学習のねらい
大岡信『折々のうた』に取り上げられた『新古今和歌集』の歌を、その解説文を参考としながら読んでいきます。『新古今和歌集』に関する基礎知識を押さえたうえで、藤原定家と藤原家隆の和歌を読み、その表現の特徴を考え、鑑賞します。
文法・表現
- 〜に取り上げられた〜(受身連体)
- 「に取り上げられた歌」=「被選入的歌」。
- 〜を参考としながら〜(並行+手段)
- 「を参考としながら読んでいきます」=「一邊參考一邊閱讀」。
- 〜を押さえたうえで、〜(前提+目的)
- 「基礎知識を押さえたうえで」=「掌握基礎之後」。
- 〜の特徴を考えてみましょう(漢語+勧誘)
- 「特徴を考えてみましょう」=「思考特色」。
中文翻譯
閱讀大岡信《折々のうた》中所選的《新古今和歌集》之歌,並一邊參考其解說文一邊讀下去。在掌握有關《新古今和歌集》的基礎知識之後,閱讀藤原定家與藤原家隆的和歌,思考其表現的特色、加以鑑賞。
『万葉集』から『新古今和歌集』まで、五七五七七の歌を読んできていますが、『折々のうた』は、五七五七七だけではなく、五七五の俳句や川柳、次回学習する歌謡、また、近現代詩、漢詩など、幅広い詩歌を取り上げたものです。
文法・表現
- 〜から〜まで、〜を読んできています(範圍+繼続)
- 「から〜まで、〜を読んできています」=「從…到…一直在讀」。
- 〜だけではなく、〜(範圍拡張)
- 「だけではなく」=「不只…還」。
- 〜も取り上げた、〜です(連体+斷定)
- 「も取り上げた、〜詩歌集です」=「也收錄…的詩歌集」。
- 〜ぜひ〜に触れてください(強い勧誘)
- 「ぜひ〜に触れてください」=「請務必接觸…」。
中文翻譯
從《萬葉集》到《新古今和歌集》,我們一直閱讀著五七五七七的歌,而《折々のうた》並非只有五七五七七,還收錄了五七五的俳句與川柳、下回將學習的歌謠,以及近現代詩、漢詩等,是收羅了廣泛詩歌之物。
●学習のポイント●
〈一〉『新古今和歌集』について知る
〈二〉「梅の花……」の和歌を理解し鑑賞する
〈三〉「志賀の浦や……」の和歌を理解し鑑賞する
文法・表現
- 〜について知る(漢語)
- 「について知る」=「了解…」。
- 〜を理解し鑑賞する(並列)
- 「を理解し鑑賞する」=「理解並鑑賞」。
中文翻譯
〈一〉了解《新古今和歌集》
〈二〉理解並鑑賞「梅の花……」之和歌
〈三〉理解並鑑賞「志賀の浦や……」之和歌
■『新古今和歌集』について知る
- 成立
- 鎌倉時代、一二〇五年。
- 八番目の勅撰和歌集。後鳥羽上皇の命令によって作られ、後鳥羽上皇自身も編集に携わった。
- 撰者は、藤原定家・藤原家隆ら。
- 内容
- 全二十巻。
- 四季(春夏秋冬)の歌が六巻、恋の歌が五巻。 →『古今和歌集』と同じ。
■「梅の花……」の和歌を理解し鑑賞する
軒下にいる人物の袖には、梅の花が盛んに香りを移そうとし、そして袖には涙がたくさんたまってい、て、軒から漏れる月の光が盛んにそれを照らす。梅の花のにおいと、月の光と、どちらが袖の上を支配するか、争っているようだ、という歌です。この人物は何を思って泣いているのでしょうか、想像してみましょう。
文法・表現
- 〜には、〜が〜しようとし、〜(並列+意圖)
- 「袖には、梅の花が〜移そうとし」=「袖中梅花要移香」。
- 〜が漏れる〜(連体修飾)
- 「軒から漏れる月の光」=「從簷下漏入的月光」。
- 〜と〜と、どちらが〜か、〜(選擇+疑問)
- 「梅の花のにおいと、月の光と、どちらが袖の上を支配するか」=「梅香與月光,哪一個支配袖上」。
- 〜争っている、という〜(同格+連体)
- 「争っている、という意味の歌」=「『正在競爭』,是這意義的歌」。
中文翻譯
在屋簷下之人物的袖上,梅花正盛地將香氣移到袖上,並且袖上積了許多淚水,從屋簷漏下的月光盛地照映其上。梅花的香味與月光——哪一方將支配袖上呢,彷彿在相爭——是這樣意義的歌。這位人物在想著什麼而流淚呢,讓我們想像看看吧。
【重要語句】
- 軒 ……… 屋根の端の出っ張ったところのこと。
- 影 ……… ここでは光のこと。日の光が当たらない場所をいうばかりでなく、日の光が当たる場所、また光そのものについても「かげ」といった。
■「志賀の浦や……」の和歌を理解し鑑賞する
夜が更けて気温が下がっていくと、琵琶湖の浦は岸から沖の方にかけて徐々に凍っていきます。凍ったところには波が立ちませんので、波打ち際が沖の方へ遠ざかっていきます。その沖の波の間から、凍ったような月が出てくる、そしてその月光が凍った湖面を照らす、という風景を詠んだ歌です。この風景から、どのようなことを感じるでしょうか。
文法・表現
- 〜が〜と、〜(条件+帰結)
- 「夜が更けて気温が下がっていくと、〜凍っていきます」=「夜深氣溫降,便會凍」。
- 〜から〜にかけて徐々に〜(範圍+程度)
- 「岸から沖の方にかけて徐々に凍っていきます」=「從岸向湖中逐漸結冰」。
- 〜ところには〜立ちません(場所+打消)
- 「凍ったところには波が立ちません」=「結冰處不會起浪」。
- 〜が〜遠ざかっていきます(連用+進行)
- 「波打ち際が沖の方へ遠ざかっていきます」=「波濤線向湖中遠去」。
- 〜の間から、〜が出てくる、という〜(場所+連体)
- 「波の間から、〜が出てくる、という景色」=「從波間昇出,是這樣的景色」。
中文翻譯
夜深氣溫下降後,琵琶湖的浦會從岸邊向湖中方向逐漸結冰。結冰處不會起浪,所以波濤線會逐漸向湖中遠去。從那湖中的波浪之間,如凍住般的月升起,而那月光照亮結冰的湖面——是描繪這樣風景的歌。從這風景中,能感受到什麼樣的事呢?
● 本歌
小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波
文法・表現
- 小夜ふくるままに(連体+順其自然)
- 「小夜ふくるままに」=「隨著夜深」。
- 〜や〜らむ(疑問+現在推量)
- 「汀や凍るらむ」=「水際是不是在結冰呢」。「や」=疑問の係助詞;「らむ」=現在推量。
- 遠ざかりゆく〜(連用+進行+連体)
- 「遠ざかりゆく志賀の浦波」=「正漸漸遠去的志賀浦之波」。
中文翻譯
「小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波」(《後拾遺和歌集》)
(『後拾遺和歌集』)
〈現代語訳〉
夜が更けるにつれて、水際が凍っているのだろうか。遠ざかっていく志賀の浦の波よ。
文法・表現
- 〜につれて、〜(並行+帰結)
- 「夜が更けるにつれて、〜凍っているのだろうか」=「隨著夜深,是不是在凍呢」。
- 〜のだろうか(推量の柔軟疑問)
- 「のだろうか」=「是不是…呢」。
- 〜よ(呼びかけ/詠嘆)
- 「波よ」=「啊,波」。
中文翻譯
(現代語譯)隨著夜深,水邊是不是漸漸結冰了呢?正逐漸遠去的志賀浦之波啊。
→藤原家隆は、この歌をもとにして(本歌として)、新たな歌を作った。
*古い歌の一部の句をそのまま利用して新しい歌を詠む技法を「本歌取り」という。
文法・表現
- 〜をもとにして、〜(手段+目的)
- 「をもとにして」=「以…為基」。
- 〜として、新たな〜を作った(資格+連用)
- 「本歌として、新たな歌を作った」=「作為本歌,創新歌」。
- 〜の一部の句をそのまま利用して〜詠む技法を「〜」という(手段+命名)
- 「古い歌の一部の句をそのまま利用して詠む技法を『本歌取り』という」=「把古歌句原樣借用詠新歌的技法叫『本歌取り』」。本歌取り=新古今集的代表技法之一。
中文翻譯
→藤原家隆以這首歌為本(作為「本歌」),另作了新歌。
*將古歌的一部分句子原樣使用來詠新歌的技法,稱為「本歌取り」。
【重要語句】
- 有明の月 …… 夜が明けても空に残っている月のこと。
藤原定家
梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ
文法・表現
- 梅の花にほひをうつす(連用+他動詞)
- 「にほひをうつす」=「把香氣移到」。
- 袖の上に〜(場所)
- 「袖の上に」=「在袖上」。
- 軒もる月の影(連体修飾+名詞句)
- 「軒もる月の影」=「從簷漏下的月光」。
- 〜ぞあらそふ(強調係結)
- 「影ぞあらそふ」=「正是月光在競爭」。「ぞ」=係助詞,要求連體形「あらそふ」結句。
中文翻譯
「梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ」
【現代語訳】
梅の花がにおいを移す袖の上に、軒から漏れる月の光があらそうように(袖の上の涙に)映っているよ。
芳香を発する梅が、まるで香をたきしめるようにわが袖に香りを移している。折しもその上に、軒の隙間から漏れる月光が落ち、芳香と光がそこで相争っている。「うつす」は「移す」であり、また「映す」だろう。王朝の歌で袖の上の月光といえば、懐旧の、また恋の涙が袖にたまって、そこに月を宿すという含みがあった。この歌もそういう春夜の物語風の情緒を歌ったのだ。
藤原家隆
志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りていづる有明の月
文法・表現
- 志賀の浦や(呼びかけ)
- 「志賀の浦や」=「志賀的浦啊」。「や」=呼びかけ/詠嘆。
- 遠ざかりゆく〜より(連体+場所)
- 「遠ざかりゆく波間より」=「從漸漸遠去的波浪之間」。「より」=出處。
- 凍りていづる(連用+連体)
- 「凍りていづる」=「凝凍般升出」。
- 有明の月(連体修飾)
- 「有明の月」=「有明之月(即拂曉時仍未西沉之月)」。
中文翻譯
「志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りていづる有明の月」
【現代語訳】
琵琶湖の浦の、遠ざかってゆく波の間から、凍って出てくる有明の月よ。
左大臣藤原良経邸の歌合わせに「湖上の冬の月」の題で出詠。志賀の浦は琵琶湖の浦の一つ。厳冬未明の湖面に昇る月を描く。寒気の極まる未明には、なぎさがしだいに凍結するので、波は岸辺から「遠ざかりゆく」のである。その遠くなった波間から、夜更けて出る有明月が、鋭く身を細め、しんと凍って立ち現れる。澄明さと寂しさと強さの一体化。『後拾遺和歌集』冬「小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波」が本歌。
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文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
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