学習のねらい
大岡信『折々のうた』に取り上げられた『古今和歌集』の歌を、その解説文を参考としながら読んでいきます。『古今和歌集』に関する基礎知識を押さえたうえで、夏歌と秋歌を読み、季節をどのように表現しているのかを考え、鑑賞します。
文法・表現
- 〜に取り上げられた〜(受身連体)
- 「に取り上げられた歌」=「被選入的歌」。
- 〜を参考としながら〜(並行+手段)
- 「を参考としながら読んでいきます」=「一邊參考一邊閱讀」。
- 〜を押さえたうえで、〜(前提+目的)
- 「基礎知識を押さえたうえで」=「掌握基礎之後」。
- 〜どのように〜のかを考えてみましょう(疑問内包+勧誘)
- 「どのように表現しているのかを考えてみましょう」=「思考如何表達」。
中文翻譯
閱讀大岡信《折々のうた》中所選的《古今和歌集》之歌,並一邊參考其解說文一邊讀下去。在掌握有關《古今和歌集》的基礎知識之後,閱讀夏之歌與秋之歌,思考它們是怎樣表現季節的歌、加以鑑賞。
『折々のうた』の作者の大岡信は、昭和六年の生まれで、平成二十九年に亡くなりました。静岡県三島の出身で、学生の時から詩を書き始めました。大学卒業後、新聞記者となり、その後、大学の教員となりますが、その傍ら、活発に執筆活動を続けていきました。
文法・表現
- 〜は、〜の生まれで、〜亡くなりました(人物紹介定型)
- 「は、〜の生まれで、〜亡くなりました」=「生於…,於…去世」。
- 〜の出身で、〜書き始めました(連用+過去開始)
- 「静岡県三島の出身で、〜書き始めました」=「出身於三島,開始寫…」。
- 〜となり、その後、〜となりますが、〜の傍ら、〜(連續變化+並行)
- 「記者となり、その後、教員となりますが、その傍ら、〜」=「變為記者,後變教員,並…」。
- 〜として知られています(資格+受身)
- 「現代詩人として知られています」=「以現代詩人聞名」。
中文翻譯
《折々のうた》的作者大岡信,生於昭和六年,於平成二十九年逝世。出身於靜岡縣三島,從學生時代起便開始寫詩。大學畢業後成為新聞記者,之後成為大學教員,但在其餘暇中,仍持續活躍地進行寫作活動。
●学習のポイント●
〈一〉『古今和歌集』について知る
〈二〉「五月待つ……」の和歌を理解し鑑賞する
〈三〉「秋来ぬと……」の和歌を理解し鑑賞する
文法・表現
- 〜について知る(漢語)
- 「について知る」=「了解…」。
- 〜を理解し鑑賞する(並列)
- 「を理解し鑑賞する」=「理解並鑑賞」。
中文翻譯
〈一〉了解《古今和歌集》
〈二〉理解並鑑賞「五月待つ……」之和歌
〈三〉理解並鑑賞「秋來ぬと……」之和歌
■『古今和歌集』について知る
- 成立
- 平安時代、九〇五年頃。
- 初めての勅撰和歌集。醍醐天皇の命によって作られた。
- 撰者は、紀貫之ら四名。
- 内容
- 全二十巻。約一一〇〇首。
- 全二十巻のうち、四季(春夏秋冬)の歌が六巻、恋の歌が五巻。
- →以降の勅撰和歌集も、四季と恋の歌を中心とする。
■「五月待つ……」の和歌を理解し鑑賞する
夏の五月になって咲いた橘の花の香りをかいだ。よい香りだと思っていたら、ふと、昔の人の着物の袖の香りを思い出した。この橘の香りは、昔のあの人の袖の香りと似ている。あの人は今、どうしているのだろう、という意味の歌です。
昔の人とはどのような人か、想像してみましょう。また、何かの香りによって昔を思い出すという経験はないか、振り返ってみましょう。
文法・表現
- 〜になって咲いた〜(時間+過去)
- 「五月になって咲いた橘の花」=「到五月開的橘花」。
- 〜と思っていたら、ふと、〜を思い出した(条件+發見)
- 「と思っていたら、ふと、〜を思い出した」=「正想…時,忽然想起…」。
- 〜と似ている(比較)
- 「香りと似ている」=「與…相似」。
- 〜どうしているのだろう、という〜(疑問+連体)
- 「どうしているのだろう、という意味の歌」=「『現在如何呢』,是這個意義的歌」。
中文翻譯
聞到了夏之五月開放的橘花的香。正覺得「好香啊」時,忽然想起了昔日之人衣袖的香。這橘花的香,與昔日那人袖的香很相似。那人現在,怎麼樣了呢——是這樣意義的歌。
【重要語句】
- 五月 ……… 陰暦の五月のこと。陰暦では、一~三月が春、四~六月が夏、七~九月が秋、十月~十二月が冬となる。
- 花橘 …… 橘の花のこと。五月に咲く。
■「秋来ぬと……」の和歌を理解し鑑賞する
「立秋」を詠んだ歌です。秋がやって来たと、目にははっきりとは見えないけれども、風の音に、秋になったんだと、はっと自然に気がついたよ、という意味の歌です。
桜が咲いたり、紅葉したりすると、その季節を実感すると思いますが、風の音や香りに季節の移り変わりを感じたことはないでしょうか。
今回の『古今和歌集』の二首は、嗅覚や聴覚の繊細な感覚が詠まれています。その感覚を想像してみましょう。
文法・表現
- 〜を詠んだ歌です(連体+斷定)
- 「を詠んだ歌です」=「是詠…的歌」。
- 〜には〜とは〜けれども、〜(譲歩)
- 「目にははっきりとは見えないけれども」=「肉眼雖看不清」。
- 〜と、はっと自然に気がついたよ(連用+發見+詠嘆)
- 「と、はっと自然に気がついたよ」=「啊,突然自然地察覺到了」。「よ」=詠嘆。
- 〜と、〜を実感する〜(条件+実感)
- 「桜が咲いたり、紅葉したりすると、〜を実感する」=「當…時,能感受到」。
- 〜ない事を、〜気がついた、という〜(連体+過去+同格)
- 「気がついた、という風流な歌です」=「是『察覺到…』的風雅之歌」。
中文翻譯
詠「立秋」的歌。秋天到來這件事,雖然肉眼看不分明,但藉由風的聲音,「啊,已經到秋天了」——猛地自然地察覺到了——是這樣意義的歌。
當櫻花開了、楓葉紅了,我們會切實感受到季節,但你有沒有過——從風的聲音或香味中感受到季節的轉移呢?
本回的《古今和歌集》兩首歌中,詠出了嗅覺與聽覺的纖細感覺。讓我們想像那種感覺吧。
【重要語句】
- おどろく …… びっくりする。不意にはっと気づく。
よみ人しらず
五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
文法・表現
- 五月待つ花橘(連体修飾)
- 「五月待つ花橘」=「等待五月綻放的橘花」。
- 〜をかげば(已然形+ば条件)
- 「香をかげば」=「聞了香就…」。
- 昔の人の袖の香(連體修飾連鎖)
- 「昔の人の袖の香」=「昔日某人衣袖之香」。
- 〜ぞする(強調の係結)
- 「香ぞする」=「正是…的香味呢」。「ぞ」=強調係助詞,要求連體形(する)結句。
中文翻譯
「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」
【現代語訳】
五月になって咲く橘の花の香りを嗅ぐと、昔の人の袖の香りがするよ。
「五月」は陰暦五月。「花橘」は橘の花を褒めていう。「昔の人」は昔恋人だった人、ここでは女性。橘の花の芳香が、かつての思い人の袖にたきしめられていた香りを、突然よみがえらせたのである。平安朝の詩人たちは、嗅覚の刺激が過去を呼び戻す事実に関心をそそられていた。それは当時における新しい主題の一つだった。この歌はたいそう愛されたので、「花橘の香」といえば「昔の人」という連想の型ができたほどだ。
藤原敏行
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる
文法・表現
- 秋来ぬ(完了の終止)
- 「秋来ぬ」=「秋天到了」。「ぬ」=完了助動詞。
- 〜とさやかに見えねども(副詞+打消已然+逆接)
- 「さやかに見えねども」=「儘管看不分明」。「さやかに」=分明地;「ねども」=「ず」已然+ども。
- 〜にぞおどろかれぬる(係結+受身完了)
- 「風のおとにぞおどろかれぬる」=「因風聲而被驚覺了」。「ぞ」=強調係助詞,要求連體形「ぬる」結句;「れ」=受身/自發。
中文翻譯
「秋來ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」
【現代語訳】
秋が来たと、目にははっきりとは見えないけれども、風の音にはっと気がついたよ。
秋歌巻頭の立秋の歌。「おどろく」はにわかに気づく。まだ目にはありありと見えないが、ああもう風の音が秋を告げている。目に見えるものより先に、「風」という「気配」によって秋の到来を知るという発見が、この有名な歌のかなめである。つまり「時」の移り行きを目ではなく耳で聴き取る行き方で、より内面的な感じ方である。これが後世の美学にも影響を与えたのだった。
このページの文書・画像の無断転載及び商用利用を固く禁じます。
文法・表現
- 〜の〜及び〜を〜禁じます(漢語並列)
- 「無断転載及び商用利用を固く禁じます」——「及び」=書面並列;「固く」=強調副詞。