用+進行)
波打ち際が沖の方へ遠ざかっていきます」=「波濤線向湖中遠去」。
〜の間から、〜が出てくる、という〜(場所+連体)
波の間から、〜が出てくる、という景色」=「從波間昇出,是這樣的景色」。

中文翻譯

夜深氣溫下降後,琵琶湖的浦會從岸邊向湖中方向逐漸結冰。結冰處不會起浪,所以波濤線會逐漸向湖中遠去。從那湖中的波浪之間,如凍住般的月升起,而那月光照亮結冰的湖面——是描繪這樣風景的歌。從這風景中,能感受到什麼樣的事呢?

本歌ほんか

小夜さよふくるままにみぎは凍るらむこおるらむ遠ざかりゆくとおざかりゆく志賀の浦波しがのうらなみ

文法・表現

小夜ふくるままに(連体+順其自然)
小夜ふくるままに」=「隨著夜深」。
〜や〜らむ(疑問+現在推量)
汀や凍るらむ」=「水際是不是在結冰呢」。「」=疑問の係助詞;「らむ」=現在推量。
遠ざかりゆく〜(連用+進行+連体)
遠ざかりゆく志賀の浦波」=「正漸漸遠去的志賀浦之波」。

中文翻譯

「小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波」(《後拾遺和歌集》)

(『後拾遺和歌集ごしゅういわかしゅう』)

現代語訳げんだいごやく

夜がよが更けるにふけるにつれて、水際がみずぎわが凍っているのこおっているのだろうか。遠ざかっていくとおざかっていく志賀の浦のしがのうらの波よなみよ

文法・表現

〜につれて、〜(並行+帰結)
夜が更けるにつれて、〜凍っているのだろうか」=「隨著夜深,是不是在凍呢」。
〜のだろうか(推量の柔軟疑問)
のだろうか」=「是不是…呢」。
〜よ(呼びかけ/詠嘆)
波よ」=「啊,波」。

中文翻譯

(現代語譯)隨著夜深,水邊是不是漸漸結冰了呢?正逐漸遠去的志賀浦之波啊。

藤原家隆はふじわらのいえたかは、この歌をうたをもとにして(本歌としてほんかとして)、新たなあらたな歌をうたを作ったつくった
古いふるい歌のうたの一部のいちぶの句をくをそのまま利用してりようして新しいあたらしい歌をうたを詠むよむ技法をぎほうを本歌取りほんかどり」という。

文法・表現

〜をもとにして、〜(手段+目的)
をもとにして」=「以…為基」。
〜として、新たな〜を作った(資格+連用)
本歌として、新たな歌を作った」=「作為本歌,創新歌」。
〜の一部の句をそのまま利用して〜詠む技法を「〜」という(手段+命名)
古い歌の一部の句をそのまま利用して詠む技法を『本歌取り』という」=「把古歌句原樣借用詠新歌的技法叫『本歌取り』」。本歌取り=新古今集的代表技法之一。

中文翻譯

→藤原家隆以這首歌為本(作為「本歌」),另作了新歌。 *將古歌的一部分句子原樣使用來詠新歌的技法,稱為「本歌取り」。

重要語句じゅうようごく


藤原定家ふじわらのさだいえ

梅のうめのはなにほひをうつす袖のそでの上にうえにのきもる月のつきの影ぞかげぞあらそふ

文法・表現

梅の花にほひをうつす(連用+他動詞)
にほひをうつす」=「把香氣移到」。
袖の上に〜(場所)
袖の上に」=「在袖上」。
軒もる月の影(連体修飾+名詞句)
軒もる月の影」=「從簷漏下的月光」。
〜ぞあらそふ(強調係結)
影ぞあらそふ」=「正是月光在競爭」。「」=係助詞,要求連體形「あらそふ」結句。

中文翻譯

「梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ」

現代語訳げんだいごやく
梅のうめの花がはながにおいを移すうつす袖のそでの上にうえに軒からのきから漏れるもれる月のつきの光がひかりがあらそうように(袖のそでの上のうえの涙になみだに映ってうつっているよ。

芳香をほうこうを発するはっする梅がうめが、まるで香をこうをたきしめるようにわが袖にそでに香りをかおりを移してうつしている。折しもおりしもその上にうえに軒ののきの隙間からすきまから漏れるもれる月光がげっこうが落ちおち芳香とほうこうと光がひかりがそこで相争ってあいあらそっている。「うつす」は「移すうつす」であり、また「映すうつす」だろう。王朝のおうちょうの歌でうたで袖のそでの上のうえの月光とげっこうといえば、懐旧のかいきゅうの、また恋のこいの涙がなみだが袖にそでにたまって、そこに月をつきを宿すやどすという含みがふくみがあった。この歌もうたもそういう春夜のしゅんやの物語風のものがたりふうの情緒をじょうちょを歌ったのだうたったのだ

藤原家隆ふじわらのいえたか

志賀の浦しがのうら遠ざかりゆくとおざかりゆく波間よりなみまより凍りてこおりていづる有明の月ありあけのつき

文法・表現

志賀の浦や(呼びかけ)
志賀の浦や」=「志賀的浦啊」。「」=呼びかけ/詠嘆。
遠ざかりゆく〜より(連体+場所)
遠ざかりゆく波間より」=「從漸漸遠去的波浪之間」。「より」=出處。
凍りていづる(連用+連体)
凍りていづる」=「凝凍般升出」。
有明の月(連体修飾)
有明の月」=「有明之月(即拂曉時仍未西沉之月)」。

中文翻譯

「志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りていづる有明の月」

現代語訳げんだいごやく
琵琶湖のびわこの浦のうらの遠ざかってゆくとおざかってゆく波のなみの間からあいだから凍ってこおって出てくるでてくる有明の月よありあけのつきよ

左大臣藤原良経さだいじんふじわらのよしつね邸のていの歌合わせにうたあわせに湖上のこじょうの冬の月ふゆのつき」の題でだいで出詠しゅつえい志賀の浦はしがのうらは琵琶湖のびわこの浦のうらの一つひとつ厳冬未明のげんとうみめいの湖面にこめんに昇るのぼる月をつきを描くえがく寒気のかんきの極まるきわまる未明にはみめいには、なぎさがしだいに凍結するのでとうけつするので波はなみは岸辺からきしべから遠ざかりゆくとおざかりゆく」のである。その遠くなったとおくなった波間からなみまから夜更けてよふけて出るでる有明月がありあけづきが鋭くふるどく身をみを細めほそめ、しんと凍ってこおって立ち現れるたちあらわれる澄明さとちょうめいさと寂しさとさびしさと強さのつよさの一体化いったいか。『後拾遺和歌集ごしゅういわかしゅうふゆ小夜さよふくるままにみぎは凍るらむこおるらむ遠ざかりゆくとおざかりゆく志賀の浦波しがのうらなみ」が本歌ほんか

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文法・表現

〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
無断転載及び商用利用固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。

中文翻譯

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